レスラー(2008)THE WRESTLER
【クレジット】
【解説】 ミッキー・ロークが、かつて栄光のスポットライトを浴びた人気プロレスラーの孤独な後半生を、自らの波瀾万丈の俳優人生と重ね合わせて哀愁いっぱいに熱演し賞賛された感動の人生ドラマ。共演にマリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド。監督は「レクイエム・フォー・ドリーム」「ファウンテン 永遠につづく愛」のダーレン・アロノフスキー。 ランディ・ロビンソンは80年代に大活躍したプロレスラー。しかしそんな栄光も今は昔、それでも彼は老体に鞭打ちながら小さな地方興行に出場して細々と現役を続ける不器用な男。ひとたびリングを降りれば、トレーラーハウスに一人で住み、スーパーマーケットのアルバイトで糊口を凌ぐ孤独な日々。そんなある日、長年のステロイド常用がたたって心臓発作で倒れたランディは、ついに引退を余儀なくされる。急に戸惑いと不安で心細くなったランディは、馴染みの年増ストリッパー、キャシディに心の安らぎを求めたり、長らく疎遠となっていた娘ステファニーとも連絡を取り修復を図ろうとするのだが…。 【ウェブリンク】 【ユーザー評価】
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そんな心が傷つきやすいランディにとっていつも変わらず自分を熱気に包ませてくれるリングは精神的には浄化の場であったり、癒しの場であったりするんですね。肉体的にはボロボロになるのに。ファンにとってはプロレスの選手もアイドル歌手と一緒で所詮消耗品なんです。ワーッっと盛り上がってひととき嫌なことを忘れたり、熱くなったりして最後には忘れてしまう。大衆ってそういうもの。なのに、そんな大衆を喜ばせることが、熱くさせることがランディにとっての喜びでもあるんですね。お互いが癒し合ってるんだからいいじゃない、とも言えるけどやっぱり体を張ってリングに立つランディを見ていると心が痛かった。かなり辛いです。
映画の中で、マリサ・トメイ演じるキャシディが「『パッション』みたいね」と彼に言います。何気なく口にするセリフですが、まさに大衆の熱気と興奮とを一新に浴びながらボロボロになる彼の姿は身体を犠牲にして大衆にカタルシスを与えるという意味において、そしてそれがまた彼の魂の浄化にもなっているという意味において、まさに「パッション」で描かれたキリストの姿そのもの。
そう考えると、くたびれ、色あせたダウンを着たランディの背中からのアングルが多用されていたのも、人々が連なる救世主の背中の意味もあったのかもしれません。マリサ・トメイ、ミッキー・ロークどちらも体を張った熱演が素晴らしい。
ところでこの映画、心も痛いのですが、凶器を使ったマッチは映像的にも痛かった。ジャーマン・スープレックスとかブレンバスターとかウエスタン・ラリアートとかそういういかにもプロレスな技が飛び出すストロング・スタイルなら私はまだ好きですが、凶器系は苦手です…。気分が悪くなってしまいました。現実のプロレスの試合でも有刺鉄線のリングなんかありましたがああいうので熱くなるのって、どこかで目にした「暴力は恐怖と快感を生む」という言葉を思い出します。
実際映画でも試合前に勝ち方や段取りが打ち合わされていた。
だのに、カメラが映すレスラーのボロボロぶりはどうだ。 ショー・マンをやっているだけだとしたら何故こんな身体になるのだ。
肌は土気色、薬漬けで顔はむくみ、手足の関節はサポーターが巻かれてないともげてしまいそう。 こんな不健康そうな人間はそうそう居るもんじゃない。
これが実情か。 リングの上では雄々しくて尊敬を集めるが、会場を一歩出れば大家にもバイト先のマネージャーにも侮られてしまう。
盛りを過ぎた花形レスラーのランディ・ロビンソンはいきつけのショーパブのストリッパー、キャシディを馴染みに通う。 ランディのミッキーローク、キャシディのマリサ・トメイ、どちらも商売に体を晒す役柄だ。 両名とも優れたボディコントロールで、肉体で役者ぶりを発揮して魅せた。
マリサ・トメイなどは、僕らは年もキャリアも承知しているはずですが、それでいてあのヒップラインの見事さですから、情も深そうで僕だって常連になりたいや。 知ってりゃお茶なんか引かさないよ。
体の酷使が元で心臓にバイパス手術をし、ランディはリングを離れた人生を模索するが、キャシディとの仲は進展せず、娘と親子の絆を取り戻すことも叶わない。 バイトの時間を増やして惣菜の売り子になってはみたものの、客に落ちぶれ様を指さされるや、こんな仕事やってられるか、と店内で大暴れをする。
見ている間は、その仕事でご飯食べてる人もいるのだけどなぁ、と思ってもみたが、見終わってみると、あれは彼が挙げていた悲鳴だった事が良く判る。 体の痛みにはいくらでも堪えられても心の痛みには耐えられない。
レスラーと言う生き方は自己破滅に至る道ではないのか。 闘って闘って、上に往けばいく程に、鍛えられた、より若い挑戦者が現れて、人気が上がる程に高いパフォーマンスが求められる。 傷付いた体の限界を超えた分はクスリで埋めるしかなく。 生き急ぐ、などと言う次元の話に思われない。
最後の試合では、歓声沸きたつ会場でリングのコーナーポストにランディは立つ。 あそこがプロレスの中の一つの頂上で、しかもそこは普通に降りられる場所じゃないんだな。 飛び降りしか出来ない。 ラストショットのダイビングが身投げに見えたのは僕だけじゃないだろう。
僕はプロレスは門外漢だからちょっと出すぎた書き込みになるかもしれないが、やはり考え合わせておくのはごく自然な事と思うので、プロレスラー三沢光晴選手の死についても敢えて触れておきたい。
洩れ伝え聞くところによれば三沢選手という人は受け身の達人だったと言う。 だから、きっと後進の若手には、受け身の出来ないヤツは死んでしまう、選手としてリングに上げられない、と教えていたと思うのだ。
起き上がれない姿をファンに見せるのは無念だったろう事は疑い無いが、受け身に失敗したからマットに命を散らすんだ、という風に納得出来るところもあったのじゃないか?、こんなのは言いすぎだろうか。
でも実際に起きた事の印象と映画「レスラー」の感想は重なって、プロレスの因果の深さをより一層強くした次第。
エンドロールに掛かるブルース・スプリングスティーンのレスラーの歌。 "道端を這いずっている3本足の犬それはオレだ、風とケンカする片目の男が居ればそれはオレだ"、
か、悲しすぎる…
本作は、(勝敗の如何に関らず)、『ロッキー・ザ・ファイナル』みたいな華々しい復活劇ではない。どうしようもない、それでいて愛すべきダメ人間への賛歌だ。
ミッキー・ロークは、中年男の哀愁が滲み出ていて素晴らしい。
彩度を落とした映像、ランディの背後を付いて回るかの如きカメラワーク(撮影、マリス・アルベルチ)は、まるでドキュメンタリーかと錯覚するほど。
レスラーたちが「段取り」を付けたり、「ヤラセ」をする光景は微笑ましい。試合後の控え室で、敵味方関係なく拍手を送り、「よかったよ」、「ありがとう」、「頑張れ 才能ある」と会話を交わす彼らは、実に、清々しい。
これで、対戦相手をぶんなぐれと自らの義足を差し出すファンも愛おしい。
ランディは心臓発作を起こして、「死にかけ」、一旦は、引退を決意。スーパーでのアルバイトをフル・タイムに切り替え、「ロビン」という名札を付けて働くその姿、閑散とした、ファン・フェスタも寂しい。
ランディが想いを寄せる、ラブリー・キャシディこと、「コブ(ジェームソン、9歳)つき」のストリッパー、「お客と一線は越えない」主義のキャシディ=マリサ・トメイも、若い客から、母親と同年齢と揶揄されるのは切ない。
キャシディの助言に従い、ランディは疎遠になっている娘、ステファニー=エヴァン・レイチェル・ウッドとの関係修復を試みる。「思い出の場所」で、彼が、「俺はボロボロのクズで/孤独だ」、「お前に 嫌われたくない」と率直に心境を吐露するのには胸がつまりそうになるし、父娘で踊るのにはじいんとする。
しかし、そうした感動を裏切るように、ランディは、行きずりの女と一夜を過ごした挙句、大事なステファニーとの約束をすっぽかしてしまう。こうしたところが、ダメ人間のダメ人間たる由縁だ。
「中東の獣」、アヤトッラー=アーネスト・ミラーとウィルミントンでの、「20周年 運命の再戦」は、ランディのバイパス手術の跡が痛々しく、またいつ心臓発作起こすのではないかと観ていてハラハラさせられる。
それでも、ランディにとって、「あそこが俺の居場所」であり、「痛いのは外の現実の方」なのだ。
コーナーポストからダイブするランディ――。鮮やかな幕切れには、後頭部の辺りがチリチリと痺れた。http://blogs.yahoo.co.jp/popcornandfella
この誰もが最後どうなるかわかる映画のなかで、ミッキー・ロークというもう主人公ランディとダブりまくるような俳優がとてつもない求心力を発揮しているのは確か。もう最後の場面なんか、これまでの俳優人生が出た地じゃねぇか、とおもえるような表情です。いやぁナイスキャスティング。
物語をあまり広げなかったのも良い。娘とのイザコザとかストリッパーとのロマンスなどにいくらでも行けたのに、戻るところはレスリング。世間は辛くても、リングがあって観衆がいればそこは自分の居場所、素晴らしいじゃありませんか。正直主人公は欠点だらけの人間ですが、そんな愛すべき人間臭いランディの決断はやっぱり感動してしまいました。
そして音楽のメッセージ。ランディの入場曲、キャシディの踊る曲、などなど見事に80sハードロック。ラット、アクセプト、ガンズ、モトリー、スコーピオンズ、AC/DC、これらが主人公を象徴しているのは明らか。先輩ツェッペリンのように伝説にはなれず、グランジが彼等に「ダサい」のレッテルを貼った。しかし、ランディは言います「90年代は最低」。彼には内向的な弱さを見せるロックは合わないのです。観衆が盛り上がる魅せるパーティ・ロックを愛し、自ら観衆が在って成り立つ「プロレス」のリングに戻る。カッコいいじゃないですか!時代遅れだけどストレート!後追い世代の自分ですが、ガンズが流れた入場は思わず鳥肌が立ってしまいました。
この作品を見たのは三沢光晴氏が亡くなった後だっただけに、余計に胸に来るものがありました。
つまり、プロレスラーは引退するかリングで死ぬか、その瞬間まで闘い続けるのだと改めて思いました。http://okepi.jp/movie/2009/07/post_55.html
しかしそれ以上に痛いのが主人公のレスラーを取り巻く状況なんですな・・・・。娘には嫌われ、疎まれ、心臓病でジワジワジワジワ体が蝕まれていく。かつての栄光など何処にも無い、灰色な日常、絶望・・・・・。
しかし、ミッキー・ローク=レスラーは老体に鞭を打って再び栄光のリングへと立つ。このシーンで涙を流さないファンはいないでしょう。
欲を言えば、マリサ・トメイとのエピソードやその他の人間関係の描写がやや不足気味で求心力に欠ける欠点もある。だからラストまでの持って行き方が少々強引で呆気なく終わってしまった印象も受けなくはない。
まあ、それを差し引いても本作が傑作であるという事に異論は無いですがね。
今年のベスト7。痛々しさはダントツだったので。
そして、ともかくミッキー・ロークが素晴らしい。どれだけ傷だらけになろうとも、「過去の人」と冷笑されようとも、リングで闘うことしか知らない、「普通の生活」を送ることができない、不器用な中年男の悲哀を、見事に背中で語っていた。リングでの動きも様になっていた。相当身体を鍛え、またレスリングのトレーニングをしたのだろう。自らの曲折した人生を丸ごとぶつけたかのような、入魂の演技であった。
またマリサ・トメイがいいのな。まだまだ魅力的な肉体をしているが、ストリッパーとしては薹が立っており、人気の衰えは否定できない。ミッキーの好意は嬉しいが、息子もいるし、恋に溺れ、夢に浸るわけにはいかない・・・そんな複雑な心境を上手く表現していた。セクシーさとくたびれ加減のバランスが絶妙で、これまたリアリティがある。落ちぶれた者同士の、互いの傷を舐め合うかのような、未来のない恋が、何とも切ない。
ファイト・シーンは意外に少ないのだが、会場の設営といい、試合運びといい、客の反応といい、雰囲気は良く出ている。相当よく研究していると思う。
そして日常部分の描き込みは非常に周到。ざらついた感触、くすんだ色調が、ランディの灰色の日常を的確に表現している。お涙頂戴に流れず、ドキュメンタリー・タッチで淡々と進むのも心憎い。一連のシーンでは、なぜランディはここまで落ちぶれたのか、どうして父と娘はここまで不和になったのか、そういったドラマを盛り上げるために本来不可欠であるはずの説明は巧妙に排除されている。描くのは、ひたすらにランディの痛々しい「現在」。彼がいかにして、ここに至ったのかは、彼の皺と傷跡に語らされている。この抑制された筆致に、監督の並々ならぬ技量を感じる。安っぽい感動ドラマに堕することを回避するための禁欲的な姿勢がラストに活きてくる。
最後の試合でのマイク・パフォーマンス、これが泣ける。ああいう煽り方はプロレスでは定番であり、ミッキーのセリフも実はありきたりの陳腐なものだ。ファンたちは、そのお定まりのマイク・パフォーマンスを耳にして、無邪気に喜ぶ。しかし我々観客は、ミッキーの演説に、万感の思いが込められているのを知っている。これは涙無しでは聴けませんよ。ショーという「虚」に、レスラーの「実」が重ね合わされる。その虚実ない交ぜの魅力がプロレスの本質であり、それを踏まえた上での名シーンなのである。
ラスト・シーンとエンディングの曲、もう涙が止まらなかった。
そんな言葉で彼は幾度語られてきただろう。そしてその彼と重なるようにボロボロな人生を生きてきたランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン。
いったんはそんな生き方を捨てよう(=引退する)とするランディだが、不器用な彼は和解出来そうに思えた娘に愛想を尽かされ、ダンサーのキャシディことパム(マリサ・トメイ)にも拒まれる。ならば帰る場所はリングしかないじゃないか…。
冒頭、カメラは主人公の背中を追いかける。なかなかランディの表情を捉えない。疲れきった男の相貌には齢が刻み込まれている。幾多の傷痕が生々しいが、それらはほぼ全て納得づくの傷。会場を盛り上げるためには自傷も厭わない、それがファンへのサービスなのだ。
不器用としかいいようのない男の切ない、でも輝いてもいる生き様をミッキー・ロークが見事に演じた。そしてマリサ・トメイの慈愛に満ちた眼差しもまた忘れ難い。
ブルース・スプリングスティーンのテーマもよかった。名作。
ミッキー・ロークの過去の行状を知っていれば更に好きになる。
両方知らなくても人生の機微に敏感であれば感応できる。
そんな映画でした。
エンドクレジットが流れても大方の観客が席を立たずに最後まで観てました。
滋味で大人の映画です。R-15と言わずR-30でも良いくらい。
ラストの回答は一つの人生のあり方を、確実に伝えている。 はー・・・(ため息)
気を取り直して。
W・ヴェンダースがこの作品を激賞したのも頷ける。あの人もそれはそれは残酷な「パリ、テキサス」を作ってるからね。
好きか嫌いかは別として、「過去と生きる」とはどういうことかをストレートに突きつけている。
「バーフライ」ではないけれど、今のミッキー・ロークはC・ブコウスキーにそっくりだとも思った。
「レジェンド・オブ・メキシコ」や「シン・シティ」でも異彩を放ったが、
とにかく素直に彼の代表作となった本作に敬意を表したい。
彼を知らない若い人はピンとこないだろうけれど、しかしこの演技の迫力はなにかを伝えるに充分すぎる。
マリサ・トメイもとても素敵だ。
「スラムドッグ$ミリオネア」もそうだけど、最近の英語圏映画は「拾われた」作品に何かがある。
それにしても、出資者推薦のニコラス・ケイジ断り、制作費が削られてもミッキー・ロークに拘ったダーレン・アロノフスキーに賛辞を惜しみません。もちろん、自分の人生を重ね合わせては観られないミッキー・ロークが素晴らしいのは間違いないのですが、個人的にはマリサ・トメイの存在感も圧倒的でした。『その土曜日、7時58分』とは打って変わって、年増で下品な雰囲気をタップリと漂わせています。なんとなくですが、日活ロマンポルノで人気のあった女優達が持っていたオーラに似ているような気がしました。この映画はれっきとしたアメリカ映画ですが、スクリーンから放ってくる匂いに“atg”の香りを嗅いだのはオイラだけでしょうか?おそらく、一般的にも個人的にもこの映画より良い作品はあると思いますが、小生にとっては今年のベストにしなければならない作品です。話は変わりますが、ブルース・スブリングスティーンはやっぱりいいなぁ・・・。
アロノフスキーの4本目となる今作は『レクイエム・フォー・ドリーム』と同じく、持って生まれた“性”と言うか、“業”と言うか、そこから離れられない人間の哀しみを恐ろしいまでに淡々と描いており、その手法はアロノフスキー節と呼べるモノなのかもしれません。次回作はナタリー・ポートマン主演のサイコスリラーだそうで、今から楽しみです。
先日、プロレスラーの三沢光晴氏が試合中のバックドロップによって頭部を強打、頸髄離断により死去なされました。享年46歳。合掌。
とにかく企画の勝利だろう。これは「落ち目のレスラーの映画」ではなく、「落ち目の俳優が落ち目のレスラーを演じた映画」なのだな。俳優と配役がこれだけマッチした映画も珍しいんじゃないか。
ストーリーは、もうひと工夫あっても良かったけど、ミッキー・ロークに対する複雑な感情が映画を支える。「ミッキー・ロークって誰?」という人が見たら、地味な印象しか受けないかもしれないね。
肉体を使ったパフォーマンスで観客を喜ばせる、という点ではダンサーのキャシディも同じ。容姿・肉体の衰えは彼女を栄光の座から引き摺り下ろす。彼女はランディが好きなのだが、一緒になろうとはしない。たとえ一緒になっても幸せにはなれないことを見抜いている。ランディとはそういう男だ。彼女は自分自身の生活に帰ってゆく。そこには子供が待っているからだ。
一時代に脚光を浴びた人間が、ついには生身の自分自身を喪失する哀しみを描く。“過去の栄光”、それは“現在の呪縛”。人によっては“怪物”でもある。だが、自分とは何だろう?我々は多かれ少なかれ、他者の意識下で行動を決定しながら生きている。つまり我々は生きたいように生きているのではなく、他者によって与えられた役割を生きているのだ。ラストでランディは悲壮感とともにトップロープに屹立したが、我々はどこに向かって生きているのか?
ミッキー・ロークが中年の悲哀漂うプロレスラーを見事に演じている。プロレスの試合の痛みが直に伝わってくると同時に、プロレスってそういうことなんだよなぁ、と妙に納得させられる作品でもある。数多くいた“ランディ・ロビンソン”達へのオマージュ。もちろん、ミッキー・ロークへのオマージュでもある。
彼の存在だけで映画をグイグイひっぱっていってる。
最初こそノリノリで始まるものの、映画全体はいたって素朴な作り。
この素朴さが強力なリアリティを持っている。
エヴァンも上手いが、マリサ・トメイの頑張りにも注目してあげたい。
ダンスはやばいです。いいんですか、そこまでして。
監督も地味に良い仕事しているんだろうが、見どころと聞かれたら
やっぱりミッキー・ローク。(マリサ・トメイも)
ラストシーンがまたいい。
ただし、映画はびっくりするほど地味な作り。ランディの栄光の日々は過去のものとなり、今やドサ廻りのプロレス興行でなんとか暮らしている赤貧レスラーの姿を残酷に写す。その貧乏ぶりは、観ていて本当に哀れになるくらい。おまけに今までの歴戦のダメージがたたって体はボロボロ。腕や脚をテープでぐるぐる巻きにして、鎮痛剤やステロイドでなんとか持ち堪えている、そんな有様が痛々しい。レスラーがいかに肉体を酷使しているのかが痛いほど伝わってくるのだ。
面白いのは、リングの上では敵同士だが、リングの外ではみんなが和気藹々としていて、控室でこれから闘う相手と「今夜の試合はどうする?」なんて打ち合わせをしている。もちろん、プロレスがこういうことで成り立っているのを知ってはいたけれど、こんなにもみんなが仲良しなのはちょっとびっくり。試合中に使う凶器を決めといて、リングの上で血まみれになる。捨て身のレスラーたちのエンタメ精神には、素人目から見ても感服するしかない。レスラーの生き様を描くことでレスラー讃歌になっている反面、引退後のレスラーの生活が相当に厳しいことも描いている。
ドキュメンタリー・タッチで淡々と進むため、ファイト・シーンに溢れた映画を期待しちゃうと肩透かしを喰らうが、過酷なレスラー生活とランディが自分の「居場所」がリングの上にしかないことを自覚するのを見せるにはこの手法で正解だと思う。疎遠になっていた娘と再会して和解できたのも束の間、再び娘に嫌われたランディには家族の安らぎよりも、闘う自分の姿を見てくれるファンの声援を選ぶ。例え、その身が滅ぶと分っていても。胸の痛みを堪えながらも闘うランディの姿に、熱いものが込み上げてくる。それを対戦相手が気遣うのも泣けてくる! ランディの最期の雄姿は、神々しいくらい!!
ミッキー・ロークといえば、僕が真っ先に思い浮かべるのが「ナインハーフ」なもんだから、あの80年代の優男がこんなにも粗野で無骨で逞しい男に変貌していたとは驚き。その片鱗は「シン・シティ」辺りでも見受けられたけど、この映画における肉体の鍛え方は半端じゃない。かつての「猫パンチ」が嘘みたいに、本格的なファイト・シーンに挑んでいるんだからたいしたもんだよ。それでいて不器用な男の一面が表れていて、娘のステファニーに今までの自分の行いに許しを請う姿と流した涙に、ちびっとだけホロリときたよ。
ランディの心の支えとなるキャシディ。演じるマリサ・トメイがまたイイの。ストリッパーという役柄ゆえ、セクシーなポールダンスやヌードも披露してくれるけど、キャシディがランディへの想い気付いてダンスを途中で放っぽりだして彼の元へ走る姿になによりもグッときたね。魅力的だけどストリッパーとしてはトウが立っている彼女は、自分のことを必要としてくれるランディがかけがえのない存在だと気付くのだが…。
出番は少ないがエバン・レイチェルもイイねぇ。父の流した涙にステファニーは、ランディのことを許す気になる。父と娘の関係が朽ち果てたボールルームで修復するなんて、いいシーンだよ。それなのに…。僕としては、ステファニーがあのダサい服を着てくれたら嬉しかったんだけどねぇ…。でもま、ここでまた親子関係が修復しちゃうと意味がないんだよねぇ。
プロレス界を舞台にした映画だからか、懐かしのヘビメタが全編に渡ってBGMとして流れる。で、これがリアルタイム組には堪らなくツボだったりするのよ。ラットの曲でランディとキャシディが盛り上がったりと、80年代メタルへの愛が炸裂!! 確かに、グランジの登場で80年代のいわゆるヘア・メタルは「アホ・メタル」と揶揄されて90年代の音楽シーンから一掃された。今やモトリー・クルーやデフ・レパードの曲を聴いているヤツなんていないだろうよ(なわけないか)。ミッキー自身を音楽シーンの変貌と重ねているわけだね。GNRの曲が高らかに流れるシーンに燃えて、泣けて!
騒々しい曲に全編が彩られているからこそ、エンド・クレジットに流れるボスの主題歌が心に染み入るんだよね。
それから少し経って、「アクターズ・スタジオ・インタビュー」にマット・デイモンが出てるのを観ました。『ボーン・アイデンティティ』出演直後の頃のものです。
その中で「俳優として心がけてることはあるか?」という質問に、マットは、ミッキー・ロークからかけられた言葉について語りました。
彼が『レインメーカー』に主演した時、コッポラ監督によって、久々にメジャー作品に出演となったミッキー・ロークが、「現場には遅刻するな。スタッフにも敬意を払って、どんな役でも全身全霊で演じろ。俺はそれをしてこなかった。」と。
マットがTV番組でわざわざこのエピソードを話したのは、ミッキー・ロークのことを、反面教師的に思っているという事じゃなく、その時の言葉に感銘を受けたからでしょう。ミッキー・ローク自身、落ちぶれたのは身から出た錆と、重々自覚してたわけです。
そしてこの『レスラー』です。役が来た時、「とことん、やれるところまでやってやる」と思ったのでしょう。90年以降の作品での演技とは、気迫がまるで違います。役と演者が一心同体となってますからね。
この主人公のレスラーの人生は、どん詰まりなんだけど、荒んではいない。だから観ていて心が重たくなるどころか、なにか清々しさすら感じます。
私はロッキー・バルボアも好きですが、例えばロッキーのように、戦う魂はまだ死んでない、とか人生訓的なことではないんですね、この主人公の場合。
とにかくゆっくり眠れる場所と、食べ物のために、金を稼がなきゃならない。全身痛みに覆われても、リングに上がり、足りない分はスーパーでバイトする。どんなにロクでもない事態や、心が折れそうなことに見舞われても、
“生きている限り、死ぬわけにはいかない”
そういうことなんじゃないか。
コニー・アイランドでの感動的なシーンがあるんだけれども、そこで物語を収束させてかないのが、この映画のタフなところです。
それからマリサ・トメイ。ストリップ・バーで、吹き替えなしで、トップレスで踊ってるんだけど、身体の線が全然崩れてない。40半ばで天晴れ!
この映画の雰囲気がどことなく70年代映画風で、彼女の役は、当時だったらヴァレリー・ペリンとかが演りそうですね。
ミッキー・ロークが、自分の過去を投影して原案を書いた『ホームボーイ』。あれも同じリングに生きるボクサーの話で、舞台も『レスラー』と同じニュー・ジャージー。あれからちょうど20年なんですね。
ラストに流れるブルース・スプリングスティーンの書き下ろしの主題歌は、もうダメ押しです。今年はこの映画を観れたことで良しとします。
プロ野球選手の清原のように、普通の体から筋肉のお化けと化したミッキー・ローク。
こんな形で、復活するとは思わなかった。
「80年代最高!、なのにニルヴァーナの登場で」って自分のことだろうな