他人の顔(1966)
【解説】 顔に大火傷をおってしまった男が、妻に嫌われたこともあって、まったく他人の顔を医者に作ってもらう。勅使河原宏が『砂の女』に続いて監督した作品で、同様に安部公房の原作・脚本によるもの。 【関連作品】
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いろんな映画でいっぱい描かれてきたと思うけど、個人的にはどれもイマイチ心に響かなかったし、見ていて伝わってこなかった、というのが、ごめんなさい、正直なところ。
でも、この映画は違う。分かり易すぎるくらいにその苦悩が滲んでた。ラストの仲代の表情にすべてがつまってた。超えられない何かを悟った瞬間の、あの人間の表情。
束の間のファンタジーに現を抜かすが、別にそうであってもなくても心の穴を埋められない、自分ではどうしようもできない、みたいな「私の傷」は誰もがかかえてるもの。どれだけ真実を見抜く人間でもその場所から、自分自身から、逃げることはできない。現代人の魂が行き着く場所・・・? そんなものはどこでもないし、どこにもない。あの仲代の表情は、そんなことを理解したように思える。それに加えて、あの顔に傷を負った少女の存在。仲代の心の中。果てしない海と、孤独な太陽への回帰。それを止めることが出来ない人間の、埋められない断絶を知り尽くした人間の、心の叫び。
憶測の域を出ないんですが、勅使河原の一連の作品を見て感じたこと、それは、別に彼は映画を作りたいという目的が第一にあった訳じゃない、映画を作りながら自分自身を探し続けた人だったんだな、ということ。ある時期になるとパッタリと映画作りを止めているという事実も、それを裏付ける気がする。「俺はもう知りたいこと知ったから、先に逝くぜ、じゃあな」、みたいな。
映画を通して、そうした本当の人間の強さ、自分の弱さを全身で受け止め、立ち向かっていく強さのようなものに触れ、どうしようもない畏怖の念、先達への畏敬の念を覚える。ここまで強く「心」を、論理的に、存在論的に、語ってくれた人に、今まで出会ったことがなかった。映画を通してでもこうして彼に出会えたこと、とても嬉しいと思う。勅使河原さん、ありがとう。
見えないからと容易に無視されがちな魂、精神。そう、心に傷を負ったが最後。それは歯車として機能しないことを指すし、周囲の無理解、誤解にあいこそすれ。勝てる勝負しか出来ない連中に敵として吊るし上げられこそすれ。まあ、そんな中にあって男の妻は協力的だがそれでも彼の心の傷は見えない。結局同じ目に合わなければ理解不能。その事実に行き当たった時の感情を超えた空っぽな感覚。
砕かれた心の可視化。それはフランケンだったりローランの吸血鬼だったりロメロのゾンビだったりする。
顔のただれた女性の登場はアントニオーニっぽい。顔つながりてことで彼女はやはり男の分身だろう。顔の潰れた女性。兄と妹の禁忌な行為。それは性的に満たされないという主人公の無意識的抑圧の強度を表している。