おくりびと(2008)
【クレジット】
【解説】 本木雅弘が遺体を清め棺に納める“納棺師”を真摯かつ繊細に演じる感動のヒューマン・ドラマ。ひょんなことから納棺師となった主人公が、特殊な仕事に戸惑いながらも次第にその儀式に大きな意義を見出していく姿と、故人を見送る際に繰り広げられる様々な人間ドラマをユーモアを織り交ぜ丁寧な筆致で描き出す。共演は広末涼子、山崎努。監督は「木村家の人びと」「陰陽師」の滝田洋二郎。また、脚本には映画脚本は初挑戦となる売れっ子放送作家の小山薫堂が当たった。 チェロ奏者の大悟は、所属していた楽団の突然の解散を機にチェロで食べていく道を諦め、妻を伴い、故郷の山形へ帰ることに。さっそく職探しを始めた大悟は、“旅のお手伝い”という求人広告を見て面接へと向かう。しかし旅行代理店だと思ったその会社の仕事は、“旅立ち”をお手伝いする“納棺師”というものだった。社長の佐々木に半ば強引に採用されてしまった大悟。世間の目も気になり、妻にも言い出せないまま、納棺師の見習いとして働き始める大悟だったが…。 【ウェブリンク】 【ユーザー評価】
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死をネタにしているので暗くなりがちだが、ところどころにユニークなシーンが盛り込まれていて物語の流れに抑揚があるのは良い。
“チン”が付いている話はコメディ路線で行くのかと思わせるほどであった。
腐乱死体を運ぶシーンはこちらにも臭いが伝わってきそうな臨場感があった。
食べ物を食するシーンは音をリアルに表現し印象にも残るし、うまさが伝わってきた。
終盤では人の働く姿のすばらしさが伝わってきた。妻や子供たちにも父親の働く姿を見せるのは重要なことであると思った。
人から感謝される仕事をしているのは働く喜びのひとつである。
生きとし生ける者にとって、死は最大の恐怖であるから、これを「穢れ」として忌避するのは人の情として当然ではある。しかし死によってのみ人生が完結する以上、死者を見送ることは、愛する者への最大にして最後の思いやりであろう。そして生者は愛する者の死によって、自らの生を確認し、人生を見つめ直すのである。その意味で“旅立ち”をお手伝いする“納棺師”ほど尊い仕事はない。
原作の宗教色を極力薄めて、葬送の場面に集約される人々の情愛を中心に描いているが、佐々木社長の「これだってご遺体だよ」という科白は、生きるということの罪業を示しており、深い。それにしても山崎努は上手いなあ。
風景や音楽はあざといけど、美しい。ラストもベタなんだが、こういうのに弱いんだよな。涙腺緩みっぱなしだった。
賞を取った理由には、扱った内容が大きくかかわっているに違いない。
たとえば、主役の小林大悟(本木雅弘)は6歳で父が失踪している母子家庭で育っている。
にもかかわらず、チェリストというおよそ考えにくい職業についていて性格の作りこみで甘い。
別に、それで悪いという訳ではない。しかし、他作品と大きな差があったために受賞したのではなく、特別な存在ではないことはしっかり押さえて置きたい。
言い換えると映画は、”技術的、芸術的な基準だけが評価対象ではない”ということである。
日本映画界には、それを評価する人は少ない。だが、現実には大きな影響があるのは疑いようのない現実。
アカデミーは伊達じゃ無いのは他の受賞外国映画でも実績がある。
本木も広末も役者だったんだと改めて納得。
脚本。伏線の張り具合、景色と人を写すカメラ、演技している役者陣、良くまとめた秀作映画。
いろいろと欲張った評論も見受けられますが、ジャンクフード氾濫の邦画界でこれは大人の舌に耐えられる出来だと思いますよ。
悪く言う人は身近に死んだ人がいない、ある意味幸せな人たちなのかもしれない。
観ている間中、胸が込み上げました。
銭湯のおばちゃんの控えめな優しさに涙しました・・・。
一個人として、満点の評価をあげたいと思います。http://www.geocities.jp/eiji8129/index.html
もっと、突き抜けろよ!って感じで、観ていてイライラする映画。
物の食い方をあんな風にこだわって見せるなら、エロティックでも夫婦の営みだったり、グロテスクでも腐乱した死体だったりが、はっきりと描写されていれば、生と死であったり、清さと汚らわしさであったりがもっと際立つ映画になったのではないか?
あの生々しい食の描写があるから、フツーの描写が逆に不自然というか中途半端に感じられて、そんなことを思ってしまった。
生と死ということでは、1983年版の「楢山節考」みたいな人の営みの描き方であったら、面白くなったんじゃないかなぁとも思った。
父親の死体が何年も前の思い出の石を握っているみたいなエピソードも何だか安っぽくて嫌。
あの僅かな遺品の中に大事にしまわれているとかいった方が、自分の趣味。
気楽に楽しめる映画といえば、そうなんだけど、評判が良くて期待しただけに引っかかる。
誘うのか、わからないままにやたらと、私は泣きまくった。
いや、私だけではなく、劇場でも回りの人が泣いているのが、感じ
られた。映画の後にトイレに行くと、顔をざぶざぶ洗いしている人
を見た。涙の跡を洗っていたのだろう。
この映画は、死の悲しみと厳粛さとおかしさ、死にたずさわる職業
者への偏見などが描かれている。
その死の情景に、いなかの壮大な景色や、本木雅弘が演奏するチェ
ロの音楽が重なっていく。
本木雅弘は、10数年前から死に興味を抱いた。いろいろな書物に
出会い、その中の一冊が映画の原作ともなる青木新門氏の「納棺夫
日記」だったという。映画に感動した私は、本を買いに走った。
その本の中でも、映画と同様に一人暮らしをしていた老人が死んで、
何ヶ月も気が付かれなかった場面が出てくる。蛆が死んだ老人の布
団を動かしたように見えたという。
作者はそこで、こう述べている。
『蛆たちが捕まるまいと必死に逃げているのに気づいた。柱をよじ
登って逃げようとしているのまでいる。蛆も生命なのだ、そう思う
と蛆たちが光って見えた。』
この本も映画も、「死に関して顔をそむけようとする」自分の「逃
げの気持ち」を、問いただす力を持つ。いつか死と見詰め合う時は
再度向き合いたい作品だ。
http://samech.web.fc2.com/
楽しい映画でしたが、先に賞を取った賞賛を散々聞かされた後の視聴だったので、身構えてみた分、少し拍子抜け感が。
山崎努からどうしても伊丹十三の「お葬式」や、くちゃくちゃ食べるシーンでは「たんぽぽ」なんかがチラチラだぶってしまったのですが、さすがの存在感でしたね。
私もそうですが、山崎さんがお父さんだろうなと思ってた人は多いんじゃないでしょうか。
自然の中でチェロを演奏させる。その・・・“あざとさ”で、いい意味での
一般向け名作の領域に位置づいた良作だと思いました。こういう題材は、真面目
すぎると辛いですからね。
刺激が強すぎた死後2週間の老婆の遺体処理と、翌日、遺族(夫)から感謝される
この仕事の意義を認識した場面。メリハリがあり感情移入できます。
映画を観終わって、特に印象が残ったのは2シーン。
初仕事のショックの後、妻に甘えます。膝間づいて抱きつきます。すがりたいの
です。あっさりと流さずに無性に甘えるんです。効いてますよ、このシーン。
そして、生きていた物を、美味しく食べてやるシーン。こういうの効きますね。
銭湯のおばちゃんが亡くなり、妻と同級生(おばちゃんの息子)の前で仕度する。
互いの間がいいですね。ここもいいですね。
父親が亡くなったと知らされます。ここは、いらないシーンかなって一瞬は
思いました。話を持たせるには、何かもうひとつ入れたいんですよね。ずっと
だから前フリしてたんです。それに予想通りでしたし・・・
しかし、これは入れていいシーンでしたね。いろんな人生があると思います。
ダンボール一個しか残せなかった人生も・・・。息子を捨てた父親が、決して
幸せでない晩年を生きていて、息子には遭えないです。楽しみなんてないでしょう。
支えは息子との思い出の“石”だけなんです。それを息子が知ることも大切ですよ。
でも、それよりも大事なのは、哀しい哉、あれだけ憎んでいた父親の死際に、
思い出させるものは、父親との楽しかった思い出なんです。彼の人生に想い巡らせ
涙します。それが親子ということなんでしょうね。
山崎さんの胡散臭さが、いつもながらいいですね。
主役のモックン、チェロ演奏・納棺シーンだけでなく、少しやり過ぎでも、銭湯の
石鹸を何度も落としたり、川辺・階段でズッコケそうになったりと、よく頑張り
ました。熱意が伝わりますです。
監督が違えば、さらに名作に成り得たかもしれませんが、見栄えじゃなく
観易くしたこの映画を、自分は支持しますね。
すでにコメントされていることですが……
主人公の妻をはじめ、「納棺師」を忌避する態度に疑問が残る。
遺体を扱う仕事だからといって、作中の描写にあるほど嫌われて(見下されて)いるものなのだろうか。
実際に納棺師が忌避されているとしても、その理由がよく分からず。あえて説明を省いたとも考えられるが。
それと、納棺師事務所の事務の女性が過去を告白するシーンがあるが、そこはボカすか、むしろ女性自身が親に捨てられたという設定のほうがすっきりしたと思う。
作品自体は退屈せずに観ることができたが、本作のような職業ものは、周防正行監督が撮ったほうが上手くまとめられるような気がする。
滝田でなければ・・・・。惜しい映画だ。唯一、監督が捧げた伊丹十三へのリスペクトは買いたい。いまの「センスがいい」系の邦画へのアンチテーゼとしても是非伊丹路線のエグいドラマを紡いでいってほしい。次作で頑張ってくれ。
封切当時はあまり評判がよくなかったのは、かなり観客に媚びた作りが見受けられるから、そこがウルサ型連中の口に合わなかったからなのかもね。この題材ならシリアスに徹した方が深みも増すんでしょうが、そこは滝田監督の資質、コミカルなシーンをバランスよく配して映画に適度な笑いを織り交ぜて、独特のテンポを持たせている。笑わせようとしたギャグが鼻に付いちゃうとシラケちゃうでしょうが、僕なんか素直にノセられちゃってねぇ。納棺作法のDVDの撮影シーンなんて、もう可笑しくってさぁ。
誰もが死ぬわけで、その時はお世話になるのに、この職業に対する差別的な意識がどこかにある。そのことがこの映画でもちゃんと触れられている。死体に触っているということは、その職業に理解のない人からすれば「汚らわしい」ことなんだよ。お葬式で棺桶を運んだ経験がある人なら、その手を洗わずにはいられないでしょうが。別に汚いものを触ったわけじゃないが、あまり気分のいいもんでもないと。そういう意識は、美香に限らず誰にでもあるわけで、それがあの発言に表れている。終盤にある銭湯のオバちゃんが亡くなって納棺に立ち会った時、彼女は納棺師という職業と夫への無理解を自省するシーンが活きてくるわけだ。
僕は「死」を軽く扱っているとは思えなかったんだけど、こういう形で死を扱っていることで逆に今ある「生」を大切にしようと感じた。中には事故や自殺で人生を早めてしまうような人もいたが、この映画を観ると、遺された人たちの想いや悲しみが手に取るように伝わってくるので、限りある命を大切にして、最期は綺麗におくられるのが理想的な人生の終幕なんだろうなぁ、なんて、そこまで映画が描いてはいないようなことを漠然と考えてしまったのね。
先述した、銭湯のオバちゃんが荼毘に付されるくだりでは、火葬に立ち会った経験がある身としてはなんとも言えない思いが込み上げてきて、目頭が熱くなったよ。銭湯の常連客であるオッサンの意外な本職が明かされるのだが、そのオッサンの言う人生観と生死観に思わず頷いちまった。やり方は違えど、あのオッサンも多くの人の旅立ちに立ち会ってきた「おくりびと」だったわけだね。しかし、ONのボタンをポチッと押すと覗き窓が真っ赤になるなんて、残酷なんだけどこれが現実なんだよなぁ…。泣けるぜ!
ずっと和解できなかった親子が、最後にはああいう形で再会するだなんて、作劇的には出来すぎていてそこが気に入らない人がいるのも分るが、ひどい父親と息子から思われていながらも、父は我が子のことをずっと思っていたことが分るくだりにグッときた。近親者を亡くしている経験があると、このシーンは特別な感情が去来しちゃうんだよ。
モックンの抑えた演技と、ちょっと抜けたような演技、そのバランスがお見事。それにこの人、すごく器用! チェロ演奏のシーンも本格的だが、納棺の儀のシーンの手馴れた仕草なんて本物みたい。初めての納棺が死後数日経った死体という、あの観客席にも臭いが漂ってきそうなシーンがメチャ怖い! 銭湯で体中を狂ったようにシャカシャカ洗いまくるシーン、やり過ぎかもしれないが気持ちは分るよ。しかもこのシーン、シッカリとギャグにもなっている!
山崎努もさすがの名演。モックンを喰うでもなく、それでいて独特の存在感を発揮しているのはさすがなのです。フグの白子とかフライドチキンとか、美味そうに食うもんだから、思わずコチラも食いたくなるの。このことからも分る通り、伊丹十三の「お葬式」と「タンポポ」をかなり意識した作りになっているわけだ。山崎努の出演にはちゃんと意味がある。
これまた評判の悪いヒロスエだけど、こういう映画でもきちんとアイドル的な演技(何だソレ?)を披露しているのには、感心したよ(褒め言葉です)。あの、夫を心配そうに見つめる慈愛に満ちた表情がいいじゃないの。壮絶な死体を見た後に、大悟が美香に生のぬくもりを感じてイタしてしまうなんて、その気持ちよく分る。ズボンを脱がされ、可愛い形のおへそとパンティが露わになるシーンが見たければ、レンタルへ走れ!!
山田辰夫、久しぶりに見たよ。
同じところでドッと笑い、またハンカチを手にする。
そういう時代を懐かしく思い出して、よけい涙が止まりません。
結局自分の半生の人との関わりや思い出を、
見ている私たちも重ね合わせているんでしょうね。
登場人物がこれといって特別な人間でもなく、
むしろ弱い立場で一生懸命生きているのでよけい感情移入してしまいます。
人間って素朴でいいんだよね。
アカデミー賞でみな注目している。
いい機会だから、こういういい映画皆もっとみろみろ。
WBCも日本人の誇りですよ、大事に、丁寧に。
中国四川大地震の日本レスキュー隊も…。
世界も評価したんですよね。
日本よ元気出して不況を乗り越えようじゃないですか!
出来はいい、職人監督に任せたからか過度に感動をあおるようなこともなく、重い題材を淡々とユーモラスに描いて好感が持てます。あと省略術が上手いですね。観客に考える隙間を与えてくれるというのはとてもうれしい演出。納棺のシーンは素晴らしい、美しく静謐に撮ったスタッフとモっクン、山崎努に拍手。それぞれおくり方は感動します。実際皆がおくりびとですね。
うーん、やっぱりアカデミーっていうよりモントリオール(笑)
見るモノ聞くモノすべて知らないことばかりで
もっくんの納棺師の手際をもっとみていたかった。
って感じです。
それにしても相変わらず日本人ってみずから良いものを
作っても海外から絶賛されないと良いモノだと自覚できない
ようでこれはもはや病気でしょうね。
人物の描写をクドクドと説明していないのに
明確な性格付けがなされているし
広末涼子もなかなかの熱演で好感でドラマ映画としても
とても良く出来ています。
(ネットじゃやたらに攻撃的な意見が目につくけど)
興行収入も日本の映画史に残る記録を残し
後世に語り継がれていく伝説的な映画の誕生となりました。
その誕生を見られただけで幸せなのかもしれません。
日本映画の奇蹟でしょうね。向こう20年間はきっと
こんな映画に出会うことはなさそうです。
目には見えない汚れ、何度洗っても何となく気になる汚れ、他人の家で、いくら清潔だと分かっていても、家人の箸を使いたくないような気持ち、そして、仮に動物の死体などを触らなければならなかった後、すぐに石けんで丁寧に手を洗っても、その後手づかみで何かを食べるのをためらうような気持ち…。
大分前に、井沢元彦氏の「穢れと茶碗」に、上記のような事が書かれてあり、私としては、広末のセリフはそうなのかなと感じました。
そうは描かれてはいないが、あの妻は、「死(禁忌)と穢れ」の関係について何らかの知識を得ていたか、そういう経験があったのではないのかと思います。
「穢れ」けっこう、多くの日本人に共有されている感覚だとも思ったのですが。(ただし、明記はしませんが日本の古くからの「タブーとされるある問題」に関わることなので、映画中では説明できなかったのかもしれませんが)
深読みしすぎかなあ。
なんか作り手が思っていた以上に大きな作品になってしまったという感じでしょうか。脚本の小山さんも、これがオスカーを取ると知っていたら、女装男
なんてしょーもない受け狙いのエピソードをオープニングに持ってくることはなかったでしょう。
日本アカデミー賞でもこの作品が地滑り的に受賞を重ねたのには失笑。日本人って権威に弱いからなあ。
脚本の随所に、日本を知らない観客に対する配慮が
さりげなく、ちりばめられているからだ。
とりわけ、収入の話をする時に、「ウェブ・デザイナー」という
今どき、世界中の誰もが知っている職業の相場を
引き合いに出すところが心憎い。
さらには、干し柿。
あの二人の名演技あってこそ、
ああいう干し柿が、日本でどんな存在なのかが伝わるはずだ。
さしあたっては、チラシのシーンの英文字幕が
どう処理されたのか興味津々である。
ところで、調べてみたら、あのような納棺師は、
日本全国にいるわけではなさそうだ。
私も誰かに口紅、塗ってもらえるだろうか。
ただ本年度を代表すると言いましたが、おそらく2008年のベストテンの首位を争うであろう若松孝二の『実録 連合赤軍 浅間山荘への道程(みち)』や井口奈己の『人のセックスを笑うな』のように、観る者の胸ぐらを直接掴んで揺さぶりをかけるような超ド級の迫力が本作にある訳ではありません。
ただ、「継承」という現代も変わらぬ人間の宿命そのものをテーマとして扱っている為、劇中の笹野高史のセリフではないですが、何だかじわじわっと体に柔らかく染み込んでくるような肌触りを持った映画に仕上がっています。まぁ、内容が内容だからやたら登場人物が泣くのは仕方がありませんが、ある方の登場により最後まで映画が持ち堪えます。そして、ここでの感動は明らかに優秀なスタッフに支えられたベテラン滝田監督の力量によるものでしょう。観ていて「映画屋はやはり格が違うなぁ・・」という喜びを抑えることができませんでした。ロケーションもいい。映画を好きな方ならば、今現在の日本映画を巡る状況の中でこういった作品が生まれてくること自体が小さな奇跡であるとご理解いただけると思います。
また、常日頃から映画館で上映しているにも関わらず「やる気あんのかよ・・・」というようなテレビ局製映画ばかり見せられていると「日本映画にはたくさん腕のいい人達がいるのにな」という素朴な疑問がいつも頭に浮かぶのですが、この映画の滝田演出で溜飲を下げることができました。結局、「映画」で金儲けしようと思ったら本気で「映画」作るしかない、ということです。また、そのことを本作の息の長い興行がそのことを証明していると思います。
キャストは山崎務がダントツ。クセの強い役者さんですが、ここではちょっと言葉にできない味のある演技を見せています。フグの白子の炙ったやつを啜りながら食べるシーンがありますがここはケッ作。思わずお腹がグゥーとなっちゃいました。また、ベテランの笹野高史や吉行和子も同様。橋が出てくるいいシーンがありましたね。山田辰夫も出てきて画面をさらいホロリとさせられました。観る者の記憶を呼び覚ます名演です。
ただ、残念だったのは、主演の二人の演技がイマイチ映画に馴染んでいない印象がする点です。嫁さん役の人はどうでもいいとして、モッくん演じる主人公のキャラクターの扱いが、↓の方もご指摘されているように、かつて彼自身が主人公を演じた『シコふんじゃった』とかなり被っている点が少し気になりました。勿論、設定の違いはありますが、成り行きから知らない世界に足を踏み入れ、そこで古来より伝わる日本の心(習慣)に触れる。偏見の目を乗り越えて何かに目覚め、前を向いて新たな歩みを踏み出して行く。オムツのシーンまで出てくるのでなおさらでした。こうしたことを踏まえたうえで、演技のアプローチの仕方がいま少しの工夫と幅があれば作品にもっと膨らみが出ていたと思います。滝田監督はコメディが上手い人ですから、どうしてもモッくんの軽い部分が反応してしまっています。ただし、エンドクレジットの長廻しはお見事でした。
また、いいエピソードが多いもののメリハリが強調されず(これは滝田作品の特徴)死と食の対比がやや図式的過ぎるし、コンティニティが薄い。それにラストに至るシークエンスが決定的に作品のトーンを崩していますが、映画とはやはり奇跡が起こるもの。上記のようにある方が登場し、そんなことがどうでもよくなりました。合掌させていただきます。
脚本は小山薫堂。まだまだ日本映画は死んでいない。この映画同様、ゆっくり積み重ねながら継承されてゆくものは必ず存在する。何よりもそれが嬉しかった。本当に観てよかったと思えた作品。滝田監督ありがとうございました。たとえ古臭くても私は支持します。
追記:2009・2・23
関係者のみなさん、オスカー外国語映画賞受賞おめでとう。故峰岸徹さんもあっちでさぞ喜ばれていることでしょう。歴史に名を刻んだ快挙、素直にお祝い申し上げます。Congratulations!
笑って泣ける映画を目指したのだろうが、空振りが多い。クライマックスでの広末のせりふも違和感の嵐。「けがらわしい」って、何でよ。
演技過剰ぎみで、乗れなかったのは、そもそもテーマに対する監督の取り組み方が不真面目だからではないか。
以下、個人的に死体いじり&物を喰ってる口元アップって超苦手、滝田監督の丁寧だがしつこい演出も好みで無い中年男性コメントです。
ダラダラ長く冗長な構成にうんざり。本木・山崎・余と演者はほぼ完璧な演技なんだが・・・各人物の生き様が観手に訴えてこない。特に↓各コメンテーターも触れていらっしゃるが広末演じる妻の設定が消化仕切れていなく表層的。原因を愚考するに脚本が荒い、何ぞ本作の脚本はTV屋さんで初映画脚本だとか・・・
醜悪なのがクリスマスでフライドチキンを食べる山崎努の薄汚い喰い方、異性装男性の葬儀・・・この二箇所は生理的にダメ、何がおかしいのか私には理解できないが数人老人男性客は大笑い。
「穢れてる」ってエキセントリックに反応していた妻が何故それを許容したのかが描かれていない、個人的には「子猫の涙」や「バブルでGO」での広末涼子演技成長に注目していたんだが、本作では演技以前に脚本の甘さが足を引っ張っている。
納棺師という仕事に対し無理解な知人が考えを改める過程の省略する演出はアリだとしても、父の死シーンは長すぎるでしょ(滝田監督芸風)。
映画としても各登場キャラの描き方は薄っぺらすぎ、大仰にしてでか過ぎる音楽も作品のバランスを崩している。
公開初週平日最終回の丸ピカは、そろそろ「おくりびと」にお世話していただきそうなシニア観客で70%の入り。
カナダの映画祭では、変わった職業が主題ってのが受けたのかな?
09.2.23
へ〜ぇ、ほんとに取っちゃったよ。
毒はありません。
全編、面白おかしく、悲しく観ることができます。
音楽は久石譲、映画を引き立てます。さすがです。
ただ、思いっきり考えさせられるということもないので、余韻は少ないかもしれません。
でも、しっかりと手抜きもなく、肩に力も入りすぎず、よい作品に仕上がっています。
追記 09-8-3(月)
昨日観た。評判に違わぬ出来だったと思う。本木が親父に渡した鳥の卵のような石は俺も欲しくなった。本木が最初に見るご遺体が腐乱死体と、納棺が凄まじい一面も持ってる事を表わして奇麗事にしていない所も印象的だった。橋から本木が見つめる死んだ鮭とか、畦道でチェロを弾くショットとか、クリスマスに三人がガツガツ食うフライドチキン(しかも量が多すぎ)など「?」と思うシーンも少なくなかったが、メガヒットも納得。オスカー獲得は疑問。
広末の演技は終盤では余り気にならなくなったが、一人だけ浮いてるという印象は予想通り。老けたし、今の彼女にあるのは加護亜依のような負のオーラだけ(どっちも最初はファンだったけど)。しかも糟糠の妻という設定なのだから彼女は年齢的にもミスキャスト。木村佳乃の方が合っていた。
ネット上の匿名諸君はともかく、自分の知り合いには、「絶対お勧め」と言えます。
派手さもなくて淡々と人間の死とその家族が多く映されています
それに比例して食事のシーンも多いのが印象的
日常生活で感じることができる食物連鎖っていうものは人間が終着
人間を食べるものなどいない
孤独死、自殺、事故死、病死、大往生
なんて人間の死ってのは哀しくて贅沢なんでしょうね
http://love-cinema.jugem.jp/
山崎努、本木雅弘、余貴美子がそれぞれ秀逸。NKエージェントの佐々木生栄社長(山崎)とチェリスト小林大悟(本木)の醸し出す空気が、時に可笑しく、時に静厳で何ともいい味わい。チェロの調べとともにインサートされる幾つかの納棺エピソードが、それぞれ胸に迫った。
庄内の風景もいいし、脇役の笹野高史、吉行和子も適役。笹野演じる火葬場の職員平田正吉の「死は門だと思います。私は門番なんです」という台詞は、こういう役柄だからこそ説得力をもつ。
とはいえ、後半に向けてスジがかなり読めたのも事実でそこは残念。銭湯のおばさん、記憶にない父親の死と「石文(いしぶみ)」の絡みなんかも読めてしまったし。そして、やはり危惧していたとおり広末涼子の大根ぶりには参った。彼女にはガキっぽい笑顔とそうでない顔の二種類の表情しかない。全体的によく出来た作品であるだけに惜しい。妻役はどうみてもミスキャスト。
この作品の企画はもともと本木雅弘が持ち込んだものだとか。見事にそれを具体化し、演じきった彼にはただただ脱帽である。
モントリオール映画祭グランプリおめでとう!!
山崎努や余貴美子などいい味を出しています。広末涼子を他のリアルさのある人がやっていればと思いました。
そしてそれが来世へ生まれるための産湯の意味があることも。
作中の台詞でもあるが、「私が死んだら、この人に…」ときっとたくさんの人が思うだろう。死者に対して、こんな風に真摯に矜持を持ってあたってくれているととても素敵だ。尊厳という言葉が自然とうかぶ。
いわゆる単なるお涙ちょうだいものかと先入観を持っていたのだけど、ふたをあけてみれば、なんと笑わせてくれる。本木さんと山崎さんが真面目なカオしてやってくれる。だからといって、死を軽んじるところはないので素直に笑える。
故人とその家族や、余さんや吉行さん笹野さんら脇役たちの様々な人生が、少ない描写の中でよく描き出されていたなと思う。
ただ、納棺師が蔑まれ忌み嫌われるものという前提や広末さんの役どころがイマイチよく分からなかった。
まず、納棺師という職業を初めて知ったし。葬儀屋さんがすると思っていた。
広末さんはおパンツみせて綺麗な下腹部(子持ちとは思えない!)を披露してくれてるんだけど、なんで妻役が彼女だったのだろう。滝田組?もっと出番も少ない方がよかった。他の役たちの配分は良かったのに。
ラストはもっと余韻が欲しかった。お父さんのエピソードは外せないとこだろうけど、あの尺でおさめるなら、もっと練ってほしかった。その前の鶴の湯編にあれだけ時間かけといて、主人公の核となる話があんだけって。別に短くてもいいんだけど、詰めこんだために蛇足みたいで残念。いっそ省いて、観客に予感させるという手もあったろうに。一生の仕事にする、という覚悟をこちらに分からせてたんだから。
いやまあ、素人の戯言だけど。とにかく惜しいなってこと。
(追記。(2008-10-15)
峰岸さんがとても慈愛に満ちた微笑みをみせていたので、こんなにやさしい顔をするようになったのか、と思っていたら先日訃報をきいた。私の生涯で、あの笑顔をみたのは3人目で、皆、自分の死ぬときを知っている人たちだった。とてもせつない表情だ。私事の感想で申し訳ない。ご冥福を祈る。)
ああ、心に響く作だったために、よけいに愚痴が出てしまった。
こんだけいっといてあれだけど、チェロの調べにのって心へ届く、不思議と希望と愛を感じるお話でした。
少なからず映画を観る私は、観点こそ違うものの『天国と地獄』以来の山崎のファンであるから、むしろ、そして、だからこそ彼の「怪演」をいつも期待してしまうという点では、残念な役柄と演技であった。
職業としての「おくりびと」という切り口には、大変興味をそそられた。
また、2時間という時間を感じさせないテンポも良かった。
しかし、問題はコメント題の通りであった。「へ?終わり?で?」というものだった。山崎はもっとベタでいて欲しかったし、本木も、広末も、これまでとくらべて、演技力が飛躍的に上がってはいない。
笹野は確実な脇役として欠かせない存在だ。しかし、この映画では、彼のバイプレーヤーとしての存在感を活かせておらず残念だ。
ロードショー収益が高いことを祈るばかりである。
「納棺師」という、「死人(しびと)」にかかわる絶対に必要な職業でありながら、世間の認知度も理解度も低いという職業をとおして、親子や夫婦の愛憎を上手にエピソードにしている。今の時期にこの手の作品が公開されるのは“千の風”効果かも知れない。例えそうであっても、日本映画にとって久々の佳作であることに変わりはない。
挿入されるギャグも、言葉のギャグではなく、映画らしくアクションのギャグだ。本木が鳥海山をバックに一人で弾くチェロは、「おまえはヨー・ヨー・マか!」と突っ込みを入れたくなるが、景色と音楽がきれいなので許せる。音楽がちょっと大袈裟なのを考えると、やはりパロディーかも知れない?
本木は顔で演技ができるほど上手になった。アップで長撮りされても遜色ない。それに引き換え、広末は、笑えば顔がしわしわになる年だというのに、相変わらず下手だ。アップにすると“ババァになったなあ”という印象しか与えない。笹野はおいしい役で役得。確実に言えることは、大人が観る映画としては『♪ポニョポニョ…まん丸お腹のメタボの子』よりは格段に良い、ということだ。
(※1)今にして思えば、山崎努の起用とそれで起因する先入観も、製作者側の計算だろうと思われる。