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黒い潮(1954)

メディア映画
上映時間113分
製作国日本
公開情報劇場公開(日活)
初公開年月1954/08/31
ジャンルドラマ/サスペンス

【ユーザー評価】
投票数合計平均点
19 9.00
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【ユーザーコメント】
投稿者:黒美君彦投稿日:2012-09-02 13:17:56
【ネタバレ注意】

<あらすじ>毎朝新開社の社会部デスク速水卓夫(山村聰)は、警視庁詰めの筧記者(河野秋武)から行方不明になっていた秋山国鉄総裁が、轢死体で発見されたという一報をうけた。この事件の担当デスクとなった速水は敢えて各紙が競うように「他殺説」に傾くなか、「事実を積み重ねた客観報道を」という立場を貫き、社内では厳しい立場に置かれたが、山名部長(滝沢修)は速水に理解を示した。やがて東野村記者(信欣三)と筧が、「捜査本部が『自殺説』発表する」という特ダネをつかみ、紙面のトップを飾るが…。

1949年の国鉄総裁下山定則が轢死体で見つかった「下山事件」に材をとった井上靖の小説の映画化。事件そのものの真相を追う、というのではなく、その事件の位置づけをめぐって信念を貫こうとして壁にぶつかる新聞記者を主人公に据えた社会派の作品。
モデルは毎日新聞の平正一氏(1905〜67)。
事件は今も陰謀説が囁かれ、真相は明らかになっていない。労働運動が激烈を極めるなか、GHQは日本の共産化に警戒を強め、共産党員による数々のテロ事件をでっち上げて弱体化を図ったというのがほぼ定説となっている(真相は明らかにされていないが…)。
この場合「他殺説」に立てば、「職員大量解雇の報復としての暗殺」という図式が成立するので、体制側には有利だ。「自殺説」で終わらせてはどうも面白くない。
さらに一般読者は派手な見出しや紙面の「他殺」に惹かれてしまう。
「事実を書けばいいんだ」と速水は力説するが、「もっと方向性をはっきりすべきだ」と上司も部下も主張する。

この作品に描かれているのは、マス(大衆)を対象にしたメディアの抱えるジレンマだ。
マスが望んでいる記事を書けば紙面は売れる。だがそれは時として事実を軽んじることにつながり、さまざまな思惑に利用されないとも限らない。
戦中の紙面を見ればわかることだ。世の中が好戦的になればなるほど、反戦的、厭戦的な記事は書けなくなる。批判的なことを書けば売れなくなり、叩かれる。そこに国家が絡んでくればがんじがらめにされてしまう。
ことほど左様に大多数が支持する事柄が正しいとは限らない。「民意」などという浮わついた観念が絶対正義である保証はどこにもない。
そんなジレンマを、監督の山村聰は丹念に描いてみせる。

木村威夫の美術が素晴らしい。真夏の新聞社のフロアを見事に再現している。
学究の道をきわめるために野に下った孤高の学者佐竹雨山(東野英治郎)のほか、速水に思いを寄せるその娘で戦争未亡人の景子(津島恵子)、新聞社で庶務を担当する節ちゃんこと伊庭節子(左幸子)といった脇役もいいが、やはりこの作品では新聞記者の群像がいい。

速水が事実にこだわるのは、16年前に妻が流行歌手と情死を遂げ、世間の好奇の目が事実を無視した“黒い潮”として押し寄せてきた体験があるからだ…というのは少々無理がある設定のような気がするが、全体としてはよく出来た作品だと思う。1950年代の東京の風景もいい。

モデルとなった平正一氏は、作品中の速水(博多支局に異動させられる)同様に熊本支局に異動させられたとか。終生下山事件を追ったが、60代の若さで世を去っている。

投稿者:山田 明生投稿日:2003-11-10 23:44:59
山村聡と言えば私の子供時代の「ただいま11人」というテレビドラマのいいお父さん役のイメージが強かったが、監督もやっていたというのは知っていた。今回初めて彼の監督作品を見たが、戦後の世相が活写されており歴史的な資料としても見ごたえ十分であった。下山事件を題材としており、国鉄の3万人のリストラなど、戦後の混迷する時代をまるごと捉えており、まるで自分がその時代のその場に生きているかのようなものすごい時代の熱気を感じるのである。皆必死に生きている感じが伝わってくるのである。時代が経過するにつれ、この映画の評価が高まることを私は期待する。
小津安二郎の映画は普遍的な人間や家庭の姿や日本人の美意識を映し出し世界的な評価を得ているが、「黒い潮」は半世紀前の日本の社会を映し出している点で、尽きせぬ魅力がある傑作である。映画を芸術的な面だけで評価するのではなく、歴史的な資料としての評価があってもいいのではないか。勿論この映画はフィクションで記録映画ではないが、下山事件をなぞっており、この事件を深く考える機会を与えてくれる。現在の日本で下山事件のようなミステリーは発生するであろうか?多分発生し得ないと思う。勿論警察が優秀になっているであろうし、三権分立も大分進歩してきた。マスコミもあんまりいい加減なことは書けなくなってきた。でもこのような過去の歴史があったから、現在の我々の社会があるのだ。どちらがいいだろう。勿論今のほうがいい。が、しかし、今の社会は何故こんな混迷しているのであろう?
その答えがこの映画の中にあると思うのである。
それは真実を追究しようとする人々の猛烈な意識である。現在の日本人は皆、この真実を追究しようとする意識がおしなべて希薄になってきているのではないか?もっと平たく言おう。何が気高い精神なのか、という思索が希薄になってきているのではないか?何故希薄になるのか?それは社会や法律やマスコミが機械的に指示してくれるので何が気高い行為か自分で思索する訓練を受けていないからだと思う。いきおい些細な功利で意思決定する輩が多くなる。
唯一この映画で残念な点をあげたい。この映画(あるいは原作?)は自殺説の立場を取っているが、何故目撃者を馬鹿扱いして無視したのだろう?このような目撃者と名乗る男が実際にいたかどうか私は知らないが、それにしてもこの馬鹿男の描き方はなんなの?という感じである。馬鹿なら馬鹿を正確に立証しなければならない。その部分が完全に欠如していて腹立たしい。
【受賞履歴】
(■=受賞、□=ノミネート)
■ 助演男優賞東野英治郎 「勲章」に対しても
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