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 「黒美君彦」さんのコメント一覧 登録数(3648件)rss
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[001]トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン
 ダーク黒美君彦2017-12-11
 
コミカルな味が好きだったのに、三作目にして妙に生真面目なバトルものになってしまったというのが、個人的にはどうも…。前半は月の裏側“ダークサイド”を舞台にしたアポロ計画・・・
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コミカルな味が好きだったのに、三作目にして妙に生真面目なバトルものになってしまったというのが、個人的にはどうも…。前半は月の裏側“ダークサイド”を舞台にしたアポロ計画の真の狙い、みたいな陰謀論大好き人間のハートをくすぐる種明かし。月に足跡を残した二番目の男、バズ・オルドリンを登場させてしまうのはスゴいなあ。 そんなわけで前半はそれなりに面白かったけれど、後半のバトルとアクションはまあド派手なだけが印象的で。このシリーズって、あんなに人々の虐殺シーンもそのまま映し出していたっけ? 逃げ惑う人々に悪役ディセプティコンのトランスフォーマーが光線を浴びせると、みな四散してしまうのが何とも残酷。 改めて人間って脆弱だよねー、と思ってしまった。 ちなみにシャイア・ラブーフは続投したものの、ミーガン・フォックス演じる恋人ミカエラとは別れたという設定。新たな恋人カーリーとしてロージー・ハンティントン=ホワイトリーが出てくるけど、個人的にはミーガン・フォックスの方が好きだったなあ。 いずれにせよ上映時間が長すぎる…。CGはスゴいんだけどね。
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[002]若親分兇状旅
 都はるみも歌う黒美君彦2017-12-11
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>南條武(市川雷蔵)の親友だった高木少佐(石黒三郎)がとある港町で自決した。そこでは海軍時代の先輩で「鬼杉兵曹長」と恐れられた金杉弥三郎(垂水悟郎)が運送・・・
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<あらすじ>南條武(市川雷蔵)の親友だった高木少佐(石黒三郎)がとある港町で自決した。そこでは海軍時代の先輩で「鬼杉兵曹長」と恐れられた金杉弥三郎(垂水悟郎)が運送会社を経営していた。高木の死を調べ始めた南條は、高木が妹のように可愛がっていた下宿屋の娘北川早苗(葉山葉子)から情報を得ながら、背後に陰謀があると睨んだ。満州・蒙古に武器を売って荒稼ぎしていた俵藤雄介(永田靖)、子爵の土屋信之(渡辺文雄)、そして金杉が高木少佐を利用して船を手配させていたのだ…。 登場人物が多いので少々整理が必要かも。土屋の下には土建屋小山組の女親分小山千代子(江波杏子)がいるし(最後には南條の味方に)、高木少佐が常連だった飲み屋「月ケ瀬」の主人為次(仲村隆)に、妹あけみ(都はるみ)。当時19歳の都はるみは、客に懇願され歌も披露しちゃう(笑)。 何かと南條に絡んでくるヤクザたちは黒門組…これは土屋の配下ですかね。 海軍の井川少佐を演じる藤巻潤は主題歌を歌っているし、サービス満点ですな。 葉山葉子は、兄明(平泉征)に無理な訓練をさせた南条を恨んでいたけれど、南条は発熱した彼を救おうとしていたことが回想シーンで明らかに。南条の海軍時代の制服姿はこの作品では貴重(笑)。 結局高木少佐が事件に関与していたことは隠蔽して、南条はヤクザ同士の殺し合いだったことにして警察署へ。 仲村隆と都はるみの兄妹を人力車に乗せて逃がすシーンでは都はるみの「涙の連絡船」がかかるけど、ガードレールが目立つ目立つ(笑)。 渡った橋に「伊佐津川」とあることから、ロケは京都府舞鶴市で行われたようだ。 何だかなあのプログラムピクチャーでした。
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[003]永遠のジャンゴ
 「音楽が俺を知っている」黒美君彦2017-12-11
 【ネタバレ注意】
“ジャンゴ”といえばセルジオ・コルブッチ監督の『続・荒野の用心棒』(1966年)でフランコ・ネロが演じたガンマンが頭に浮かんでしまうのだけど(笑)、こちらのジャンゴ・ライ・・・
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“ジャンゴ”といえばセルジオ・コルブッチ監督の『続・荒野の用心棒』(1966年)でフランコ・ネロが演じたガンマンが頭に浮かんでしまうのだけど(笑)、こちらのジャンゴ・ラインハルト(1910〜1953)は“ジプシー・スウィング”(マヌーシュ・スウィング)と呼ばれるジャズを生み出した天才ギタリスト。 しかしヨーロッパで絶大な人気を得ていた彼ですら、ナチスの弾圧から自由ではあり得なかった。 ナチスがジプシーを弾圧していたという話は耳にはしていたが、映像化されたものは初めて観た。 もちろん戦争の影はこの作品の主要なテーマだが、一方で天才ギタリストの演奏が大きな見どころだ。 劇中で、ジャンゴ・ラインハルトの曲を担当したのがジプシー・ジャズの最高峰ギタリストと呼ばれるストーケロ・ローゼンバーグ。超絶技巧としかいいようのない演奏でジャンゴの音楽を再現する。 「俺は音楽を知らない。音楽が俺を知っている」とはけだし名言。天才ならではの台詞だ。 ジャンゴを演じたレダ・カテブは、決してイケメンというわけではないが、あの演奏を見たら誰でもイチコロだ。フランス人の愛人ルイーズ(セシル・ドゥ・フランス)がスイスへの亡命を勧めるのもよくわかる。ちなみにルイーズは架空の人物らしいけど。 ナチスがジャンゴに示す条件がスゴい。 「食事中の音は小さく、会話の邪魔はするな」「キーはメジャーで、ブルースは禁止」 「ブレイク、テンポの速い曲は避けろ」「シンコペーションは5%以下」「ソロは5秒以内に収める」 伝統的な西洋音楽こそが、優位に立つゲルマン民族に相応しいと考えていた偏狭なナチスの姿勢が覗く。 彼は逃亡中、仲間であるジプシーの住まいである馬車が燃やされ、人々が連行される姿を目撃する。 実際、どれほどのジプシー(ロマ族)が強制収容所で殺害されたかは今も判然としない。 終盤で、当時撮影されたジプシーの顔写真が登場するが、彼らの運命を考えるとひたすら胸が痛む。 ジプシーは、戦争を知らない、という。 土地の所有意識を持たず、歴史的な観点ももたないという。それ故争いはなく、弾圧されてもそれを根に持つ文化を持ち合わせていないのだと。それが本当かどうかはわからないが、自由人である彼らもまた、時代の流れに抗することはできない。 戦後、ジャンゴは『レクイエム』を演奏する。ジプシー・スウィングとは対極にある重い曲。今では音源と譜面の一部分しか残っていないということだが、そこには深い悲しみが投影されていた。 音楽映画にして、時代との葛藤を深く描いた作品である。
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[004]奥様は、取り扱い注意
 「あたしが守ってあげる」黒美君彦2017-12-08
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>某国の特殊工作員だった島田優子(綾瀬はるか)は死んだように見せかけ、過去を捨て片山菜美として普通の主婦になろうと決心。合コンで知り合った伊佐山勇輝(西島・・・
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<あらすじ>某国の特殊工作員だった島田優子(綾瀬はるか)は死んだように見せかけ、過去を捨て片山菜美として普通の主婦になろうと決心。合コンで知り合った伊佐山勇輝(西島秀俊)と恋におち、結婚する。隣人の大原優里(広末涼子)、佐藤京子(本田翼)とも友情を育むが、周辺で様々な事件が起き、菜美は密かに裏で暗躍、事件を次々解決するのだった。しかし次第に菜美は奇妙なことに気づき始め、愛する夫に不信の目を向ける…。 公安や潜入捜査官を描くことを得意とする金城一紀の原作・脚本だが、ありえない設定でコミカルに描いているので、彼の他の作品に比べると軽いタッチ。 相当トレーニングを積んだであろう綾瀬はるかのアクションシーンが毎回あるので、観る側もすっきりできる。 結婚相手が西島秀俊である時点で、彼が何かの裏を持つ役柄であることは想像できるが、最終回まで正体を明かさないというのはなかなかニクい演出。そして愛に溢れた?西島と綾瀬の格闘シーンが面白い。花瓶を投げつけ、それをすっと受け止める西島。「壊れたっていいじゃない!」「気に入ってるんだよ!」なんていうやりとりが笑いを誘う。 姉貴分の広末涼子と家のことは任せっぱなしの夫石黒賢、頼りない本田翼と浮気症の夫中尾明慶といったキャスティングもうまい。 基本的にこの町には豪邸が多くて普通の住宅街とはとても思えないけれど、そこはファンタジーみたいなもので目をつぶるとして。 最終回の綾瀬はるかが、単身悪役が待ち受ける倉庫に乗り込むシーンは、えんえん長回しのアクションシーン。『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』で味をしめたか? とはいえ、殺陣の仕込みは大変だったろうなあと思うわけで。 関東での平均視聴率12.7%。綾瀬はるかの持つふわっとした雰囲気と、キレのいいアクション、そしてコミカルな設定を巧く配置したドラマシリーズになった。
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[005]ある殺し屋の鍵
 必殺仕掛人のように黒美君彦2017-12-07
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>日本舞踊の師匠は仮の姿で実は凄腕の殺し屋・新田(市川雷蔵)のもとに、石野組幹部荒木(金内吉男)から、政財界の裏情報を持つ朝倉(内田朝雄)殺しを依頼される・・・
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<あらすじ>日本舞踊の師匠は仮の姿で実は凄腕の殺し屋・新田(市川雷蔵)のもとに、石野組幹部荒木(金内吉男)から、政財界の裏情報を持つ朝倉(内田朝雄)殺しを依頼される。1500万円で引き受けた新田は、愛人の秀子(佐藤友美)とともにホテルのプールで戯れる朝倉を針の一突きで仕留めた。ところが石野(中谷一郎)と荒木が新田を殺そうとしたことから反撃。2000万円を手にして新田は二人を殺す。さらに背後に遠藤建設社長の遠藤(西村晃)がいることを突き止めた新田は秀子を利用して、遠藤の背後の黒幕を突き止めようとしたが、遠藤は誤って死んでしまう。しかしそこにかかってきた電話で欧州に発つ予定の政財界フィクサー北城(山形勲)が真の黒幕だった…。 市川雷蔵はこの作品が公開された1967年頃は「眠狂四郎」や「若親分」「陸軍中野学校」シリーズをかけもちで主演し、大映の屋台骨をひとりで支えていたといって過言ではない(そうした過労もあってか1969年に37歳の若さで急死してしまうのだが)。 「ある殺し屋」は二作品に留まるが、ハードボイルド路線のこの作品ではニヒルな殺し屋を演じている。 前作に比べると面白さを追求した分、説明的でやや雑な印象は拭えないが、当時26歳の佐藤友美の存在感はなかなか。大人の女の魅力を存分に発揮しながら、男たちを手玉にとるのだけれど、雷蔵に踊りを教えてもらう佐藤友美の着物姿もなかなかいい。 そしてそうした抑えた筆致のなかで、ポイントポイントを的確に描写する宮川一夫のカメラがまた素晴らしい。暗い部屋でひとり雷蔵が舞う姿は、陰影に富み、どきっとするほど美しいし、駅のロッカーに通じる通路の遠景の描写も見事。単なる通路なのにどうしてあんなに人工的で孤独感すら感じさせる映像になるのだろう。 一方でプールのシーンなどで半裸の市川雷蔵も登場するけれど、殺し屋というにはあまりに貧相な体格で少々哀しくなってしまう。だから格闘シーンなども無理を感じてしまうのは仕方がない。 秀子の部屋に屋上から紐を下ろして侵入するシーンは殺し屋の見せ場のひとつなのだろうけど、部屋からの帰りはどうやって逃げたの?と率直に思う(笑)。もう一度登ったのか?? そしてラストで金を入れたロッカーの鍵を取り戻しに殺害現場に戻る市川雷蔵。現場検証中にもかかわらず、「急いでいるんだ」のひと声であっさり入れてしまうマヌケな警官。さらにカーペットの上に落ちている鍵をあっさり見つける雷蔵。このシーン必要か?(笑) というわけで、上映時間も短い(79分)本作品。それでも市川雷蔵の円熟味を感じさせる愛すべき作品のひとつだ。 針を武器にした殺し屋、いってみれば現代の「梅安」先生だったんだね。
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[006]リュミエール!
 人類史の画期黒美君彦2017-12-06
 
映像記録という手段を手にした人類は、それまでの人類とは違う歴史を歩み始めた、と思う。 文字や絵画といった記録手法から大きく進化した形、それが「映像」だったのだと。 12・・・
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映像記録という手段を手にした人類は、それまでの人類とは違う歴史を歩み始めた、と思う。 文字や絵画といった記録手法から大きく進化した形、それが「映像」だったのだと。 120年以上前に撮影された人々の活き活きした表情、仕種、今はなき風景を観るにつけ、様々な感慨が浮かんでは消える。 遠景で歩いている男は、まさか122年後、自分の姿を極東の島国で凝視されるなんて想像もしなかったに違いない。それどころか、自分のそんな姿がフィルムに焼きつけられていることすら知らなかったに違いない。 19世紀末、時代は大きく変貌しつつあった。 カメラを向けられた人々は興奮し、無邪気に振舞った。 リュミエール兄弟が最初に「シネマトグラフ」で撮影したのは1895年12月28日。パリで工場から出てくる人々を撮影したものだった。そこからあっという間に現在の映画の原型となるトリック撮影や移動撮影、ありとあらゆる撮影手法が試行錯誤されたことがわかる。 リヨンにあるリュミエール研究所のディレクター、ティエリー・フレモーが1422本もの短編から108本を選んだものだが、19世紀末から20世紀初頭の映像がみなとても興味深い。そして撮影者たちの視点もまた面白い。 冒頭の方に出てくる、ネコと遊ぶ少女は可憐で、何とも可愛らしく、フレモーがナレーションで語るように多分にルノアール的である。 人類は動く光と影をこのとき手に入れたのだ。 この頃アメリカではエジソンが「キネトスコープ」を発明して、「シネマトグラフ」と競っていた。そんなことを窺わせる映像もあり、思わずにやけてしまう。 映画史的に、というだけでなく、人類史のなかでこのリュミエールの映像は大きな位置を占めると私は確信している。
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[007]靴職人と魔法のミシン
 驚きが薄いかな黒美君彦2017-12-06
 【ネタバレ注意】
ニューヨークの下町、ロウアー・イーストサイドで四代続く靴職人の店で働くマックス・シムキン(アダム・サンドラー)。認知症の母親を見舞ったり、隣で理髪店を営むジミー(ス・・・
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ニューヨークの下町、ロウアー・イーストサイドで四代続く靴職人の店で働くマックス・シムキン(アダム・サンドラー)。認知症の母親を見舞ったり、隣で理髪店を営むジミー(スティーヴ・ブシェミ)と他愛ない冗談を飛ばしあったり…。そんなマックスが、地下倉庫に眠っていた手動のミシンに魔法の力があることを発見! …とまあ、大人向けの寓話、ファンタジーなのですが、米国では散々の酷評だったとか。そこまでヒドくはないだろう、というのが個人的な感想なのですが。 魔法のミシンで縫った靴を履くと、その間だけその靴の持ち主になれる、というのがこのファンタジーの肝ですが、いちばん心に残るのは「もう一度お父さんに会いたい」という母の願いをかなえようと、父親アブラハム(ダスティン・ホフマン)に変身して、一夜のデートをするシーンでしょう。 もうこれだけで十分。あとは変身しても悪さやいたずらをするだけなのですから。 ラストにはどんでん返しが待っています。 実はアブラハムは、どこか遠くに姿を消したわけではなく、すぐ近くでマックスをずっと見守っていたのです…って、マックスがこの齢になるまで放置していたんかい!と言いたくもなりますが。アブラハムはどうやらその力を借りて、裏の社会でのし上がっていた模様…ということで、この父親はいったい何者?という疑問は消えません。運転手つきのリムジンが、秘密基地よろしく登場するシーンは確かにびっくりしますが、それだけ稼いでいたのに家族は放置していたってこと? 再開発の悪徳業者としてエレン・バーキンが出演するなど不思議な味わいの作品なのですが…。 アダム・サンドラーはそれなり。コミカルではあるものの今ひとつ感情移入できないまま終わってしまったような。驚きが薄かったせいかもしれません。 ただロウアー・イーストサイド辺りの雰囲気は良く出ていたと思います。
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[008]南瓜とマヨネーズ
 恋愛依存症黒美君彦2017-12-06
 【ネタバレ注意】
1998〜99年に連載された魚喃キリコのコミックが原作(未読)とか。ツチダ(臼田あさ美)はミュージシャン志望のせいいち(太賀)の才能に惚れ込んで同棲しているが、せいいちは・・・
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1998〜99年に連載された魚喃キリコのコミックが原作(未読)とか。ツチダ(臼田あさ美)はミュージシャン志望のせいいち(太賀)の才能に惚れ込んで同棲しているが、せいいちは一向に音楽に取り組もうとしない。愛人までして生活費を稼ぐツチダだったが、そんなある日昔の恋人ハギオ(オダギリジョー)に出会い、彼にのめりこんでいく…。 登場人物たちの世界は驚くほど狭く、儚い。過去を捨象した彼らには「いま」しかないが、それでも確実に時間は過ぎていく。主人公のツチダは男がいないと生きていけないタイプ。いわゆる恋愛依存症のようなものだ。 登場人物たちにはそれぞれどこかいらいらさせられるが、同時に周辺にいそうな人物であることも確か。 臼田あさ美が男に振り回される女を巧演。時々独白が入るシーンがあるが、それは独白ではなく、やりとりや演出で見せたいところ。 男に尽くすタイプのこんな女性は、「好き」を押しつけてくるので、ハギオならずとも逃げたくなる気持ちはよくわかる。結局自分の居心地のよい場所を優先しているうちに、その場所に依存してしまうことになる。他者もそこに閉じ込めたいと無意識に考えるのがこうしたタイプだ。永遠に居心地のいい場所なんてこの世にはない。 それでもハギオ、せいいちと別れたツチダは、少しさっぱりした表情をしているように見えたのが救いか。 せいいちが歌って聴かせる歌は、何とものどかな感じで悪くない。あの場面でツチダが流した涙は、別れた途端にいい曲を作ったせいいちと自分の過去への訣別の涙か。 さてさて、しかし人間簡単には変わらないんだよなあ。
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[009]雨にゆれる女
 ミスキャスト黒美君彦2017-12-04
 【ネタバレ注意】
ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーといった映画監督の作品の音楽を担当してきた半野善弘の初監督作品。 ところどころセンスは感じさせるし、主演の青木崇高は雰囲気を醸し・・・
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ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーといった映画監督の作品の音楽を担当してきた半野善弘の初監督作品。 ところどころセンスは感じさせるし、主演の青木崇高は雰囲気を醸し出している。 ところが相手役の大野いとの演技があまりに拙く、その結果凡庸な印象しか残らなかった。 青木は飯田健次という仮の名を使って工場で働く久保川則夫を演じる。 そこに下田(岡山天音)という男が、「ひと晩だけ」と女を連れてくる。それが「理美」と名乗る大野いと。 実は後半になって久保川は、愛する姉を捨てた精神科医を刺し殺したことが明らかにされる。当時8歳だった娘が、実は「理美」だったのだ、ということに。 ということは、事件のことを書いたあの文書は理美の自作自演ということ?で、あれだけ青木崇高を責めたってこと? 結局理美は父の仇を討ちたくて、青木のもとに転がり込んだということになるのだろうけど、それにしては回りくどいしなあ。しかも青木と大野いとの関係性がどうも乏しいので、急に彼が人間性を取り戻されてもな、という感じ。何だろう、大野いとがはすっぱなその辺の姉ちゃんにしか見えないのだ。台詞回しにしてもそう。そもそも彼女は声があまりよくないし、演技が上っ面なのだ。 ということで、雰囲気はあるものの、ミスキャストで台無しになってしまう典型のような作品になってしまった。うーむ。
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[010]ザ・タワー 超高層ビル大火災
 群像劇黒美君彦2017-12-04
 【ネタバレ注意】
消防士長にソル・ギョング、ビルのフードモールマネージャーにソン・イェジン、汝矣島(ヨイド)消防署長に名優アン・ソンギ、ビルの施設管理長にキム・サンギョンと、韓国の一・・・
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消防士長にソル・ギョング、ビルのフードモールマネージャーにソン・イェジン、汝矣島(ヨイド)消防署長に名優アン・ソンギ、ビルの施設管理長にキム・サンギョンと、韓国の一線で活躍する俳優を集結させた群像劇。 『タワー・インフェルノ』に9.11のWTCテロを加えたようなパニック・ディザスター映画。 CGがとにかく凄い。ここまで出来るのか…と感心した。タワースカイも、あたかもそこにあるかのような存在感で、窓ガラスには周囲の風景が映りこんでいる。 日本のこの手の映画では大概ヒーロー役とヒロイン役が、今ここでその話をする必要なくない?、と思わず突っ込んでしまいそうな恋バナを始めるが、さすがにこの作品ではそんな悠長なシーンは織り込まれない。 そもそも超高層タワービルは、実はきわめて脆弱だ。 この映画に登場するビルはどうも設計に欠陥があったみたいだけど、それがなかったとしても高層階から逃げるには階段しかない。逆にいえば、万一火災が発生しても高層階であれば、階段で上がるしかないのだ。重装備の消防隊員が簡単に上がれようはずがない。 物語としてはさほど強い話があるわけではないが、危機に陥った時にとる行動がいろいろあって興味深い。 ただエレベーターで蒸し焼きにされるのは勘弁して欲しいなあ。 十分楽しめた。
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[011]gifted/ギフテッド
 ナビエ-ストークス方程式黒美君彦2017-12-04
 【ネタバレ注意】
天賦の数学的才能をもつ7歳の少女メアリー(マッケナ・グレイス)と叔父フランク(クリス・エヴァンス)。メアリーの母親ダイアンは、祖母イヴリン(リンゼイ・ダンカン)の英・・・
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天賦の数学的才能をもつ7歳の少女メアリー(マッケナ・グレイス)と叔父フランク(クリス・エヴァンス)。メアリーの母親ダイアンは、祖母イヴリン(リンゼイ・ダンカン)の英才教育の結果、世界有数の数学者になったが自ら命を絶ってしまう。フランクはメアリーにその轍を踏んで欲しくないと、祖母から引き離し、自らの手で彼女を育ててきたのだった…。 人並み外れた能力は、文字通り「Gifted」と呼ばれる。そんな才能を持ったが故に彼女は、特別な英才教育を施すべきか、あるいは普通に育てられるべきか、大人たちの思惑に振り回される。 イヴリンは自ら出来なかった数学の難問を娘に解いてもらおうと必死だったのだろう。そしてその欲望は孫娘にも向けられる。実母の無茶な要求に背を向けてきたフランク自身、もともとは大学で哲学を教えていたのだから、アドラー家はどんなDNAを分け合っているのだ(笑) 一方で、フランクはメアリーの担任ボニー・スティーヴンソン(ジェニー・スレイト)とつきあい始める。朝、メアリーと鉢合わせして慌てるボニーに、メアリーがにやっと笑って見せるのが可笑しい。 裁判まで起こした挙句里親に預けられたメアリーを、イヴリンが奪い取ったことを知ったフランクは、姉が「母の死後に発表すること」として預けた「ナビエ-ストークス方程式の解」を母親に示す。 それはある意味、自分の人生を縛り続けた母親への意趣返しでもあったということか。 メアリーを演じたマッケナ・グレイスがとにかくキュート。 ところどころニヤッとさせるコミカルなシーンも盛り込んだハートウォーミングな物語だ。 英才教育が幸福をもたらすとは限らない。人間としての幸福は中庸にこそある、ということか。その辺りは正解はないのかも知れない。
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[012]地方記者・立花陽介(11) 山陰出雲通信局
 あずきとぎ黒美君彦2017-12-04
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>島根県の出雲通信局に赴任した立花陽介(水谷豊)のすぐ近所に住む高原芳夫(中原丈雄)が海岸で転落死した。畑中刑事(北村総一郎)はじめ警察は事件性はないとみ・・・
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<あらすじ>島根県の出雲通信局に赴任した立花陽介(水谷豊)のすぐ近所に住む高原芳夫(中原丈雄)が海岸で転落死した。畑中刑事(北村総一郎)はじめ警察は事件性はないとみたが、高原の自宅を物色する橋本里子(あめくみちこ)に遭遇。彼女は高原の内縁の妻で、金を貸していたので金目の物を探していたという。小料理屋の女将である里子はアリバイがあった。その後陶器商を営む高原はあちこちに出資を持ちかけ、金を借りていたことがわかってきた…。 ふたつの事件が入り混じって、やや難易度の高い展開。 高原芳夫には島根県松江市の老舗の和菓子屋「萌芽堂」の女将村井夕子(田島令子)という幼なじみがいた。彼女と高原は、子どもの頃よく一緒にテレビのある家に遊びに行っていたというが、その後交際。ところが1967年10月8日、第一次羽田事件のときに学生運動に参加しなかった高原は、夕子と心中未遂事件を起こす。しかし死に切れずに夕子は松江の和菓子屋に嫁ぎ、高原は出雲に戻ってきた。 高原はその後里子と内縁関係になって、当てもないのに出資をあちこちに求め詐欺もどきの金集めをしていた。ところが夕子に出会って、1,000万円の出資を切り出されたことから、詐欺はやめると決意。里子は嫉妬から高原を崖から突き落としたのだった。 残された高原の手帳に、死んだその日のところにあった「あずきとぎ」とは小泉八雲の怪談に登場する妖怪で、今は普門院という寺の前の橋を指すが、本当は別の川の橋で、萌芽堂の近所にあった、というのがミソ。つまり、「あずきとぎ」は萌芽堂を指していたのだ。ところがややこしいのは、その手帳の「あずきとぎ」の筆跡から、そのメモが里子によって書かれたことが明らかになるところ。里子はその手帳を夕子に突きつけ、身に覚えのない事件をでっちあげて、金を巻き取ろうとしていた。それを知った夕子の息子浩(蟹江一平)が、崖で里子と揉み合い、里子が転落死した、というのが事の真相だけど、里子が自殺をほのめかす書き置きを残していたので、浩も無罪放免となりそう…というお話に。 里子がわざわざわかりにくい「あずきとぎ」という言葉を書く必要はなく(「萌芽堂」と書けばいい)、しかも金を脅し取ろうとする根拠も余りに乏しいのがストーリー的には難がある。 陽介の妻久美(森口瑤子)は今回は、近所の噂話を収集する役。本社の根岸記者(片桐竜次)は、高原の心中事件を調べる役柄。 毎度こうしたプロットを、地元の特徴を捉えて作り上げるのは大変だったろうなと思う。 着物姿の田島令子の艶っぽさが目立った回だった。
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[013]ジャスティス・リーグ
 それなりに楽しめた黒美君彦2017-11-30
 【ネタバレ注意】
DCコミックスもマーベルコミックもさほど詳しくないので、はっきりいうと作品単体でしか評価できないのだけれど、アメコミ映画化作品としてはこんな風に展開するのは必然だろ・・・
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DCコミックスもマーベルコミックもさほど詳しくないので、はっきりいうと作品単体でしか評価できないのだけれど、アメコミ映画化作品としてはこんな風に展開するのは必然だろうなあという気もする。 とはいえ、冒頭「スーパーマン死す」からスタートすると、「え、そうなの??」と驚くばかり。前作『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)を観ていないので仕方ないんだけど。 敵は次々現れ、しかも次第に強大になっていく。ならば別々の物語世界のヒーローを束にしたら面白いじゃね?マーベルもアベンジャーズをヒットさせているし…という発想なんだろうなあ。 バットマン(ベン・アフレック)がワンダーウーマン(ガル・ガドット)、フラッシュ(エズラ・ミラー)、アクアマン(ジェイソン・モモア)、サイボーグ(レイ・フィッシャー)を一人ずつ仲間に加えて、惑星アポコリプスのニューゴッズの一員で、使う者に超常的な力をもたらす「マザーボックス」を求めて地球へ現れたステッペンウルフ(キーラン・ハインズ)と闘う。けれどやはりひとり足りない…スーパーマンがもしいれば…。あ、そうだ、生き返らせよう! てなわけでストーリーは大したことがないのだけど、それなりに全編楽しく観ることができたのは確か。死なないし、大して傷つかないヒーローの闘いは安心して観ていられる(笑)。そこに復活したてで力を制御できない知性のないスーパーマン(ヘンリー・カヴィル)を絡めたりして(スーパーマンが寝返ったら誰も勝てないね)。 でもスーパーマンもロイス・レイン(エイミー・アダムス)や育ての母(ダイアン・レイン)の顔を見たら正気に戻るんだから、安心安心。 ド派手なCGもま、いいかな。単体では面白いとは思えなかったワンダーウーマンが、唯一のヒロインとして活躍。こんなものなんだろうけど、個人的には楽しめたんだからよしとしましょう。
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[014]追いつめられて
 ヌルい黒美君彦2017-11-29
 【ネタバレ注意】
いかにも80年代を思わせるヌルいサスペンス。オリジナルの『大時計』(1948年 ジョン・ファロー監督・未見)は出版社が舞台だが、この作品は何とその舞台をペンタゴン(国防総・・・
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いかにも80年代を思わせるヌルいサスペンス。オリジナルの『大時計』(1948年 ジョン・ファロー監督・未見)は出版社が舞台だが、この作品は何とその舞台をペンタゴン(国防総省)に移してしまう。ところがポリティカル・サスペンスには当然ならないわけで(何せ長官が浮気した愛人を殺したという痴話喧嘩が発端だもんね)、どうもその辺がヌルく感じるのだ。 しかも偶然に偶然が重なってしまう展開もどうなんだか。 若いケヴィン・コスナーはなかなか男の色気があるけれど、そもそもスパイが愛人の交際相手も調べずにいきなり車の中で事に及ぶかね。後半は、殺されたスーザン(ショーン・ヤング)と一緒にいたトム(K・コスナー)の顔を見た目撃者が次第に近づいてくるわ、インスタントカメラのコンピューター解析は進むわで、いつトムに行き着くか、というのがハラハラ感を生む…となるわけだけど、ペンタゴンには職員の顔写真は一切ないのか(笑)。たまたま風邪で休職していたら、決して見つからないというのは国防総省としてはいかがなものか…。 そんなわけで突っ込みどころ満載のサスペンス。 ジーン・ハックマン演じるデヴィッド・ブライス長官も、トムの友人スコット・プリチャード(ウィル・パットン)が惚れ抜くほどのキレは見られず。でこぼこコンビの特殊工作員(=殺し屋)も、ケヴィン・コスナーを追ったかと思えば、あっさりおとなしくなったり。 車椅子のサム・ヘセルマン博士は、今でいうハッカーが出来ちゃう能力の持ち主だけど、可哀想なことをしました。 当時のプリンターのトロさとか懐かしさも覚えるくらいだけれど、いずれにせよ大した作品ではないな。
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[015]キセキの葉書
 すべては「自分」黒美君彦2017-11-29
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>1995年の阪神淡路大震災で被災した兵庫県西宮市。団地で重度の脳性まひがある幼い娘望美(八日市屋天満)の介護を担う原田美幸(鈴木紗理奈)は、眠れず食欲もなく・・・
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<あらすじ>1995年の阪神淡路大震災で被災した兵庫県西宮市。団地で重度の脳性まひがある幼い娘望美(八日市屋天満)の介護を担う原田美幸(鈴木紗理奈)は、眠れず食欲もなくなって仮面うつとの診断を受ける。そこに、大分・日田にいる母(赤座美代子)の様子がおかしいと、父(亀井賢二)から連絡が入るが帰郷はできない。母はうつ病と認知症を併発しているという。美幸は、母に毎日気持ちが明るくなるようにと葉書を書くことを決める…。 40歳となった鈴木紗理奈が障がい児の母親として新境地を開いた作品。マドリード国際映画祭で最優秀外国映画主演女優賞を受賞した。 全体的に静かな作品だ。阪神淡路大震災の発生直後から物語が始まるが、被災について多くは語られず、日々の娘との淡々と描かれる。頑張り屋の母親だが、疲労が溜まるとどうしても悲観的になってしまう。この娘さえいなければ、と考えている自分にはっと気づき、団地の隣人大守キヨ(雪村いずみ)からの「結局すべては自分よ」「気持ち以外で助けることが出来るの?」という言葉で我に返る。 幸せになれないのは誰かのせいではなく、自分の心持ちのありようだ。そこから母親との確執を乗り越え、葉書を日課として送るようになる。 長男とその友達が、美幸が書いた物語を聞いて「おもろない」と思い切り突っ込むシーンは笑える。子どもは正直だからね。 少々出来すぎた話のようにも観えるが、童話作家脇谷みどりさんの実体験に基づいているというのだから、ある程度はこの通りなのだろう。認知症は基本的に進行は遅らせても改善することはないのだから、葉書の効果かどうかは不明だけれど。脇谷さんは創価学会員だということで、学会としては「信仰の力(?)」を前面に出したいところか(笑)。 作品はもちろん学会を感じさせるところはなく、考えさせるいい話としての完成度は高い。 監督のジャッキー・ウーは日本人(父親が中国人とのハーフ)で、彼の作品は初見だったが、的確な描写で最後まで見せる力を持っていると思った。 脳性まひの子役を演じた八日市屋天満ちゃんは、本当に脳性まひの子役かと思わせるくらいの見事な演技。主演女優賞は寧ろ彼女にあげたい。 そして雪村いずみの出演は2005年に認知症の役を演じた『そうかもしれない』(保坂延彦監督)以来12年ぶり。もう80代になるけれど、まるで神様のような(笑)役でした。
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[016]地方記者・立花陽介(10) 伊豆大島通信局
 冤罪黒美君彦2017-11-28
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>東洋新聞の伊豆大島通信局に赴任した立花陽介(水谷豊)を訪ねて戸田永子(佳那晃子)がやって来た。1986年11月21日に起きた強姦殺人事件で逮捕、服役した宅間五郎・・・
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<あらすじ>東洋新聞の伊豆大島通信局に赴任した立花陽介(水谷豊)を訪ねて戸田永子(佳那晃子)がやって来た。1986年11月21日に起きた強姦殺人事件で逮捕、服役した宅間五郎(三浦浩一)は冤罪で、真犯人は別にいるという。実際に宅間に会った陽介は冤罪を確信するが、永子の弟俊作(渋谷哲平)は真犯人の名は金次第だと口にしない。本社の根岸記者(片桐竜次)の力も借りて極秘に調べる陽介だったが、妻久美(森口瑤子)は永子と陽介の関係を浮気ではないかと疑い始め…。 浮気疑惑や冤罪が新たな手法?といえなくもないが、10回目ともなるとかなり筋立てにも苦労が窺われる。 ストーリーは1986年11月21日の伊豆大島の大噴火。島民はみな船で避難したが、空き巣をしようと島に渡っていた男が、目撃者(=戸田永子)の証言で有罪判決を受け、服役したというのがベースになっている。 真犯人は、犯人から告白を聞いたという永子の弟外山俊一(偽名で戸田俊作を名乗る)だった、というきわめてわかりやすいお話。さっさと真犯人の目星もついてしまうし。 当時は殺人に時効があったので、時効が来ない限り真犯人は名乗り出ない、という話が出てくる。そこで引き合いに出されるのが1949年の弘前大学教授夫人殺人事件。容疑者が逮捕されて服役した後、真犯人が時効後に名乗り出た事件だ。 伊豆大島はしかし見どころが少ない島だなあという感想。 火山島だから仕方ないけれど、火山灰の砂埃が風に舞うのが印象的。 浮気だと思って森口瑤子が撮影した永子の写真を見て、濡れ衣を着せられた男が「あの時の目撃者だ」とわかる、というところが彼女の活躍するところ。ショートカットの森口瑤子もいいなあ。 とはいえ、全体的には見どころの少ない作品。
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[017]ラジオスター
 歌手とマネージャー物語黒美君彦2017-11-28
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>1988年、名曲「雨とあなた」でMBS歌謡大祭典で大賞(歌手王)を受賞し一躍時の人となったチェ・ゴン(パク・チュンフン)。その後、薬物事件や暴行騒ぎなどを起・・・
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<あらすじ>1988年、名曲「雨とあなた」でMBS歌謡大祭典で大賞(歌手王)を受賞し一躍時の人となったチェ・ゴン(パク・チュンフン)。その後、薬物事件や暴行騒ぎなどを起こし、すっかり落ちぶれてしまったが、謙虚になれずトラブルを起こして留置場に。だが、ゴンの面倒をずっと見てきたマネージャーのパク・ミンス(アン・ソンギ)は保釈金のために放送局の局長(ユン・ジュサン)から、チェ・ゴンが地方局のDJを務める条件で金を借りる。こうして江原道寧越(ヨンウォル)で始まった「チェ・ゴンの午後の希望曲」。寧越支局長(チョン・ギュス)、ミキサー(チョン・ソギョン)、そして本社から左遷されたPDのカン・ソクヨン(チェ・ジョンユン)が加わる番組は、ひょんなことから人気番組に…。 マネージャーとかつてのスターとの友愛物語をコミカルな展開で見せる作品。 ラジオ番組に全くやる気を見せなかったチェ・ゴンだが、ある日珈琲を配達に来た青緑喫茶店(チョンノクタバン)のキム(ハン・ヨウン)という若い女性をマイクに向かわせると、はじめこそ「ツケを払え!」と実名を出して笑わせるけれど、やがて母親に向けて涙ながらに「家出してごめんね」と語りかけ始める。このシーンは思わずじーんと来る。 このことがきっかけで、さまざまな人たちが、縦横無尽に番組に登場するようになる。 番組はすっかり人気となり、チェ・ゴンにはソウルで番組を持たないか、というオファーまで。しかしそこにはアン・ソンギ演じるマネージャーは不要だという条件も。 家庭をずっと犠牲にして来たミンス(アン・ソンギ)は、チェ・ゴンと別れて妻子のもとで懸命に働くが、結局チェ・ゴンが忘れられない。 そんな男と男の友情がこの物語の中心を貫く。 ラストシーンは雨の中でアン・ソンギがパク・チュンフンに傘を差し掛けるシーンだが、これはアン・ソンギのアイディアだったとか。 劇中、チェ・ゴンを崇拝する“イーストリバー”というバンドが登場するけれど、彼らは“NO BRAIN”という実在のバンドだそうで。道理で演奏も巧い。 脇役たちがしっかり演じているだけに、主人公のパク・チュンフンがもひとつ冴えないような気がしたのは自分だけ?
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[018]祝祭
 生命の循環黒美君彦2017-11-28
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>韓国の田舎町。人気作家ジュンソプ(アン・ソンギ)は、認知症の末に亡くなった87歳の母(ハン・ウンジン)の葬式を出す。母との物語を数多く書いた彼のもとに、文・・・
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<あらすじ>韓国の田舎町。人気作家ジュンソプ(アン・ソンギ)は、認知症の末に亡くなった87歳の母(ハン・ウンジン)の葬式を出す。母との物語を数多く書いた彼のもとに、文芸誌の編集者ヘリム(チョン・キョンスン)がやってくる。さらに13年前家出したきりだった姪のヨンスン(オ・ジョンヘ)も。ヨンスンは、ジュンソプの兄が愛人に産ませた娘で、祖母だけが優しかったのだ。ジュンソプへの賞賛と嫉妬、男たちは飲んだくれ、博打に明け暮れる…。 原作は、イ・チョンジュン(1939〜2008)が母の葬式の経験をもとに書いた童話『おきな草は春を数えるかくれ鬼』。この本は、映画の中でも登場する。 アン・ソンギは、著名な売れっ子作家だが少々頼りない役柄を巧演。オ・ジョンへが、けばけばしい水商売の女を演じ、見事なパンソリを謳いあげるシーンもある。 伊丹十三の『お葬式』(1994年)を想起させる設定だが、韓国の田舎の土俗的な葬式の儀式をひとつひとつ解説してくれるので、民俗学的な価値も見出せる。登場する村人や親類縁者が酒に溺れ、騒ぐ姿はともかく、おばあちゃんと孫娘ウンジ(ペク・チナ)のファンタスティックなシーンがところどころに挿入され、そこは生と死、生命の循環が描かれている。 おばあちゃんが歳をとるにつれて小さくなっていくのは、おばあちゃんが孫娘に「歳を分けているから」。だから孫娘は少しずつ大きくなり、おばあちゃんは小さくなっていく。 おばあちゃんはやがて赤ん坊に帰っていく。 韓国では伝統的な儒教のほか、仏教やカトリック、プロテスタントといろいろな宗教が混在している。 都会では日本と同じように葬儀場があるが、この作品では伝統的な儒教に基づいて自宅で行われる「三日葬」が行われる。 二日目は水に浸した米を死者の口に含ませ、着替えさせる。三日目にようやく出棺と埋葬が行われる。 死は悲しむだけの儀式ではない。生者が死者を、感謝と哀悼の意をもって送り出す「祝祭」である、というのが、ラストカットの集合写真のシーンに象徴されている。 なかなかの名作だ。
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[019]地方記者・立花陽介(9) 信州上田通信局
 六文銭黒美君彦2017-11-27
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>長野県上田市の信州上田通信局勤務が1年になる立花陽介(水谷豊)は妻の久美(森口瑤子)とのんびりヒマねた取材を続けていた。そこに本社の根岸記者(片桐竜次)・・・
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<あらすじ>長野県上田市の信州上田通信局勤務が1年になる立花陽介(水谷豊)は妻の久美(森口瑤子)とのんびりヒマねた取材を続けていた。そこに本社の根岸記者(片桐竜次)から商社・司コーポレーションの営業マン山浦浩明(安藤一夫)の毒殺事件の応援を頼まれる。六文銭が脇にばら撒かれた遺体で見つかった山浦は、パソコンの納入をめぐって足繁く上田に通っていたのだ。陽介は購入を計画していた私立上田中央高校の教務主任である土屋先生(岡本富士太)を訪ねる…。 今回は殺人事件の発生は東京、しかも劇中に陽介は伊豆大島への転勤を言い渡されるという、やや変化球が見られる。 物語は師弟愛が殺人事件をもたらしたということになるけれど、うーん、ちょいとすっきりしないところも。 ただ重要容疑者の教え子の武田刑事を演じた金田明夫がいい味を出している。 もうひとり重要なのが、土屋先生のかつての教え子佐伯六郎(森川正太)。居酒屋で働く佐伯はかつて両親を亡くしてグレていたが、土屋先生が1974年10月14日、後楽園球場での長嶋茂雄引退試合に佐伯を連れて行き、自宅に住まわせて彼を更正させたという。 一方土屋の口座には、PC納入の便宜を図ってもらおうと山浦から200万円の振込みがあった。土屋はすぐに返そうとするが、そこに妻を病気で亡くし、入院費がなくて困窮する佐伯が現れ、ついその200万円を渡してしまう。 山浦殺害の夜、土屋と佐伯はふたりで野球を観に行っていたと、ふたりで写った球場前での写真まで見せる。だがその写真は、別の写真の佐伯の姿をパソコンで合成したものだった。 山浦は、ライバル会社の営業ウーマン堀尾リエ(鳥越まり)と婚約までしていたが、実はそれも営業を有利に進めるための手段に過ぎなかったことが明らかに。山浦は悪人だったのだ(笑)。 そもそも土屋に山浦を紹介したのが佐伯だったので、佐伯が責任を感じて山浦を殺害。土屋先生はそれに気づき、合成写真を作ってアリバイを作ってやったのだった。妻の四十九日がすんだら自首するだろうと思って…。 しかし、アリバイ写真を作っちゃうのはいくら何でもやりすぎだろう。 遺体に六文銭をばら撒くというのも、やりすぎだよなあ。 途中で観る者をミスリードすべく、ライバル会社の堀尾リエという女性を登場させるが、彼女が警察に対して「山浦なんて知らない」とウソを言う理由がわからない。森口瑤子演じる久美が、会社を辞めて行方をくらませた彼女の住まいを見つけ出すあたり、森口瑤子も少しは活躍させないとね。 事件解決の場所は、上田市別所温泉の安楽寺(国宝の八角三重塔が有名)。 山浦の上司益谷課長として平泉成が登場するが、出演は冒頭のみ。もう少し重要な役回りかと思ったんだけど。 その他骨董店店主で犬塚弘が出演している。 毎回お馴染みの「過去のあの日」は、1974年の長嶋茂雄引退の日だけれど、今回は事件そのものには深く関わっていない。結果として教え子に殺人という罪を犯させてしまった先生は、どんな気持ちだったのだろうか…。
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[020]ジュピター20XX
 Life-one,Out.黒美君彦2017-11-21
 
<あらすじ>大富豪のウォルター・モフィット(ランス・ヘンリクセン)が計画した木星の衛星エウロパ探査のために、マイケル・フォレスト(カリー・ペイトン)とネイサン(ジェ・・・
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<あらすじ>大富豪のウォルター・モフィット(ランス・ヘンリクセン)が計画した木星の衛星エウロパ探査のために、マイケル・フォレスト(カリー・ペイトン)とネイサン(ジェームズ・マディオ)が「ライフ・ワン」に乗って飛び立つ。しかし2年後、隕石が衝突して冬眠カプセルが大破、ネイサンが死んでしまう。ミッション中止の命令を受けて、フォレストはひとり地球への帰還を目指す…。 冒頭部分を観るとモキュメンタリーかと思わせる。モフィットやマイケルがインタビューに答えるシーンはドキュメンタリー風だ。しかもエウロパ探査のきっかけとなる「鯨」画像はなかなか面白い。推定体長3.62劼箸いΦ霏腓雰澆忙た生物が、エウロパの海を泳いでいるというのだ。 そして宇宙船「ライフ・ワン」も凝った作りだ。円筒状モジュールとトラスを組合せ、アームの先についている船室には遠心力によってほぼ1Gの疑似重力を発生させている。 で、本格SF映画と思わせつつ、殆どが居住室内でのマイケルのひとり芝居。もう少し展開があるかと思うと肩透かしにあう。 帰れるかどうか、というハラハラ感も今ひとつ乏しい。幻覚らしい人の姿が突然現れるのは、どこか『2001年宇宙の旅』っぽい。 金星の表面を旅したマイケルは、その経験で大きく変わる。自分が見て、体験することこそが使命だと、地球帰還を拒否するのだ。ここまで帰ってきたのになぜ、とは正直思う。 いずれにせよ、低予算でSF映画を撮るとこういうことになるのかな、と思う。 地上の「Bob,Out」、宇宙船からの「Life-one,Out」というやりとりが印象に残る。 応援メッセージの中で、「日本・静岡」の女性(クレジットでみると「Sachiyo.K」という女性らしい)が富士山をバックに語りかけるところは微笑ましかった。
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[021]地方記者・立花陽介(8) 会津若松通信局
 51歳の白虎隊黒美君彦2017-11-21
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>東洋新聞記者立花陽介(水谷豊)は福島県の会津若松に赴任早々、妻の久美(森口瑤子)に親しげに話しかける男と遭遇する。飯盛山で白虎隊のように胸を刃物で刺して・・・
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<あらすじ>東洋新聞記者立花陽介(水谷豊)は福島県の会津若松に赴任早々、妻の久美(森口瑤子)に親しげに話しかける男と遭遇する。飯盛山で白虎隊のように胸を刃物で刺して死んでいた男の遺体発見現場で、彼は日刊会津の米田記者(馬野裕朗)だと知る。死んでいたのは重機リース会社の伊原政次郎元社長(河原崎健三)だった。彼は約6000万円で購入した重機を、頭金を払っただけで転売し、利益を得ていた。伊原に重機を売る窓口となった伊原の高校時代の同級生で丸谷商事の野村部長(中山仁)に事情を聞くが、彼は事件当時マンションの火災報知器が誤作動し、アリバイを主張する…。 回を追うにつれて、陽介の周辺の機器が変わっていくというのも見どころ?のひとつ。第一回ではポケベルしかなかったのが、第三回くらいから携帯電話が登場し、96年秋に放送されたこの回では原稿もワープロからノートパソコンへと変化する。 この回では久美の大学の同級生だという米田という地元紙の記者が登場。ところが、立花夫妻の信頼は全くといっていいほど揺るがないので、そこがある意味つまらないような気も…。会津若松南署の滝川警部補(井川比佐志)は巧い。 ストーリーは高校時代に遡る。野村と伊原は高三の夏休みに体育館で喫煙していて火事を起こし、逃げ損ねた伊原だけが捕まった。東京の大学に進学した野村は東京で伊原と再会し、歌声喫茶でよく集ったが、恋人の松原(現山口)昭子(赤座美代子)を伊原に押しつける。伊原と昭子は結婚するが離婚、再婚していまは山口姓を名乗っている。2年前に野村の妻が亡くなったのをきっかけに、野村と昭子は会うようになった。一方野村は伊原を焚きつけて、重機の不正転売を画策。会津若松で伊原を殺害する。その前の晩から、娘の結婚準備で上京していた昭子に、火災報知機を鳴らさせ、「兄さん、間違いだって」と大きな声で言わせてアリバイを作っていた。 そのことを突き止めた米田記者を呼び出して、野村は彼も殺害したのだ…とのこと。 陽介が山口昭子と知り合うきっかけが、竹久夢二と「晴れて会津の磐梯山も今朝は嬉しい薄化粧」(竹久夢二)という米田のヒントを受けて立ち寄った喜多方の蔵座敷美術館でたまたまボランティアとして案内をしていた、というのは偶然に過ぎる(彼女は週に2回しか行っていないそうだし)。しかも彼女は米田記者のことを頑として知らないと主張していたはずなのに。 最後に野村を厳しく追及する陽介だが、物証がないのでしらばっくれることだって野村は出来たはず。あっさり認めすぎだろう。あれほど周到に準備していたのに。それに何も知らないであんな怪しいことを昭子はするかね。明らかにおかしいだろう。 というわけで、少しずつストーリーがヌルくなっていくこのシリーズ。 「火曜サスペンス劇場」なんだから仕方ないか…。
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[022]闇金ウシジマくん Part3
 「タイム・イズ・マネー」黒美君彦2017-11-20
 【ネタバレ注意】
第三作もこれまでを踏襲した作り。 ネットビジネスで一獲千金を狙うフリーター沢村真司(本郷奏多)をめぐる物語と、遊ぶ金欲しさに借金を重ねながら会社にしがみつくるサラリ・・・
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第三作もこれまでを踏襲した作り。 ネットビジネスで一獲千金を狙うフリーター沢村真司(本郷奏多)をめぐる物語と、遊ぶ金欲しさに借金を重ねながら会社にしがみつくるサラリーマン加茂守(藤森慎吾)の物語が同時並行で描かれる。共通しているのは、丑嶋馨(山田孝之)率いる「カウカウファイナンス」から金を借りている、というところ。 ネットビジネスのマルチ商法まがいの話はいかにもありがち。宗教にも通じるところがある詐欺商法だけど、嵌まる人は少なくない。面白かったのは「カジノがマネーロンダリング」に使われる、という解説。シンガポールのカジノで負けたことにしてカジノに金をチップとして預け、別の国の通貨で換金し直す、なんてやり方はさもありなん。そんなこともあるのに、日本でカジノ解禁して大丈夫なのかね。 いずれにせよネットで1秒間に1億円を稼ぐという天生翔を演じた浜野謙太の怪演はなかなかいい。 合言葉のような“Time is Money”という言葉の、何と虚しいこと。 一方のサラリーマンの話は、無軌道にキャバクラ通いを続けて破滅する男の話。頭に火をつけられるシーンは怖いよなあ。最後に「どうしてそんな厳しい仕事をしているんですか?」と問われて丑嶋が「食うためだ」というのは今ひとつ弱い感じがしたけどなあ。 沢村真司(本郷奏多)も、何だか中途半端な終わり方だったな。「自分の命賭けてやったんだろ?何もしないヤツよりマシだ」というのが丑嶋の評価なのか。あれだけ周囲を混乱させて、犯罪まで招いてそれはないだろ、とも思うけど。 三作目ともなるとややパターンに陥ってしまい「ナニワ金融道」みたいな感じがしなくもないが、現代の病巣を戯画的に描く、という意味では面白いと思う。ただ本作では丑嶋たちが主人公ではなかったので、まあこんなもんかなと。
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[023]BORDER 贖罪
 内面の声か死者の声か黒美君彦2017-11-20
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>「死者と対話できる」特殊能力を得た刑事・石川安吾(小栗旬)は、凶悪な完全犯罪者で“絶対的な悪”を標榜する安藤周夫(大森南朋)をマンション屋上からついに突き落と・・・
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<あらすじ>「死者と対話できる」特殊能力を得た刑事・石川安吾(小栗旬)は、凶悪な完全犯罪者で“絶対的な悪”を標榜する安藤周夫(大森南朋)をマンション屋上からついに突き落としてしまう。新たな死者、安藤は「こちらの世界へようこそ」と安吾に囁き、久高喬(國村隼)監察管理官の取り調べに「自白しないとこちらの世界に来ることになりますよ」と唆す。そこに新たな死者・須藤真実(中村ゆりか)が現れる。彼女を殺した原口知幸(満島真之介)もまた、快楽連続殺人犯だった…。 2014年の連続ドラマシリーズは観ていなかったので、直前に再放送されたシリーズ最終回を観てから本作へ。 前半はドラマとしては異色の展開。すなわち主人公が殆ど語らないまま、死者である「絶対悪」の安藤が執拗に自らの世界に招き入れようとするのだ。これは「死者が語る」という形態こそとっているが、実際には「内面の声」であると考えてもいいだろう。 正義をなす限界に立ち、法律を超越して罰した瞬間、「正義という名の悪」をなしたことになるのではないか、というのがここで示される哲学的な(というには余りに単純だが)命題である。 そしてそこに登場する新たな殺人者。彼もまた安藤と同じく証拠を残さずに平然と殺人を繰り返す男だ。 彼を追いつめることで、安吾は安藤に感謝の言葉を述べてみせる。「これは正義かと悩んでいた自分がはっきりと闇の世界の人間であることがわかった。ならばこれからは闇の世界の人間として正義をなす」と。 個人的に抱いている思いと、作者である金城一紀の思いはある程度一致する。つまりこの世には「絶対的な悪」と呼ぶべき理性の及ばない、抑制の利かない暴力が存在するのだということ。それは人権とは別のカテゴリーに存在するので、刑罰や法律でどうにかできる、というものではない。ある一定数、そうした悪が存在することを前提にして世界を見ない限り、次の段階には進めない、というのはその通りだと思う。 ま、それにしてもやや思惟的で、刑事アクションものにしては難解な感じもしたけれど、そのせいか視聴率も関東で7.9%と、今ひとつ伸び切らなかった感じも…。面白くないことはなかったんだけどね。 ただ天才ハッカー集団がバックにつくと何でも出来ちゃう、というパターンもそろそろ何とかして欲しいような気がする。
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[024]地方記者・立花陽介(7) 但馬城崎通信局
 城の崎にて黒美君彦2017-11-20
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>東洋新聞立花陽介(水谷豊)の次の赴任地は兵庫県城崎町。そこで西山健(遠藤征慈)の変死体発見に遭遇した。志賀直哉の『城の崎にて』の走り書きから。それが遺書と・・・
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<あらすじ>東洋新聞立花陽介(水谷豊)の次の赴任地は兵庫県城崎町。そこで西山健(遠藤征慈)の変死体発見に遭遇した。志賀直哉の『城の崎にて』の走り書きから。それが遺書ともとれるため高田俊介刑事(名古屋章)は自殺とみる。ところが西山は輸入したカニを城崎産と偽って販売し、警察に追われていたことが判明。カニを卸していたのは梶谷商事の梶谷和雄社長(川地民夫)は、西山の学生時代の友人だった…。 雪の温泉街を舞台にした事件を解決する陽介なんだけど、今回使われた志賀直哉の『城の崎にて』の一節が効果的ではない。 ストーリーは例の如く過去の因縁が現代に及ぶというパターン。1950年代半ばに高校で一緒だった梶谷、西山、浦部宏(長谷川哲夫)は、東京の大学に進学して同じ下宿で暮らしていた。梶谷は高校の同級生で、東京の洋裁学校に通う草野富子(高田敏江)と交際していた。ところが昭和33(1958)年3月31日赤線最後の日、西山が言い出して3人で売春宿に繰り出す。女を知らない梶谷は謝って女を階段から突き落とし、女は死亡。梶谷たちは逃げ出した。売春宿に入る梶谷の姿を見かけた草野は実家に戻り、不幸な結婚をしてしまう。 そしてふた月前、同窓会で城崎に戻ってきた梶谷と西山。行商をする富子に西山は気づいたが、梶谷は気づかず。実は西山は、38年前の事件をめぐって脅された梶谷が自殺に見せかけて殺害したものだった。そしてそのことを知った草野は梶谷と日和山公園で話し合うが「貧乏学生を棄てたんだ」と言われて逆上。草野が投げた石つぶてが当たり、転んだ梶谷が後頭部を岩にぶつけ死んでしまったのだった、というお話。 結局地元で土産物屋を営み、愛人も作っている浦部だけがお咎めなし(笑)。 みんな簡単に死に過ぎだろう(ふたりも頭を打って偶然死んでしまうし)、と思ってしまう。 行商で細々生きる草野富子は、19歳で網元の息子と結婚。しかし姑にいびられ、夫は海で遭難。家を追い出されたが、娘夫婦も交通事故で死んでしまった…というのだが、説明的過ぎて、それを窺わせるものが何もない。 『城の崎にて』で使われたのは「大峪川の鼠。鼠の最後。死ぬに決まった運命を担いながら円山川。」という一節と、「驚かそうと投げた石がそのいもりに当って死んでしまう」という部分の傍線。 前者は、遺書代わりにされたが、いもりのくだりは梶谷が持っていた本に線が引かれ、あわせて「三十三・三・三十一」と日付が書かれていた。これは梶谷が書いたもの? その辺がどうももうひとつ消化不良ですっきりしなかった。シリーズの中では凡作。
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[025]レディ・チャタレー
 「君は俺の家だ」黒美君彦2017-11-17
 【ネタバレ注意】
D・H・ロレンスが原作を発表した1928年当時であれば、女性の官能性をを主題にした小説は物議を醸したかも知れないが、現代では古典的な文学作品のひとつに過ぎない。原作には・・・
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D・H・ロレンスが原作を発表した1928年当時であれば、女性の官能性をを主題にした小説は物議を醸したかも知れないが、現代では古典的な文学作品のひとつに過ぎない。原作には完成版といえるものも含め三通りの原稿があるそうで、この映画化作品が依拠したのは第二稿なのだとか。読み比べたことがないので、その違いはよくわからないけど…。 この作品では第一次世界大戦で負傷し性的不能に陥った貴族クリフォード・チャタレー卿(イポリット・ジラルド)の妻コニーことコンスタンス(マリナ・ハンズ)の官能の目覚めを美しく描いている。 彼女は沐浴する森番のパーキン(ジャン=ルイ・クーロシュ)のリアルな半裸姿にときめいてしまう。決して男前ではないパーキンだけれど、女としての性欲に抗えなかった、ということか。 跡継ぎを産むために、貴族系の英国人であれば関係をもっていいという夫。それに乗じて策略を練り、パーキンの子を産んでも怪しまれないように長期間旅行に出るコニー。 心のつながりより体のつながりの方が重要だ、という関係は決して珍しくないし、そういう時期があることも確かだろう。この作品でも、関係を深めるにしたがって、その関係性が少しずつ変化していく。 単なる遊び相手に過ぎないと理解しているパーキンは、コニーに多くを望まない。だが、ラストで胸中を初めて吐露する。「君は俺の家だ」「愛している」と。 森の中での性行為は、全てが解放される瞬間だ。全裸で戯れる時、肩書きも何もかもが剥ぎ取られ、単なる「男と女」「雄と雌」になる。その解放されたシーンが必ずしも美しいとは思えなかったけれど、そこで描きたかったことはよくわかる。 かつて「猥褻」概念をめぐり、翻訳した伊藤整らが罪に問われた時代もはるか昔になってしまった。 階級社会、第一次世界大戦の傷、さまざまな時代的背景を背負って、男と女の関係は今もさほど変わらない。その意味では普遍性を内包した作品ではある。映画としても少々長いとは思ったが、静けさと森の緑が印象的な作品に仕上がっていて悪くはない。
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[026]地方記者・立花陽介(6) 湘南鎌倉通信局
 問我西行幾日帰黒美君彦2017-11-16
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>鎌倉湘南通信局に赴任した東洋新聞立花陽介(水谷豊)は、鎌倉山で死後30年経った白骨発見の一報を書く。砲弾の破片が突き刺さった骨だった。妻・久美(森口瑤子)・・・
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<あらすじ>鎌倉湘南通信局に赴任した東洋新聞立花陽介(水谷豊)は、鎌倉山で死後30年経った白骨発見の一報を書く。砲弾の破片が突き刺さった骨だった。妻・久美(森口瑤子)の鎌倉彫の先生谷口綾子(津島恵子)と夫の健二(内藤武敏)夫婦と孫のえり(石橋けい)と親しくなった陽介。そんな中記事を読んで陽介を訪ねて来た鶴田俊哉(山路和弘)が殺された。ポケットには「問我西行幾日歸」というメモが。その由来は健二の戦争末期の事件にあった…。 1995年の終戦記念日に放送されたこのドラマ。戦後50年を強く意識した佳作に仕上がっている。 1944年秋、18歳だった綾子は谷口孝雄少尉と祝言を挙げるが、3日後には学徒出陣で南方に出征してしまう。綾子は既に身篭っていた。 南方ニューギニア戦線で夜間襲撃を繰り返す度に兵が減り、小隊長以下4人だけになった谷口小隊。1945年8月16日、終戦を知らない小隊長は、夜間の襲撃を命令するが、敵側から「戦争ハ終ワリマシタ」という投降呼びかけの声が。怯む部下に小銃を向ける小隊長を撃ったのが村越健二だった。谷口小隊長は最後に「出門妻子贈寒衣 問我西行幾日帰 来時儻佩黄金印 莫見蘇秦不下機」「子どもが生まれるんだ」と繰り返し死んでいった。生き残った里見、山野(三代目江戸屋猫八)、鶴田(平尾仁彰)、村越は、その漢詩を一行ずつ板に刻んで持つことになったのだった。 村越は谷口小隊長未亡人を助けるうちに結婚することになり「谷口健二」となった。ところが足が不自由になった鶴田が姿を現し、「事実を夫人に話すぞ」と脅し無心する。そこで思わず崖から突き落として殺してしまったのが綾子だった。 そして34年後、山野から事実を聞いた息子の鶴田俊哉が再び谷口を脅す。老境を迎えた谷口は思わず息子に石塊を投げつけ、殺してしまった…というのが物語の概要。 戦争を知らない世代が、ひっそり戦後を生きてきた老夫婦を脅していたという事実に、陽介もたじろぐが、谷口夫妻は警察へ。夫はがんで、余命一年と宣告されていた…。 いろいろな要素が入っていて、なかなか偏差値が高い(笑)。 鎌倉の常立寺に元の使者が葬られているのは知らなかった。そのうちのひとり、杜世忠(とせいちゅう)は文永の役の翌年1274年に、元の正史として日本に渡るが捕らえられ、1275年9月27日、時の八代執権北条時宗は元使4人とともに斬首、処刑したのだとか。当時34歳だった杜世忠の辞世の句「出門妻子贈寒衣 問我西行幾日帰 来時儻佩黄金印 莫見蘇秦不下機」は、家族のもとに帰る望みを果たせなかった無念の漢詩だ。そんな薀蓄も交えつつ、戦後50年の歳月を浮き彫りにしようとしたなかなかの作品だと思う。 内藤武敏(当時69歳、2012年没)、津島恵子(当時69歳、2012年没)、三代目江戸屋猫八(当時74歳、2001年没)、「戦争経験者」として登場する主要な俳優はみな鬼籍に入ってしまった。逆にいえば戦後50年の段階では、まだ体験者が数多くいたんだ、と歳月の無情を痛感した。
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[027]密偵
 複雑な思いも黒美君彦2017-11-15
 【ネタバレ注意】
本作に登場する義烈団とは、1919年に朝鮮独立活動家の金元鳳を中心に結成された実在の武装テロ組織。三・一運動の非暴力路線を批判し、中国・吉林省で13人で結成された。必殺主・・・
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本作に登場する義烈団とは、1919年に朝鮮独立活動家の金元鳳を中心に結成された実在の武装テロ組織。三・一運動の非暴力路線を批判し、中国・吉林省で13人で結成された。必殺主義を掲げ、朝鮮の植民地組織や要人に対するテロを繰り返した。 この作品はそんな1920年代を舞台にした義烈団(ウィヨルダン)と警察との攻防を、密偵(=二重スパイ)の視点で描いたサスペンス。 警務局の東部長(鶴見辰吾)の下で義烈団摘発を続けるイ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)。 彼は義烈団のリーダー、キム・ウジン(コン・ユ)に近づき、逆に内通者としての協力を求められる。このとき登場する義烈団団長チョン・チェサンを演じるイ・ビョンホンのただならぬオーラはスゴい。イ・ジョンチュルもいつの間にか取り込まれ、相棒として組まされたハシモト(オム・テグ)からは、義烈団と通じているのではないかと疑いの目を向けられる…。 ある意味わかりやすいサスペンスアクションなのだけど、複雑な思いも浮かび上がってきた。 ひとつ目は「テロ」と簡単にひと括りにできない武装攻撃の意味。統治され、文化も歴史も奪われた民族が起こす武装闘争も、日本側から見れば「テロ」のひと言で片づけられてしまう。現在、そんな一面的な言説がはびこっているが、テロの背景を無視しても何も解決しないというのはいうまでもない。 ふたつ目はこの映画の設定だ。抑圧する支配者とそれに対して戦う被支配者、という関係は、ハリウッド映画でもよく観られる。その場合大概悪役は「ナチスドイツ」だ。彼らが悪辣であればあるほど、観る者はカタルシスを感じることが出来る。悪役をいくら殺そうが胸は痛まないからだ。そしてそのワルぶりが徹底していればしているほど気分は高揚する。 この作品では、そのナチスドイツの役を日本が演じている。植民地における支配側と被支配側の関係とは、そういうものなのだとは思いながらも、ナチスドイツ並みの悪辣な存在として日本が描かれていることに悲しみを覚える。そして今、改めてこうした作品が作られるということは、韓国内での反日感情を反映しているのだろうとも思う。 ソン・ガンホが好演。個人的に好きなハン・ジミンが拷問されてしまうシーンは痛々しくて辛い。 歴史サスペンスアクション映画としてはよく出来ていると思うが、先述した理由で複雑な思いで観た。
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[028]地方記者・立花陽介(5) 米沢蔵王通信局
 新貝弥七郎黒美君彦2017-11-14
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>東洋新聞米沢蔵王通信局に赴任した立花陽介(水谷豊)がスキー学校の取材に行っている間に殺人事件が発生。妻久美(森口瑤子)が代わりに米沢南署の松下刑事(斉藤・・・
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<あらすじ>東洋新聞米沢蔵王通信局に赴任した立花陽介(水谷豊)がスキー学校の取材に行っている間に殺人事件が発生。妻久美(森口瑤子)が代わりに米沢南署の松下刑事(斉藤晴彦)から取材するが、被害者の香田産業秘書課の弘山保之のポケットに『新貝弥七郎見参』と書かれた紙片があったことを特オチした。弘山には5000万円の保険がかけられ受取人は社長の香田信吾(大和田伸也)だった。一方現場で「1/734」という紙が巻かれたベニバナを久美が見つけたが、その取材中、井坂栄子(松本留美)が事件のあった晩にホテルで働く平井佑二(下條アトム)に金を盗まれたと言い始めた…。 雪の米沢でのロケ。米沢牛はすき焼きで、芭蕉が「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」という句を詠んだことで知られる通称「山寺」(正式名:宝珠山立石寺…雪の中ではさすがに登らず)、そして米沢藩主上杉鷹山。さらにはドラマにも登場するベニバナが良く知られている。 被害者のポケットの紙片に書かれたあった「新貝弥七郎」は、かつて吉良邸で働いていた米沢藩士新貝喜兵衛の子で、1701年の赤穂事件で堀部安兵衛の槍に突かれて死んだと伝えられている。巻き込まれて命を落とした、という象徴らしい。 この事件の鍵は1968年10月22日の新宿騒乱。当時同じアパートで生活していたのが香田と平井と池田(石井愃一)。香田にデモを煽られ、平井は逮捕されてしまうが、煽った香田は平井の恋人栄子を力づくで犯し、その関係は現在まで続いていた、という。 平井は県議選で落選した香田の出納係として検挙されるなど踏んだり蹴ったりの生活をしていたが、栄子と出会ってその事実を知り、香田の殺害を決意。ところが察知した香田が弘山を差し向けたことから、誤って弘山を殺害してしまった…というストーリー。 何ゆえ井坂が「1/734」と書いたベニバナを現場に置いたのかわからないとか、平井がなぜいまだに香田にいいように使われていたのか、とかよくわからないことも多いので、若干消化不良の感も。香田の娘ユカリ(相川恵里)ももっと出てくるのかと思ったら途中で出てこなくなるし。そもそも新貝弥七郎は、槍で殺された方なのに何故「見参」と称して槍で突き殺す必要があるのか、とか無理やり感もあちこちに。 森口瑤子の笑顔には癒されたけど、全体に今ひとつのミステリーに終わってしまった感がある。
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[029]地方記者・立花陽介(4) 青梅奥多摩通信局
 小河内ダム黒美君彦2017-11-13
 【ネタバレ注意】
<あらすじ>東洋新聞の記者立花陽介の次の赴任先は東京都青梅市。カヌーの体験記を書こうと向った奥多摩の渓流で小高順三(下塚誠)の遺体を見つける。近くには「南京虫」と呼・・・
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<あらすじ>東洋新聞の記者立花陽介の次の赴任先は東京都青梅市。カヌーの体験記を書こうと向った奥多摩の渓流で小高順三(下塚誠)の遺体を見つける。近くには「南京虫」と呼ばれる戦後間もない頃流行った壊れた腕時計が落ちていた。小高のポケットからは「愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません」と書いたメモが。青梅南署の石井刑事(小野武彦)は自殺で処理しようとするが、取材を進めると小高が松島印刷の松島秀明社長(内田稔)と会っていたことが判明する。そして小高の義母長谷とよ子(三條美紀)と松島の間には戦後間もない頃のある過去があった…。 前回妊娠が発覚した妻久美だが、この回では転倒して流産してしまうという哀しい結末が。妊娠5か月でそう簡単に流産するかどうかはともかく。 そして、過去の事件が新たな事件に影を落とす、というのはこの回も同じだが、今回は二つの出来事がポイントとなる。ひとつはダムのそこに沈んだ小河内村。そしてもうひとつは1951年6月の駐留軍将校殺人事件。 小河内ダムは1926(大正15)年に計画が始まり、戦争を挟んで1957(昭和32)年竣工した。予定地にあった小河内村は、1951(昭和26)年解村し、ダムの底に沈んだのだった。 内田稔と三條美紀は、1932年頃の生まれという設定か。同級生の二人は教師の影響で中原中也の詩に傾倒する。死んだ男が持っていた詩も中也の「春日狂想」の冒頭の部分だ。 ところが三條美紀は東京で将校のオンリー(愛人)となっていた。彼女を見つけ出した松島は将校ともみ合い、過って射殺してしまったのだ。 そのことを知ったのが、三條美紀の娘の夫の小高で、彼はそのネタで松島を脅し、松島は自宅に運んできた奥多摩川の水で小高を溺れさせ、遺体を奥多摩に運んだのだった。そうすればアリバイが出来るからだ。 そもそも小河内ダムのことすら知らなかったので、住民の反対を押し切って強行されたダムだったのだということを初めて知った。 脚本の岡本克己が書いた最後の詩がなかなかの名文。水谷豊の朗読が聞かせる。 「この静かな水の底に/あなたは鳥の声を聴くことができますか?/藁葺きの屋根は見えますか?/蝉やトンボやカブトムシを追う子どもたちの声は聴こえますか?/子どもを叱る母親の声が聴こえますか?/家族の笑い声が/聴こえますか?/ふるさとはそこに帰れば/自分を育んでくれた風景と思い出に出会うことができます/いくら背を向けても/ふるさとは待っています/でもそのふるさとを奪われてしまった人たちがいるのです」 中原中也の詩、そして妻の流産、ダムに沈んだ村…物悲しい要素が散りばめられたミステリーで、なかなか面白かった。
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[030]禅と骨
 俗人ミトワ黒美君彦2017-11-13
 【ネタバレ注意】
中村高寛監督は2006年公開の『ヨコハマメリー』で高く評価したが、11年ぶりの新作ドキュメンタリーは取材に実に八年、またまたひと筋縄ではいかない作品だった。 主人公は嵐山・・・
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中村高寛監督は2006年公開の『ヨコハマメリー』で高く評価したが、11年ぶりの新作ドキュメンタリーは取材に実に八年、またまたひと筋縄ではいかない作品だった。 主人公は嵐山・天龍寺の僧侶清泉禅師ことヘンリ・ミトワ。1918年にドイツ系米人の父と新橋の芸者だった母の間で生まれた三人兄弟の末っ子。 日本人として育つが、スパイではないかと疑いをもたれることから逃れるように1940年単身米国へ。ところが米国籍がないため、結局「敵性外国人」扱いされて日系収容所へ。そこで妻サチコと出会い結婚…。とまあ、あれやこれやで数奇な人生であることは確かだ。 ヘンリは童謡でも知られる菊池寛(ひろし)の『赤い靴』の映画化を熱望していた。中村監督は、ヘンリの支援者に依頼され、彼の映画作りを助けるという目的で撮影を始めたという。ところがクランクインから8か月後、ヘンリが体調を崩し入院してしまい、当初の目的が果たせなくなることが確実になって今一度映画の方向性を考え直さざるを得なくなったのだという。 ただ、いずれにせよこの作品には引き出しが多い。 ヘンリ・ミトワの歩んできた日系アメリカ人としての一生。 そのなかで渡米することで15年会えないままで死なせてしまった母こうへの思い。 その思いが重なる物語「赤い靴」映画化への熱望と、巻き込まれた周囲の人たちの戸惑い。 息子、娘たちの冷ややかな父親への視線。妻もまた冷ややかだ(なのに彼女は夫を愛しているようにみえる)。 異色の禅僧として後半生はメディアにも登場することの多かったミトワ。しかしながら、彼には悟りらしきものは一切感じられない。まさに煩悩だらけ、不満だらけ。挙句の果てに中村監督との関係も悪化し、インタビューにも一切答えない日も。 ここまでの作品に仕上げられたのは、中村監督の粘りに尽きる。 監督が途中で投げ出したとしても納得できる相手であるけれど、2012年、93歳で亡くなった後も取材を継続し、ついに作品として完成させたのだから。 次女の静さんとヘンリの関係性が最もわかりやすいかも。彼女は父親を「独裁者」だと心底軽蔑し、ある意味では憎んでさえいる。しかし一方で、入院して弱りきった父親を最も親身に看病したのも彼女なのだ。 どうしようもない父であるが、同時に愛さずにはいられないヘンな男なのだ。 この作品はだから、どうしようもなく生臭いアメリカ人僧侶の、どうしようもない晩年の物語として輝いているのだ。
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