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善き人のためのソナタ(2006)

DAS LEBEN DER ANDEREN
THE LIVES OF OTHERS

メディア映画
上映時間138分
製作国ドイツ
公開情報劇場公開(アルバトロス・フィルム)
初公開年月2007/02/10
ジャンルドラマ
この曲を本気で聴いた者は、
悪人になれない
善き人のためのソナタ [Blu-ray]
参考価格:¥ 2,500
価格:¥ 8,800
USED価格:¥ 3,994
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善き人のためのソナタ

【解説】
 旧東ドイツで反体制派への監視を大規模に行っていた秘密警察“シュタージ”。本作はこのシュタージ側の人間を主人公に、統一後も旧東ドイツ市民の心に深く影を落とす“監視国家”の実態を明らかにするとともに、芸術家の監視を命じられた主人公が図らずも監視対象の考え方や生き方に影響を受け、新たな人生に目覚めてしまう姿を静謐なタッチでリアルに描き出す感動のヒューマン・ドラマ。主演は自身も監視された過去を持つ東ドイツ出身のウルリッヒ・ミューエ。監督はこれが長編第1作目となる弱冠33歳の新鋭フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。
 1984年、壁崩壊前の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓う真面目で優秀な男。ある日彼は、反体制的疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視し、反体制の証拠を掴むよう命じられる。さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、音楽や文学を語り合い、深く愛し合う彼らの世界にヴィースラーは知らず知らずのうちに共鳴していくのだった。そして、ドライマンがピアノで弾いた“善き人のためのソナタ”という曲を耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられてしまうのだったが…。
<allcinema>
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【ユーザー評価】
投票数合計平均点
37340 9.19
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【ユーザーコメント】
投稿者:ロッテンクロッチ投稿日:2015-09-04 05:26:18
あの女はいやですね。
投稿者:2時間はいい投稿日:2013-05-13 17:01:41
やっと2013年になって「善き人のためのソナタ」を観ました。
パズルを解くような面白さですね。ドイツ文学を数学で解くみたいな典型的な作品の一つだと思います。事実は小説よりも奇なりというのでまず調べてみると この映画は実話ではなく 実際に東ドイツであった話をもとに書かれたようです。ということで 直線的にこう理解し何度も再生して楽しみました。

政治家中心でなら (レーニン) ヘムプフ ホーネッカー ゴルバチョフ コール
作家及び詩人が中心でなら ブレヒト、(ハイネ)、アレクサンドル・ソルジェニーツィン

映画のタイトル中心でなら 
ドイツ語タイトルは “Das Leben der Anderen” (直訳が他人の人生、生活)。 尋問と講義のシーンの区切りにこのタイトルが使われています。A点ヴィースラーとB点ドライマンですね。
部屋の装飾や食べ物でも二人の違いは明らか。 
悲しいですね、ヴィースラーは自分の生活よりも他人の生活にしか興味がないらしいと単純に理解しましょう。というのは 監視される側と監視する側の生活を対比させている説明にしたいのですが もしかして壁崩壊後のヴェッシーとオッシーの違いがすでにあらわれているというのでしょうか?これいろいろ考え始めるとややこしくなります。やめておきます。

この2点の間にイェルスカ これは一番太い直線です。
イェルスカ / ブレヒト / ドライマン / ヴィースラー 交差させていきます。
他ブレヒト効果も考えましたが ブレヒトの詩の雲の表現とそれに似た愛もしくは恋人 ヴィースラーの思い出を重ねるべきでしょうか?

主人公のヴィースラー中心で解いていきます。残念ながら私は 何故ドライマンを監視したいと言い出したのかこれが想像でしかわからず これだけが難解で ヘムプフ大臣との三角関係を予期したからでしょうか。
心の盾がドライマンにあったはずなのにこの盾が大臣へとそして同志へと移っていくところがよくわかります。
自己防衛もうまくいくのですね。そしてタイプライターが平行するんですよ。そして初めの警告に戻ってしまう。

まだほかに楽しみ方はありますがやめておきます。もしくは下記を参照してください。
 
それから映画を観る人側へのメッセージがかなりあるものと思います。
例えばその年は日本はベビーブームの年で 私は「こんにちは赤ちゃん」のメロディーが頭に浮かび
他ならナチ時代のドイツがワーグナー / 映画では (レーニンと)ベートーベン 

正しく理解したかどうかとなると力不足です。


邦題を覚えて邦題検索でレンタルし映画を鑑賞し始めたので かなり混乱することになりました。
イェルスカからドライマンへのプレゼントの楽譜のタイトル “Sonate vom Guten Menschen”は 邦題「善き人のためのソナタ」の直訳ではありません。「のための」と 「の」や「による」の違いにあり ソナタの所有者が異なります。しかも始めのドイツ語のタイトルに気付かずに小見出しだと勘違い。ソナタをヴィースラーと観客のためにと観てしまう。(「のために」という方向性のあるものとして)この場合ソナタ効果が中心になります。

ネタバレというほどネタをばらしてないと思う

終わり
投稿者:jb投稿日:2013-04-03 09:34:36
弱いところもあるけど良かった。
投稿者:gapper投稿日:2012-08-16 22:15:38
 推定制作費200万ドル、総収益約7,700万ドル(2009)。

 近年の作品にはありがちだが、ファースト・タイトルが無い。
 それだけでなく"DAS LEBEN DER ANDEREN"というドイツ語題名も"THE LIVES OF OTHERS"の英語題名も見当たらなかった。
 ただ、ラストに本が写され"Die Sonate vom Guten Menschen"という邦題と同じ意味の題名が書かれている。

 映画の原題は、”他人の命”という意味でもちろん作品の内容にあっている。
 本の題名の方は、全てを知ったドライマン(セバスチャン・コッホ)がヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)に曲を捧げたという事であろう。
 要するに映画の作品中の一つの演出だ。
 それを邦題とするのは、如何にもキャッチーで昔ながらの邦題の付け方のように思う。

 どうもこの辺の掛け違いのような部分が重く真摯なテーマを扱った作品なのに、作為的な軽さを感じてしまった。
 ヴィースラー大尉とドライマンとどちらが主人公か判別もつかないし、両主演であるなら対比を鮮烈にすべきだと思うがクリスタ(マルティナ・ゲデック)も絡み焦点がぼやけ気味。

 本作品は、十分レベルの高い作品ではある。
 ただ、ベルリンの壁崩壊間際まで社会主義は民衆を苦しみ続けていたということになるのだが、どうもその辺もおかしく感じる。
 東ドイツの人々にも崩壊の前兆は伝わっていたはずだが、それが無いのは余りにも違和感を感じる。
http://gapper.web.fc2.com/
投稿者:cappye投稿日:2012-05-16 14:06:42
【ネタバレ注意】

 見終わった後、何とも言えない気持ちで体が動かなかった。それから疑問に思った部分を見返してみたら、今度は体は火照ってるんだけど鳥肌が立ってるっていう妙な状態になった。どこか不思議で、奥深い作品だと思う。

 主人公が任務に背いてまで劇作家を庇った動機が弱いというのは、初め私もそう思った。バカな私は、主人公は社会主義にそこまで心酔していないのかなと思ったんだけど、そうではない。寧ろ逆で、彼は最初から最後まで純粋に社会主義者であり、だからこそ大臣が権力で女優を手にしたり、何でもいいから証拠を挙げてその恋人を排除しようとしたりするような社会主義の腐敗が許せず、この体制を変えようとする劇作家ドライマンの信念に共鳴していくのである。「シンドラーのリスト」のシンドラーが、人としての優しさからユダヤ人を救った(私は勝手にそう思っているのだが)のに対し、この主人公は自らの信念から劇作家を助けようとしたのだと思う。

 加えて、主人公は舞台や芸術に対する理解もあった(ここが主人公の相棒のブルビッツ部長とは対照的なところであり、「戦場のピアニスト」に出てきた軍人と似ている)。だから、「善き人のためのソナタ」を聴いて胸を打たれもするし、舞台に対する国家の干渉に苦しむ女優クリスタに優しさを見せもする。本当に彼女のファンだったかはわからないが、ドライマンもクリスタも救おうとしたのだ。国家の腐敗を暴き、芸術を守るために。

 そんな主人公の努力が報われたラストは、実に味わい深い。自分が国家に監視されていたこと、自分のせいで自殺したと思っていた恋人が裏切っていたこと、密かに自分を助けてくれた人がいたことを知ったドライマンが主人公に会いに行くのだが、何故か彼は話しかけない。黙々と仕事をする主人公の後姿から、彼は主人公の為人をどことなく感じたのかもしれない。この人は自分をというよりは、自分が書くことを助けてくれたのかもしれないと。だからこそ彼は書くことでその思いに応えようとし、完成した小説から主人公もその思いを受け取る。寡黙な国家公務員と劇作家の男が織りなすラストとしてこれ以上のものはないだろう。

 最後に、「善き人」とはどういう人だろうか。危険を顧みず、信念を貫いた主人公とドライマンは「善き人」だったということだろう。クリスタはどうか。薬物に手を出し、恋人を裏切ってしまったが、良心が残っていたからこそ最後に死を選んだのだと信じたい。

 他にも色々なことを考えさせられた。深みのある素晴らしい作品だと思う。

 

投稿者:ringoringo投稿日:2011-06-05 06:06:16
心に刺さる感じがします。淡々とスパイ活動をする主人公に入り込んじゃいました。
投稿者:ちゃぷりん投稿日:2011-03-01 04:38:41
他の人も書いてるように、主役がなぜ劇作家を庇ったのかがよく解らない。西側の書物や音楽に触れて感動したからか?(クラシック音楽の使い方は「戦場のピアニスト」の方が遥かに上手かった)。あとこのストーリーなら二時間以内に纏める事は出来たと思う(私は二回休憩を入れた)。星二つ半。
投稿者:stevezi投稿日:2011-01-25 00:49:57
主人公が任務に背いてあそこまでしてしまう動機が弱い。
投稿者:kinenchyu投稿日:2010-10-11 18:51:48
東西ドイツ分裂の闇の部分をちょっと異色なタッチで描いた作品。
投稿者:いまそのとき投稿日:2010-03-22 22:55:30
ハンガリーのサボー作品を思い出しました。非人間的なシュタージを次第に疑問を感じる主人公。盗聴することで知った自由の世界。
体制の中、愛人や友人にも裏切られる。そんなことが普通にあったのでしょう。久しぶりにいいヨーロッパ映画に出会いました。マルティナ・ゲデックどこかで見たなと調べたら「マーサの幸せレシピ」でした。マーサの・・もいい映画でしたね。この映画の彼女、あまりに悲しい。最後まで会わない作家と主人公。崇高な人間愛を描き切りました。
投稿者:nedved投稿日:2010-01-03 23:17:24
ウルリッヒ・ミューエ
投稿者:QUNIO投稿日:2009-12-06 10:32:43
なんとなく監督の「思い入れ」は伝わったが、次第に劇作家に同情していく大尉の描写が曖昧なので感動的なはずのラストが何故か作為的に思えてしまう。奥さんが自殺するとこまではいい調子だったがその後が無駄に長い。「数年後」「数年後」「数年後」って3回ぐらい終わりがあるのはどうかと。いちいち引っ張りすぎなんだよ。(字幕が無かったら余計に分からない。)

結局情けに絆された大尉が善行するというまんま『シンドラーのリスト』みたいな展開になっていった。俺はシンドラーのほうがまだ説得力あると思うけどね。だってあれは大量虐殺という背景がちゃんと描かれていたし、主人公が赤い服を着た少女を助けられなかったというトラウマが映像で暗示されていたから「必然的」展開だと感じたが、この映画の場合は明らかに違う。どっちかというと「不自然」な成り行きだろう。肝心な部分をちゃんと説明してこそ成立するラストなのに。

ウルリッヒ・ミューエは若き日のブルーノ・ガンツ似で演技は素晴らしい。『ファニーゲーム』で足折られる父ちゃんも良かったが、本作ではさらに磨きが掛かっていた。
投稿者:AZ投稿日:2009-09-22 12:40:40
オチがいい
ウルリッヒミューエがいい味出してる
投稿者:uptail投稿日:2009-09-11 09:24:22
ウルリッヒ・ミューエ
投稿者:ジョナサン投稿日:2009-01-11 16:10:48
 心が震えた。東独の戦後の独裁体制時代において、国家の監視体制の恐ろしさ、そこにおかれる人の弱さ。その状態においてでさえ、良心のもとに抵抗する人の強さ。この映画自体が今の時代に生きる私たちのためのソナタであろう。
 任務が終了してからのラストまでの伏線がまた素晴らしい。過去の痛みと未来への希望をも映し出し、ドイツ映画人の良心・情熱を結集させた本当に素晴らしい作品だ。
投稿者:クリモフ投稿日:2008-10-18 02:41:13
アカデミー外国語映画賞受賞や、世間で評価の高いドイツ映画、しかも冷戦時の東ドイツが舞台ということで真面目で重い映画なんだろうと勝手に思っていましたが、割とサクサク観れる。
確かに真面目なんだけど、必要以上に重くなっていませんね。それは恐らく社会派という体裁をとっているものの人間ドラマの比重が高いからなんだと思います。
終盤の展開が秀逸。ドイツの苦い歴史を見つめながらも、数奇な運命で繋がった二人の人間を描いており映画的に満足できるものとなっている。しかもこの手の映画のありがちな単純に反省だの批判だのではなく、最後の元大臣が投げかける問題提起や、未来への目線も忘れていません。日本じゃこうはできないだろうな。
良い映画だと思います。名作の評価に納得。
投稿者:ローランド投稿日:2008-06-18 22:05:14
 『この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない』との
キャッチコピーほどにはこのソナタはインパクトのある曲とは思えな
く、それが↓の何人かのひとも指摘しているヴィースラー大尉の
心変わりの動機がいまひとつ弱すぎるとの印象を強くしてしまった
ようだけど、始めからこの善人顔で悪人であるはずはないとの気
がしていたせいか、観ているときにはそう違和感はなく、話運びに
破綻のないよくできた物語として鑑賞しました。エンディングも
良かったですね。

   冒頭にあった、国家保安省幹部養成なのか大学の講義に
あった被疑者取調べのテクニック、『時間が経過すると無実の囚人
はいら立ってくる。不当な扱いに対して大声で怒り出す』や『罪を犯
した囚人は泣き出す。尋問の理由を知っているからだ』に、そうか、
怒ったほうがよいのか、と貴重な教えを受けました。 何らかの
尋問を受けるほどの甲斐性のある人間でもないのに(笑)。 

   こういう舞台劇にできそうな映画だと家庭でのDVD鑑賞でも
そう価値は落ちない。しばらくはレンタルDVD頼りにして映画館に
行くのはやめよう。 鼻曲げたもんね。 楽しみに楽しみにしてい
た「イースタン・プロミス」、県内どこの館も上映しないのでありま
すよ!。

   開館当初は志し高くマイナーな作品も上映してくれていた
ところも、徐々に俗に堕ちてゆく。でもその志の高い頃、なんせ
日曜日の午後だっていうのに観客が4人しかいないなんてことが
あるのだから、それもしょうがないのかね。 自由主義経済の負の
部分、志が高くあろうが俗であろうが、それが何であれ消費の
主役にターゲットを合わせなければいけないのだろうけど、その
犲臾鬮瓩問題だ・・・・。 
投稿者:vegirama投稿日:2008-04-07 12:54:49
違和感やツッコミが無く、よくできた映画だ。
シンドラーのリストを思い出す感じだった。ラストは「さぁどうする」と期待待ちしたが、いろいろな意味でニンヤリとさせられた。

投稿者:トウショウファルコ投稿日:2008-03-30 08:07:42
難しい映画を想像していたんですが、観易かったです。
ニュースや記事では伝わらない世界を感じさせてくれます。
こういう映画を観ると映画好きも、結構贅沢な趣味かもしれませんね。

聞き耳をたてて観察し気付いていく男と、
その男を、過去にさかのぼり検証していくことになる男
交差することはなくても互いの人格が見えている繋がり。
一生引きずっていくだろう忘れられない女。

やぁ・・・いい顔しますねぇ〜 すべてを物語ってる。
作家らしい感謝の表し方、納得しますです。
いい映画でした。
投稿者:BoyToy投稿日:2008-03-27 19:01:15
よかった、ラスト近くはジワジワ鳥肌、かすかに涙が滲んだようにも思う。138分あったらしいがもう少し長くてもいいくらい。
感情なんかすでに持ってなさそうな眼つきのヴィースラーが監視体制や反体制派の弾圧に疑問を持ち出し、重罪と分かりながら嘘の報告をするに至る過程があっさりしてたような。が、後で思い出せばあぁあぁとはなる。
投稿者:castiron投稿日:2008-03-06 16:06:39
【ネタバレ注意】

二人の主人公は「人を愛すること」「社会主義」を何よりも尊いと感じている。
それがゆえにどちらもその信じるもののために苦しむ。
どちらも結局は裏切られることになり「孤独」に追い込まれる。
ラストでドライマンは自らの人生を賭してまで助けられていたことを知り、
彼に会いに行くがここで初めて監視されていた人間が監視していた人間を監視する。
ヴィスラーが直接ドライマンに声をかけられなかったようにドライマンもまた声がかけられない。
そこで、ドライマンはヴィスラーが自らの職権を利用して彼を助けようとしたように自らの筆で彼を助けようとする。
「HGW XX/7に捧げる」
ここでようやく孤独だった主人公たちの絆を確認する。
素直に良い映画だと思います。

投稿者:sabu投稿日:2008-02-29 01:38:34
【ネタバレ注意】

ただ1つの欠点を除いてほぼパーフェクトな作品。
まだドイツが東西に分かれていた時代の東ベルリンを舞台に、一人の監視員の心境の変化を描く、正直なんてことのないドラマだが、それぞれのシーンに深みがありなんともいえない美麗な雰囲気を全編に渡り保つことが出来ている。

主要シーンのほとんどは、監視対象であるドライマンの部屋と、その上階の監視部屋で展開される。前者はとても華々しく、明るい光で彩られ、部屋ではドライマンとその恋人であるクリスタが等身大の愛を育みあっている。
そして逆に後者では、今にも饐えた臭いが漂ってきそうな薄暗く殺風景な部屋、緑がかかった暗くて重苦しい室内で主人公がヘッドホンに耳をやり、参謀が行われないかを調査している。
この対となるふたつの部屋の雰囲気作りもさることながら、主人公の滞在する上階の雰囲気が物語が進むにつれて「あまり悪くは無いんじゃないか?」と観客に思わせてしまう手腕が素晴らしい。

あることをきっかけに主人公は監視員という立場でありながら彼らを見守ることに徹する。そこからがこの物語が本当に面白くなってくるところ。
実際に参謀が行われているにも関わらず、上層部に報告しない主人公、しかしそれに薄々勘付き始める上司。この辺りの駆け引きもスリリングで見せ方も実に上手い。
言わずもがな、ラストの一連の展開はうなるような面白さ。淡々と進んでいくスピードがむしろいじらしい。監督が「まあ落ち着け、これからどうなるかゆっくり見せてやるから」と言ってるかのように思える。

冒頭で挙げたただ1つの欠点についてだが、それは主人公の心境が変化する理由にある。シュタージの職員を通じ、今まで散々良心を持った人たちを監房送りにしてきた。それは序盤の一連のシーンでまざまざと明らかになる。序盤の主人公の印象、それは「冷酷」ただひとつ。拷問にも近い取調べを容疑者に強いて、吐かせるまで寝させないという徹底した手法を説明している。
そんな人間が一体どういう過程において自分の良心を見出すのだろうか?これはそんじょそこらの理由じゃ片付けられない。この作品ではピアノの演奏を聞いた辺りから主人公の心境が変わっていく。

「え?それだけ?」という感じが正直なところ。
血も涙も人間がピアノの演奏だけでそんなに変わるものだろうか?

僕は納得できなかった。ここはピアノの演奏を発端にし、少しずつ主人公の心を動かす何かをシーンの中に散りばめていくべきだった。一瞬のことで全てを変えようというのは都合がよすぎる。その他の部分はとても上質なだけあって本当に勿体無い作品だと思う。http://sabuchan0605-id.hp.infoseek.co.jp/

投稿者:ghost-fox投稿日:2008-01-31 23:06:25
秀逸、素直に良い
投稿者:dbma投稿日:2008-01-22 02:40:00
この映画のリメイクを計画中らしい・・・。
http://www.imdb.com/title/tt0405094/board/nest/86497037

「シティ・オブ・エンジェル」みたいになってしまうのだろうか・・・。
投稿者:藤本周平。投稿日:2008-01-14 13:09:12
ラストがとても印象に残りました。自分のために捧げるなんか書かれたら今までの苦労なんて吹き飛びますよ。2007年の中じゃあ1,2を争う優れた作品。
投稿者:りちゃちゃ投稿日:2008-01-02 14:06:44
「戦場のピアニスト」にいい部分が重なってる。ラストは大げさ過ぎずないからジンときた。
投稿者:kath投稿日:2008-01-02 02:47:50
監視社会の恐ろしさ、国家権力の何でも許される実態が生々しかった。ヴィースラーの、最初は単なる冷徹な瞳が、最後はとても誇り高く、印象深かった。タイトルになったソナタをもう少し聞かせてほしかった
投稿者:bond投稿日:2007-12-12 08:44:27
嘘の報告をしタイプまで隠したのか?核心はクリスタに惚れたからではないのか。でも自分が盗聴されてて、その記録あったら驚くはなー。ラストシーンのヴィースラーの瞳の輝きが印象的。
投稿者:irony投稿日:2007-12-11 02:24:48
 あの資料 ぶったまげるよなぁ ベルリンの壁崩壊の少し前のストーリー その時のベストと思われるアクション 何か運命の皮肉と言うか居畳まれない作品でした 映画の醍醐味ここに在り的一本で、ごちそうさまでした。
投稿者:さち投稿日:2007-09-21 22:38:57
良い
投稿者:massa04jp投稿日:2007-08-22 02:15:38
【ネタバレ注意】

如何にも人間臭いドラマが、上質な画像で、上質な音楽に恵まれ、上質な役者たちによって演じられた作品でした。
ラストシーンの献辞と「私のための本だ」という台詞も泣かせますね。
全然関係ないけど、日本映画の夏になるとまたぞろ現れる美化・美化・美化の「特攻モノ」も、この映画のように汚く暗い側からの語り口で作る監督がいて欲しいものです。

投稿者:HWK投稿日:2007-08-01 23:57:51
【ネタバレ注意】

ドイツの狂気というと、悪魔・アドルフ・ヒトラーをすぐに連想するが、
戦後、東ドイツで行われていた真実も強烈であることが本作から分かる。
ヒトラー政権下で、「白ばら」が反体制運動を起こし、処刑されるまでの短い時間を見事に描いた「ゾフィー・ショル〜白ばらの祈り」でもそうだが、そうした体制を壊そうとする勇気ある人物達が出てくるところがドイツのすごさなのかもしれない。
本作では、 芸術家達が反体制を取る訳だが、このドラマでは、その芸術家
(舞台作家とその恋人のが住む)の家を盗聴することを通して心を動かされ
るシュタージ(国家保安省)党員の1人に焦点を当てている。
それだけで、感情移入ができ、いつのまにか、自分がこの党員になって映画に入り込んでいるのだ。
恋人でさえも、保身のためなら裏切る現実。
西独に東独の現状を知らせたい願望。
表現者の自由を国家が捻じ伏せていいものか?という問い。

「この曲を真剣に聞いた者は悪い人間にはなれない」

芸術は、人の心を変える力を持っている。
盗聴する党員が次第に彼等を救うために行う業にドキドキハラハラ。

ラストシーン。
東西が統一され、そして、それから数年ー。
加害者と被害者の和解。この映画を観ていた者は、僅か数秒で涙する。
この結末のータメーが素晴らしい。
この演出・脚本に脱帽だ。ひとひねりがある。
これが2時間半あっても許されるだけの、そしてなくてはならない、
予期せぬフィニッシュ。
人の優しさに、温かさに、舞台作家ならではの御礼に涙する瞬間。
僕は、久々に、「素晴らしい」と心の中で叫んだ。
東ドイツの社会主義体制の狂気な世の中を舞台に、
体制派と反体制派の不可思議な交流を通して、
人の弱さや優しさ、温かさを描いた歴史に残る名作、最高傑作だ。

投稿者:三葉十四郎投稿日:2007-06-21 00:09:55
【ネタバレ注意】

共産圏と言う場所にまだ鉄のカーテンが掛かっていた時分の話ではあるが、東ドイツとは何と冷たい国だったのだろうか、而してどことは言わないが、今でもこういう国、あるだろう。
その80年代の東ドイツ国家保安省の忠実な局員ヴィースラーは上司グルビッツが文化省大臣ヘムプフへご機嫌取りに行くのに同行、その劇場の主演舞台女優クリスタ=マリア・ジーラントに注目する。 更に恋人である劇作家ドライマンの行動にも目を付け、自ら監視作戦の申し出をすると、やはりジーラントに劣情を抱いていたヘムプフとの意向と重なり、ドライマンのアパートメントには盗聴器が仕掛けられて、彼らはヴィースラーの24時間体勢の監視を受ける。
ヘムプフは権力を使ってクリスタに関係を強要する。 そこで大臣の車から降りるクリスタを見たヴィースラーには嫉妬心も有ったろうか、呼び鈴で誘導してドライマンにわざと目撃させる。 だが彼はその場で見咎めずに隠れ、部屋に帰って行くクリスタをやり過ごす。 そしてシャワーを浴び始めた彼女の後から部屋に戻ると、やがてガブリエル・ヤレド作曲の哀切な音楽が流れ始め、その曲に合わせる様にぽつりぽつりとピアノの鍵盤を叩く。 このスコアは以降も要所で流れる度にヴィースラーの心をさざ波立てて行くものになる。
ここでおそらくクリスタはドライマンが情事を知った事を察しただろう、背中を丸めて眠るクリスタを、それでもそっと包み込むドライマン。 こうしてヴィースラーは、彼が窺わせるいたわりの姿に共鳴を起こし始めるのだ。
当初、僕ら観客はシュタージに狙われたドライマンにこそ同情し彼を見守る視点になるが、一転、ここからはヴィースラーに感情を併せて映画を見ることになる。 話のキーポイントをはっきり決めて、音楽を効果的に使ったドナースマルク監督の巧緻な演出にはドラマにグッと入り込ませられた。
ヴィースラーの人間像に言及させてもらうと、覗き見は今日の社会ではストーカー行為に代表される様に日常的に横行しているが、彼は実直あるが故に、監視や尋問のエキスパートとして脅威的な人物になっているので在って、ドイツ人だからとか共産圏の人の気質と言うもので無く、境遇がそう見せているだけに過ぎない。
しかし彼がドライマンに共感してからの、寂しさを憶えたり、監視対象の二人を庇おうとする人間性回復の姿は、シュタージと言う組織や監視行為自体への批判では無く、それに携わる人としての在り様の変化に描いていて、そこで彼が取り戻していく人としての正しさこそは監督が最も示したかったものだろう。
ラストでヴィースラーの高潔さが報われて、晴れて彼が見せる笑みが、その小ささ故に感動を重くしている。
ただ大変惜しく感じたところとして、クリスタの人物描写に僕は足ら無さを覚えた。 ヘムプフの差し金で捕まってから変節してしまう迄があっけなさ過ぎる。 この為ヴィースラーがクリスタを尋問するはめになる場面では、ヴィースラー自身に差し迫った危機と彼女を救える可能性が相半する局面での緊張感、結局背信行為に至る展開でのヴィースラーの落胆に効果を上げていない。
これはやはりクリスタの訴える"弱さ"がもう一つ出ていない、元よりこういう人間だった、と悟らせるところまで描き込めて無い事が原因と言わざるを得ない。 蛇足覚悟で言えば、捕まる理由になった薬物でクリスタが何から逃げていたのか点出していたらどうだったろうか。
出演者では主要人物以外ではイェルスカ役のフォルカー・クライネルの容姿が、かの地で思想弾圧されていた文化人を象徴しているかの様で特に印象深かった。

投稿者:NYY投稿日:2007-03-30 05:45:17
うーん、良い作品だった。
今年のNO.1かも知れない。
言いたいことは下の皆さんが書いてるので、特にコメントすることはありません。
人間の歴史は善きことだと思って縋ったものが、実はとんでもないものだったなんてことの繰り返し。
本当に善きことって何なんだろう?
投稿者:黒美君彦投稿日:2007-03-23 00:53:37
【ネタバレ注意】

素晴らしい作品である。
1984年という近い過去を舞台に、東独(DDR=ドイツ民主共和国)の息詰まる監視社会を描いた傑作。
国家保安省(シュタージ)の忠実なるヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)が耳をそばだてる劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)と著名な女優クリスタ・マリア・ジーラント(マルティナ・ゲデック)の愛に満ちた生活。
ヘムプフ大臣に身を売ってでも自分たちの生活を守ろうとするクリスタを目撃し、ドライマンの部屋からブレヒトの詩集を持ち出して熟読するヴィースラーは、ドライマンの信頼する演出家イェルスカが自殺したあたりから国家にささやかな抵抗を試みる…。
決して表情を大きく変えないウルリッヒ・ミューエという東独出身の俳優の演技が素晴らしい。彼の孤独な魂のかすかな変化が、劇的ではないだけに余計に沁みてくる。
恋人の裏切りを知ったドライマンの、突き刺すような視線に思わず部屋を飛び出すクリスタ。情報提供者となった彼女もまた、傷つき、まさに「自己殺人者」のような形で命を落とす。
「20年間地下室で手紙の開封を続けろ」とかつて友人だった上司に言い渡されたヴィースラーは、ベルリンの壁崩壊後、シュタージだった過去を背負って生きなくてはならなかった。その孤独な姿には、クリスタを死なせたという深い負い目も刻まれている。

ベルリンの壁崩壊前後を描いた作品としては傑作『グッバイ、レーニン』(02年・ヴォルフガング・ベッカー監督)が記憶に新しいが、東独に育ったフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督(73年生まれ!)は、『グッバイ−』で描かれた歴史には納得できなかったのだという。旧東独の人たちはいまだに自分たちの過去を清算できていないのだと。
確かに『グッバイ−』はコメディタッチの部分も多く、主人公の青年は西側に憧れるいま風の男の子だった。おそらくはそんなお気楽東独青年もウソではないだろう。そしてこの映画で描かれたヴィースラーもまたウソではないのだ。
いくつもの悲喜劇が80年代から90年代にかけてあっただろうことは、この二つの作品からも容易に想像できる。どちらの作品も、ベルリンの壁崩壊から10年以上を経なければ誕生できなかった。それだけ深い傷がそこに残っていたのだ。
ウルリッヒ・ミューエが実際、東独時代妻から密告されていたという話は、あまりに残酷である。

しかしながらラストを見ればわかるように、この作品もまた希望を描いた作品なのだ。過去をみつめながら、人間の営為を信じようとする姿勢。
サスペンスタッチでもありながら、芸術と人間、そして政治という普遍的テーマを見事に描いた傑作である。
73年生まれの若い監督(脚本も彼だ)の才能もまた素晴らしい。どうかハリウッドに行って消耗したりしないで欲しい(願)。
(注:涼さんをはじめ優れた論考と重複する部分もあります。ご容赦を)

※印象深い大尉役を演じたウルリッヒ・ミューエさんだが、2007年7月22日、ドイツ東部ザクセン州で胃がんのため亡くなった。54歳だった(DPA通信・朝日新聞7月26日付)。自らが国家保安省(シュタージ)の監視下に置かれていた彼は、この作品で逆にシュタージ職員を演じて世界的に評価された。残念としかいいようがない。御冥福を祈ります。

投稿者:投稿日:2007-03-14 04:02:50
【ネタバレ注意】

 素晴らしい作品である。ラストシーンのヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)の、初めて見せる誇りに満ちた表情は、トラウマから解放された人のものである。そして、同じようなトラウマを抱える人に何らかの光を与えるような、そんないい表情だと思う。

 これだけ素晴らしいラストシーンは、そう無い。ジャン・ルイ・トランティニャンとロミー・シュナイダーが共演した、あの「離愁」に匹敵するだろう。

 監視国家、密告社会がどれだけ人間を傷つけるか。当時、旧東ドイツにはシュタージ(国家保安省職員)は9万7千人、非公式協力者は17万3千人いたそうで、両者を合わせると国民6.5人に1人はいた計算になるという。知らないうちに、友人、恋人、家族から密告されていた。このようなことがわかったとき、当人はどんな気持ちになるだろうか?
 ドライマン(セバスチャン・コッホ)が愛するクリスタ(マルティナ・ゲデック)に裏切られたことを知ったときの心の傷は、いかばかりだろうか?
 一方、クリスタは弱みを握られたこともあって、シュタージに協力してしまう。弱みのない人間なんていない。クリスタのように、自発的にではなく、消極的に協力した人も大勢いたことだろう。そのような人は、密告したこと自体が心の傷になっているはずである。
 密告された人も、密告した人も傷つく。そして、ヴィースラーのようにシュタージとしての自分の任務に嫌悪感を抱き、傷つく者もいるだろう。
 恐ろしい社会だ。こんな社会が、たかが20数年前に存在していたなんて!こんな社会では、精神的に健康であることなど有り得ないだろう。

 トラウマからの解放は、その傷を見つめ直すことからしか生まれない。それから目をそらしたり自分を騙したりしたら、傷は残ったままだ。
 これまでは、この時代に関してはコメディしかなかったという。「グッバイ、レーニン!」がいい例である。確かにこの作品では監視国家で傷つく人は出てこない。主人公の母は、むしろ東ドイツのこの時代を肯定的に捉えているのだ。そんな作品を見ても、いまだに心の傷を持つ人には、何の役にも立たないだろう。
 東西ドイツの統一から17年たっても、当時のことを一切言わない人は多いらしい。旧東ドイツ出身の多くの人は、心の傷を抱え込んだまま生きていると思われる。
 そのような人が本作品を見ることによって、ヴィースラーやドライマンに自分を重ね合わせることによって、心の傷が癒える場合もあるだろう。それほどの力を、この作品は持っているのである。

 ウルリッヒ・ミューエは、国家に忠実なシュタージから、徐々に監視する相手に共感を抱くようになるまでの感情の変化を、抑えた表情の中で見事に表現した。
 実は彼の女優である妻がシュタージの非公式協力者で、10数年間自らの行動を密告され続けていたという。実人生で彼はドライマンだったのである。彼の「共感」の演技が説得力を持つのは、このような背景も一因だろう。

 ドナースマルク監督は33歳。初作品なのに素晴らしい力量を感じさせた。次回作も、大いに期待したい。
日本の李相日、西川美和、韓国のポン・ジュノとほぼ同世代である。またこの世代に楽しみな監督が出現したことが、嬉しい。

投稿者:Bava44投稿日:2007-03-04 22:40:26
友情を、そして真実を知る事を描いた作品。また、もしかしたら人間が孤独ではないということも描こうとしている。
(これらは現代の映画の特徴である。対して1960年代の映画なんて人間の孤独ばっかり描いている。)
ストーリー重視の作品で、そのストーリーも見る人によってはご都合主義に感じるところもあると思う。

盗聴している芸術家と自分の上司を比べた時に、どちらがマシか、誠実過ぎる共産主義者が出した結論。
よく出来たドラマにサスペンスの薬味を加えて、少し長いが最後まで楽しめた。
7.5点
投稿者:Jean-Claude Marais投稿日:2007-03-02 16:50:13
ドイツ分裂後、強固なまでの共産主義体制を堅持し、冷戦下における旧ソ連の政治的及び軍事的衛星国であった旧東ドイツは、中欧・東欧諸国の社会主義国で最も経済的に発展した「優等生」と言われたものだ。対外的には反ファシズムを掲げる複数政党による議会制民主主義という国家形態を掲げていたが、事実上、ドイツ社会主義統一党による独裁政治が横行し、シュタージによる国民の監視の徹底は強硬なもので、非公式協力者という名のインフォーマーによる反国家的分子弾圧は旧ソ連のKGBにおけるそれを凌駕するほどであったと言うことは、驚愕に値する。共産主義体制の代名詞とも言われる「マルクス主義」であるが、そもそも、マルクスが唱えたそれは、資本主義の高度発展=共産主義社会の基盤形成とそれらを整えうる条件とみなしたのに対し、独裁者レーニンは資本階級支配の打倒後プロレタリアートの権力を形成し共産主義社会を追及していき、共産主義社会のあるべき姿として提唱したという上では、根本に大きな隔たりがある。旧ソ連の政治的衛星国であった旧東ドイツも例に漏れない。
この映画では、その政治中枢において絶対的権力を堅持していたシュタージの暴走と「恐怖政治」の時代から、東西統一に至るまでのドイツの民主化を、芸術と政治と言う複雑なテーマを、精巧にまた緻密に絡めあわせ、緊張感のあるドラマとして魅せる。何よりの醍醐味は、真の芸術は不滅である、ということを、この映画は語っている。時に、人間の心を突き動かし、感動させ、言葉にならない歓びを与えてくれる。人をも変えうるという事を信じてやまない監督のメッセージが込められている。
国家に忠実であったヴィースラーが、予期せぬ事に、監視する側であるにもかかわらず、その盗聴器から聞こえてくる劇作家と恋人、その友人達の自由な発想や、愛の営み、芸術・文学・音楽に心を揺さぶられていく展開が面白い。能面のように感情を押し殺すことが、ごく当然であったヴィースラーのこれまでの生活から、彼らの「人間が本来あるべき姿」に徐々に惹き付けられて行く事によって、理性と感情の鬩ぎ合いが生まれる。既成という概念に囚われない芸術家との間接的で皮肉な出逢いは、ヴィースラーにとっては未知との遭遇であり、それが彼の孤独なまでの心に、ソナタの調べのように染み渡って行く。イェルスカからドライマンに贈られた「善き人のためのソナタ」に涙を流し、やがては娼婦との束の間の情事にも「もう少しいてくれないか」と、孤独な男の表情をポロリと覗かせる。このヴィースラーがドライマンの部屋から、こっそりとブレヒトの本を盗み去り、その世界観に彼は魅せられて行くのだが、何よりその「芸術と政治」という点において象徴的であるのが、劇中に登場するこのベルトルト・ブレヒトの存在である。
劇作家であり詩人でもあったブレヒトが、社会主義者であったのは言うまでもないが、ナチズムが台頭した第二次大戦前より、思想的な観点から彼は芸術と政治の関わりと言うものを追及していった。演劇におけるその影響は諸外国で見受けられ、特に叙事的な概念と観察的・批判的手法によって顕著である。
この映画を通して変わり行くヴィースラー演じるウルリッヒ・ミューエの静かな演技と相反する存在感は圧倒的で素晴らしい。オープニングからエンディングに至るまでの、ヴィースラーのじわりじわりとした心境の変化とその静けさは、ゲイブリル・ヤレドの音楽と共鳴し、彼の感情の起伏や心境の変化を劇的に描かないことによって、この作品は成功したと言えるだろう。ヴィースラーは、あくまで軍隊式組織シュタージの一局員にすぎず、彼もまた、感情とは無縁の組織に管理・統括された人間であるからだ。「芸術と感情」その役割はドライマンとクリスタの存在そのものであり、また彼らが充分に演じている。優れた俳優を適材適所に配し、これ迄、タブウ視されてきた“シュタージ”の内幕を精密に描いた秀作である。
しかし、ベルリンの壁の崩壊後も悲劇はまだ続いている。シュタージにより、反体制分子とみなされていた者の個人記録は、旧東ドイツ崩壊後に本人に限り閲覧できるようになった事実がある。が、劇中でも、そこにある資料でドライマンが哀しい真実を知るように、現実にも、家族・親類や友人、恋人や知人がシュタージのインフォーマーであったことを知ったことによって、様々な人間関係の崩壊が生まれていると言う哀しい現実がある。
投稿者:ビリジョ投稿日:2007-02-27 18:51:35
 山為食堂さんに同感で、心理描写がもう少し深ければ。ラストシーンは良かったし、後半の展開も劇的だったのだが。
投稿者:山為食堂投稿日:2007-02-20 18:42:46
たんたんと進行するのだが、見終わったあとに余韻を残す。極度に美化しすぎないのもよかった。欲を言えば、ヴィースラー大尉がなぜそこまで心変わりしたのか、もう少し描写があれば、と思った。
投稿者:シンネマン投稿日:2007-02-19 02:16:47
緻密な構成で見せていき、最後は見事にホロリとさせられる。
旧東ドイツのシュタージをリアルに描いた映画というだけでなく、物語として魅せる。
傑作『グッバイ・レーニン!』とはまた違ったユニークな形で東ドイツの民主化を描いている。
音楽によって敵方の人間への敬意や共感が生まれる話は『戦場のピアニスト』など色々あるが、これはもっと多様な自由の価値観が人間を変えていく。
監視や強圧によって縛られない芸術家の自由な言葉を聞いて、逆に監視している自分がいかに強圧的で窮屈な世界に生きているかに気付かされてしまう。
このケビン・スペイシー似の主役ヴィースラーの表情が何ともいい。
周りが笑っていてもピクリともしないポーカーフェイスでそれは最後まで変わらないのだが、ほんのわずかな表情の違いで心境の変化を感じさせる見事な演技。
無表情で新聞配る姿もいいし、最後「私のための本だ」の自信に満ちた表情もたまらない。
どんな暗い時代や状況でも人のわずかな良心や自由な発想が人を救いうるのだと感じさせてくれる傑作である。
もちろんハッピーなだけでなく人の弱く汚い面も描いてるあたりがまたよい。
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