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「粘土のお面」より かあちゃん(1961)

メディア映画
上映時間88分
製作国日本
初公開年月1961/03/15
ジャンルファミリー/ドラマ
「粘土のお面」より かあちゃん [DVD]
参考価格:¥ 5,184
USED価格:¥ 5,365
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【クレジット】
監督:中川信夫
企画:柴田万三
原作:豊田正子
「粘土のお面」
脚本:館岡謙之助
撮影:平野好美
美術:黒沢治安
音楽:木下忠司
助監督:柴田吉太郎
出演:伊藤雄之助豊田由五郎
望月優子女房お雪
二木てるみ正子
津沢彰秀稔坊
北沢典子木村芳子
浜野桂子金谷トシエ
河合英二郎その父親
花岡菊子その母親
鶴丸睦彦山崎
西朱実その女房
黒丸良圭吉
藤村昌子その母親
林寛池戸さん
田崎潤かべ屋
加藤欣子おかみさん
宇津井健巡査
川部修詩団子屋
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【ユーザーコメント】
投稿者:はこまる投稿日:2008-03-14 00:08:52
〈ものがたり〉
昭和24年の大晦日。向島の貧乏長屋に暮らすお人好しのブリキ職人豊田由五郎(伊藤)とその妻お雪(望月)は、まだ幼い娘正子(二木)と息子の稔坊(津沢)を抱え、年越しの餅代にも事欠く貧乏生活を送っていた。
今夜も嫌がる正子に嘘をつかせ得意先からお金を借りて来たばかり。

「おい父ちゃん。この餅は誰のおかげで喰えんのかよく考えて喰った方がいいぞ。布団の中で狸寝入りしてたって餅は降ってこないんだからな」

「へへっ、すまねぇ、すまねぇ」

「すまねぇ、すまねぇって歯出して笑っていりゃそれでいいんだから、オヤジっていう役は楽なもんだよ」

三軒長屋の左右を見渡せば、右には病に伏せる妻を抱え、出るのは泣き言ばかりのどん底親子や、左には浅草のキャバレーで働く娘の仕送りで暮らしながら雑巾をひたすら作り続ける夫婦。豊田家は生活力に欠けた主を持ち、極貧とも言える生活だったが、たくましい妻お雪の明るい器量と素直に育っていた正子のおかげで、つらいながらもなんとかその日暮らしを続けていた。

「なぁ、昔おらと見合いした時のこと忘れやしねぇだろうな。腕に職あるブリキ屋です。米には不自由させません。そう言うから行ってみたらなんだい。米屋の二階の四畳半に間借りしてただけじゃねぇか」

新年早々、なんとか浦和での仕事にありついた由五郎だったが、またもや騙されてただ働き。唯一の仕事道具だった自転車も盗まれ電気もストップ。豊田家はいよいよ崖っぷちへと追い詰められてゆく・・・。

紀伊國屋書店発売の新東宝シリーズでの鑑賞。中川信夫83本目の作品であり、同社が倒産直前に製作した作品です。
また、本作は映画を志した若き日にマキノや伊藤、そして小津を愛し、山上伊太郎に洗礼を受けた中川信夫が自ら映画化権を取得した作品であり、見事に代表作としてものにしている映画です。カメラは殆ど据えっぱなしでありタイトに徹した中川演出ですが、これは相当達者です。そして、派手さはないものの繊細な演出で全体をまとめあげておりブレがありません。
また、隅田川を望む貧乏長屋のロケセットなどは実に丁寧に作られており空間処理も流石、劇中何度となく登場する橋をめぐるショットの美しさには思わず息を呑むばかりです。美術は『東海道四谷怪談』の黒沢治安。

貧困をめぐる描写が続きますがそこにシニカルな視線は存在せず、キャストの名演もありユーモアに溢れています。
女房が金策に走り回っているというのに、自分は河原の土手で昼寝して自転車を盗まれた由五郎。帰宅していたお雪にそれを告げるシーンがあります。その会話を「あぁまたか・・・」といった風情で黙って聞き流しながら、母親が買って来た今川焼きにムシャムシャとかぶりつく正子の表情などは絶品です。

新東宝時代の中川作品と言えば、やはりあまりにも一連の大蔵際物路線のイメージが強烈であり、実際映画史的にも名高いのですが、本作の作りはそれとは対極。映画の中に脈々と流れる人間賛歌は、誰も恨まずに映画人生を全うした中川自身が重なり、素直に見る者の胸を打ちます。

そして、ラストで「ラ・マルセイユ」を口ずさむ少女の姿。苦難の時代を共に過ごしながらも、仲間と様々な映画を新東宝で作り続けた中川自身の姿がここでも重なり実に感動的です。橋の上でもう一人の自分を見つめる少女の姿はお互いに映画に情熱を注いだ新東宝の同胞に対する中川の暖かい眼差しそのものなのです。

本作が撮影されたのは新東宝がいよいよ終焉を迎えようとする1961年の年明けからであり公開は3月。同社はその年の5月には製作を中止し8月には配給も停止。栄華を極めた映画産業自体もここから一気に転落して行きますから、本作はまさに時代の終わりと映画の内容そのものが一つになった作品と言えるのではないでしょうか。こういった陽の当たらない隠れた名作をソフト化してくれた紀伊國屋さんに感謝!

なお、恒例の解説リーフレットの内容ですが全48ページ。磯田勉氏による「落日に咲く一輪の花」(『粘土のお面より かあちゃん』解題)。北沢典子(先生役)・津沢彰秀(稔坊役)インタビュー(インタビュアー:木全公彦、磯田勉)。映画監督鈴木健介氏による「『粘土のお面より かあちゃん』から見えてくる中川信夫の人間への眼差しと職人技」。そして木全公彦氏による詳細なスタッフ&キャストのプロフィールとフィルモグラフィーが納められています。
ハイビジョン・デジタル・ニューマスターと銘打った画質は満足できるレベル。もちろん新東宝スコープサイズです。
【ソフト】
  商品名  発売日  税抜価格  
 【DVD】「粘土のお面」より かあちゃん2007/11/22\4,800amazon.co.jpへ
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