どですかでん(1970)
【クレジット】
【解説】 戦後のスラム街のような“街”で起こる様々な人間模様を、ユーモラスかつ幻想的に描いた作品。黒澤明初のカラー作品であり、独特の色彩感覚で描かれる“街”の情景が、作品のもつシュールな雰囲気を高めている。なお、タイトルの「どですかでん」とは、登場人物の一人で、自分が電車の運転手だと思い込んでいる少年が、空想の電車を運転する時に発する擬音である。 【ユーザー評価】
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あと初のカラー作品だけあって、色彩での表現も面白い。白黒じゃ出来なかったことを全部やってみた感じ。黒澤のセンスの良さがわかりやすく体感できる。
尻切れの話があるし、機能していないような登場人物がいる気もするけど、庶民の人間模様の縮図を幻想的で説得力のある寓話にした手腕は見事。もうちょっとユーモラスな方が好みだけど、まぁいい出来です。
見事に裏切られたわけだが、こういった群像劇は好きだな。
作り物っぽい世界観がいい。広場のドまん中に
たった一つだけ水道があるって、なんともシュールだ。
言わせてもらえば、この作品の最大にして唯一の欠点は
編集だと思う。ユーモアと重苦しさという相反する流れの
テンポが悪くて時折げんなりする。個人的問題かな。
テーマは何だろう。乱れた性と純朴さとの対比?
よくわからない。なんでもいいさ。
興行的に失敗だったらしい。だってヘンテコな題名だもの。
え、世界のクロサワ? 関係ないね。面白かったよ。
ちなみに、僕は幼少のみぎりに某中央線沿線に住んでいたが、電車の音が「どですかでん」と聞こえたことはない。「♪ガタン、ゴトンゝ♪」となら聞こえた。ああ、それだとフツー?
監督本人、特に黒澤監督は妥協を許さないが故に「トラトラトラ」が演出
不可能になった。完成された作品は「白痴」のように会社との決戦の末、
やむなく半分に切り落としたような作品を除き、監督がオーケーを出した
ものばかりだ。その中に「駄作」など本質的にあるわけがない。あると思
うのは、黒澤を型に押し込めようとしてできないでいる鑑賞者の不理解に
しかすぎない。監督を含む映画製作者をそだてようと思えば、作品に新た
な価値観を見出すのが見るものの身嗜みというものではないか。それを期
待して製作者は作品に挑むものではないか。
この作品はまさに「絵」である。フイルムに直に絵の具を塗ったような映
画に仕上がっている。その点、自由奔放な、野放しな無邪気さに思わず私
は見とれてしまう。色自体にそんな技巧は凝らしていないようだ。パレッ
トの上で丁寧に絵の具を混ぜてカンバスに塗る、というよりは、いきなり
原色と補色をフィルムに塗りたくったような面白さ。人間の顔まで塗られ
ている。これも黒澤しか出来ないデフォルメ。小津や溝口がどんなにあが
いても、ヌーベルバーグの騎手達がどんな理屈をこねても、この黒澤をい
くら否定しても、かなわない。一歩踏み込みすぎると、ホラー系の映画に
も仕上がりそうなモチーフを程度よく抑えたと思う。黒澤グリムというの
も面白かったかも知れぬ。しかし、「トラトラトラ」の挫折からよく這い
上がって映画を作ったものだ。このあと再び巨星は消滅の運命を危うくた
どるところだったが、見事光をとりもどした。黒澤さん、ありがとう。
これを「リアリズム」と呼ぶには抵抗を感じるけれど、描かれている情景や心象が醸し出すのは滑稽かつ愛くるしい日常性であり、紛れも無い「生活の賛歌」だと思いました。救いがたかったり、悲嘆に暮れたくなるようなエピソードなど、確かに悲しげな雰囲気はありますが、それよりもむしろ個々の登場人物の生活に対する温かい眼差しのようなものを感じ取って、そこにこそ感動しました。民衆文化の賛美という一見ありがちなテーマをここまでの叙情性とユーモアを持って描けるのはやはり凄すぎると思います。現代でもなお有効な、「生活」というものの本質をちょっとおかしな角度から描いた大変素晴らしい作品だと思いました。
技法的にも、黒澤監督らしい凝った演出が各所に見受けられ、大変興味深かったです。演劇的手法というのはこの映画においても一つの重要な要素になっていると思いました。全編を通して、どこか「舞台」のように感じられます。それが個々のシークエンスをひときわ輝かせる装置として有機的に機能していると思いました。
本作は、子供の絵に始まり、子供の絵で終わる。
なが〜く列車を点検した後の、発車するシーンの開放感など
前半は静的なシーンと動的なシーンが交互に来るが、
色彩だけで見せているようで正直退屈だった。
しかし、色彩の良さだけが指摘される本作だが一時間過ぎた頃の雨のシーン以降、
色彩の良さよりも、黒澤特有のヒューマニズム色が強くなっていく。
そして、どぎつい色彩よりも一見地味なシーンの方が美しい人間が描かれて
いることに気付く。ちなみに、この作品は音が極端に少ない。色彩を重視したためだろうか。
日本の近代風俗の雰囲気が強くて、外人にはさっぱりわからない映画だろう。
サムライ映画の方が解るかもしれない。
普遍的言語としての映画ではなく、ある種民族的な映画だと思う。
まあ、日本人の俺にも解らなかったが(笑)
黒澤は女を描くのは下手だから、本作でもそちらの方の期待はしていなかった。
しかし、それなりに「女」が描かれているには好感を持てた。
また、いくつものドラマが違和感なく交差しているのは脚本の橋本忍の力業だろう。
どれか1つの比重が重いだけで、全体のバランスを崩してしまうからだ。
気に入ったのは、盲人(正気を失っている人)の話。
「これ何の木かしら?枯れてしまえば何の木でもないんだわ」
作品の「色彩」といっても,黒澤初のカラー作品なのに,あまりにも観客にアピールするような色彩に乏しい,ということで,急遽,“子供の綺麗な絵”(多分,黒澤自身が描いたか,案を出したのだろう)をベタベタ張り出した,という感がある。要するに, 絵は「付け焼き」で,絵だけ浮いてしまっている。