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 「篭瀬山」さんのコメント一覧 登録数(719件)rss
 コメント題投稿者投稿日
[241]シン・シティ
 これが男である篭瀬山2005-10-24
 
銀幕と呼ばれる映画のスクリーンの、その”銀”を感じさせてくれる映画に久々に出会った。白黒がくっきりしていて漫画みたいなライン取りになっているだけでなく、黒がベタ塗りの・・・
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銀幕と呼ばれる映画のスクリーンの、その”銀”を感じさせてくれる映画に久々に出会った。白黒がくっきりしていて漫画みたいなライン取りになっているだけでなく、黒がベタ塗りの黒であることもアニメというよりはまさにコミックの魅力をうまく掴んで再現している。それでいて生身の人間が演じる現実味が、荒唐無稽なストーリーをきちんとスクリーンに定着させている。ただし、いかにも「どうだい。これが男ってもんよ」的な描き方をしている点と、話がクドクド長すぎるのがかっこ悪い。も一つ言うと、何が死をもたらし、何がもたらさないのか、いま少し明確に書き分けてほしかった。6
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[242]ステルス
 安心篭瀬山2005-10-17
 【ネタバレ注意】
落雷により人工知能に意識が芽生えるという科学的論理的道徳的民主的平和的(・・・)かつ単純な展開にはぶったまげたが、芽生えたばかりの感情は、知識だけ豊富な幼な子みたいに・・・
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落雷により人工知能に意識が芽生えるという科学的論理的道徳的民主的平和的(・・・)かつ単純な展開にはぶったまげたが、芽生えたばかりの感情は、知識だけ豊富な幼な子みたいに現実と虚構の区別もつかない、なんてあたりは新しいなと思った。映像の圧倒的迫力の前ではお話の多少のチープさは気にならない、と言いたいところだがここまでチープすぎると少々しらける。いつでも簡単に殺れる機会があったのにもっとも遠回しなやり方で殺そうとして、ばれて逆に殺される殺し屋、とか。こういうところはいくらCGが発展したところでどうにもならないね。電算機が脚本まで書くようになるには、まだまだ時間がかかるようだ、と安心する映画。6
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[243]修羅雪姫
 親の敵を討つ女篭瀬山2005-10-16
 
 親の敵を一人一人探し出して斬殺する――というモチーフは『雪之丞変化』と共通する。それで名も「お雪」か――。もっとも三上於菟吉原作の雪之丞は女形であって女ではないが。美・・・
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 親の敵を一人一人探し出して斬殺する――というモチーフは『雪之丞変化』と共通する。それで名も「お雪」か――。もっとも三上於菟吉原作の雪之丞は女形であって女ではないが。美空ひばりが『小判鮫 お役者仁義』(1966)で「女性歌舞伎役者」としての雪之丞を演じている。  ほとんど梶芽衣子の妖艶な魅力がすべてといっていい作品。映像の美しさや構図の冴えなんかもなくはないが、総じて役者の硬直した演技を延々と見せられることになるので、いわゆる時代劇の嫌いな人は避けた方が無難だろう。むろん葉茶芽茶やってもいるので、時代劇の安定感が好きな人にも向かない。修業のシーン(子役お雪も良)は楽しかった。5
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[244]ひばりのすべて
 不世出篭瀬山2005-10-16
 
 プロ野球もシーズンが終わると「珍プレー好プレー」集がTVを賑わす恒例だが、派手なダイビング・キャッチやスライディング・キャッチを披露する選手が名野手かというと、必・・・
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 プロ野球もシーズンが終わると「珍プレー好プレー」集がTVを賑わす恒例だが、派手なダイビング・キャッチやスライディング・キャッチを披露する選手が名野手かというと、必ずしもそうでない。本当の名プレイヤーは打球の方向や飛距離を正確に推し量り、余裕をもって落下点に到達しているからだ。美空ひばりの歌もこれと一緒で、彼女の晩年の活動は私も同時代人として見ていたわけだが、斯界の大御所であるということは分かっても、それを裏打ちする実績とか実力にはまったく気がつかなかった(恥)。この作品の彼女は、ファンのためのコンサートだからか、節回しに特徴をつけたりこぶしみたいなものを利かせたり、実にけれん味たっぷりに歌っている。それによって初めて彼女の上手さを認識した次第だ(実際、新譜のレコーディング・シーンなんかもあるのだが、そこではクセをつけずに歌っていて、「普通に」聞こえる)。特に、北島三郎の『函館の女』(♪は〜〜るばる〜きたぞ、は〜こだて〜〜)を歌うところ。どうしたって「サブちゃんの歌」としか認識できないあの歌を、美空がワンフレーズ歌い出しただけで、はるかに上手いのが分かり、驚愕した。袖でこれを聞いていた当の北島が、頻りに肯きながら「ウマイ、ウマイ」と連発していたのも印象的だった。観客の声やスタッフの姿、そして何よりカメラの視線に、ひばりを愛した時代の空気が見事に表れている、貴重なドキュメンタリーだと思う。  作家の遠藤周作が出てきて、彼女のことを「フセッセイ(不摂生?)の歌い手だ」と評していたが・・・・・・不世出の間違いだろう。8
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[245]小判鮫 お役者仁義
 意地の悪い見方篭瀬山2005-10-16
 
 『ひばりのすべて』(1971)でひばり本人が言っていたことに「私は、自分で自信があるのは男役だけ」。実際、通常は女形として描かれる中村雪之丞をひばり自身が女性歌舞・・・
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 『ひばりのすべて』(1971)でひばり本人が言っていたことに「私は、自分で自信があるのは男役だけ」。実際、通常は女形として描かれる中村雪之丞をひばり自身が女性歌舞伎役者として演じているのだが、実に女形独特のえも言われぬ妖艶な魅力があった。だいたいこの人は頬のラインが雄々しいだけなので、ほっかむりかなんかでラインを隠せば、とても清楚で知的な美しさを持った女性なのだ。それから、軽業お七役のときに下駄を履き替えるシーンがあって、ここで一瞬足が映るのだが、確かに(笠原和夫の言う如く)足の指が開いていた。庶民出身”お嬢”ひばりの可愛い瞬間である。6
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[246]頭文字[イニシャル]D THE MOVIE
 知悉篭瀬山2005-10-04
 
 少年向けの野球漫画なんかで、地方の小さな大会がTV中継とかされる訳ないのに、ちゃんとアナウンサーと解説者が二人いて、勝負の着眼ポイントとか選手の心理状況なんかを克・・・
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 少年向けの野球漫画なんかで、地方の小さな大会がTV中継とかされる訳ないのに、ちゃんとアナウンサーと解説者が二人いて、勝負の着眼ポイントとか選手の心理状況なんかを克明に実況解説してたりすることがある。それがこの手の漫画の醍醐味なわけだ。しげの秀一の原作漫画は未読だが、その種の要素が魅力の一つなのではないか? 映画も1回見ただけなので分析するところまでいかない(いかなくてもいい)が、この「実況解説」を自然に取り込んでいた。普通に被せればうるさくなるだけだろうから、これを自然にやった技量は、やはり見事だったと思う。  むろん最大の見所はカーアクション。聞けば日本の高橋レーシングが動きをつけたとのことで、今まで邦画にこんな迫力満点のカーチェイスを見たことないから、要は日本には、アクションの技術ではなく、撮る側の技術がなかったってことだ。この一点だけでも、香港スタッフ陣がこの映画を撮ってくれてよかったと言える。映画という、生身の人間が演じるメディアでのリアルの見せ方をよく知っている、つまり映画ってものをよく知っている、ということに尽きる。  何も知らずに劇場に入ったら吹き替え版だったが、これがよかった。声優陣も含め、この日本語版スタッフは相当いい仕事したと言えるんじゃないかな。まあ、原作の日本語を広東語に訳したのを、さらに日本語に戻したわけだから、不思議はないのかもしれないが・・・。8
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[247]無法松の一生
 夢の中で走るよう篭瀬山2005-09-27
 【ネタバレ注意】
 戦中の検閲で、軍人の未亡人に懸想するとはもっての外とだいぶ削られた、という話を聞いた。ほんとうだろうか。そのせいかどうか、見た作品では、未亡人への秘めた思慕という・・・
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 戦中の検閲で、軍人の未亡人に懸想するとはもっての外とだいぶ削られた、という話を聞いた。ほんとうだろうか。そのせいかどうか、見た作品では、未亡人への秘めた思慕というモチーフは、さほど前景化しなかった。むしろ松五郎の方で抑制したと見える、つまり軍人夫婦を理想化していたと受け止められるエピソードなどもあるので、その場合はそもそも削るところなどそんなになかったんじゃないかと思えるのだが・・・。  運動会のシーンは昔のサイレント映画を今の映写機で映したようなチョコマカとした動きが楽しい。でもそれより僕は、阪妻が俥を引くシーンのしなやかな足の動きが好きだなあ。運動会とは逆で、撮影時に高速回転で回したフィルムを常速で上映したようなやけにゆったりとした動き。当時そういう技術があったのか、阪妻にそういう走りが出来たのか。僕が夢ん中で走るときって、いつもあんな感じ。6
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[248]8月のクリスマス
 お迎えモノ篭瀬山2005-09-24
 
 洋の東西を問わず、だと思うのだが、難病等での若くしての「お迎え」を描いたお迎え志向の作品が、ここのところ急激に増えた気がする。それもことごとく恋情モノとの組み合わ・・・
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 洋の東西を問わず、だと思うのだが、難病等での若くしての「お迎え」を描いたお迎え志向の作品が、ここのところ急激に増えた気がする。それもことごとく恋情モノとの組み合わせで描かれるところに特徴がある。  「どうせもうすぐ自分は死ぬのだから、不幸な人生のままでいい」という主人公の陥る心理に、そこそこ幸せな人生を送っている多くの客層が、憐憫の情を誘われる、ということなのだろうか。  そうではなく、恋情の花輪で飾り立てられた「死」が、ただのつまらない死を、より良き死に格上げする、物語のそういう構図が、多くの人々に慰みを与えているということだろう。4
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[249]四月の雪
 どうなってんの篭瀬山2005-09-23
 
道徳のない世の中には背徳も存在しない。だが(制度としての夫婦ではなく)連れ添いに対する貞操観念だけは不思議と堅持されており、この映画もそれを当然の前提として作られて・・・
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道徳のない世の中には背徳も存在しない。だが(制度としての夫婦ではなく)連れ添いに対する貞操観念だけは不思議と堅持されており、この映画もそれを当然の前提として作られている――とでも考えないと、この、ただ出会ってただ布団に入るただの男女の物語は、いい年したボーイミーツガール物の域を出ない。台詞も冴えなきゃドラマも薄いし――一体、世の中どうなってるんだろう。4
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[250]NANA
 トシを感じる篭瀬山2005-09-21
 【ネタバレ注意】
 なるほどナナがレンに精神的に依存してたのだとすれば、レンの上京を裏切りのように感じ、復讐してやろう見返してやろうという想いに至ったであろうことも納得できます。しか・・・
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 なるほどナナがレンに精神的に依存してたのだとすれば、レンの上京を裏切りのように感じ、復讐してやろう見返してやろうという想いに至ったであろうことも納得できます。しかし物事を正確に振り分けるなら、この場合「ケジメをつける」とは、ナナ自身が自立すること以外にありません。依存したままで彼への想いを断ち切ることは不可能です。そして自立したなら、そもそも裏切るとか裏切られるとか、そういう問題ではないことが解るはずです。  意地悪な見方をすれば、女を自立させたくないという社会の怨念が、奈々という女の姿をとってナナの前に立ちはだかり、ことあるごとにナナを依存の淵へ引き摺りこもうとする、そんな話であるとも受け取れますね。でも、映画はそこで終わりますが、人生はこの後も続くのですから、とりあえずそれでいいんだと思います。映画の方も、続編の製作が決まったそうで。おめでとうさんです。5
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[251]佐野元春
 物事が複雑化して揺れ動いている篭瀬山2005-09-19
 
リアルタイムで熱狂したのは「SOMEDAY」(82年)の頃中高生だった、私より3〜5才上の世代でしょう。私らの頃、自分を「理知的な高校生」と思いたい高校生たちにとっ・・・
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リアルタイムで熱狂したのは「SOMEDAY」(82年)の頃中高生だった、私より3〜5才上の世代でしょう。私らの頃、自分を「理知的な高校生」と思いたい高校生たちにとって、憧れの存在としての佐野がありました。チャック・ベリーやリトル・リチャードらの50年代ロックンロール・ナンバーも彼を通じて聞くようになったし、J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(小説)なんかもそうです。「つまらない大人になりたくない」つまりアカデミズムとは別の経路で知の扉を開いてくれる、媒介みたいな存在だったんですね。そこらへんのニュアンスを有間しのぶの『本場ぢょしこうマニュアル』(漫画→映画化もされた)が佐野君というキャラクターで的確に表現してくれてるんですが・・・わかんねーかな。 ※=「Complication Shakedown」(84年)に彼が付けた解説。
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[252]プリンス
 Baby,u’r much 2 fast.篭瀬山2005-09-19
 
 自分の乗ってた車を(勝手に)Little Red Corvetteと名づけていたほどの元「プリンス・ファン」な私。84年当時の中学生には、オカマみたい(に見えた)・・・
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 自分の乗ってた車を(勝手に)Little Red Corvetteと名づけていたほどの元「プリンス・ファン」な私。84年当時の中学生には、オカマみたい(に見えた)なプリンスを好きというのは憚られる雰囲気がありましたが、後、音楽性が評価される時代となり、高校の頃は私もプリンス好きを公言しました。今でも着メロにしたい楽曲の潜在的No.1は「When Doves Cry(邦題「ビートに抱かれて」)」です(してないけど)。  音楽が自意識の表れだとすると、彼の作品を聞いてイメージする彼の姿は長身で細身で足長。だが実際の彼は、短躯短足骨太で、身長に占める頭部の比率が高い。このイメージのギャップには、彼自身苦慮していたように思えます。でも、自分を過剰に飾り立てるアーティストの原型は、この頃の彼なんじゃないでしょうか。  ずっと年齢不詳だと思ってた(当時はそういう伝説でした)ので、ここへ来て初めて彼が58年生まれだと知りました。干支が一緒だわ・・・
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[253]ヴァンダの部屋
 極貧篭瀬山2005-09-18
 
問題の本質は極度の貧困つまり極貧にあると思う。極貧は社会悪だから、個人の力量ではどうにも出来ない。この極貧状態を、とりたてて反発するわけでもなく、かといって無理に喜・・・
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問題の本質は極度の貧困つまり極貧にあると思う。極貧は社会悪だから、個人の力量ではどうにも出来ない。この極貧状態を、とりたてて反発するわけでもなく、かといって無理に喜びを見出そうとするのでもなく、淡々と受け入れているように見えるヴァンダ。この諦観は小津や成瀬の作品で原節子あたりが見せる強情さに通ずるように思うのだが・・・。妹との会話なんて台詞だけ取り上げれば、原と香川京子が交わしていたとしても何の違和感もない・・・わけないか。正直に言いますが途中退屈で寝てしまいましたごめんなさい。2
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[254]杏っ子
 凡夫の言い分篭瀬山2005-09-18
 
 傍から見ると単なる「不幸な結婚」にしか見えないのだが、ロジックが「例え不幸でも結婚は結婚だ」みたいなのが、時代の違いということなのかなあ。当時の主婦層の、こんな立・・・
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 傍から見ると単なる「不幸な結婚」にしか見えないのだが、ロジックが「例え不幸でも結婚は結婚だ」みたいなのが、時代の違いということなのかなあ。当時の主婦層の、こんな立派な人でも我慢してんだから・・・みたいな感興を引く趣向が多分にあったのではなかろうか。  それにしても、成瀬は芸や才能についての見方が厳しいから、無才な男の愚昧さを冷酷なまでに描き出していて、凡夫には見ていて大変痛ましいものがある。ただ「世間の厳しさ」ってのは現実にはもっと複雑な様相を呈して現れる。例えば大家に取り入るため、女婿の駄文を平気で載せる編集者、なんてのはいくらでもいていい。つまるところ才能がなくても食っている輩なんてのは結構いる。その分、より人間が薄汚くなるわけだが。価値観の対立を鮮明にするため、より純粋に描いているという部分はあるにしても、木村功は愚昧ではあっても薄汚れてはいないので、私なんぞは「おい、突っ張れよ。潰されンなよ」と応援したくなるのである。7
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[255]女の座
 裏東京物語篭瀬山2005-09-17
 
首を絞めても死なないんじゃないかというトボけた爺さん振りを発揮していた笠智衆が、家督や跡取りというものに重大な関心を払っているようにも見えなかったので、高峰秀子の教・・・
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首を絞めても死なないんじゃないかというトボけた爺さん振りを発揮していた笠智衆が、家督や跡取りというものに重大な関心を払っているようにも見えなかったので、高峰秀子の教育ママ振りがどこから来るものなのかイマイチ分からない。世間並みへの同調圧力か、ある種のエゴの発露か、何らかのはけ口だったのか。勉強嫌いの少年が身をもって世間の矛盾を体感してしまうなんて、不幸な話ではあるけれど、確かに学校教育ってそういうところあるよ、よく判ってイラッシャル。私が言いたかったのは、よく絞られた、イヤ絞り取られたってことです(涙をね)。8
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[256]娘・妻・母
 1本つけようか篭瀬山2005-09-17
 
 東宝の一流女優陣が勢揃いという以外に、あまりカラー化する意味ないなと思って見てた(別に意味なんかなくたっていいんだが)けど、三益愛子の着てたちゃんちゃんこの赤は鮮・・・
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 東宝の一流女優陣が勢揃いという以外に、あまりカラー化する意味ないなと思って見てた(別に意味なんかなくたっていいんだが)けど、三益愛子の着てたちゃんちゃんこの赤は鮮烈だったナ。成瀬が描いてきた家族あるいは女と時代の関わりについての集大成的な作品で、結局のところ女は三界に家なしか、と。でもこの映画では、男にだってそんなもん、あると思ったところでかりそめのものに過ぎない、とされている。だからこそ全力を尽くして守らなければいけないと、思ってもらえるかどうか。  『浮雲』の二人が晴れて夫婦になれてヨカッタネとか、それでも浮気されちゃって高峰秀子カワイソウとか、コアな楽しみ方も可能。私は、久々の親子二人だけの夕餉に喜ぶ杉村春子(この人上手いね)の姿に、ホロリとしてしまいました。台詞の選び方が適切だ。7  ついでに書くと、一人で舞い上がってる原節子が、こちらを振り向くとハッと険しい顔をするところがある。これで画面外の仲代達也が社会距離から個体距離へ近づいたことを意味するのだが、成瀬ってこういう描写上手いよね。ある種の心理描写であると同時に、観る者(観客)の実体験や反射を利用した三角描写でもあるわけだが、被写体(この場合は原節子)が愛おしく思える。
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[257]クリムゾン・タイド
 馬鹿丸出し篭瀬山2005-09-16
 
 閉鎖空間を舞台にした言葉(会話)中心の反乱劇。艦長の職業軍人的冷酷さを嫌らしく描く(繰り返される訓練シーン等)、副長の理想主義的潔癖さを狂信的と描く(廣島長崎原爆・・・
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 閉鎖空間を舞台にした言葉(会話)中心の反乱劇。艦長の職業軍人的冷酷さを嫌らしく描く(繰り返される訓練シーン等)、副長の理想主義的潔癖さを狂信的と描く(廣島長崎原爆投下の正当化等)など、人物描写は最低限に緻密で、息詰まるドラマを浮き彫りにする。潜水艦映画の豊かな系譜に連なる傑作である。事前に『眼下の敵』を見ておくとクイズに回答できる。  ところでタイトルの「クリムゾン・タイド(CRIMSON TIDE)」は直訳すると深紅の潮流だが、どういう意味か。ロシアの脅威だと訳してる人がいたが、確かに共産主義は赤色で象徴されるから、旧ソ連時代ならかろうじて該当するかもしれんが、たぶんクリムゾンとクレムリン(=帝政ロシア時代の宮殿、現代のロシア政庁)を間違えているのだろう。  映画の中では、原潜アラバマ号が母港を出航するとき、夕刻の焼けた空を映した海域が深紅に染まっており、これ以外に「クリムゾン」が現れるシーンはなかった。  だがおそらく意味合いとしては「深層潮流」、すなわち表層の海流とはときに逆方向に流れることだってある深海の潮流のことで、われわれの与り知らぬ海の奥深く、密かに航行する原潜の中で、地球滅亡の危機を賭けたドラマが繰り広げられていたという、映画の主題の隠喩である。  なぜ「クリムゾン」なのか。世界初の潜水艦モノ(小説であるが)、ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」の中に、一定以上の深さの海は真っ赤に染まっているという幻想的なシーンがある。もちろんヴェルヌは想像力だけで書いたのだが、原理は夕焼けと一緒、青い空が夜になる直前に赤く染まるのと同様、青い海原も陽光が届かず真っ暗闇になる直前の層では、赤く染まるのである(見たことはないから知らんけど)。たぶんこれ。8  ※大学の運動部の名前なんかつける訳ないだろ。分からん奴が勝手に言ってるだけだ。
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[258]驟雨
 なんちゃってコメディ篭瀬山2005-09-16
 
笑いの分量から判定したら、コメディに分類しても差し支えない作品。一応モチーフとしては、結婚後数年を経た夫婦間の倦怠という、成瀬映画の定番は手堅く押さえてるし、”頼り・・・
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笑いの分量から判定したら、コメディに分類しても差し支えない作品。一応モチーフとしては、結婚後数年を経た夫婦間の倦怠という、成瀬映画の定番は手堅く押さえてるし、”頼りない長男坊”もある。だが明らかにテーマに関係ない、”戦後民主的手続きの空回り”みたいなエピソードは、笑いを取るためのものとしか思えんのだ。こういうセルフ・パロディみたいなことが出来るから成瀬は侮れない。原節子さんはさすがに優れた女優さんだなあと思ったのは、運動神経が抜群で、佐野周二の方があたふたしてたゾ、ラスト。7
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[259]妻の心
 頼りない長男坊篭瀬山2005-09-14
 
 成瀬の作品で繰り返し描かれるモチーフに、”頼りない長男坊”というものがある。東京の家族と、地方の家族によって描かれ方も違うし、話によって位置づけも異なるのだが、これ・・・
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 成瀬の作品で繰り返し描かれるモチーフに、”頼りない長男坊”というものがある。東京の家族と、地方の家族によって描かれ方も違うし、話によって位置づけも異なるのだが、これがなきゃ話が始まらないってほど、執拗に採り上げられる。ドラマに始動の第一回転を与えるという意味で、これは成瀬作品の原始的蓄積と呼ばれている(私によって勝手に)。  昔は、長子といえば跡取り、つまり家督相続者であるから、それはそれは大切に育てられた。二男三男とは着る物食う物からまったく違ったと言われている(想像込み)。替わりに、二男三男には長男が背負うべき責任がないわけだから、気楽さも手伝ってこれがなにかの拍子で都会に出たりすると、大きな仕事を成し遂げたりした。  ところが、目をかけて育てた教育の高さがアダになったりして、長男もまた都会に出たがったりするのだ。卒業したら必ず家へ帰るなんて約束はいつの間にか反古にされて、大学を出るとそのまま東京で就職しちゃったり。こうなると、それまで無保護で呑気に育ってきたはずの二男が、嫌々渋々跡を継ぐことになる。  時代背景も追い風となって、ようやく仕事も軌道に乗り、体を張って苦労する辛さ・楽しさを二男が分かり始めた頃、東京で尾羽うち枯らした長男が、瘤付きで故郷に舞い戻ってきた。そこからこの映画のドラマは始まる。  成瀬作品の原蓄モチーフ”頼りない長男坊”が如実に顕れた作品であると同時に、長男・千秋実の頼りなさは、成瀬作品群の中でも1、2を争う仕上がりだ。6
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[260]さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち
 進歩篭瀬山2005-09-12
 
1作目と比べると、作画の技術レベルははるかにまとも。ストーリー設定こそ、取って付けたような、というか、降って沸いたような印象は拭えないけれど、その構成はTV版のダイ・・・
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1作目と比べると、作画の技術レベルははるかにまとも。ストーリー設定こそ、取って付けたような、というか、降って沸いたような印象は拭えないけれど、その構成はTV版のダイジェストだった1作目より格段に流暢だ。特筆すべきは音楽で、テーマ曲が名曲であることは変わらないものの、この『さらば』ではバリエーションが豊富で映画に奥行きを与えている。子供の頃見た記憶がいちいち甦るからかもしれないが、とてもエモーショナルな作りで、作り手の込めた想いがストレートに伝わってくる。かえすがえすも、これでオサラバしていれば・・・。7
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[261]宇宙戦艦ヤマト <劇場版>
 そういう問題ではない篭瀬山2005-09-12
 
子供の頃は見ててもまったく疑問に思わなかったのだが、「地球防衛軍司令部」なのに、出てくる人はみんな日本語喋ってるし、名前も日本人名だし、顔つきも、まあ、日本人顔だ。・・・
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子供の頃は見ててもまったく疑問に思わなかったのだが、「地球防衛軍司令部」なのに、出てくる人はみんな日本語喋ってるし、名前も日本人名だし、顔つきも、まあ、日本人顔だ。不思議なのは、眼鏡をかけた奴がほとんどいない(南部と佐渡先生の二人だけ)こと。これは、今パッと見渡しただけでも、周囲の平均値よりはるかに低い。やっぱ戦艦といっても空を飛ぶわけだから、視力のいい奴を中心に乗組員を選んでたってことかなー。3
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[262]秋立ちぬ
 反転篭瀬山2005-09-09
 【ネタバレ注意】
 成瀬には珍しく子供を主人公にした、と言われる作品。私も、成瀬的小世界(成瀬映画で繰り返し描かれるところの、現実と似て非なる身辺的小社会)に何も知らない子供を放り込・・・
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 成瀬には珍しく子供を主人公にした、と言われる作品。私も、成瀬的小世界(成瀬映画で繰り返し描かれるところの、現実と似て非なる身辺的小社会)に何も知らない子供を放り込んだような、そんな印象を受けた。その中で子供は、大人たちの押し付ける理不尽や不可解を受け入れざるを得ない状況におかれ、実際に受け入れる。自分の子供の頃を思い起こせば、相当に恵まれた家庭環境に育った人でないかぎり、誰しも思い当たる節があるのではないか。  子供の視点で見ると、それまで率直で気安く見えていた成瀬的下町社会が、実に自分勝手で人情の薄いぎすぎすしたコミュニティに見えてくる。こういう作品が、そのまま成瀬映画の中に存在していることに驚く。映画史全体から見たらともかく、成瀬的小宇宙の中ではコペルニクス的転回点に立つ作品だ。7
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[263]芝居道
 遠回り篭瀬山2005-09-09
 
話術は相変わらず軽妙でテンポよく端折りも上手いもんだが、話があまりにストレートでアヤもないし、いくらなんでもプロパガンダ臭が強いよねえ。古川緑波が山田五十鈴を口説く・・・
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話術は相変わらず軽妙でテンポよく端折りも上手いもんだが、話があまりにストレートでアヤもないし、いくらなんでもプロパガンダ臭が強いよねえ。古川緑波が山田五十鈴を口説くところなんか、今だったらたちどころに三つ四つ効果的な反論が思い浮かぶ。ただプロパガンダとしては精巧だと思うな。戦に負けた後でも通用するもの。6
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[264]歌行燈
 芸の力は篭瀬山2005-09-08
 
「武士の生き死に」にも通ずる芸の持つパワーの凄まじさが伝わってきますね。特に「謡い」は聞いてるだけで人間の声はこんなにも艶やかな世界を表現できるのかと感動しました。・・・
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「武士の生き死に」にも通ずる芸の持つパワーの凄まじさが伝わってきますね。特に「謡い」は聞いてるだけで人間の声はこんなにも艶やかな世界を表現できるのかと感動しました。宗山先生が合いの手だけでガタガタに落ちていくシーンも見事で、成瀬が如何に厳しく芸を見つめているかが分かります。ただ山田五十鈴の「踊り」のどこらへんが凄いのかが私には分からなくて・・・。それでも充分感動的でしたが。7
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[265]石中先生行状記
 期待に篭瀬山2005-09-08
 
どれも他愛のない話なんだが、体験談を語るのが上手な友人の話を聞くが如くで、きれいに刈り込まれてメリハリがあってテンポがよくて・・・結局なにを楽しんでるのかというと、・・・
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どれも他愛のない話なんだが、体験談を語るのが上手な友人の話を聞くが如くで、きれいに刈り込まれてメリハリがあってテンポがよくて・・・結局なにを楽しんでるのかというと、話術そのものを楽しんでるんじゃないかという。観客が話に期待するところを微妙に骨抜きしながら別の展開へ持っていくうまさ。若山セツ子(可愛い)が橋の上で下駄を取り替えるシーンなんて、うまいよね。7
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[266]ヒトラー 〜最期の12日間〜
 検証篭瀬山2005-09-03
 
ドイツ第三帝国の崩壊する様を、内部に居て立ち会った者の視点から描く。避け難い混乱、また後世の政治的思惑等から、おぼろげなもやにつつまれたままの事象に、いま一度鮮明な・・・
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ドイツ第三帝国の崩壊する様を、内部に居て立ち会った者の視点から描く。避け難い混乱、また後世の政治的思惑等から、おぼろげなもやにつつまれたままの事象に、いま一度鮮明な光を投げ掛けるという、検証的な試みであると言える。たまに、歴史というものに根本的に興味を持たない人がいるから、そういう人にまで楽しめるかどうかは保証できないが、大方の人間なら興味深く見るだろう。ドイツ人的几帳面さをもって、注意深く選び取られたエピソードによって構成されている。そこがありがたい。7
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[267]トゥー・ブラザーズ
 言わずも篭瀬山2005-09-03
 
 皆さん、虎の演技がいいって言うんだけど、虎が演技するわけないでしょ。ただジーッと撮られてるだけですよ。そこに感情の表出を見てとるのは、実はわれわれ見る側の想像力の・・・
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 皆さん、虎の演技がいいって言うんだけど、虎が演技するわけないでしょ。ただジーッと撮られてるだけですよ。そこに感情の表出を見てとるのは、実はわれわれ見る側の想像力の仕業。その想像力を喚起するのは、脚本の構成力であったり、カメラさんや照明さんの撮影技術であったりする。脇の役者陣の方が繊細な演技してたと思いますよ、子役も含め。  これらの点に気づかない人の方が楽しめる作品でしょうが、逆に言うと、想像力でもって物事を見れる能力がないといけないわけだから、子供でも駄目なのかも。5
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[268]大怪獣ガメラ
 科学篭瀬山2005-09-02
 【ネタバレ注意】
個人的に、飼っていたチビカメがガメラになったんだと想像力豊かに結論づける少年が、なんとも愛おしい。それだけに、科学の粋みたいな研究設備を見せられただけで、ガメラを退・・・
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個人的に、飼っていたチビカメがガメラになったんだと想像力豊かに結論づける少年が、なんとも愛おしい。それだけに、科学の粋みたいな研究設備を見せられただけで、ガメラを退治するためのZ計画をあっさり支持しちゃう少年の心変わりが哀しい。科学が万能だとの幻想を共有できた時代ならではか。その割には「ガメラ」だから・・・ちょっと不可解だ。全国で(飛翔)実験精神の犠牲になった(に違いない)亀らの御霊に黙祷。6
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[269]地球防衛軍
 不徹底篭瀬山2005-09-02
 【ネタバレ注意】
花嫁を探しに隣の惑星を侵略する、これは動機としてまったく正しい。文明はそのために発展したからだ。だがさらったら直ちに事に及ぶ必要があるのだが、ここで童貞的潔癖さを見・・・
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花嫁を探しに隣の惑星を侵略する、これは動機としてまったく正しい。文明はそのために発展したからだ。だがさらったら直ちに事に及ぶ必要があるのだが、ここで童貞的潔癖さを見せて丁重に扱うとは不徹底も甚だしい。結局のところこれは地球人の作った映画であって、地球人を辱める行為は描けなかったにすぎない。映画は徹底しないと面白くならないという悪い見本である。3
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[270]めし
 (夫婦)篭瀬山2005-08-30
 【ネタバレ注意】
夫の食事の世話をするばかりの単調な毎日に倦んだ妻が、実家に戻り、久々の自由を満喫するも、そこにはもはや自分の居場所はないと悟り、己の拠って立つところは夫の側で過ごす・・・
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夫の食事の世話をするばかりの単調な毎日に倦んだ妻が、実家に戻り、久々の自由を満喫するも、そこにはもはや自分の居場所はないと悟り、己の拠って立つところは夫の側で過ごす日常なのだと思い定め、夫の元へ帰っていく。ナレーションがなかったら、私はこの映画にこういう印象を持ったと思う。原作小説の雰囲気を残すために朗読調のナレーションを被せたのだと思うが、そこでは、何事もなく老い朽ちていくことへの焦燥と、女にとって幸福とは何か、という問題が語られる。だが明らかに、何の変哲もない日常こそが幸福なのだと、彼女に思い直させるには、エピソードが不足しているのであって、結論的に語られる「これが女の幸福なのだ」が、違和感をもって響く。私は、原節子のナレーションはこの映画に不要なんじゃないかと思ったのだが、どんなもんでしょう。7
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