秋深き(2008)
【クレジット】
【解説】 『夫婦善哉』の文豪・織田作之助の短編『秋深き』『競馬』を基に、一組の夫婦の切なくも心温まる恋物語を綴る人情ドラマ。主演は「HERO」の八嶋智人と「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の佐藤江梨子、共演に「ザ・マジックアワー」の佐藤浩市。監督は「湯殿山麓呪い村」「MISTY」の池田敏春。 マジメで気弱な中学教師の寺田は、仏具屋を営む両親の心配をよそに、大阪・北新地のクラブへ通い詰めていた。酒も飲めない寺田のお目当ては、ホステスの川尻一代。ある時、一大決心をしてプロポーズしてみると、意外にも一代はあっさりと受け入れてくれた。ほどなく寺田は実家を飛び出し、一代との甘い新婚生活へと突入する。しかし、女性経験ゼロの寺田に対し、当然のように少なからぬ恋をしてきたであろう一代。そんな彼女の男性遍歴に嫉妬を募らせてしまう寺田だったが…。 <allcinema> 【ユーザー評価】
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足りなかった感じ。www.seisakuiinkai.com
「夫婦善哉」は、名優森繁久彌と淡島千景のコンビによって不朽の名作となったが、この両名と比べるべくもないものの、八嶋智人と佐藤江梨子もがんばっている。特に佐藤江梨子はホステスあがりの献身的な妻を可愛く演じていて、とてもキュートだ。八嶋も彼女に一途な夫役がよくはまっている。
乳がんだと診断された妻が、夫のために乳房延命を図る。最後は結構泣けるシーンだが、それ以降の後日譚は余計だったと思う。妻が亡くなった後の夫の振る舞いはさほどに難しい。
ごちゃごちゃした大阪の、都会のような下町のような奇妙な風情は良く出ている。
どうしようもない男、というのが織田作之助作品の持ち味である。その意味では、この作品もまたどうしようもない男が主人公。しがない高校教師寺田悟(八嶋智人)とホステス上がりの川居一代(佐藤江梨子)。
乳房に拘泥する男も男だし、女も女。ただ、水商売に倦んで結婚した女が実は家庭的だった、なんてことはありそうな話ではある。サトエリがその辺は好演。八嶋智人は素の彼が随所に出ていて、その意味では役柄と必ずしも合っているわけではない。彼のサービス精神がついつい出てしまい、女と無縁な野暮ったい男、という感じでないのが残念。
とはいえ、素の大阪を随所で観ることができるのは楽しい。それだけでついつい甘い評価をしてしまいそう。
監督と脚本の西岡琢也で選曲したという「アルハンブラの思い出」(フランシスコ・タレガ作曲)がいい味を出している。
ちなみにこの作品、池田敏春監督(1951〜2010)の遺作になってしまった。2010年の年末、三重県の海で池田監督とみられる遺体が見つかったからだ。自殺か事故死かもわかっていないが、身元も1ヶ月後に判明するという寂しい最期だった。ご冥福をお祈りする。
原作は「夫婦善哉」で知られる大阪出身の作家である織田作之助。平成の世にこれは珍しい。監督と脚本を担当したのは、現在カルト作として名高い『人魚伝説』の池田敏春と西岡琢也。今から60年以上前、太平洋戦争中に書かれた原作を、このベテラン監督と脚本家がどのように現代に移し替えたのか興味が湧き、「秋深き」と「競馬」をちょっと図書館から借りてきて読んでみました。二作ともそれほど長くない短編です。
本作のタイトルは「秋深き」となっていますが、映画自体の骨格となる堅物の教師と水商売の女の夫婦愛、そして競馬場で出会う男との奇妙な縁のお話は殆ど「競馬」からとられています。「秋深き」から使われているエピソードは、偶然ホテルで隣室同士となった一人の男と腐れ縁夫婦とのやりとりや、病気(ここでは肺病)にガソリンが効くというお話だけで、病気の妻のお話は、前者の中で、かつてこういうことがあったと軽く触れられているだけでした。
ところで、この映画を観る上での評価の分かれ目というのは、明らかに、現代医療を否定するかのような愚鈍な夫婦の愛情の形と、それに付随する形で一気に逸脱してゆく夫の行動、ということになるのでしょうが、ここら辺りはどうでしょう。
確かに、真面目な人が見ると「ありえへん」となるのかもしれませんが、私としては、八嶋智人と佐藤江梨子のキャスティング、そしてこの二人の意外なまでの好演が、それをなんとか乗り越えていると思いました。
主演の八嶋智人はやや三枚目的位置付けの脇役として、若い方に人気の高い役者さんだと思われますが、NHKの英語でしゃべらナイトは別にして、普段、フジテレビ系の映画に出ている時なんか、私にとっては「死ね・・・」という印象しかありませんでした。
しかし、ここでの好演ぶりはどうでしょう。別に競馬場で叫ぶ姿を自分と重ね合わせたわけではありませんが、堂々と主役を張っています。確かに、こんな役ならこの人にしか出来ないだろうというレベルです。愛妻に対するストーカーぶりも板についていました。また、このキャラクターが映画として説得力を持ち得たのも、やはり監督と脚本家がピンク映画出身だったからでしょう。社会の隅っこで、名もない男女が陽の当たらない場所でズルズルと堕ちてゆく、やはり何だか妙な魅力に溢れています。
ヒロイン役の佐藤江梨子もいい。この映画が成立するかしないかはすべて彼女の 乳房にかかっていたと思いますが、男の私は黙ってそれを受け入れます。いくら仕事とはいえ、彼女の柔らかそうなおっぱいを揉みまくる八嶋が羨ましい。
佐藤浩市は普段JRAのCMに出ていますが、ここでは何故か園田(公営競馬)に出没。小池徹平クンや蒼井優ちゃんが横で見ていたら、「課長、もう止めてください!」と叫びそうなメチャクチャな馬券の買い方。出目買いをする人は正真正銘のギャンブラー。ヤバいんだ、ああいう人は。これも好演です。
2008年の日本映画界は、『おくりびと』で滝田洋二郎が映画賞を総ナメ。また、和泉聖治が『劇場版 相棒』で大ヒットを放ちました。本作の池田監督と滝田監督はピンク映画、和泉監督はロマンポルノ出身です。こういった撮影場システムの終焉後に映画を撮り始め、苦難の時代を耐え忍んだ監督たちに再び脚光があたるのは日本映画ファンとして嬉しいものがあります。
男がプロポーズするシーンにおける、クレーンを使ったキャメラもいい。ピンク映画、ロマンポルノのファン、そして八嶋智人のファンなら観て損はない一作。