切腹(1962)
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侍が自ら死を選ぶ時に行なうものだ。
たとえそれが浪人だろうとも殿様だろうとも死にたいときは切腹するのである。商人や農民が切腹することは無い。侍の特権である。
だから、切腹という行為が侍のアイデンティティにもつながるのだ。最後くらい侍らしく死にたい、と。
切腹という行為は常人には耐えられない。鋭利な刃物ならば簡単に刺せると思われるだろうが、おそらくそうではない。一度、定規かなにかを両手でお腹に押し当ててみればわかる。必ず腹筋を使わなければならない。そうなると刃を突き立てるのが困難になる。ましてや横に引き裂く時にはかなり腹筋に力を入れなければならない。身体を鍛えている人ならばなおさら筋肉が刃を押しとどめ動かなくなるだろう。そこから刃を進めるにはさらに腹筋に力を込めねばならない。いや、それ以前に刃を差し入れた時点で激痛で気絶するかな。
いや、おそらくなかなか刃を突き立てることが出来ず何度も刺すことになり、お腹が傷だらけになるのだろう。刃を数センチ入れることすらできずに。
切腹はなぜ横に切り裂くのか?それは、内蔵を切り裂く、かき回すという意図があるのだろう。行為者は叫ぶ「早く介錯を!」。その方が楽になれるからだ。そこまで考えると、切腹というものがいかに狂気を孕んでいるかがわかる。
竹光で、古式に則り十字に、それを成すまで介錯は許さず。
序盤は喜劇の要素を含みつつ、武士らしさを騙り金品にありつこうとする愚か者を武家の名門が戒める図式で進められる。しかし、物語が進むにつれ真の図式が立ち上がってくる。侍として、父として、人間として。徐々にその姿があらわになる。これは告発のドラマである。自分たちこそが正義だと信じていた男たちは被告人となり、告発者の言葉に戦慄する。
仲代、丹波、俳優陣がみなすばらしい。
見事なショットの連続。緊張感。冷徹なまでの厳格な画面。傑作。
美術、照明、撮影、音楽・・・いづれも重厚この上ない仕上がりの時代劇。(サントラ持ってます)
この重々しさは、好きな人には堪らんね。それでいてしっかり娯楽としてまとめ上げた手腕、最後まで目が離せません。
なにしろ橋本忍の脚本が冴えまくってる!まるで法廷サスペンスのような緊迫感、暴かれる真相は人間存在の根源に迫る!井伊家江戸家老と対峙する謎の浪人・・・。
三國が抜群に上手い!丹波も素晴らしい。そして小林昭二、カッコイイ(涙)!!
海外での受賞もダテじゃない、これぞ“時代劇”の異端にして正統。正座して観るべし。
沢潟彦九郎・・・これで、おもだか・ひこくろう、って読むのか?
最後の乱闘シーンはやめて欲しかった。派手なチャンバラシーンでクライマックスにするのではなく、最後までドラマで見せて欲しかった。
でした。アメリカの知人友人はこぞってこの映画を絶賛した。アリの入る
すき間もない緻密なシナリオ。アメリカが血眼になって「原作」を日本に
探し回っている昨今、その理由がよくわかる。
挑発的なのは、武士道をたくましく描いているようで、実はめちゃくちゃ
に非難しているところ。この話をウソっぽいと感じる御仁は、あまりにも
講談時代劇映画を見すぎているのではないか。武士に二言はない、と言い
つつ主君を見放して別の主君を見つけようとするのは、あの激動の戦国を
生き抜いた藤堂高虎一人ではないはずだ。
天下泰平になればなおさらのこと。事実上、サムライの仕事はないわけだ。
もののふも人の子、背に腹はかえられぬ。霞を食って生きていけるはずも
なく、あれこれの「知恵」を働かすのは当然のこと。武士道に超人的な潔
癖さを求めている人には気の毒だが、アメリカでは「座して死を待つより
は、一層のこと腹かっさばいてあい果てたい」といいつつ金銭にありつく
「人間味」が大いにうけた。当然、意地になっても詰腹を切らせようとす
る伊井家の家中を感情的に敵視する。話が進行するうち、観客の感情のう
ねりは最高潮に達し、最後には歓声でもって主演の仲代の勇姿を迎える。
まるで、映画が観客の声援により、インプロヴァイズされたような瞬間で
あった。感動した。
この映画は語り尽くせないが、音楽を担当した武満徹氏の功績も忘れられ
ない。
張り詰めた緊張感が全編を支配し、重みのある台詞、役者(全員名演技)の鋭い眼光が眼に焼きつく。
あまりに緻密な脚本とシネマスコープを用いた画面構成は完璧としか言いようがない。
ラストの殺陣は時代劇だから仕方ないにしても、これ以上のカタルシスはないだろう。
重厚感溢れる圧倒的リアリズムに乾杯。
見て良かった。9点
60年代の日本映画の5本の指に入る傑作だろう。残りは『砂の女』『用心棒』『殺しの烙印』『日本昆虫記』。
まず滝口康彦氏の原作がこの題材をうまく使っています。
その原作を橋本忍が見事にシナリオを仕立てています。
シナリオライターの手本となりますね。
そして、小林正樹監督とスタッフ、キャストが格調高く、
丁寧な描写で物語を見事に描いています。
パターン化された時代劇に見慣れてしまった方は
こういう時代劇もあるのだということを知ってもらいたいですね。
ところが、わたしにとって巻戻すという行為もこの映画には必要で、武士のセリフまわしが聞き慣れない言葉なので、何度も巻戻しては確認しました。この映画を自分がどの程度理解しているかは不明です(クスンクスン・・・・)。でもせっかくなのでわかる範囲で感想を。
仲代達也はほとんど首ひとつ動かすことなく(後半の乱闘は別)、怨念と憎悪を身体中に滲み出す名演技。切腹前、ただ死にするつもりは最初からなく、与太話をひとつと言いながら回想シーンを入れていく様は秀逸。三國と仲代の二人の駆引きとも言える会話劇が素晴らしい。そして、あのカメラワーク。ゆっくりと遠目で撮りながら、時には斜めから下から。人、物、風景が画面におさまるバランスが絶妙。建物や無数の墓石、遠くにそびえる卒塔婆?灯篭?(決闘のシーンで)など、ワンシーンワンシーンを記憶に残させる、ごくごくシンプルなカメラの動き。鬼気迫りながらも静の佇まいを残すという映像力はすごい。このところに一番感銘を受けました。
昔の日本の映画は本当に素晴らしかったのね。
妻子を抱え、食うに困った挙げ句に「召し抱えないと切腹するぞ」なんて論理は通りません。これじゃヤクザより性質が悪い。
武士が腹を切るのは忠義からで、主君への思いがあればこそです。 言葉尻を取られて腹を切らされるなんて、どう考えたっておかしい。浪人した時点で主君は居ないし、何で腹を切るのかさっぱり分からない。
時代が左に大きく向いた時代だったようですね。「赤穂浪士の討ち入り」を茶化していると思います。切腹で始まり仇討ちに終わるわけですから。
この映画は、出だしが思いっきり詭弁です。でもその詭弁に気付かなければ、クールでニヒルな時代劇に見えることでしょう。
果たして「ラストサムライ」が受ける時代に、この詭弁が通用するかどうかですね。
丹波との戦いも◎ 見終わると疲れます。
それだけで娯楽として大きなプラスを生んでいる。
時代劇という舞台設定を、その特色を、サスペンス、ドラマ、アクションなどの広い分野に完璧に絡ませて、利用した着想が大変に白眉。飽きが来ない。
娯楽性を十分に残しながらもカンヌを受賞した名作だが、
物語の着想、雰囲気作りの巧妙さに比べると、最も重要な人間描写、特にヒューマニズムの描写が多少通俗気味で、今一つ突き抜けない。
その点で演技にもまだ改良の余地があった。
"面白い"もいろいろな意味があるが、娯楽映画として、形式主義へのアンチテーゼとして、ストーリ展開、各役者の演技、等々において傑作とも云える"面白さ"である。
邦画も時代劇も捨てたものではありませんね。 これは人に勧める価値のある名画。
ただし、クライマックスのチャンバラシーンが不用意に長いような。あれはあれですごい見せ場なんですけど…。重い映画。とにかくおもしろかったです。
↓師匠のHP(新作ビデオ、DVD情報アリ)http://www.cinemanc.com/