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 「寺尾おさむ」さんのコメント一覧 登録数(15件)rss
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[001]プライド
 満島ひかりさんの演技がすごい寺尾おさむ2012-01-07
 
この映画の見所は、緑川萌役の満島ひかりさんの演技に尽きます。 園子温監督の「愛のむきだし」の狂気じみた演技に圧倒されて以来注目していましたが、この映画でもいい味を出・・・
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この映画の見所は、緑川萌役の満島ひかりさんの演技に尽きます。 園子温監督の「愛のむきだし」の狂気じみた演技に圧倒されて以来注目していましたが、この映画でもいい味を出してます。 麻見史緒(ステファニーさん)に誘われ一緒に行ったオペラ劇場で、貧しい母子家庭育ちの萌が、人気オペラ歌手の娘として何不自由なく育った史緒に嫉妬して、衆人環視の中で悪態をつく憎々しげな表情。 オペラコンクールのステージに立つ直前の史緒に、「あなたのお母さんは、あなたをかばおうとして死んだのよ」とすれ違いざまに告げて史緒にショックを与え、まんまと失敗に追い込んだときの小ずるそうな目つき。 レコード会社副社長の神野隆(及川光博さん)に恋焦がれる可愛らしい笑顔。 自分の母親を模造刀で殺そうと襲い掛かる狂気。 このように緑川萌を演じる満島ひかりさんのくるくる変わる表情に魅了されっぱなしでした。 それに加えて、Folder、Folder5時代にヒット曲を出しているだけあって、歌の実力とその自信はたいしたものです。 今の日本映画界で、これだけ個性があって演技が上手で歌もうまい若手女優さんはそうはいません。「川の底からこんにちは」に主演したことが縁で、監督の石井裕也氏と結婚したそうですが、若くして所帯じみたりせず、これからも日本映画の金字塔になるような作品に出演し続けてください。
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[002]2001年宇宙の旅
 スーパーシネラマで観た「2001年宇宙の旅」寺尾おさむ2011-12-23
 
2011年の年の瀬を迎えたが、今年もこの映画に出てくるような宇宙ステーションは出現しなかった。人類の進歩を約束した神の啓示の黒石板の威力は衰えてしまったのか。代わりに悲・・・
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2011年の年の瀬を迎えたが、今年もこの映画に出てくるような宇宙ステーションは出現しなかった。人類の進歩を約束した神の啓示の黒石板の威力は衰えてしまったのか。代わりに悲惨な災害や戦争、紛争ばかり起きている。 昨今のSFXを駆使した大作SF映画を観ている人たちには、この映画のオーラも衰えがちであることは否めない。 しかし、この映画の魅力が、現在の映画ファンに伝わりづらいのは、少し陳腐化した映像表現のためだけではない。それは、この映画を上映するだけの環境がなくなったからだ。 スタンリー・キューブリック監督は、上映する映画館の場所や上映システムにまでこだわり、自分の意見を通そうとしたそうだ。 この映画は、できれば超大型スクリーンがあり、高音質・大音響のサウンドシステムを持った映画館で上映して欲しかっただろう。 私は、東京の銀座一丁目にあった「テアトル東京」で、この映画を初めて観た。「6チャンネル超ステレオ音響」を備えた「シネラマ」と銘打ったこの映画館の、観客席を取り囲まんばかりの大スクリーンに映し出された、猿人の投げた一本の骨が進化変容した宇宙船は圧巻だった。おまけに、「6チャンネル超ステレオ音響」で、旅客船オリオン号が宇宙ステーションに着くまでのシーンや、宇宙船エアリーズ号が月に向かって飛び立つシーンに流れる「美しく青きドナウ」(ヨハン・シュトラウス作曲、カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏)を堪能したことは、今まで味わったことのない愉悦だった。これを家庭の大型テレビで観ても、それほどの感銘を受けないと思う。 この絵画に出てくる黒石板が、さらなる人類の進化を促して、日本において、この映画に最適な上映環境が再登場することを期待するしかない。
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[003]ゼロの焦点
 気になる大仰な演出寺尾おさむ2011-12-22
 
犬童一心監督が、「ジョゼと虎と魚たち」で見せた、繊細な演出の切れはどこに行ってしまったのだろう。 ラストで、恒夫との幸せなときが過ぎ、脚の悪いジョゼが一人料理を作っ・・・
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犬童一心監督が、「ジョゼと虎と魚たち」で見せた、繊細な演出の切れはどこに行ってしまったのだろう。 ラストで、恒夫との幸せなときが過ぎ、脚の悪いジョゼが一人料理を作って、台所の椅子からダイブして大きな音を出すシーンでは、これから一人で逞しく生きていく女性の行く末を思い胸が熱くなった。 翻って、この作品の演出のなんと大仰なことか。 例えば、田沼久子(木村多江さん)が断崖絶壁から飛び降り自殺をするシーンや、室田佐知子(中谷美紀さん)が演壇で卒倒するシーンなど、あまりにデフォルメされ過ぎていて、何かのギャグかなと思ってしまうくらいだ。せっかく演技のうまい女優さんをキャスティングしているのだから、彼女たちの演技にすべてを語らせれば良かったのにと思うと残念だ。 室田佐知子が、日本初の女性市長の誕生を前に、「女の子も、あたしたちみたいな仕事をしなくていい時代が来る」と語っていたが、過去を隠蔽しなければ、現在の成功を維持できない人間の弱音が感じられてやるせなくなった。 「砂の器」は、戸籍の焼失に乗じて、全く新しい人間に生まれ変わった主人公の挫折という、この映画と同じようなテーマを描いている。子供の頃から松本清張さんの大ファンであった私としては、野村芳太郎監督の「砂の器」を見直して口直しがしたくなった。
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[004]必死剣 鳥刺し
 殺気みなぎる時代劇寺尾おさむ2011-12-21
 
2011年12月4日、CSやニコニコ生放送等で、マキノ雅弘監督の「次郎長三国志」について、同シリーズの熱狂的ファンである、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと、「北の国・・・
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2011年12月4日、CSやニコニコ生放送等で、マキノ雅弘監督の「次郎長三国志」について、同シリーズの熱狂的ファンである、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと、「北の国から」や「最後の忠臣蔵」の杉田成道監督の対談が実況中継された。 そんな時代劇大好きの鈴木氏は、この対談の中で、「今の日本の俳優は、刀を差しても殺気がないから、時代劇が成り立たなくなっている」と語った。 この言葉通り、現在の時代劇の低迷は、若い視聴者の感覚に合わなくなっただけでなく、本格的時代劇にキャスティングできるような俳優が少なくなったからだろう。確かに、若いアイドルが出演した、最近の気の抜けた時代劇を最後まで観続けるのは辛い。平和ボケを象徴する穏やかな顔つきの若い俳優たちが、刀を差しても全く武士らしい殺気を感じない。 その点、鈴木氏も指摘されているように、2010年の平山秀幸監督作品「必死剣 鳥刺し 」で、豊川悦司さんが演じた主人公の武士は、寡黙だが目だけは異様に殺気に満ちていた。彼は、本当に時代劇にぴったりの俳優さんである。 この映画は、藤沢周平氏の「隠し剣」シリーズの同名小説が原作で、東北の某藩の権力闘争に翻弄されて、悲惨な最期を遂げた武士の半生が描かれている。後半、中老(岸部一徳さん)にそそのかされて、藩主家と対立する別家の武士(吉川晃司さん)と対決するシーンは、勧善懲悪を超越しており、その意味で現在の観客をも魅了すると思う。でも、ラストの15分間、数十人を敵に回した壮絶な殺陣を演じ切れる若手俳優が今いるだろうか。ラストの殺陣を演出した監督や美術スタッフは、豊川さんが演じたからこそ、その実力を思う存分発揮する気力が湧いたのだと思う。
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[005]アイズ ワイド シャット
 キューブリック監督の小さな遺作寺尾おさむ2011-12-17
 
スタンリー・キューブリック監督は20世紀最高の映画監督であると思ってやまない私だが、この映画だけは遺作にして欲しくなかった。せめて、企画されていた「A.I.」の演出で有終・・・
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スタンリー・キューブリック監督は20世紀最高の映画監督であると思ってやまない私だが、この映画だけは遺作にして欲しくなかった。せめて、企画されていた「A.I.」の演出で有終の美を飾って欲しかった。 夫婦、しかもトム・クルーズとニコール・キッドマンの「夫婦生活」のすれ違いというテーマは、キューブリック監督には小さすぎた。 セレブの社交界の乱交パーティの描写も、AVが氾濫している昨今、大して衝撃を受けない。「時計じかけのオレンジ」のレイプシーンのほうが、よほどショッキングだった。乱交シーンに、「バリー・リンドン」の絵画のような映像美を堪能することもできない。乱交パーティ運営側のバックには、マフィアがいるのは、どこの国でも同じで、秘密を守れない会員には彼らの魔の手が迫るのも容易に想像がつく展開だ。怪しい男につきまとわれることだって、カルトの嫌がらせが多い昨今、さしたる恐怖でもない。 私は、キューブリック監督作品のDVDを全部揃えるために、この作品のDVDも購入はしたが、あまり観ていない。
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[006]嫌われ松子の一生
 嫌われる善人の条件寺尾おさむ2011-12-16
 
善人が嫌われる所以(ゆえん)は、その効率の悪さである。 修学旅行中、旅館の売店からカネを盗った教え子をかばうために、自分のカネで返そうとするが足りなかったので、同室・・・
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善人が嫌われる所以(ゆえん)は、その効率の悪さである。 修学旅行中、旅館の売店からカネを盗った教え子をかばうために、自分のカネで返そうとするが足りなかったので、同室の同僚教師のかばんの財布から、金を無断借用してしまう浅はかさ。その思慮で、よく中学校の教員免許を取れたものだ。 妹ばかり可愛がる父親の関心を引くために、 「ひょっとこ顔」をしたのがきっかけで、ひどく追い詰められると、誰にでも「ひょっとこ顔」になる変な癖がついたそうだが、大人になれば自分の感情を顔に出さない術を身につけるはずのに、松子は子供のままなの? 浮気相手の自宅に乗り込んで、奥さんに会いに行く女性はそうはいない。 風俗では、若いうちにうんと稼いで、きっぱり引退するのが賢い処し方だと思うのに、年取って売れなくなっても風俗に固執した浅はかさ。そんなだからヒモに騙された。 一ヶ月しか付き合ってない床屋のオヤジが、刑務所から出てくるのを待ってるはずないのに、8年間の服役生活中、ずっと床屋のオヤジとの結婚生活を夢想していた想像力のなさ。 人生を狂わせた張本人の元教え子、いまや三下ヤクザとの明るい未来を夢見た愚かさ。 何度「今度こそ人生が終わった」と思えば気が済むの? 以上からあえて言おう、この映画は、自分の戦略なき人生を、天が与えた試練と勘違いして自己憐憫してる人間の喜劇であると。
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[007]手紙
 不可解極まる社会派映画寺尾おさむ2011-12-15
 
最近の社会派映画は、現実から乖離していて違和感を覚えるものが多いが、この映画もその一つだ。 無期懲役刑に服している強盗殺人犯の弟として、職場を変わるたびに「差別」を・・・
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最近の社会派映画は、現実から乖離していて違和感を覚えるものが多いが、この映画もその一つだ。 無期懲役刑に服している強盗殺人犯の弟として、職場を変わるたびに「差別」を受ける理不尽さを嘆く主人公が存在すること自体、まず不可解だ。しかも、彼が「差別」を嘆きながら、一番マスコミの餌食になりやすい芸能界に入ることも不自然だし、逆に闇社会の住人が跋扈する芸能界なら、彼のような境遇の人はいっぱいいるはず。それを強みにする人さえいるかもしれない。それなのに、彼はなぜそれほど嘆くのか。現代社会には、「差別」を逆手にとって、人権を強弁して利権を得る者もいるのに。 お笑い芸人を辞めて転職した家電量販店の会長が、彼に「人々は、犯罪に関係する者から、身を避けるため、君を「差別」しているので、当然の行為だ」というようなことを言っていたが、それは果たして「差別」なのか?兄貴が犯罪者であることをネタにした、単なる「いじめ」だろう。 多くの煮え切らなさが残ったまま、エンドロールが流れてきた。
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[008]ぼくらの七日間戦争
 大人の階段を上るファンタジー寺尾おさむ2011-12-13
 
この作品を観て、ある人が「なぜ戦車が出てくるの分からない」と言った。 私は、それを聞いて、「彼は、この映画を最後まで観ていたのか?」と言う疑問を抱かざるを得なかった・・・
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この作品を観て、ある人が「なぜ戦車が出てくるの分からない」と言った。 私は、それを聞いて、「彼は、この映画を最後まで観ていたのか?」と言う疑問を抱かざるを得なかった。 というのは、ラスト近くで、戦車の大砲から打ち上げられた花火は、この作品のモチーフを端的に表しているからだ。 それは、醜い大人たちに闘いを挑んだ子供たちのファンタジーである。 戦車の登場に疑問を抱いた人は、「厳しい学校生活の中で生き抜く間に、普通は要領よくなるのに、まともに反抗するのはどうかしている」とも語った。 しかし、戦車の大砲から打ち上げられた花火を見れば、この子供たちの反乱は、大人たちに「まともに反抗」したものでなかったことが明らかだ。この映画は、主演の宮沢りえさん他の子供たちを、厳しい校則に反発して大人たちに闘いを挑み、機動隊をも敵に回した革命児のように描いているが、実は、この闘いは子供たちが夢見たファンタジーだったのだ。 こうしたモチーフを表現したラストは、イギリスの子供たちの大人に対する過激な反乱を描いた「小さな恋のメロディ」にも共通する。 結婚したメロディとダニエルが、どこまでも続く線路上、一緒にトロッコを漕いで旅立つ非現実的なラストは、子供たちが、反乱が織り成すファンタジーから目覚めたことを暗喩していると思う。 「ぼくらの七日間戦争」を観て、子供たちは、大人に反抗する通過儀礼のファンタジーを夢想しながら、大人への階段を上って行くのだと実感した。
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[009]時計じかけのオレンジ
 キューブリック映画に観る刑法概論寺尾おさむ2011-11-12
 
天才・スタンリー・キューブリック監督は、優れた作品を作り続けたが、この作品は、全編におぞましい暴力描写が散りばめられた社会風刺劇の傑作。 主人公アレックス(マルコム・・・
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天才・スタンリー・キューブリック監督は、優れた作品を作り続けたが、この作品は、全編におぞましい暴力描写が散りばめられた社会風刺劇の傑作。 主人公アレックス(マルコム・マクダウェル)は、毎晩、手下3人と、ドラッグ入りミルクを飲んだ後、ホームレスの老人を襲撃したり、作家の屋敷に不法侵入して、その妻をレイプするなど、”ウルトラヴァイオレンス”の限りを尽くす生活を送っていた。ある晩、金持ちの屋敷に忍び込んで老婆を惨殺したが、そのとき仲間に裏切られ、警察に逮捕されてしまう。 裁判所で14年の実刑が下され、刑務所に収監されたアレックスは、日曜礼拝の牧師の手伝いをするなど模範囚を演じることで、時の政府が推進する犯罪者療法の被験者に選ばれ、念願通り、2年で出所することができた。 しかし、犯罪性反射神経の抹殺を目的とした治療は過酷を極め、その結果、アレックスは、暴力や性行為の衝動に駆られると吐き気などの拒絶反応を起こし、他人の加える暴力に抗うことすらできなくなってしまった。この治療のBGMとして流されていたのが、アレックスの大好きなベートーベンの「交響曲第9番」であったため、この曲を聴いても拒絶反応が起きることが、重要な伏線となる。 これに関連して、刑法思想の一つに、刑法は、犯罪者を教育して、社会的脅威を除去するためにあるとする、教育刑論がある。 この映画で、アレックスが、国家の心理療法によって、暴力・性衝動に拒絶反応を起こし、犯罪を実行できないように人格改造されたのは、教育刑のたとえ話としてぴったりだ。 しかし、被験者に選ばれたことを告げた刑務所長が、アレックスに、「ワルに痛めつけられた国家だって、殴り返して当然だろ」と言った言葉通り、 本来、刑罰は、自分の自由意思で、国家の定めた規範に反する行為を行った者に、応報的に科されるべきである。 理由は、治療を終えたアレックスのデモンストレーションを見た牧師の「(犯罪者への心理療法により、)醜悪な自己卑下がもたらされ、道徳的選択の能力が失われてしまった」との言葉に集約されている。つまり国家に管理され、個人の自由意思が奪われた社会になってしまうので、教育刑は認められないということだ。 アレックスは、教育刑反対派により、ベートーベンの「交響曲第9番」を強制的に聞かされて、拒絶反応を起こし、飛び降り自殺を図った。 アレックスの自殺未遂で、洗脳を行ったとして、世論の批判にさらされた政府の内務大臣は、好条件の就職先と補償金を約束し、アレックスを懐柔した。その好条件の就職先とは、「その方面で活躍し世論を操作する」こと、すなわちアレックスが、”ウルトラヴァイオレンス”の限りを尽くす、元通りの生活をし、世論に「俺は、政府に洗脳なんてされてなかった」という印象操作をすることだった。 ラストで、アレックスが、衆人環視の中で女性と絡むシーンの最後で、つぶやかれる「完璧に治ったね」の言葉は、完璧に元に戻った”ウルトラヴァイオレンス”を言い表している。
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[010]シッコ
 黄昏の国民皆保険制度寺尾おさむ2011-11-07
 
マイケル・ムーア監督は、本作「シッコ」で、先進国の中で唯一、国民皆保険がないアメリカを痛烈に批判した反面、イギリス、フランス、カナダ、キューバなどの医療制度をべた褒・・・
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マイケル・ムーア監督は、本作「シッコ」で、先進国の中で唯一、国民皆保険がないアメリカを痛烈に批判した反面、イギリス、フランス、カナダ、キューバなどの医療制度をべた褒めしていた。 しかし、この映画では、日本の国民皆保険制度を紹介し、褒め称える場面は一度も出てこない。 おそらくマイケル・ムーア監督は、日本の国民皆保険の現状をつぶさに観察した結果、「こんなものを映画の中で賞賛したら、私の映画の説得力が吹き飛んでしまう」とでも思ったのだろうか。 もっとも、「シッコ」でムーア監督が賞賛している各国の健康保険制度も、かなり問題を抱えている。 たとえば、ムーア監督は、国民皆保険は社会主義だとの批判への反証として、高級車に乗って優雅な生活をしているイギリスの医師を紹介している。しかし、イギリスの完全無料の国営医療サービス(NHS)は、大きな財政負担が問題となっている。そのため、医療の費用対効果を厳しく評価して、評価が低い医療は制限されているそうだ。 また、フランスでは、税金で賄われる国民皆保険制度が維持されているが、ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマン教授の著書「格差はつくられた」によれば、フランス国民は、「より多くの医療費を給付する追加の保険に加入するように勧められる」ということだ。 逆に、カナダでは、「政府が給付しているのと同じ項目に重複して、新たな保険に加入することは認められていない」そうだ。その理由は、富裕層だけ、追加保険に入って高額な医療費を保障されるのは不平等だからだ。 翻って、日本の健康保険は、破綻寸前である。 全国民の約4分の1が加入している健保組合の平成22年の決算は、過去最悪の4154億円の大幅経常赤字だった。 http://www.kenporen.com/include/press/2011/201109082.pdf また、今年2月4日、厚生労働省は、平成21年度国民健康保険(市町村)の財政状況について、実質的な収支は2633億円の赤字となり、前年より赤字額が増加したことを公表した。 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000011vw8.html アメリカでは、オバマ大統領が、大統領選立候補時に、医療保険制度改革への取り組みを選挙公約として、2010年にやっと国民皆保険を導入できた。 しかし、世界同時不況の中、アメリカの財政は逼迫し、国民皆保険を維持していけるかは不透明である。 ムーア監督は、世界の公的医療保険の現状を見て、新作映画で、新たな問題提起をしてくれるのだろうか?
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[011]空気人形
 誰も知らない「空気人形」の悲しい物語寺尾おさむ2011-11-05
 
2004年の「誰も知らない」を観て以来、すっかり是枝裕和監督の虜になってしまった私が、久しぶりに観た日本映画の傑作である。 皮肉なことに、日本映画なのに、主演女優は韓国・・・
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2004年の「誰も知らない」を観て以来、すっかり是枝裕和監督の虜になってしまった私が、久しぶりに観た日本映画の傑作である。 皮肉なことに、日本映画なのに、主演女優は韓国のトップスターのペ・ドゥナさんなのだが、それがはまり役である。たどたどしい日本語で、「私は、空気人形。性欲処理の代用品」と、嗚咽を吐くような台詞は、乾いた街に悲しく響いた。 この映画は都会に住む人々の絶望的孤独を描いた傑作なのだが、主役女優には体当たりの演技が要求されるため、日本の若手女優さんには、ことごとくオファーを断られたようである。日本のプロダクションシステムによる女優さんのオファーの受け方では、映像表現の幅を狭めてしまう結果を招いていることは残念でならない。 そうした日本映画の現状で、ペ・ドゥナさんの果敢な挑戦がなければ、この映画は成立しなかった。 彼女は、山下敦弘監督の「リンダ リンダ リンダ」(2005)にも主役の女子高生役で出演され、その瑞々しい演技で多くの映画ファンを魅了した。 ラストシーンで、空気人形は、自ら燃えないゴミとして、ゴミ集積所に横たわった。それは自分が、空っぽな空気人形ではなく、人間として、この世に生を受けて老いて死んでいくことを、喜びを持って受け入れているようだった。 横たわる空気人形を見た、星野真里さんの最後の台詞「綺麗」が、涙腺を刺激して、エンドロールが涙でかすんだ。
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[012]半落ち
 検察-警察-マスコミのパワーゲームの面白さ寺尾おさむ2011-11-04
 
この映画を見終わって煮え切らなさを感じるのは、骨髄移植やアルツハイマー病の妻の介護といった、今の日本映画にお約束の病気ネタのヒューマンドラマを期待すると、消化不良を・・・
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この映画を見終わって煮え切らなさを感じるのは、骨髄移植やアルツハイマー病の妻の介護といった、今の日本映画にお約束の病気ネタのヒューマンドラマを期待すると、消化不良を起こすからである。 この映画の「正しい」見方は、犯罪の真相究明が、検察−警察−マスコミという、巨大権力のパワーゲームによって、微妙に操作される面白さを垣間見ることかもしれない。 アルツハイマー病の妻(原田美枝子)を殺した後、梶警部(寺尾聰)が、新宿歌舞伎町に行ったことを、群馬県警の幹部達が隠蔽しようと、供述調書を捏造した。それは、梶警部が歌舞伎町に行ったことがバレると、マスコミに警察攻撃の材料を与えるからであり、また、そのことで梶警部が嘱託殺人ではなく、より量刑の重い殺人で起訴され、県警のメンツがつぶれるからである。 さらに、この供述調書捏造を暴こうとした、地検の佐瀬検事( 伊原剛志 )は、検察事務官が横領事件で逮捕されたため、地検・県警の力関係から、県警にガサ入れするなど強硬手段を採れなくなった。 また、この供述調書捏造のスクープをものにして、東京本社に返り咲こうとした女性新聞記者( 鶴田真由 )は、執拗に事件を追及していたが、県警から別の事件の犯人をリークされて、尻つぼみになってしまう。 さらに、しがないイソ弁の植村弁護士(國村隼)は、人権派弁護士として売り出そうと、自ら梶警部の弁護を買って出るが、稚拙な戦略でマスコミの餌食になってしまう。 この映画で、小気味よく展開する、検察−警察-マスコミのパワーゲームを観ていると飽きがこない。 裁判が終わった後、植村弁護士から「お前は誰のために生きているのか」と尋ねられて、佐瀬検事が「自分のためだ」と言った言葉は、印象的だ。 事件の真相究明に携わる当事者たちは、正義のために、そして自分の出世のために仕事をしていることを忘れてはならない。
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[013]台風クラブ
 日本映画の金字塔寺尾おさむ2011-10-10
 
相米慎二監督が、お得意のカメラの長回し技法を芸術的レベルにまで昇華させた、日本映画の金字塔。 「ラストタンゴ・イン・パリ」「ラスト・エンペラー」などのベルナルド・ベ・・・
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相米慎二監督が、お得意のカメラの長回し技法を芸術的レベルにまで昇華させた、日本映画の金字塔。 「ラストタンゴ・イン・パリ」「ラスト・エンペラー」などのベルナルド・ベルトルッチ監督も、この映画に強い影響を受けたと語っている。 「セーラー服と機関銃」のコメントでも書いたが、相米監督は、多数のカットを後工程の編集作業で組み合わせた映像自体に物語を語らせるモンタージュ技法を排し、カメラを長時間回すことで独自の映像表現を確立した。とくにこの映画のラスト近く、暴風雨の中で全員裸になって、わらべの「もしも明日が…。」を歌いながら踊り狂ううシーンの長回しは秀逸であり、当時の若者の不安定な心理状態を端的に表しており、いつまでも映画ファンの記憶に残る名場面だ。 ただ現在の日本のプロダクションシステムによる女優さんのオファーの受け方では、こうした名場面を撮ることは不可能に近く、映像表現の幅を狭めてしまう結果を招いていることは残念でならない。この映画で体当たりの演技をしていた工藤夕貴さんは、今や大女優の仲間入りをしている。現在の若い女優さんもがんばって日本映画の金字塔となる作品に取り組んでほしいと願う。
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[014]セーラー服と機関銃
 日本映画史上特筆すべきアイドル映画寺尾おさむ2011-10-10
 
従来のテレビドラマの編集技法を踏襲した万人受けする編集に慣れた若い映画ファンには、この映画は破綻しているストーリーがだらだらと展開して、当時のトップアイドルに過酷な・・・
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従来のテレビドラマの編集技法を踏襲した万人受けする編集に慣れた若い映画ファンには、この映画は破綻しているストーリーがだらだらと展開して、当時のトップアイドルに過酷な演技をさせている変な映画に思えるかもしれない。 しかし当時の映画ファンは、満席の映画館でこの映画に最後まで付き合い、ラストで薬師丸ひろ子が自ら歌う主題歌をバックに、新宿通りで地下鉄通風口から吹き上げる風で、彼女のスカートがひらめくシーンを観て大満足して席を立ったものだ。 思うに相米監督を特徴付けるカメラの長回し技法は、現在でも常道である多数のカットを後工程の編集作業で組み合わせて映像に物語性を付与するモンタージュ技法を排したものであり、日本では溝口健二監督も使っていたものだ。ジャン=リュック・ゴダール監督は「勝手にしやがれ」でモンタージュを技法を排し、映像の連続性を断ち切り、映像自体に脈絡のある物語を語らせないジャンプカット技法を使って大成功した。 相米監督は現代映画監督の中でモンタージュ技法を排し、長回し技法を大衆娯楽映画に結実させた功績において、ゴダール監督に匹敵する存在だと考える。そして1985年の「台風クラブ」において、相米監督の長回し技法は芸術にまで昇華している。
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[015]プラダを着た悪魔
 働く女性の輝き寺尾おさむ2011-10-09
 
この映画を見て一番感じたことは、アメリカって労働市場が流動的でそれゆえに若者たちが活き活きと仕事をしていること。 確かに、「ウォール街を占拠せよ」デモで、アメリカの・・・
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この映画を見て一番感じたことは、アメリカって労働市場が流動的でそれゆえに若者たちが活き活きと仕事をしていること。 確かに、「ウォール街を占拠せよ」デモで、アメリカの格差社会が浮き彫りになっているが、日本みたいに非正規労働者は、一生その地位から抜け出せない可能性が高い社会とは違う。 アンドレア(アン・ハサウェイ)は、「ランウェイ」編集長 ミランダ(メリル・ストリープ)に、発売前の「ハリー・ポッター」の原稿を彼女の双子の娘のために入手するよう命令されたり、私事に関わる無理難題をふっかけれる。アンドレアは、その都度機転を利かせてミランダの要求を満たし信頼を得るが、結局1年足らずで「ランウェイ」を辞めてしまう。 それは全く世界の違う「ランウェイ」入社により壊れかけていた、恋人ネイト(エイドリアン・グレニアー)や友達との関係を修復したかったからでもある。アンドレアは、朝から晩までワインを煮詰める仕事から脱しレストランのサブチーフに就職の決まったネイトと寄りを戻し、彼女も本来の希望であるジャーナリストの仕事を、「ランウェイ」と比べるとかなり見劣りする小さな新聞社・ミラー紙で見つける。それも、かつてのボス・ミランダの強力な推薦により。その面接の帰り道、ミランダに偶然出会ったアンドレアは、かつてないほど活き活きした。 アメリカの若者ひいてはアメリカの活力を感じられた。日本も解雇規制などの労働規制緩和により、若者が活き活きと働ける社会になってほしいと、この映画を見て思った。 あと、「メンタリスト」のサイモン・ベイカーや「MAD MAN」のリッチ・ソマーなど脇を固める役者が魅力的で、「米流」ドラマ好きには、たまらない。
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