冷たい熱帯魚(2010)COLDFISH
【クレジット】
【解説】 「紀子の食卓」「愛のむきだし」の園子温監督が、当時マスコミを賑わせた“埼玉愛犬家殺人事件”をベースに、ふとしたはずみから極悪非道な男に取り込まれ、後戻りの出来ない深い闇の世界へと落ちていく主人公の姿を、ブラックユーモアを散りばめつつ鮮烈に描き出す衝撃の問題作。主演は「ちゃんと伝える」の吹越満、共演にTV「湯けむりスナイパー」のでんでん。 2009年1月14日。小さな熱帯魚屋を経営する社本信行とその妻・妙子は、万引で捕まった娘・美津子を引き取りにスーパーへと向かう。すると、その場に居合わせた店長の知り合いという村田幸雄の取りなしで、美津子は何とか無罪放免に。村田も熱帯魚屋のオーナーだったが、規模は社本の店とは比べものにならないほど大きなものだった。人の良さそうな村田は、美津子を自分の店で預かってもいいと提案、継母である妙子との不仲に頭を痛めていた社本は、その申し出を受入れることに。さらに村田は、高級熱帯魚の繁殖という儲け話にも社本を誘い込む。その口の上手さと押しの強さを前に、いつの間にか村田のペースに呑み込まれてしまう社本だったが…。 <allcinema> 【ユーザー評価】
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何気ない日常の家庭ドラマから始まり、次第にポルノ映画からヤクザ映画そしてホラー映画と目まぐるしくシーンが移っていくが、その過程を社本と村田の二人の人物を幹に自然な形で見せていくので破綻は無い。むしろ、最初は狂気そのものであった村田の言動に慣れていき、最後は主人公が狂気に走るのだが、すべて納得してしまうのが実に怖い。徹底的に人間の本能をえぐり出そうとする園監督の迫力は凄まじいばかりだ!
本作で村田を演じたでんでんが、日本アカデミー賞助演男優賞を獲得したが、共演の吹越満や黒沢あすかも演技賞ものの熱演である。神楽坂恵のエロさもハンパじゃない。
「ヒミズ」はどうなるのか。少し不安。
とにかくToo Muchだった。
でんでんは凄い。
この辺はサム・ライミがよく心得ていて、「死霊のはらわた」などが良い例だろう。
この「冷たい熱帯魚」はその笑いに変わるギリギリの線をいったりきたりし、観客を狂気のるつぼに叩き落とす。
(人によっては笑ってしまうシーンも多々あるだろう)
前半はリアルな家庭環境が描かれる。
主人公は熱帯魚店を営む地味な男・社本。
美津子という娘が1人いるが、最初の妻が死んで新しい妻・妙子をもらってからというもの、
娘は非行に走っている。
ある日、娘の美津子が万引きをしてしまい、社本と妻が呼び出される。
(妻・妙子の喫煙を気づかないフリする社本の描写が巧い)
そこで「村田」という男と出会うところから全てが始まる。
特筆すべきはでんでん演じるこの「村田」の強烈なキャラクターだろう。
一見人の良さそうな外見をしており、みな彼に魅了されていくが
ふとしたところでガラリと豹変するのが恐ろしい。
気に入らないものは叩き潰し、危なくなると泣きわめいたりしてその場をひょうひょうとかわす。
村田は人の内面をエグり出し、感情を操り、自分の思うがままにコントロールする天才だと思う。
暴力と性とユーモアが同居したカオスなキャラクターでありながら
それをリアルに演じきったでんでんは凄い。
書くのがだるくなってきたのでここらでやめるが、
狂気の振り切れる後半はもはやファンタジックになっており
ここを受け入れて楽しめるかは見る側次第だろう。
グロテスクな描写も多いが、最後まで飽きない面白さがある。
そこに救いや安堵を見出す生き物だと感じさせられた作品。
混沌とした思いの中では生きられない。
この作品に描かれているのはまさにその混沌だろう。
純粋の対極にある混沌はまさに汚く雑多で、誰もが避けて通るが、
本当の自分なんてものはそんな場所でしか見出せない事も、
薄々分かっている。だから人間はずるい生き物。
吹越演ずる冴えない熱帯魚屋の主人公も、
バイオレンスに覚醒し妻を殺害する主人公も同じ主人公。
決して「狂気」のひと言で片付けられない。
ふと、サム・ペキンパー監督の「わらの犬」を連想した。
でんでんの自然な怪演は、この作品の根底を支えている。
近年の邦画ではNo1な演技だった。
観終わってみると、結局神楽坂恵のおっぱいしか残らなかった印象(爆)
R18指定の割にはグロ描写も大したことなく、パワフルという表現でいえば
「愛のむきだし」の方がよっぽど良かったと思う。
ただ、でんでんの「このおじさん、前にどこかで会ったような・・・」的な
近所に住んでそうなおっさんのリアルな演技は凄かった。
映像を見て非常に強い嫌悪感を抱きました。
みなさん、こんなの見て面白いですか?
「青くて丸くてツルツルした星」を思い描いている馬鹿どもに、本当の地球を、本当の人間の姿を教えてやれ!
ラストの少女が死んだ父親に食って掛かり大笑いするシーンは不自然でとってつけたようでした。
周囲や年長者に舐められたくない少女は、年齢よりも上に見せようとしますので、化粧もきつく、あのような子供っぽい可愛らしい顔はしていません。
失神した娘が気がついた後に、もう一度なぐって気絶させるシーンもしかりです。
監督としては救いのなさを徹底させたかったのかもしれませんが、そのために実際の事件をモデルにしている割りにはリアリティが欠ける作り物的な映画になったようです。
現実と錯覚しかねない演出こそ必要な映画であり、殺害解体シーンだけをリアリティ溢れる表現にしても単なるゲテモノ趣味、ホラー系映画になってしまいます。
全体に人間の描き方が表面的で極端で浅いです。
繊細な人間の変節を描きながら繊細さが微塵もありません。
ホラー系ポルノ映画を無理にヒューマンタッチに仕立てた映画です。
全体に劇画ちっくな残念な映画でした。
「オレは内面のねぇ奴は嫌いなんだよ!」
では、その内面とは一体何なのだろうか。
それを村田は終始探し出そうとしているような気がする。
人間は二面性を持った生き物だと思う。
それは“本音”と“建前”、“本性”と“理性”といったものである。
村田は極端に、それらの後者を嫌う人間だ。
見栄や偽善や虚飾と言ったものをぶっ壊して、その内側に隠れている本来の“人間性”を呼び覚まそうと企てている。
だから、文字通り相手を引っ叩きまくって、外側から内面を守る邪魔なカベを崩壊させようとする。
あるいは、相手の欲望を挑発し、内面を引きずり出そうとする。
「ボディーを透明にする」のも、そういう意味での言い方だろう。
けれど、そんな村田は決して気が狂っているようには見えない。
むしろ、自分の中に一本しっかりした筋が通っていて、それに従って生きているように見える。
その自分なりのルールのようなものは、世間一般の常識や倫理に照らせば、決して許されないことは明白である。
だが、そんなことは明白であるにもかかわらず、何の悪気も見せない。
だからこそ恐ろしい。
一種のブラックジョークや悪ノリしたテンションで、あまりにも手際よく、そしてあまりにも日常化された殺人。
そんな中に不器用で弱々しい人間である社本も、あっという間に取り込まれてしまう。
人間を観察し、その弱みに付け込んでいくしたたかさ。
そんな姿に、可笑しさと恐ろしさと同時に、図らずも“人間性”をも感じてしまう。
それは彼が本作で1番、自分に正直に生きているからだろう。
村田は社本にこうも言い放つ。
「おめぇの言う地球は、青くて丸くてツルツルした星のことか?オレの言う地球はゴツゴツしたただの岩だ!」
自分の中の“ゴツゴツした岩”をこれでもかというほど剥き出しにする村田。
そんな彼の姿は、いい子ぶったり、猫を被って生きているような我々に強烈なメッセージを叩きつける。
村田の本性が暴かれた後の、彼の小芝居ともいえる立ち振る舞いには思わず笑いが出てしまう。
しかし、そのような小芝居を演じて生きているのは我々も同じではないのか。
そんな生き方で果たして幸せだと言えるのだろうか。
偽りの自分を演じて生きることで、自分本来のアイデンティティをも見失った人間たちに、園子温は皮肉と嘲笑も交え、意地悪でありながらも、至極尤もな問いかけをしているのだと思う。
それにしても、個人的には「愛のむき出し」でも感じたことなんだけど、監督の宗教に対する突き放し方に強く共感してしまうのだ。
C.ノーランと並んで、監督名で選んで観る、ほんとに数少ない監督だ。
劇中には、薄汚れたキリスト像や壊れたマリア像が幾度となく映し出され、宗教的な品々に満ちた場所で残虐な行為がなされる。それは、神や天国での救済を否定し、世の人々の胸にある希望を否定するニヒリズムである。
ニーチェは「神は死んだ」と叫び、神も天国も一切の救いを否定した。否定し尽くした先に残ったのは、ただ人間であるという事実だけだ。そしてそれこそが、永劫に続く世界の中で、私たちが依って立つ唯一の基礎なのだ。
http://movieandtv.blog85.fc2.com/blog-entry-202.html
秩父の例の夫婦が起こした事件がモデルになってるけど、ペットショップが熱帯魚ショップに設定変更されてて、ビタミンドリンク飲ませて、毒殺するという方法の説得力が弱まってます。あの店主はペットショップをやってることで、獣医から犬猫の殺処分用の筋肉弛緩剤を手に入れていて、それをドリンクに混入させてた訳です。熱帯魚屋だと毒物の入手法をどうしたのか?
まあそこは気になったけど本筋じゃない。血まみれ、内臓まみれの描写もガッツリあるけど、本筋じゃない。おぞましいのは、人が人に、成すすべもなく、精神的にも状況的にも支配されていく過程を、至近距離からつぶさに見させられるということ。
これは恫喝され続ける映画でもあり、感情が麻痺してゆく吹越満目線にならざるを得ませんね。大量殺人などを犯す人間の特徴に、詐欺師的な、人を言葉でたらし込んでゆける、そういう能力を持つ者が多い。
でんでんの演技は怒鳴る、凄む、なだめる、おどけると、圧巻のテンション。これだけ振り切った役は演ってて気持ちいいでしょうね。吹越満の受けに徹した演技のリアルさが、もう息苦しくなるほどで、それが終盤のある種のカタルシスを生んでるんですね。変な表現だけど、健さんの任侠映画の展開のよう。
園子温監督の作品に見られる「父親的なるものへの愛憎」とか「父性の卑小さ」が、今回はそれこそ「むきだし」になってますね。映画の冒頭で冷え冷えとした吹越満の家族の食事風景を見せ、でんでんの恫喝は、まともな父親とはどういうもんか教え込んでるように聞こえてきます。
内臓を捨てろと言われても呆然としてる吹越に、「おまえ、俺たちが居なくなったらどうすんだよ!」どうすんだよって…。
黒沢あすかの、亭主より狂ってるかもしれないエロ女房っぷりはもとより、女優たちはそれこそ「体当たり」です。黒沢あすかとセックスした後、やっぱり毒殺される渡辺哲の身体が、死後硬直して、バスタオル越しに勃起してるとか、とにかく描くことに妥協がないです。
願わくば「なんかwinkの曲みたいな題名」とか言ってデートムービーに選んで、ドン引きするカップルが続出することを。