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運命は踊る(2017)

FOXTROT

メディア映画
上映時間113分
製作国イスラエル/ドイツ/フランス/スイス
公開情報劇場公開(ビターズ・エンド)
初公開年月2018/09/29
ジャンルドラマ/ミステリー
夫婦のもとに新たな知らせが届く。息子の戦死の報が誤りであったと。
遠く離れたふたつの場所で3人の運命は交錯し、すれ違う――。

2018年9月29日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

運命は踊る

(c)Pola Pandora - Spiro Films - A.S.A.P.Films - Knm - Arte France Cinema - 2017


 Photos

【解説】
 「レバノン」のサミュエル・マオズ監督が、息子の戦死という誤報に翻弄されたある家族がたどる不条理な運命を描き、ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリに輝いたミステリー・ドラマ。主演は「オオカミは嘘をつく」のリオル・アシュケナージと「ジェリーフィッシュ」のサラ・アドラー。
 ある日、ミハエルとダフナ夫妻のもとに、息子のヨナタンが戦死したとの知らせが届く。ダフナは気絶するほどショックを受け、気丈なミハエルも役人の対応にいら立ちを募らせていく。そんな中、やがて戦死したのは同姓同名の別人だったと訂正の知らせが届く。ダフネがほっと胸をなでおろすのとは対照的に、ミハエルは軍への不信感から激高し、息子をすぐに呼び戻すよう要求する。一方ヨナタンは、戦場の緊迫感からは程遠い閑散とした検問所で、仲間の兵士たちと一見おだやかな時間を過ごしていたのだったが…。
<allcinema>
【ユーザー評価】
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【ユーザーコメント】
投稿者:黒美君彦投稿日:2018-10-17 15:38:31
【ネタバレ注意】

不思議な余韻の残る作品だ。冒頭、イスラエルのテルアビブに住む夫婦のもとに、息子ヨナタンの戦死の連絡がもたらされるところから物語は始まる。悲嘆に暮れる両親。ところが、戦死は誤報だったことが明らかになる。だが父親のミハエル(リオル・アフケナージ)は、安堵するより怒りを強め、直ちに息子を家に帰せと主張する。お前たちの言うことは信じられない、と。
一転して、国境近くの検問所。ヨナタン(ヨナタン・シレイ)たち若い兵士四名が、時折通りかかる車を停め、検問するのが仕事だ。時折ラクダがふらっと現れ、ヨナタンたちが検問所のバーを上げるのがユーモラスだ。そこでヨナタンは、アラブ人の若者たちが乗る車を停めた際に、美しい少女が微笑を浮かべるのを見る。次の瞬間、車から落ちた空き缶を手榴弾と見誤った同僚兵士の声で、ヨナタンは機関銃で車内の若者たちを皆殺しにしてしまう。事態を隠蔽されるために大きく穴が掘られ、車が崩れ落ちていく。そこへヨナタン帰還の命令がもたらされる。
再びテルアビブの夫婦。状況が大きく変わっていることが窺われる。夫婦は別居し、妻ダフナ(サラ・アドラー)は心を病んでいることがみてとれる。ヨナタンが赴任先で描いていたイラストが何故か部屋に飾られている…。

三幕から成るギリシャ悲劇のようにこの作品は構成されている。
全編を通して真上から人間を見下ろす俯瞰のカメラが特徴的だ。戦死を告げられた両親の悲嘆は異常なほど。だから同姓同名の戦死と間違えたと言われたミハエルは激昂したのか。
だが、この作品で最も面白いのは二幕目にあたる国境の検問所のシーンだ。女性の笑顔が大きく描かれた廃車(この女性の顔は、サミュエル・マオズ監督の娘がモデルだとか)があるほかは、地平線まで荒涼とした平地が広がるだけの場所。
そこで突然一人の兵士が踊り始める“FOXTROT”。原題にもなっているこの“FOXTROT”は、1910年代初めにアメリカで流行したダンスステップだという。前へ、右へ、後ろへ、左へ…4分の4拍子のステップは、必ず元の場所に戻ってくる。
静寂に彩られた作品の中で、このシーンだけが異彩を放っている。イスラエルのダンサーであるイタイ・エクスロード演じる兵士は、華麗にステップを踏み、銃を女性のように抱きすくめる。
兵士が生活をしているのは、毎日少しずつ沼地に沈んでいくコンテナだ。缶詰の肉を食べながら、少しずつ傾いでいくコンテナに、彼らはなす術もない。
時折検問所で停められる不機嫌なアラブ人たちの表情も印象的だ。
車の外へ出ろといわれた中年の太ったドレス姿の女性は、突然降り始めた激しい雨に打たれ、泣き出しそうな顔で途方に暮れる。

もともとこの物語は、監督自身の経験にインスパイアされたのだという。
彼の長女は朝が苦手で、タクシーで学校に行くという彼女を叱りつけ、バスで向かうよう命じた朝、そのバスがテロリストによって爆破されたのだという。長女はバスにも乗り遅れたために惨事に巻き込まれずにすんだが、監督は彼女に連絡がつかない間、「自身の戦争の時期をすべて合わせたよりもひどい」「人生で最悪の時間を過ごすことにな」ったのだという。
彼はインタビューで語っている。
「ヘブライ語で、『人間はあれこれ企むが、神はそれをせせら笑う』という言葉があります。運命の笑みとは、人が運命を変えようともがいている様を神が笑っているということです」(杉本穂高による監督インタビュー。https://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/destiny-movie_a_23536427/)
人間の営みは些細な偶然の積み重ねで行われており、時によってはそれは生死すら決定することがある。
危険な戦場においてはとりわけそうだろう。紙一重で生死を分けたエピソードは事欠かないのだから。
FOXTROTは、そんな皮肉な運命を象徴するステップだ。運命を逃れたとしても再び同じ場所に戻って来るしかない。そういうと、この作品がまるで「運命論」を語っているかのように思われるかも知れないが、そこで翻弄される人間の感情や現状を彼は描きたかったのではないだろうか。
ぼんやりしたラクダですら、ヨナタンの運命を握っていた。
そしてひとりの人間の死は、確実に周辺の人々の人生にも干渉するのだ。

【受賞履歴】
(■=受賞、□=ノミネート)
■ 審査員大賞サミュエル・マオズ 
□ 監督賞サミュエル・マオズ 
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