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族譜<未>(1978)

族譜

メディア映画
製作国韓国
公開情報劇場未公開・NHK教育で放映

【クレジット】
監督:イム・グォンテク
出演:朱善泰
河明中
【解説】
 韓国現代史により添う形で、エネルギッシュに、社会的テーマを持った娯楽性を量産してきたイム・グォンテク(林權澤)が、日本の異能の大衆作家=梶山李之の純文学作品を映画化したもの。日帝時代、創氏改名の手続きを行う若い日本人の役人(河明中)が、薜(ソル)一族が地主である地域に赴き、頭首の気高い人格と、その娘の美しさに惹かれ、朝鮮人の「族譜」に対する思いに気づかされるが、彼の立場では頭首を説得する他ない。頑なに改名を拒んでいた頭首も家族を想って、最後には了承するが、それは彼の死をも意味することだった。林作品としても最もメッセージ性の強い映画で、頭首の朱善泰の抱擁力ある演技は特筆に価する。
<allcinema>
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【ユーザーコメント】
投稿者:黒美君彦投稿日:2007-06-11 15:37:05
【ネタバレ注意】

<あらすじ>1940年。京畿道庁に勤める日本人青年・谷六郎(ハ・ミョンジュン)は朝鮮総督府の命を受けて、同化政策の一環である創氏改名を徹底する任務を負っていた。だが彼自身は、自発的な創氏改名を望んでいたため、なかなか効率が上がらない。水原郡の両班(ヤンバン)で名士のソル・ジニョン〔薛鎭英〕(チュ・ソンテ)はどちらかというと親日派で、娘のソル・オクスン〔玉順〕(ハン・ヘスク)ともども画家を志す谷に心を許すが、ソル家の本家の当主であるソル・ジニョンは薛家700年の族譜を谷に見せて、創氏改名だけはできないという。しかし谷の上司や総督府は、創氏改名しないソル・ジニョンに対して様々な圧力をかけてくるのだった…。

原作者・梶山季之(1930〜75)は流行作家として知られているが、15歳までソウルで過ごした彼は、朝鮮に対して深い思いを抱いていた。この『族譜』は幾度か書き直されているようだが、初出は昭和27年の自費出版に遡る。実に22歳頃にはこうした作品を書いていたのだ。
それが1973年3月、軍事政権下の韓国で作家・韓雲史による脚本でテレビドラマ化され、それが映画化につながったという。日本人作家の原作を使って民族の歴史に向き合った韓国映画は、この作品と、同じ梶山季之原作の『李朝残影』(1967年)以外は寡聞にして知らない。

「族譜」とは、朝鮮で一族の代々の当主が、家系図とともに、それぞれの時代の出来事を書き残して子々孫々に伝えたものだという。大家族主義と儒教の国であった朝鮮半島で、名前を日本風に変える意味の重さは相当なものであった。
戦後、文部省が教科書検定で「創氏改名は自発的なものだった」という意見を付すなど、例の如く都合のいい解釈をなされるようになると、それに乗っかった言説が現れるようになった。
創氏改名については、半年間の期限が設けられたが、前半3か月での届出が僅か7.6%であったのに、最終的には8割が届出をしたという。この驚異的な伸びは、急にみんなが自発的になったから、では当然なく、学校でのいじめ、教員からの圧力、間接的な嫌がらせ等によって「届出させられた」とみるのが自然だろう。ただその場合でも建前はあくまで「自発的に」である。確かに法律的に強制ではなかったかも知れないが、だからといって「強制ではなく自発的だった」とするのは相当に無理があるとしかいえない。
ちなみに朝鮮では家を示すのは「姓」で、「氏」という概念はなかった。朝鮮総督府は「姓」がなくなるわけではないという宣伝に力を入れたが、日本の戸籍制度が導入され、表面上は「創氏」=すなわち日本風の氏名が公式となり、姓は小さく添えられるに過ぎなかった。
陸軍中将で戦犯とされた洪思翊(ホン・サイク)らの例を挙げて、「みんなが創氏改名したわけではない」と言い訳する向きもあるが、そもそも陸軍幹部や貴族院議員という立場と一般庶民とでは圧力のかかり方が違う。表面上は内鮮一体なのだから、影響力の強い人たちに無理強いはできなかっただけのことだ(ただし創氏は日本風の名前にしなかった人も含め、実は100%行われた)。
もちろん中には皇民化政策に迎合していった朝鮮人も少なくなかったと考えられる。その方が経済的な面などで得をしたり、統治者にいい顔ができたりしたからだ。だがそのことは、創氏改名せざるを得ないよう追い込んだ当時の無謀な政策が正当化される理由には当然ならない。
名前を奪われる側の立場に立って考えればわかりそうなものだが。

さて作品だが、朝鮮の文化に心を惹かれる日本人青年の苦悩と、名家の当主を演じたチュ・ソンテの静かな内に秘めた演技が印象的だ。
あらすじは原作にほぼ忠実で、大きな時代の流れに巻き込まれる個人の、民族や文化に対する誇りが見事に描かれている。
あの時期の朝鮮・日本をきわめて冷静な目で描いていることも含め、70年代韓国映画の傑作のひとつだと思う。

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