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 「僕の採点表」さんのコメント一覧 登録数(19件)rss
 コメント題投稿者投稿日
[001]ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
 CG映像もここまで美しくなりました!僕の採点表2013-02-03
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★(☆20点★5点) アン・リーが世界的なベストセラーである「ライフ・オブ・パイ」をCGを駆使して華麗なる3D映像で映画化した作品。小説家の男がカナダに住むパイ・・・
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☆☆☆★★(☆20点★5点) アン・リーが世界的なベストセラーである「ライフ・オブ・パイ」をCGを駆使して華麗なる3D映像で映画化した作品。小説家の男がカナダに住むパイ・パテルを訪ね彼の数奇な冒険物語を聞くという形で物語が進行する。インドで動物園を営む実業家の家に育った少年パイが自分の名前が「おしっこ」だと学校でからかわれるので、円周率のπを暗記して皆を驚かすのがまずは愉快なプロローグ。 経営難から動物をカナダの動物園に売ることを決意した一家を乗せる貨物船が嵐の中で難波し、少年パイだけが救命ボートで漂流するまで約一時間ほど。ここまでのアン・リーの語り口がゆったりしていて好感が持てる。 いよいよ大海原でパイが一人漂流、悪戦苦闘のドラマが展開するのがお楽しみだが、救命ボートには何故かシマウマとオラウータンとハイエナが同舟しているというファンタスティックな設定。まずは凶暴なハイエナがシマウマとオラウータンを襲うのにパイはなすすべもない。と次の瞬間、巨大なベンガル・タイガーが救命ボートのカバー下から飛び出してハイエナを一瞬のうちに仕留めてしまうショッキングな展開。 救命胴着を寄せ集めて作ったイカダを救命ボートにロープでつなぐという着想が面白いが、こうして救命ボートに居座るトラと対峙する少年との漂流の旅が繰り広げられることになる。 映画は人間とトラの漂流というありえないようなファンタスティックな緊張関係を縦糸に、満天の星空を写し込んで輝く水面や、月明かりの中での巨大なクジラがジャンプするといった幻想的な映像、海上を埋め尽くすトビウオの飛来や、食人植物の浮島での不思議な体験などが目を奪う美しいCG映像で繰り広げられる。ラストではパイの語る物語そのものに謎をはらませる味付けがなされているが、全体の趣はサバイバル映画というよりはファンタジーそのもので、純粋にエンターテインメントとして楽しめばよろしい。
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[002]そして友よ、静かに死ね
 いぶし銀のオヤジの魅力が満載僕の採点表2013-01-05
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★★ 「あるいは裏切りという名の犬」で御贔屓になったオリヴィエ・マルシャル監督の新作で、初老のギャングの裏切りと友情を描いて納得のいくフィルムノワールに仕上がっ・・・
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☆☆☆★★★ 「あるいは裏切りという名の犬」で御贔屓になったオリヴィエ・マルシャル監督の新作で、初老のギャングの裏切りと友情を描いて納得のいくフィルムノワールに仕上がっている。 実在のギャング、通称モモンことエドモン・ヴィダル(ジェラール・ランヴァン)が晩年を迎え孫の洗礼式に臨む静かなシーンに始まる。そんな折、幼馴染の仲間で麻薬を扱うと言うので袂を分けたセルジュ(チェッキー・カリョ)が警察に捕まり、モモンは初老の仲間たちを集めてセルジュ奪還の策を練るのがオープニング。 「あるいは裏切り」でも緊迫感あふれる語り口を見せたマルシャルの演出は快調で、若かりし頃のモモンとセルジュの陽気な青春時代をフラッシュバックで挿入しながら、モモンらが警察の注意を引きながら、別動の若い手下が警察官と派手な銃撃戦を展開してセルジュを奪還するくだりが、見事な編集で繰り広げられる。 さらに映画は大物ギャングの手下となって活躍していたモモンとセルジュ、モモンと愛妻との出会いなど若き日の溌剌としたエピソードが挿入され、子供が出来て引退を宣言するや組織に狙われたモモンが反撃に転じ、次々と組織の幹部を始末してのし上がっていく展開もパンチの利いた描写で唸らされる。 奪還したセルジュとの再会も束の間、麻薬組織からも追われるセルジュの周辺には殺し屋が出没し、セルジュの娘を含めて次々と犠牲者が出てモモンの家族にまで魔の手が伸びてくるのが終盤のサスペンスフルな展開で、逆襲に転じたモモンがかつての仲間でもあった麻薬組織の幹部を始末するクライマックスの描写も静かだが強烈。 エンディングは自分が10年の懲役となった隠れ家急襲事件の密告者がセルジュだったことが判り、モモンがセルジュに引導を渡すのが苦いラストシーン。 セルジュを演じるカリョが怪演で、「ミーン・ストリート」のロバート・デ・ニーロを思わせる、ちょっと頭のネジが緩んだ狂気のキャラクターがインパクトたっぷりだが、突発性暴力癖などみていて同情の余地がないので、これに振り回されるモモンの献身的な友情が一方的にみえてしまい共感を呼ばないのが難点。その点を差し引いても映画の完成度は高く、主演のジェラール・ランバンをはじめ初老ギャングたちがそろっていぶし銀の魅力。
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[003]チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜
 ストラディバリが哀れです。僕の採点表2012-12-17
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★ イランの女流作家マルジャン・サトラビ監督によるフランス・ベルギー・ドイツの合作映画。タイトルバックに流れるモノクロのアニメーションからイイ感じ。手作りの模・・・
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☆☆☆★★ イランの女流作家マルジャン・サトラビ監督によるフランス・ベルギー・ドイツの合作映画。タイトルバックに流れるモノクロのアニメーションからイイ感じ。手作りの模型のようなテヘランの街並みの俯瞰に目を奪われていると、主人公のナセル・アリ(マチュー・アマルリック)が骨董屋でバイオリンを買って店を出てくる。そこで知り合いと思しき美しい女性を見かけて声をかけるが、相手にあなたのことは知らないといわれてしゅんとするのがオープニング。 名器ストラディバリを妻のヒステリーで壊されてしまったバイオリン演奏家のナセルが、失意の中で死を決意して寝室に閉じこもった8日間の間に、自分の人生を回想するというのが大筋の構成だが、自分が死んだ後の長女や息子の未来までもが描かれているのが目新しい。自分に似て厭世的な長女は酒と煙草とギャンブルに明け暮れた挙句心臓発作で若くして亡くなり、妙に明るい長男はアメリカにわたって能天気なファミリーを築くと言った具合で、演出もそれに合わせてアメリカのシーンなどは妙にポップな感じに仕上がっている。ナセルを思い続けて結婚したものの、ナセルからは愛されることなく、不遇な結婚生活を続ける奥さん役のマリア・デ・メディロスの顔がETに見えてきてしまうというのは不謹慎か。そしていよいよナセルと時計屋の娘イラーヌ(ゴルシフテ・ファラハニ)の馴れ初めとロマンスが描かれる終盤は、ファラハニの美しさとも相まって、親に反対されて結ばれない2人が相手を思って悶々とする年月を流れるような演出でつないで切なさを溢らせ、それがオープニングのシーンに帰結した時、大いに観る者の涙を誘う。 模型、アニメーション、CGなどを縦横に駆使した前衛的ともいえる絵作りが素晴らしい魅力で、筆者はそのシュールな表現に「デリカテッセン」や「パンチドランクラブ」を思い起こさせられるところがあった。前出のように物語も凝った作りになっているが、お話的にはあざとさが目立って素直に感情移入しにくい部分もある。
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[004]桃(タオ)さんのしあわせ
 みている方もしあわせです。僕の採点表2012-12-17
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★★ 香港の映画プロデューサー、ロジャ(アンディ・ラウ)は家政婦の桃さん(ディニー・イップ)と2人暮らし。60年に渡って何代もロジャー家に仕える桃さんだがロジャ・・・
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☆☆☆★★★ 香港の映画プロデューサー、ロジャ(アンディ・ラウ)は家政婦の桃さん(ディニー・イップ)と2人暮らし。60年に渡って何代もロジャー家に仕える桃さんだがロジャー以外の家族はみなアメリカに渡ってしまっている。掃除洗濯から素晴らしい手料理までロジャーにとっては乳母でもあった桃さんは空気のようだがかけがえのない女性であることが手際よく紹介される。 そんな桃さんが脳こうそくで倒れたことから、彼女の引退の希望を受けてロジャーは桃さんに養老院を手配する。養老院は薄汚れて飯も美味しくなさそうだし、子供に戻った年寄りたちが騒いで桃さんはちっとも落ち着かない。 世話になった桃さんをなんでこんな辛気臭い場所に閉じ込めてと、ロジャーの仕打ちに見ているほうも気が滅入ってくるような序盤。そんなロジャーだが忙しい仕事の合間を縫って頻繁に桃さんの元を訪れるので、見ているほうもこいつは本当は優しい男なんだと安心してくると同時に、養老院にいる陽気な老人や糖尿病を患っている若い女性、温和で優しい老女などが桃さんと交流を始めるので、桃さんにも笑顔が戻ってくるのが良い感じ。 献身的に桃さんに尽くすラウの優しさあふれる言動とラウの腕をとって嬉しそうな笑顔を見せるディニー・イップの図を見ているとこちら側まで幸せな気分になってくる。桃さんの作った牛舌の料理に舌鼓を打つロジャーとその仲間たちのやんちゃな場面に頬を緩め、新年を養老院でぽつんと過ごす寂しそうな桃さんにしゅんとし、養老院を切りまわす気丈な看護師の凛々しい姿に勇気を貰う。アメリカからロジャーの母親が燕のスープをお土産に持ってやってきて、それを養老院の仲良しがわいわいシェアするシーンにも友愛が滲む。 銀幕の美男美女が登場するわけでもなく、素敵に美しい映像が目を楽しませるわけでもないのに、時に少女のようなお茶目さも見せるディニー・イップの魅力にスクリーンから目が離せなくなる。冷淡な人間は登場せず、みながいたわり合って生きているそんな下町長屋人情劇の趣があり、身寄りのない桃さんを優しく見守るロジャー家の人々の温かさが、文字通り「桃さんのしあわせ」を彩ってこんな風に人生を終わりたいと思わせる。 イップはヴェネチアも認めた素敵な演技。高齢化社会など香港のリアルな現実にヒューマニズムを織り込んだアン・ホイの演出も見事といってよい。
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[005]ホビット 思いがけない冒険
 思った通りの収穫でした。僕の採点表2012-12-17
 【ネタバレ注意】
☆☆☆☆ 「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが再びトールキンの原作を取り上げた新3部作で、物語は60年前にさかのぼりフロドのおじであるビルボの冒険を描・・・
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☆☆☆☆ 「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが再びトールキンの原作を取り上げた新3部作で、物語は60年前にさかのぼりフロドのおじであるビルボの冒険を描く。まずは金銀財宝の都市として栄華を極めるドワーフの王国がドラゴンに襲われて一気に崩壊、故郷を失ったドワーフ族の顛末が豪快な映像で描かれる。時が経ちドワーフ王家の末裔トーリン(リチャード・アーミテージ)は13人の勇者を従えドラゴンからの王国奪還を目指すが、魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)は忍びの能力を持つホビットの青年ビルモ(マーティン・フリーマン)を仲間に加える。 緑のホビット庄から冒険の旅に出た一行は巨人トロルを朝陽の力で石に変え、平原で巨大な狼を操るオークの追跡をかわすと岩の裂け目を辿ってエルフの王国に、そこで王国の鍵穴を示す秘密をエルロンド卿から授かって再び旅に出る。切り立った崖道にさしかかると全身岩でできた巨人の戦いに遭遇、九死に一生を得るがすぐにゴブリンの谷に囚われてしまう。捕らわれた一行の前にガンダルフが現れ、吊り橋が張り巡らされた巨大な洞窟を舞台に派手なアクションが縦横無尽に展開、一人はぐれたビルボは乳児のような異様な風体のゴラム(アンディ・サーキス)と遭遇して透明になるリングを手に入れる。さらなるオークの襲撃で断崖に追い詰められた一行は危機一髪ガンダルフが呼んだ巨大な怪鳥の背に乗って窮地を脱し旅を続けるところで第一話が完結する。 ピーター・ジャクソンは一直線に冒険の旅を見せる単純な構成ではなく、ドワーフのリーダー、トーリンとオークのボス、アゾグの壮絶な因縁を回想で挿入、暗黒が迫る中つ国の不気味なイメージも森の魔術師のエピソードに託し、トロルから手に入れたエルフの名剣や地図の秘密といったギミックの配分も見事で、ビルボが「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムと出会う運命のシークェンスも緊迫感たっぷり。 目を見張る威厳を湛える王国や不気味な洞窟のプロダクションデザインは「ロード3部作」の素晴らしさを踏襲しており、ギレルモ・デル・トロも関わっていそうなトロル、ゴブリン、ロックファイター、怪鳥といったクリーチャーの独創的な造形と見事なキャラクターも息をのむほど素晴らしい。アクション場面の細かい映像設計も映画ずれした観客を再び驚嘆させる見事さで、特にゴブリンの洞窟でのジェットコースター的アクションは最大の見せ場。断崖に追詰められて樹によじ登った一行がドミノ倒しで危機一髪、怪鳥の背に確保されるクライマックスのアイディアまで斬新な表現が満載。上映時間170分が夢のように過ぎてゆく「ロード3部作」と同様に現在考えられる最高のファンタジー・アクション・アドベンチャーといっても過言ではない。
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[006]エレクトリック・ミスト 霧の捜査線
 映画も霧の中です僕の採点表 (Mail)2012-12-06
 【ネタバレ注意】
☆☆☆ 「田舎の日曜日」の絵画のような世界で一躍注目を集めたタヴェルニエ監督もその後はパッとしないが、このアメリカ南部ニューオリンズを舞台に起きた殺人事件を巡るミス・・・
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☆☆☆ 「田舎の日曜日」の絵画のような世界で一躍注目を集めたタヴェルニエ監督もその後はパッとしないが、このアメリカ南部ニューオリンズを舞台に起きた殺人事件を巡るミステリーサスペンスも中途半端な出来栄えといって良い。トミー・リー・ジョンズ扮する地元の刑事デイヴが19歳の黒人少女チェリーが湿地帯で殺されているのを発見して捜査を始めると、地元のヤクザでデイヴとは高校の野球部の仲間だったバルボーニ(ジョン・グッドマン)が彼女の売春に関わっていたことが判ってくる。折しもニューオリンズではバルボーニが出資する映画の撮影が行われており、主演俳優のサイクス(ピーター・サースガード)が飲酒運転でデイブに捕まって、湿地で白骨を発見したと話す。事件は40年前の黒人虐殺事件とも関わりながら、ドラム缶に入った第2の殺人が行われ、サイクスの恋人がデイヴの身代わりとなって射殺される事件が起こる。タヴェルニエの演出は事件の解明に焦点が置かれておらず、色々な人間模様がとりとめもなく描かれているうちに、犯人探しの興味が失われて見ている僕らもどうでもよくなってくる。結局犯人はバルボアの命令で動いていた元刑事の男で、娘を人質に取られたデイヴが片を付ける。タヴェルニエとしては南北戦争の将軍の亡霊を登場させたり、南部独特の雰囲気を出すことには成功しているが、何がやりたかったのか首をかしげたくなる。メアリー・スティーンバージンやネッド・ビーティが懐かしい。
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[007]イップ・マン 序章
 カンフーは日本武道よりも強し僕の採点表2012-03-03
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★ 中国の佛山という地方は武館が集中する拳のメッカで、そこで一番の師匠と謳われたイップ・マン(葉問)(ドニー・イェン)の物語。時は1935年、青味を強調した渋・・・
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☆☆☆★★ 中国の佛山という地方は武館が集中する拳のメッカで、そこで一番の師匠と謳われたイップ・マン(葉問)(ドニー・イェン)の物語。時は1935年、青味を強調した渋い映像で捉えられる佛山の村の情景の質感の高さに目を見張らされる。ある流儀の武館を経営する長リュウ師匠がイップ・マンに試合を挑む開巻から、ドニー・イェン演じるイップ・マンの高潔な人格と詠春拳を駆使した格闘シーンのスピード感あふれる振付が素晴らしい。イップ・マンは弟子を取らずに愛妻と一人息子の少年と3人で大邸宅に暮らしているが、道場荒しに武館の長達が倒されると、村の名誉を守るためにこともなげに道場荒しをぎゃふんと言わせるのが、まずはカタルシスたっぷりの見せ場。2年後、日中戦争が起きて佛山の村も日本軍の池内博之の元に占領され、村人たちは飢えに苦しむ生活をしている。池内は大の格闘好きで炭鉱で働く腕に覚えのある中国人を集めては道場で日本人の兵隊と対戦させて楽しんでいる。親友を殺された恨みを発散するかのようにイップ・マンが日本兵10人をコテンパンにやっつける次なる格闘シーンもスカッとさせる。これですっかりイップ・マンに興味を持った池内が自分の腕を試すために佛山の広場のリングで決闘するのがクライマックス。池内は武士道精神のある男として描かれているので、このクライマックスは正々堂々と楽しめ、凄い殴り合いに勝利したイップ・マンの姿を見て占領されていた村人たちが大いに勇気づけられる姿が描かれる。 監督ウィルソン・イップは、工員たちがイップ・マンから拳の教えを受ける集団映像から、仕事の合間に技の練習をみせるユーモラスなシーンまで、迫力あふれる格闘シーンばかりでなく、緩急の付け方も見事な手慣れた演出。ドニー・イェンはイップ・マンの高潔で仁溢れる人間像を悠々と演じて心地良い。音楽に川井憲治の名前がある。
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[008]イップ・マン 葉問
 カンフーはボクシングより強し僕の採点表 (Mail)2012-03-03
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★★ 前作で大陸から脱出したイップ・マンは香港で詠春拳の武館を開いているが、ちっとも弟子が集まらず、借りたビルの屋上は洗濯干し場になっているというユーモラスなプ・・・
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☆☆☆★★★ 前作で大陸から脱出したイップ・マンは香港で詠春拳の武館を開いているが、ちっとも弟子が集まらず、借りたビルの屋上は洗濯干し場になっているというユーモラスなプロローグで、血気にはやる青年レオンが腕試しにやってきて一番弟子になり、少しずつ弟子が増えてゆくシークェンスが微笑ましい。その弟子が洪拳の武館の弟子とトラブルを起こして港の魚市場で大乱闘を繰り広げるのがまずは最初の格闘の見せ場だが、ここに序章の道場荒しカムがイップ・マンの良き協力者として登場するのが心地良い驚き。香港で武館を開くには各武館の師匠と対決して生き残らなければならないという設定にゾクゾクさせられると、その儀式は小さな丸テーブルを舞台に、香港武館の師匠たちを次々に倒してゆくアクロバティックな技のぶつかり合いがゴキゲンな見せ場。この武館組合を仕切る師匠がホン(サモ・ハン・キンポー)で、ホンや地元の警察署長は町を牛耳る英国人の横暴に腸が煮えくりかえっていたが、英国人のボクサーを迎えた地元のイベントでホンが殴り殺されたことからその怒りは頂点を迎えることに。マスコミを黙らせるために英国人ボクサーと中国武術家との公式試合が組まれ、イップ・マンがホンの弔い合戦を繰り広げるのがクライマックス。エドモンド・ウォンの脚本とウィルソン・イップの演出は前作を上回るカタルシスたっぷりの展開で、日本軍に代わる仇としての占領英国人の愚劣さをこれでもかと描いて、中盤からクライマックスにかけて観る者は映画の中の香港人と一体になってイップ・マンの活躍を応援し、リング上で蹴りを禁じられて追い詰められた主人公が中肋骨を集中攻撃して憎き英国ボクサーを粉砕するシーンでは喝さいを叫ぶほどの興奮を味わうことができる。序章に続き中国人の誇りを守ったイップ・マンが奢ることなく英国人達に対して謙虚さを示す高潔さもこの作品に一貫した姿勢で、ドニー・イェンの無表情に秘めた人格者振りが見る者を瑞々しい感動で包む。序章に続きプロダクションデザイン、青味がかった質感溢れる映像、カンフーシーンの振付とスローモーションを交えたカメラワークが素晴らしく、ホン師匠から警察署長に至るまで香港中国人の心意気が息づいている。川井憲治によるテーマ曲も序章に続き強く印象に残る。最後に少年ブルース・リーが登場するのが御愛嬌。
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[009]ラスト・ターゲット
 あのライフル撃ってみたいです僕の採点表2011-07-07
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★ スウェーデンの雪景色の中で突如狙ってきた狙撃者を倒すテンポのあるオープニングがいい。男はイタリアの山岳地帯にある中世の城塞跡地の村に観光客を装ってアメリカ・・・
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☆☆☆★★ スウェーデンの雪景色の中で突如狙ってきた狙撃者を倒すテンポのあるオープニングがいい。男はイタリアの山岳地帯にある中世の城塞跡地の村に観光客を装ってアメリカ人のカメラマンとして身を隠す。雇い主から連絡があり狙撃用の減音器つき高性能ライフルを仕上げる仕事が言い渡される。ジョージ・クルーニーが一匹オオカミのプロのメカニックを寡黙に演じる。城塞の神父はアメリカ人の手を見てクルーニーがカメラマンではなく犯罪の匂いのする職人だと気が付く。ブラックメールが届き居所を突き止められた恐怖がクルーニーの精神を動揺させ、やがてスウェーデン人の刺客との壮絶な一騎打ちが展開する。がらんとした部屋で黙々と部品を削りライフルを完成させてゆく映像の積み重ねは、減音器に金属の輪を丁寧にはめ込んでいく描写や、弾頭に水銀を注入するシーンでカタルシスを生む。完成したライフルを試し打ちする場面はこの手の作品最大の見せ場の一つだが、一度は川べりでクルーニーが、二度目は女射撃手によって金属で出来たヒマワリを標的に描写されてカタルシスを生む。このライフルを完成させた時クルーニーを待ち受ける運命は、というお決まりのクライマックスに向かって話は進んでゆく。アメリカでの生活に憧れる娼婦クララ(ヴィオランテ・プラシド)が急速にクルーニーに接近し甘えてくる。ハンドバッグに隠された銃は護身用なのか。 プロの殺し屋の孤独でストイックなキャラクターのぞくぞくする魅力に支えらた往年の名作を彷彿とさせる設定は、迷路の入り組んだ中世の城塞跡地という絶好の映像的背景を得て、観る者の期待を膨らませる。それは前述のようなお約束事の描写を過不足なく見せることで大いに満たされるし、クライマックスでは女狙撃者との静的サスペンスからカーニバルを背景に動的アクションへ流れてゆく描写も悪くない。唯一心を許すことにしたクララの目の前で息絶えるクルーニーの最期は勿論この手の作品のお約束事として余韻を生む。 がしかし酔いしれることができない。クルーニーの持ち味はどうしてもスウィートだし、娼婦プラシドもファム・ファタールとしては弱い。そして殺し屋の孤独と悲哀にはウェットなメロディがいる。目を見張るエッジの利いたスタイリッシュな映像がみたい。濡れてネオンを反射する舗道が欲しい。劇中ご丁寧にも「ウェスタン」を流すからして監督アントン・コービンはエンニオ・モリコーネが必要なことが判っていたのではないか。うーん惜しい。
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[010]アンノウン
 良く出来ました。!僕の採点表2011-06-05
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★ これからご覧になる方は読まないことをお奨めします。 「96時間」のリアム・ニーソンが再び孤軍?奮闘するミステリー仕立てのサスペンスアクション。妻とバイオ学・・・
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☆☆☆★★ これからご覧になる方は読まないことをお奨めします。 「96時間」のリアム・ニーソンが再び孤軍?奮闘するミステリー仕立てのサスペンスアクション。妻とバイオ学会での講演のためにベルリンにやってきたドクター・マーティン・ハリス(ニーソン)は空港に置き忘れたスーツケースを取りに戻る途中、自動車事故で一部記憶を失ってしまう。ホテルに戻ると妻(ジャニュアリー・ジョーンズ)からあなたなど知らないと言われ、私の夫はこの男ですとエイダン・クィンを紹介される。もう一人のマーティン・ハリスを調べるとパスポートを含めて怪しいところがないので、ニーソン君はこれは自分の記憶違いではと思い始める。ところが病院に刺客が現れたことから、やはり何かの陰謀だと確信、タクシーの運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)や私立探偵ブルーノ・ガンツの協力を得て、物凄いカーチェイスや格闘の見せ場で刺客の手を逃れながら事件の核心に迫ってゆく。バイオ学会を引っ張るアラブのプリンスが何度も暗殺の標的になっているのでそういう展開かと思いきや、実は学会で発表される新しいバイオテクノロジーの発明を盗もうというのが陰謀の核心で、マーティン・ハリスはこの陰謀のために生みだされた架空の科学者だったというカラクリなので、ニーソンがいくら自分こそがマーティン・ハリスだと言い張ってもそれを証明する証拠が出てこないという設定に納得性がある。なり済ましによって身分を奪われ犯罪に利用される巻き込まれ型サスペンスと思わせて、実は主人公のニーソン自身が犯罪組織の一員だったという展開が独創的で、エイダン・クィンはニーソンに何かあったときの代替要員だったというオチもなるほどという感じ。大ボスのフランク・ランジェラと刺客を立体駐車場で始末した後、クライマックスはバイオ学会のパーティ会場で、ニーソン自身が数ヶ月前に仕掛けたプラスティック爆弾を巡るサスペンスとなり、爆発の瓦礫の中でエイダン・クィンを倒して事なきを得、仲良くなったダイアン・クルーガーとよろしく去ってゆく。 見事に計算された設定を元に組み立てられた先の読めない脚本が見事な近年まれにみるミステリー・サスペンス・アクションの快作として拍手を送りたい。但し水増し的なカーアクションや、敵が近づいて危機が迫っていたり、目の前で死闘が繰り広げられているのに、ちっとも反応していない人物たちの間の抜けた扱いが興を削ぐジャウコマ・コレット=セラの雑な演出が難点。ニコール・キッドマン的風貌のジャニュアリーがクールな魅力で秘密警察崩れのブルーノ・ガンツも渋い存在感。
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[011]ブラック・スワン
 ジキルとハイドじゃ僕の採点表2011-05-29
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★ 「レスラー」でプロレス界の内情を描いてミッキー・ロークを復活させたダーレン・アロノフスキー監督が、今度はバレー界を舞台に過酷なプリマドンナ競争に心身をすり減・・・
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☆☆☆★ 「レスラー」でプロレス界の内情を描いてミッキー・ロークを復活させたダーレン・アロノフスキー監督が、今度はバレー界を舞台に過酷なプリマドンナ競争に心身をすり減らすバレリーナを描いてナタリー・ポートマンにアカデミー主演女優賞をもたらした記念碑的作品。「白鳥の湖」の公演で初めてプリマドンナに選ばれたナタリー・ポートマンは演出家のヴァンサン・カッセルから、お前は清く美しい白鳥の演技は素晴らしいが王子を誘惑するブラック・スワンの演技はなっていない、もっと感情を抑制せずに踊れとたしなめられる。完璧を目指す優等生であり、バーバラ・ハーシー演じる厳しい母親にも抑圧されながら毎日を過ごすポートマンは、そのプレッシャーから神経症ともいえる精神状態に追い込まれ、同僚で性的魅力を振りまくダンサーに役を奪われはしないかという不安とも相まって、鏡の中にダークな自分の姿を見たり、同僚とレズビアン行為に耽ったり、さらには彼女の前のプリマドンナであるウィノナ・ライダーを刺殺してしまうといった幻影をみるようになってしまう。その緊張は公演の前夜に激しい錯乱となってポートマンを襲い、とうとう迎えた初日もプレッシャーと不安で思うように踊れないヒヤヒヤの場面が展開するが、幕間で代役の同僚を鏡の破片で刺殺してダークサイドが現れたポートマンは素晴らしい演技でブラック・スワンを演じ、さらに悲しみに暮れた演技で白鳥の最期を踊りぬいて大喝さいを浴びるが、実はガラスの破片が刺さっていたのは自分自身だった、という物語。 アロノフスキーらしい暗く地味な作品で、頼りなげで臆病な主人公を演じるポートマンの不安げな表情をみているだけで気分が落ち込んでくるが、ポートマンは見事に習得したダンスシーンを織り交ぜながら、圧倒的な場面占有で映画を支えている。これまでの頼りなさを払拭してブラック・スワンを堂々と演じるクライマックスには映画的カタルシスの輝きが感じられるが、神経症的場面の連続に見ているほうが疲れてきてしまうので、僕として好きな作品とは言い難い。
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[012]ヒア アフター
 We are not alone僕の採点表2011-05-09
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★★ イーストウッドの「インビクタス」に続く新作。開巻、バカンスに来ていたフランスTV局の人気キャスター、マリー(セシル・ド・フランス)がスマトラ沖地震を想起・・・
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☆☆☆★★★ イーストウッドの「インビクタス」に続く新作。開巻、バカンスに来ていたフランスTV局の人気キャスター、マリー(セシル・ド・フランス)がスマトラ沖地震を想起させる津波災害にあって臨死体験する大スペクタクルシーンに始まる。ロンドンではジャンキーの母親のもとで気丈に助け合ってきた仲の良い双子の少年の兄が事故で幼い命を散らし、一人残された弟マーカスは失意の中で頼り続けてきた兄の亡霊を追う。サンフランシスコでは幼い時の手術が原因で交霊術の能力を持ってしまったジョージ(マット・デイモン)がその特殊な能力ゆえに人々から奇異の目で見られ孤独に苛まれている。イーストウッドはこの3者の物語を交互に描きながら物語を紡いでゆく。 臨死体験によって得たビジョンに取り憑かれたマリーはジャーナリストとしての能力を活かして自分の体験を核とした「ヒアアフター(来世)」と題した本を書き上げるが古巣のTV局からは冷たくあしらわれて、これまで自分が築き上げてきた世界や人間関係が砂上の楼閣だったことを知る。交霊による兄との交信を熱望する少年マーカスは何人ものいかさま霊媒師に失望し続けている。ジョージはその能力ゆえに好意をもった女性からは気味悪がられ、肉親からは金儲けの道具にされるありさまで、その3者3様の尋常ではない孤独の深さが切々と描かれるのだが、それは過不足ない情報量の脚本の力とイーストウッド演出(音楽)の流れるような語り口によって、観る者の心に深く染みいってくる。そして勿論、この3者がひとつ糸に結ばれて出逢うのがクライマックスだが、その会場となるのはマリーの新作発表の場であるロンドンブックフェアで、ディケンズ好き(何故だっけ)のデイモン、ガードマンをやっている里子の兄貴に引き合わせるため連れてこられたマーカスも来るという、その偶然を装ったセッティングにも相当な工夫がみられる。 デイモンの交霊により兄からの叱咤激励のメッセージを受けたマーカスが兄離れを決意する瞬間が感動的で、マリーと運命的な再会を遂げるデイモンは生まれて初めて自分の理解者を得て孤独から解放され安堵する。これは「来世」についての映画というよりも、理解者を得て孤独から解放される人の幸福を描いたヒューマニスティックな物語で、全編にイーストウッドの人間に対する深い信頼が感じられ「インビクタス」同様素晴らしい余韻を残す。臨死体験に取り憑かれたマリーと交霊術者のジョージの関係に「未知との遭遇」におけるドレフェス、ディロンとトリュホーの関係を想起させられたのは筆者だけだろうか。
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[013]塔の上のラプンツェル
 お姫様映画万歳!僕の採点表2011-05-04
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★★ ネイサン・グレノ、バイロン・ハワードによるディズニーによるグリム童話の映画化。不老不死の力を持って生まれた王女ラプンツェルは生まれるとすぐに魔女ゴーテルに・・・
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☆☆☆★★★ ネイサン・グレノ、バイロン・ハワードによるディズニーによるグリム童話の映画化。不老不死の力を持って生まれた王女ラプンツェルは生まれるとすぐに魔女ゴーテルに誘拐され森の中の高い塔に幽閉されてしまう。美しい娘に成長したラプンツェルがその長い金髪を光り輝かせると老婆は若返りあらゆる傷も癒してしまう。お尋ねモノの陽気な盗人フリン・ライダーは森の中を逃げ回っていると偶然塔を見つけラプンツェルと巡り会う。彼女に捕まったフリンは女王のティアラを戴くという交換条件で彼女の誕生日に行われる王国のイベントへの案内をすることに。こうして塔に幽閉されていたラプンツェルの大冒険が始まる。 開巻、塔の中でラプンツェルが長い髪を振り乱して歌い踊るシーンのありがちな演出に一瞬心配になったのも束の間、フリンを追う王国の騎馬がユーモアたっぷりに登場すると後はご機嫌なテンポで物語が進む。解放されたラプンツェルが喜びを体中で表現する「サウンド・オブ・ミュージック」なシーン、酒場での愉快な悪党たちと夢を歌いあう賑やかなミュージカルシーン、インディジョーンズを彷彿とさせる採掘現場で長い髪を自在に操ってターザンみたいに活躍する釣瓶打ちのアクション、無数の光の提灯が夜空を埋め尽くすロマンティックな映像など、クライマックスの魔女との対決とフリン復活のお約束事まで、娯楽映画の要素を抜かりなく織り込んで最高にハッピーなお姫様映画として近年のディズニー映画の中では抜群に楽しめる出来ばえ。映像の美しさは今やどのディズニー作品においてもみられる素晴らしい出来栄えで、CGによる主人公達の表情も2Gと同じレベルの親しみやすさで違和感なし。酒場の悪党たちが牢につながれたフリンを救いに来たことを暗示する小道具が「ブレード・ランナー」へのオマージュだったりとニヤニヤさせられるシーンも楽しい。惜しむらくはボクがみたのは吹き替え版だったことで、出来ればアラン・メンケンによるミュージカルシーンを英語でもう一度楽しみたいものだ。
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[014]わたしを離さないで
 いまを生きる僕の採点表2011-05-01
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★★ これから見る予定の人は絶対読まないでください!!! 予備知識があると映画の衝撃的な面白さが大きく損なわれます!!! カズオ・イシグロによる2005年の問・・・
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☆☆☆★★★ これから見る予定の人は絶対読まないでください!!! 予備知識があると映画の衝撃的な面白さが大きく損なわれます!!! カズオ・イシグロによる2005年の問題小説をアメリカ人のマーク・ロマネクがキャリー・マリガン、キーラ・ナイトレーという人気女優を使って映画化した衝撃の野心作。 1990年代英国、美しい自然に囲まれたヘールシャム寄宿学校では制服姿の身ぎれいな少年少女が校長のシャーロット・ランプリングのもと厳しく育てられているのだが、学校の境界線の外に出た生徒を襲った恐ろしい殺人の噂があったりして不穏な雰囲気も漂っている。主人公の少女キャシーは、すぐ興奮するので皆にからかわれているハンサムなトミーという少年に好意を持っていて、彼が交換会で手に入れた「わたしを離さないで」の音楽テープなどを通じて心を通わせてゆくのが瑞々しいタッチで描かれてゆく。 緑豊かな自然の中に建つ荘厳な寄宿学校を舞台に制服姿の子供たちの厳格な生活と淡い恋をスケッチしてゆくのは英国お得意の展開だが、殺人の噂といいルーシーという保護官のおどおどした態度といい、何かこの寄宿学校には秘密がありそうで見ているほうは落ち着かない。そして保護官による衝撃の告白で脳天に一撃をくらうことになる。なんと子供たちは臓器提供を目的に作られたクローン人間で死に至るまでその提供を義務付けられていて自分の生を全うできないというのだ。 映画はミステリー仕立てで主人公達の運命を次第につまびらかにしてゆく構成が絶妙で、クローン人間は売春婦など社会の底辺の人間から生み出されていたり、クローン人間を預かる寄宿学校が各地にあったり、成長するとコテージと呼ばれる次の施設に移されそこでは希望に応じて介護人として仲間の介護に当たる職業が用意されていることなどが明かされ、4度目の臓器摘出でほとんどの仲間が若くして(使)命を終えるといった衝撃の事実が見る者を震撼させる。 映画は看護人となったキャシーが提供者となったルースーやトミーと再会し、海辺で語り合いながら寄宿学校時代の友情を取り戻す場面を交え、彼らの死を看取る終盤まで物凄い緊張感が持続するのだが、それは過酷な運命を定められた主人公達の儚い青春の輝きと深い悲しみ、そして運命を受け入れる悟りの姿が見る者の心を激しく揺さぶるからだ。ラスト、親友のルース(ナイトリー)の力で、キャシー(キャリー・マリガン)とトミーは、心から愛し合っているカップルのみに延命が許されるという噂に最後の望みをかけてマダムの元を訪れるが、彼らはクローン人間に人間の感情があるかどうかを知りたいだけだったという結末も悲痛といってよい。 ロマネクは過酷な運命を背負わされたクローン人間の追い詰められた青春を騒ぎ立てることなく美しい映像を背景に品格溢れるタッチで積み上げることでキワモノといって良い題材を文学的レベルに昇華させることに成功している。主人公キャリー・マリガンは恋と運命に悩む姿を存在感たっぷりに演じて素晴らしい。生まれながらにして短い命しか享受できない運命に翻弄されるモノたちの青春の輝きと悲しみ、激しい葛藤と運命を受け入れる悟り描いて胸を締め付けられる秀作。それは「ブレード・ランナー」のレプリカントを想起させる
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[015]SOMEWHERE
 パパは改心します僕の採点表2011-04-10
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★ ベネチア映画祭金獅子受賞のソフィア・コッポラによる最新作。開巻荒野の一角を何度も走り抜ける一台のフェラーリを執拗にカメラに収めると、主人公の人気映画俳優ジョニ・・・
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☆☆☆★ ベネチア映画祭金獅子受賞のソフィア・コッポラによる最新作。開巻荒野の一角を何度も走り抜ける一台のフェラーリを執拗にカメラに収めると、主人公の人気映画俳優ジョニー(スティーヴン・ドーフ)が現れる。ホテルの部屋で行われるストリッパーの出張ポールダンスに興じるセクシーな映像もあるが、本物のセレブの娘ソフィアが目撃した空虚なセレブ生活の日常が趣味のよい映像を背景に興味深くスケッチされてゆく。そんな折、別れた妻との間に生まれた11歳の娘クレオ(エル・ファニング)を何週間か預かるはめになったジョニーは、新作のプロモーションにイタリアに旅して娘と2人だけのささやかな日々が訪れる。共演の女優が押し掛けてきて、ホテルの部屋で3人で朝食をなんて、ちょっと気まずい場面もあるが、クレオは何一つ文句も言わずに父親との日々を楽しんでいるように見える。このクレオを演じるのがダコタ・ファニングの妹のエルなのだが、これが天使のような純粋で可憐な美しさの少女で映画全体のムードを支配してしまう。それにしても「ヴァージン・スーサイズ」のキルステン・ダンストといいソフィアの少女趣味の良さには唸らされる。 クレオをサマーキャンプに送り出すことで娘とのささやかな日々は幕を閉じることになるのだが、娘との心温まる時間を過ごすことで空虚な日々に戻ることを捨てたジョニーは、フェラーリを路肩に乗り捨てても娘のいるキャンプ場に向かうのだった。 娘との束の間の日々を通じて大切なものに目覚めた男の物語で、モチーフ的には目新しくな、セレブの娘だった監督自身の実体験的なものが反映しているのが興味深い程度。ソフィアの持ち味は美術・衣装・音楽などといった趣味の良い表層的映像に発揮されており、エル・ファニングの登場は映画史的収穫。
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[016]ザ・ファイター
 兄弟愛も考えもの僕の採点表2011-03-26
 【ネタバレ注意】
☆☆☆★★ 1994年にボクシング界に復帰して世界タイトルも取った実在のボクサー、ミッキー・ウォードの半生を描いた作品で監督はデヴィッド・O・ラッセル。マサチューセッツ・・・
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☆☆☆★★ 1994年にボクシング界に復帰して世界タイトルも取った実在のボクサー、ミッキー・ウォードの半生を描いた作品で監督はデヴィッド・O・ラッセル。マサチューセッツ州のローウェルという田舎町、ボクシングジムではマネジャーの母アリス(メリッサ・レオ)トレイナーの兄ディッキー(クリスチャン・ベール)の下でミッキー(マーク・ウォールバーグ)は日々トレーニングに励んでいた。ディッキーはかつて世界チャンピオンをダウンさせたことで地元の英雄として知られていたが、今やクラックに溺れるジャンキーであり、傲慢かつ破滅的な生活態度で問題を起こし何度も刑務所に入っており、9人の子供を持つ母アリスの高圧的態度と無教養さもマネジャーとしての資格に欠けているので、ラスベガスでは9キロも体重の多い相手と対戦させてミッキーに大怪我をさせてしまう。 映画の3分の2はミッキーを取り巻く腐れ縁の家族のだらしなさとそれに起因してミッキーが才能を発揮できずにいるという、袋小路の状況が克明に描かれるのだが、まずはジャンキーの兄を演じるベールの粗野で無教養な喋り方や素振りが圧巻で、母アリスを演じるレオの抑圧的で子供たちの上に君臨する女帝振りも迫力たっぷり。自分たちの無能ぶりなどどこ吹く風でエゴイスティックに君臨しようとするこの2人の人物は、ミッキーにとっての大きな障害となっているのだが、一方でかけがいのない家族であるために心優しいミッキーには排除できないというジレンマも上手く描かれている。これを受けて立つのがミッキーの恋人役のエイミー・アダムスで、アリスの引き連れる馬鹿な7人の娘たちと掴みあいの喧嘩をする気丈さは爽快ですらある。こうして、悪循環な環境のせいで物事が上手くいかない宙ぶらりんな状況が長々と描かれるので、見ているほうは気が滅入りかけてくるのだが、ディッキーが刑務所に入って解放されると途端に勝ちだして面白くなる。噛ませ犬で組まれたマッチを超劣勢から一発大逆転のボディパンチでひっくり返すのが劇的で、世界タイトル戦では猛烈な打ち合いで劣勢に屈しながら神がかりのパンチを繰り出して相手をKOするカタルシスたっぷりのボクシングシーンが楽しめる。 だが作り手側の視線はミッキーというよりは兄ベールをはじめとしてノーボディである家族や田舎町の人々がサムボディとなるミッキーに自分の果たせぬ夢を投影するというお話であり、ノーボディであることを認めて弟の幸せの為に過去の栄光に訣別する兄の成長と兄弟愛の物語でもある。
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[017]男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW
 名作が泣きます僕の採点表2011-03-25
 【ネタバレ注意】
☆☆★★★ 御存知ジョン・ウーとチョー・ユンファの代表作である香港任侠映画の傑作を韓国でリメイクした作品。開巻、北朝鮮から韓国に脱出しようとする家族が離れ離れになりヒョ・・・
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☆☆★★★ 御存知ジョン・ウーとチョー・ユンファの代表作である香港任侠映画の傑作を韓国でリメイクした作品。開巻、北朝鮮から韓国に脱出しようとする家族が離れ離れになりヒョク(チュ・ジンモ)だけが亡命に成功する。プサンで銃器密売組織の腕利き組員となったヒョクは相棒のヨンチュン(ソン・スンホン)と共に警察に追われる重要犯罪人だが、離れ離れになっていた弟のチョルが韓国に亡命出来たので足を洗って弟の面倒をみながらまっとうに暮らそうと決意する。だが最後の仕事でタイへ取引に出掛けたヒョクは、プサン密売組織のボスの甥で卑屈なテミン(チョ・ハンソン)の裏切りにあい捕まってしまう。数年後タイでの服役をあけてヒョクが戻って見ると、ヒョクの復讐に単身殴り込みをかけてヨンチュンは足を悪くして落ちぶれてしまい、プサンの組織はテミンによって牛耳られていた。一方弟のチョルはプサンで警察官になっており、家族を見捨てた兄ヒョクへの憎しみを原動力に銃器密売組織を追っているという展開になる。 物語の展開はオリジナルの設定をほぼ踏襲しているということだが、あまりに下手くそな編集のおかげで、お話がどう展開しているのか映画ずれした観客にでさえ理解不能なひどいありさまで、特に最初の1時間は人物の相関図もわからない状態で連関性のないシークェンスをみせられて困惑させられる。特にテミンが裏切りに向かう伏線がまったく張られていないためにタイでの裏切りの場面が唐突で、続いてのヨンチュンの単身殴り込みという最大の見せ場にもタメがなく、あれよあれよという感じ。プサンにも戻ってきたヒョクが弟との関係にうじうじしていると、ヨンチュンがテミンにリンチにあうので、ヒョクもとうとう宣戦布告、和解した弟のチョルも加わりテミンを倒すが、3人も命を散らすという展開もオリジナル通り。 足の悪いヨンチュンが密売組織の倉庫事務所から迫りくる追手を走ってかわすシーンや、折角テミンを捕えて形勢逆転したヒョクの前に弟のチョクがのこのこやってきて敵の人質になってしまうシーンなど、稚拙なご都合主義も満載で失笑を誘う。監督のソン・ヘソンの作品ははじめてだが、タイの瑞々しい緑やイケメン主人公たちの汗と血にまみれた美しい表情を捉える映像にご執心で、アクション場面もそれほど多くなく、オリジナルにほとばしるエキサイティングな作品とは程遠いお寒い出来。
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[018]イリュージョニスト
 黄昏の手品師僕の採点表2011-03-25
 【ネタバレ注意】
☆☆☆☆ 「ベルヴィル・ランデブー」のシルヴァン・ショメ監督が故ジャック・タチの幻の脚本を映画化した絵画のような味わいに満ちた傑作アニメーション。1950年代のパリ、老・・・
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☆☆☆☆ 「ベルヴィル・ランデブー」のシルヴァン・ショメ監督が故ジャック・タチの幻の脚本を映画化した絵画のような味わいに満ちた傑作アニメーション。1950年代のパリ、老手品師タチシェフは人々がロックに熱狂するようになった都会で出番を失い、海を越えスコットランドにやってくる。さらに湖を渡り山奥にある辺境の小さな湖畔街にやってくる。この地でタチシェフは住み込み家政婦の外国人少女アリスに出会う。アリスはタシチェフのシャツを洗濯したり何かと親切にしてくれるので、タシチェフは彼女に赤い靴を買ってやったりして2人は仲良くなってゆく。タシチェフが湖畔街を後にすると、アリスはタシチェフを追って道連れとなりエジンバラにやってくる。孤独な老手品師と世間知らずで言葉の通じない外国人少女との奇妙な共同生活が始まる。 何よりも絵画のような映像が素晴らしい。50年代のパリの街並みに始まり、スコットランドの湖をゆく船、背景に浮かぶ山並み、さびれた湖畔街、鉄橋を走る真っ赤な列車が写り込む川面、圧巻は古都エジンバラの美しきたたずまい。額に入れて飾っておきたくなるようなノスタルジー掻き立てる映像に観る者は完全に魅せられる。主人公たちの姿を静か追うだけのセリフを排した展開は映画の寓話的雰囲気を嫌が上でも高め、言葉の通じないタシチェフとアリスが身振り手振りで意思疎通する設定はまさにパントマイムなタチの世界である。アリスはタシチェフのことを魔術師だと思っているので、何の屈託もなく靴やドレスなど年頃の少女らしく欲しいものをねだったりするのだが、当のタシチェフはデパートのマネキンなど新しい時代が求める仕事に適応できずにどんどん時代に取り残されていて、自動車整備工場でのカーウォッシュの日銭稼ぎのシークゥエンスなど泣き笑いの場面が展開する。タシチェフとアリスが住む安ホテルにはタシチェフと同じような境遇のピエロや腹話術師といった芸人が住んでいて、そのうらぶれた芸人の悲哀がノスタルジックな趣に拍車をかけるのだが、アリスが彼らにスープをふるまう心温まる場面などがいい。 やがてアリスは若く美しい青年と恋に落ち、何事もなかったかのようにタシチェフの前から姿を消してゆく。タシチェフに対して感謝の言葉もなく、何の未練も残さずに青年と旅立ってゆくアリスをみるとき、観客はタシチェフの孤独の辛さを思って涙するのだが、旅芸人はそれが宿命だというがごとく淡々と汽車の旅を続けてゆく。それにしてもシルクハットから飛び出す手品ウサギとの別れが数倍涙腺を刺激するのは何故なのだろうか。
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[019]トゥルー・グリット
 スカットしないリメイク僕の採点表2011-03-24
 
コーエン兄弟がジョン・ウィエンがアカデミーを受賞した「勇気ある追跡」をリメイク、このルースター・コグバーン役をジェフ・ブリッジスが演じる。父親を使用人のジェフ・ブロ・・・
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コーエン兄弟がジョン・ウィエンがアカデミーを受賞した「勇気ある追跡」をリメイク、このルースター・コグバーン役をジェフ・ブリッジスが演じる。父親を使用人のジェフ・ブローリンに殺された13歳の娘マーティ(ヘイリー・スタインフェルド)は冷酷で腕利きの老保安官コグバーンを100ドルで雇って父親の仇を討とうとする。これにテキサス・レンジジャーのマット・デイモンが道連れになって追跡を始めるという仇討のロード・ウェスタン・ムービーで、反撥しながら旅を続ける3人が試練を経てやがて協力しながら仇を倒すというお決まりの展開。オリジナル作品もそれほど緊張感のあるアクションロードムービーとは言い難かったが、このリメイクも平板な物語展開と平凡なアクションの作品。前作は呑んだくれのジョン・ウェインの魅力もさることながら、勝気なキム・ダービーも可愛らしく、歌手グレン・キャンベルの歌う主題歌も印象的で、ルシエン・バラードのカメラが捉える黄金色の西部の草原がとてつもなく美しい作品として記憶に残っている。が、このリメイクではジェフ・ブリッジスのコグバーンは及第だが、マーティはしっかり者なだけで小生意気な少女の域をでないので可愛らしさに欠け、マット・デイモンも陰気なだけで楽しくない。さらに自然は冬枯れしていて寒々しく全体としてコーエン兄弟らしい陰気さがぬぐい切れていないと思ったのは筆者だけだろうか。スピルバーグが製作総指揮に名を連ねているので彼が好きな作品なのだろうが、オリジナルの陽だまりを感じさせる温かさは影を潜め、定石通りきちっと撮られたことだけが印象に残る作品となってしまった。☆☆☆★
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