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立ち去った女(2016)

ANG BABAENG HUMAYO
THE WOMAN WHO LEFT

メディア映画
上映時間228分
製作国フィリピン
公開情報劇場公開(マジックアワー)
初公開年月2017/10/14
ジャンルドラマ

2017年10月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

立ち去った女

(c)


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【解説】
 第73回ベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたフィリピン映画。無実の罪で30年間服役していた女性の復讐の旅路を、3時間48分の長尺にして全編モノクロ映像で描き出す。主演は本作が17年ぶりのスクリーン・カムバックとなったチャロ・サントス。監督は「北(ノルテ)―歴史の終わり」のラヴ・ディアス。
 かつて小学校の教師だったホラシアは、身に覚えのない殺人の罪で30年間も服役していた。しかしある日、同じ服役囚で親友のペトラが、殺人の実行犯は自分で、それを指示し、ホラシアに罪を着せた黒幕はホラシアの元恋人・ロドリゴだと告白し、自殺する。ついに釈放されたホラシアだったが、夫は既に他界し、息子も行方不明になっていた。自分の人生を破壊したロドリゴへの憎しみを募らせ、復讐の旅に出るホラシア。そんな彼女の前には、社会の底辺で助けを必要とする人々が次々と現われ、どうしても放っておけないホラシアだったが…。
<allcinema>
【ユーザー評価】
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【ユーザーコメント】
投稿者:黒美君彦投稿日:2017-12-18 16:19:02
【ネタバレ注意】

ラヴ・ディアス監督作品を、この監督としては異例の短さだという228分の作品で初体験した。
舞台は1997年のフィリピン。貧富の格差は著しく、誘拐をはじめとする凶悪事件は日常茶飯事。「善」と「悪」を天秤にかけたら、間違いなく「悪」が重いフィリピン。
かつて小学校の教師だったホラシア(チャロ・サントス・コンシオ)。
彼女は30年にわたって刑務所で過ごしてきた。そんな彼女の冤罪が晴れ、釈放される。
真犯人は刑務所内で仲のよかったペトラ(シャマイン・センテネラ=ブエンカミーノ)。彼女は告白した後自殺する。
ペトラの供述書から、罪を着せた黒幕はホラシアの昔の恋人だったロドリゴ・トリニダッド(マイケル・デ・メッサ)だと分かる。夫は死に、息子は行方不明になったホラシアは復讐を決意するが…。

モノクロの固定カメラは身じろぎもせず、長回しでシーンを切り取る。
このカットの緻密なこと。それはあのテオ・アンゲロプロスの『旅芸人の記録』を想起させるが、こちらは飽くまで卑近な湿度の高いフィリピンの光景だ。
昼間は敬虔なクリスチャン。夜は帽子を目深にかぶり、男のような振る舞いをするホラシア。
彼女は困っている人を見かけると、自然に助けの手を差し出す。
それはバロット売り(ノニー・ブエンカミーノ)であり、物乞いの女マメン(ジャン・ジュディス・ジャビエ)であり、ゲイのホランダ(ジョン・ロイド・クルズ)だ。
マメンは知的障害もあるようだが、彼女は「悪魔だらけだ!」と叫びながら駆けていく。
実際、純粋な彼女の目から見れば、世界は悪魔的にしか見えないのかもしれない。
(ちなみに「バロット」とは、孵化しかけたアヒルの卵のことで、フィリピンの一般的な食べ物だとか)

ホラシアとホランダが“サンセット・サンライズ”を歌うシーンが美しい。ホランダがホラシアの部屋に倒れ込んできたおかげで彼女がロドリゴを殺さずにすんだ、悪をなさなくてすんだ、という言葉を受け、回復したホランダは、部屋をそっと抜け、ロドリゴを殺す。分け隔てなく愛してくれたホラシアのために。
ホランダがロドリゴを殺した後、映像はそれまでの緻密なショットから、ボヤけた映像に変わる。
ボヤッとした背景の中からホラシアが歩いてきて、少しずつピントが合っていく、というシーンもある。
それはホラシアの行き場のない感情をトレースしたものだっただろうか。

ラヴ・ディアス監督は、トルストイの短編『God Sees the Truth,But Waits』(神は真実を見そなわす)にインスピレーションをかきたてられ、本作を製作したのだとか。2016年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したのは、伊達ではなかった。
神の不在を感じざるを得ない現代フィリピン社会はもちろん、人間の業までもモノクロで描いた傑作だ。

【受賞履歴】
(■=受賞、□=ノミネート)
■ 金獅子賞ラヴ・ディアス 
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