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アブラハム渓谷(1993)

VALE ABRAAO

メディア映画
上映時間189分
製作国ポルトガル/フランス/スイス
公開情報劇場公開(フランス映画社)
初公開年月1994/10/29
ジャンルドラマ
マノエル・デ・オリヴェイラ傑作選 「世界の始まりへの旅」「アブラハム渓谷」「階段通りの人々」 [DVD]
参考価格:¥ 15,552
USED価格:¥ 28,590
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【解説】
 基本的には静的なのに、これ程力強いカメラの存在を意識させる作品はそうはない。冒頭、ただ横滑りして風景を写すだけの、列車の走りに合わせた移動ショットから固唾を飲ませてくれる。“アブラハムの谷”とは旧約聖書で神が、傲慢と恥と怒りを戒め、人に託された土地とされる。これを監督オリヴェイラは故郷オポルトに近いドウロ河流域の地と定め、一人の放縦な女性エマが、抑圧された生を力強く切り開いていくさまを、圧倒的な北ポルトガルの土壌の包容力の中に、端正かつ豪胆に刻みつける。三時間余の長尺に一箇所たりとも弛緩したショットのない恐ろしい映画だ。その愛の官能を幾重にも織り込んだ物語を一口で語るのは難しい。ただ大変ドラマチックなので一息に観させられる。いや、実際、粗筋をただ書けば俗っぽくもなろう。しかしその細部が、信仰の風土での愛と死=命の変容を艶やかに物語って感銘を受けずにはいられない。サイレント期から映画を撮り続ける(と言っても、この10年でそのフィルモグラフィの半分の作品を撮る旺盛な創造意欲を見せている)オリヴェイラ、85歳での、この実りの瑞々しさと成熟の芳香……。映画の不思議を観る者の心に叩き込む、まさに名画。少女時代のエマを演じるC・サンス・デ・アルバの危険な美しさも忘れられない。原作は、フロベールの『ボヴァリー夫人』を基にしたA・ベッサ=ルイスのものだが、全く自由な脚色が施されており、そうと言われなければ気付かないほどだ。
<allcinema>
評価
【ユーザー評価】
投票数合計平均点
329 9.67
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【ユーザーコメント】
投稿者:Katsumi_Egi投稿日:2018-09-22 22:21:37
 マノエル・ド・オリヴェイラの「ボヴァリー夫人」。本作では、主人公のエマがイポリット(原作及び映画化作品では印象的なキャラクター。足の不自由な男)のように跛行する。結婚相手は俗物の医師だし、友人宅でのパーティのシーンで、情人と出会いもする。残念ながら、ダンスパーティ・シーンではないが、サックスソロの「Tenderly」がかかり、情感を盛り上げる。

 渓谷の建物のロングショットや家屋の外観、道、ベランダなどの空ショットで、えんえんとモノローグ(ナレーション)が入り、独特のゆったりとしたリズムを形成するのだが、何と云っても本作を楽しむ要諦は、複数人物の会話シーンでの、視線の演出とカットバック(リバースショット)のスリリングさ、あるいは、カットバックと見た目のカットの挿入の妙を味わうことだろう。

 また、庭の生け垣、家の前の道、家屋の中の階段の仰角カットといったカットで、スクリーンの奥へ、まるでトンネルのような形状で動線が続いている画面が何度も出てきて、これもとても面白い、眩惑的な効果を醸し出している。

 そして、もう一つ特徴的なのは、人物の正面バストショットかつカメラ目線の固定ショットの多用だ。静物や空ショットも含めて、全編に亘ってフィクスのカットばかりで、落ち着きのある格調高いムードを演出するのだが、ラスト近く、オレンジの木の下を歩くエマのカットとその見た目のカットが、信じられないぐらい滑らかなドリーの移動撮影なのだ。ドリーはこゝだけだと思う。この滑らかさは衝撃的でさえある。

 さて、こゝからは備忘のようなものですが、ラスト近くで「エマは薔薇の花だ」という科白もあるし、少女時代に、赤い薔薇の花弁に指を突っ込む、というあからさまなカットもある。エピローグ前には、聾唖の洗濯女に一輪の薔薇を手渡す。というように、明確な形で、薔薇はエマの象徴として用いられる。一方、月光もエマを表しており、ベートーベンの「月光」やドビュッシーの「月の光」などがBGMとして反復される。さらにクラシック音楽の使い方で書き留めておきたいのは、エマが誘惑する、バイオリンを弾く青年は「G線上のアリア」ばかり弾くのだが(いや、これしか弾けないのかと思わせておいて)、情事後の閨房では、唐突にアルビノーニのアダージョを弾きはじめる。するとエマは「その曲は悲しくなる」と云って止めるのだ。皮肉なことに、映画のラストの音楽はこのアダージョなのである。

#アルビノーニのアダージョを使った作品ということで、記憶に残っているのは、ウェルズの『審判』と『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。そして、私にとって決定的なのは、テレビ版の向田邦子の『あ・うん』
http://www.page.sannet.ne.jp/egi/
投稿者:paris1895投稿日:2007-06-22 21:24:33
紛れも無い映画である。
オリヴェイラが映画を撮れなかった時代が存在するなど、映画史に於いて最大級の損失である。

色の使い方のなんと見事な事か。
エマが纏う色が、赤、青、黄。
これは正に、聖母の色と、救世主の色である。

そして、エマが終盤聾唖の洗濯婦に渡した花の色は…
必見!!
投稿者:堕落者投稿日:2004-02-13 16:55:12
独特の緩やかな時間の流れを感じさせながら,一瞬たりとも画面を見逃す事が出来ないこの作品に魅せられました。およそ倦怠とは似ても似つかないこの心情と物語を一体どの様な結末に収束させていくのか,と注意深く観ていました。全編に瑞々しさと成熟さという両面を持つ驚異的な作風には泥酔とは程遠い心地良い酔いを持続させ感じされてくれるのであって,ギャグとも付かぬ最後にも理屈抜きで納得させられてしまうのであった。最早,離れ業としか言い様が無い。オリヴェイラ,この時既に八十過ぎのじいさんですか!ブレッソンは寡作だったけど,この人は反対に撮りまくってますね。(笑)
【受賞履歴】
(■=受賞、□=ノミネート)
■ 最優秀芸術貢献賞マノエル・デ・オリヴェイラ 
【ソフト】
  商品名  発売日  税抜価格  
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