allcinema ONLINE オールシネマ 映画&DVDデータベース
検索オプション

投稿されたユーザーコメント
 
 「karr」さんのコメント一覧 登録数(144件)rss
 コメント題投稿者投稿日
[001]宮川一夫
 自然の光karr2014-10-19
 
溝口健二、依田義賢とのトリオ作は天下一品 使う光の幅が尋常ではない。 その奥行、広がり、温かみ、 他ではまず見られない。 とにかく、驚きの連続。 なにゆえこんなに美しい・・・
続きを読む
溝口健二、依田義賢とのトリオ作は天下一品 使う光の幅が尋常ではない。 その奥行、広がり、温かみ、 他ではまず見られない。 とにかく、驚きの連続。 なにゆえこんなに美しい〜!!! 一流達から生まれるアイディアの融合、鬩ぎ合い。 溝口の美意識と宮川の美意識。 互いのイメージを理解し合う事の難しさ。 それを乗り越えた時、奇跡は起こる。 白黒だけですべてを表せてしまうのが日本人。 雪舟の遺伝子を受け継いでいるという誇りが、宮川の白黒の世界を前に、疼く。 おのれの中の日本人、を実感できるのである。
隠す
  
 
[002]ミッドナイト・ガイズ
 高齢男児に向けた超感動作karr2014-09-06
 【ネタバレ注意】
ヴァレンタイン 数えきれないほどの罪を犯した男。 だが、悪人と呼ぶのを躊躇させられてしまう男。 それは、友人達のためなら、人生を捨てても平然としていられる男だからであ・・・
続きを読む
ヴァレンタイン 数えきれないほどの罪を犯した男。 だが、悪人と呼ぶのを躊躇させられてしまう男。 それは、友人達のためなら、人生を捨てても平然としていられる男だからである。 平然?、いや、苦しくともそれを表に出さない、いじらしい美学がそこにある。 罪を犯していない人間よりも上等に見えてしまう理由は、そこにある。 過酷な運命を、まるで楽しんでいるかのような余裕はそこから来るのである。 異色のヒーロー像が、老齢化社会の今、誕生した。 ドク ただ自分を貫けばいいというヴァレンタインとは違い、しがらみにがんじがらめな男。 だが、根はヴァレンタインと変わらない。 だからこそドラマが生まれる。 わずか一日足らずのストーリー。 しかもこの二人、アルパチーノとクリストファーウォーケンなのである。 彼らの繰り出すセリフの一つひとつは耳をつんざき、仕草の一つひとつは目を奪う。 見栄えは・・・、確かに美しいとは言いにくい。 だが、えもいわれぬ魅力が光をまとう。 そして、地味なストーリーの中、メインのクライマックスに颯爽と登場するのはアランアーキン。口元にはガスマスク。 ひょうひょうとしたキャラは、意外性のベールをはがされ、笑いのエールに包まれた。 ウェンディ達を愛でたらし込み、男冥利に突き、いや、尽きる名場面に思わず垂涎・・。 アレックスの可憐さも、胸に迫る。 ぶっちゃけ、胸躍る。 あと、特筆すべきは脇役たちの存在感。 悪役以外の全員が魅力に溢れ、優しくて、憎めない。 老人ホームの老女や、ダンスホールのバーテン、DJ、ダンスをせがまれるリサ、ドクター、シルヴィア、ニーナ、ウェンディたち・・・ そう、なぜかみんな人がいい。 つまりこの映画は、人間を肯定しているのだ。 歳を重ねるという現実を肯定しているのだ。 この視点こそ、人々が忘れてはならないものだ。 そして、明日に向かって撃てばりのラスト。 少し違うのは、甚だ老齢なのと、希望を残した点。 不可解なのは、アレックスに残した住まい。 もし、ボスを殺し損ねた時、そこにアレックスが住んでいたら命を狙われやすいのでは・・・? 蜂の巣になって魂が抜けてしまっても、その体で組織を壊滅する!という決意のあらわれ・・・? とにかく 面白かった。
隠す
  
 
[003]ザ・ホワイトハウス
 さすがTUTAYAkarr2014-08-11
 
近所のレンタルビデオ屋が潰れて、遅ればせながらのTUTAYAデビュー。 今までの小さな店にはなかったホワイトハウス全シーズンに初めてご対面。 半シーズンずつ借りてようやく見・・・
続きを読む
近所のレンタルビデオ屋が潰れて、遅ればせながらのTUTAYAデビュー。 今までの小さな店にはなかったホワイトハウス全シーズンに初めてご対面。 半シーズンずつ借りてようやく見終わる。 とにかく、その脚本の秀逸さに圧倒された。 さまざまな難題にメスを入れ、感動のエキスを散りばめ、そして綺麗に一つ一つまとめ上げている。 ゲストの出演者も豪華絢爛。引く手あまたのホワイトハウス。 政治に嘘や秘密は付き物。 そんなやっかいなテーマを使ってこんな長時間のドラマを作ってしまうなんて。 その勇気だけでも感動的である。 しかもホワイトハウスと来た。 確かに、期待ほど踏み込んでなくて、現実に即してない?と感じる部分もあるが、それはどこかにドラマではないと錯覚させられているからなのかも、と思ったりもする。 あまりにもドキュメンタリータッチだから、作り話だという事を時に忘れさせてしまう…のだとしたら逆に凄いね(笑)。 また、セリフのところどころに垣間見られる作者の本音が面白い。本音でないにしても、アメリカ人の感性に共通する何らかである事に変わりはない。 日本人の私がそういった気分を長時間味わえる機会は、そうないではないか。 それだけでも価値ありだ。学びという点で考えれば。 また、アメリカの政治システムになんとなく触れられるのもうれしい。 次々と新しい発見もある。 個人的に印象深いのは、 グレンクローズとウィリアムフィクトナーの回や、颯爽たる政治家ジミースミッツ、原発問題に対するアランアルダ、マーリーマトリンの活躍など。 何はともあれ、 どのエプソードにも少なからず感動や驚きが散りばめられているのである。 これは凄いことだ。 アーロンソーキン以下スタッフ皆様の努力に感謝感謝。
隠す
  
 
[004]ランナウェイ/逃亡者
 プロフェッショナルな人、レッドフォードkarr2014-08-11
 
地味ではあるが、題材が題材だけに見応えはあった。 しかし、さすがのレッドフォードも切り込み方がソフト。 娘への愛を一番のテーマに落ち着かせてしまった感があり、せっかく・・・
続きを読む
地味ではあるが、題材が題材だけに見応えはあった。 しかし、さすがのレッドフォードも切り込み方がソフト。 娘への愛を一番のテーマに落ち着かせてしまった感があり、せっかくの題材を地味にしてしまっている。 日本人として、連合赤軍などと比較してしまうからこういう感想を持ってしまうのかもしれないが、よくよく考えれば映画である。わかりやすさも必要で、そのあたりのバランスを考えての結果とすればいたしかたあるまい。 何はともあれ、豪華スター共演には目も眩むばかりである。 そこそこの脚本があれば、後は役者の力だけで名画レベルに引き上げてしまう場合もある。 この映画がそうだとは言わないが、近いものがある。 それにしても、駄作を作らないレッドフォード氏。 映画に引き込む手練手管を随所随所に施し、最後まで飽きさせない。 セリフの一つ一つにも無駄がない。 逆に、登場人物それぞれ、あるいはその人間関係をもっと掘り下げてくれた方が…、もう少し無駄があっても…、もっとえげつない部分を描いても…、と思わなくもないが。 つまり、スマートな映画なのである。 それでも私は言いたい。 さすが、レッドフォード。
隠す
  
 
[005]ジュリー・フェリエ
 フランス語を勉強しとけばよかった・・・karr2012-08-30
 
天才。フランスを代表する舞台コメディアンヌ。 変幻自在な表情表現は他の追随を許さない。 知性とあどけなさが見事に融合した、究極の愛らしさをそこに見ることが出来る。 彼・・・
続きを読む
天才。フランスを代表する舞台コメディアンヌ。 変幻自在な表情表現は他の追随を許さない。 知性とあどけなさが見事に融合した、究極の愛らしさをそこに見ることが出来る。 彼女の舞台を始めて目にした時、私の幸福感は絶頂に達してしまった。 こんな女性と同時代を生きることができるなんて・・・。
隠す
  
 
[006]アメリカン・ビューティー
 鑑賞者の先読みを操るkarr2011-08-17
 【ネタバレ注意】
見る者の先入観を次々に裏切る、ある意味ずるい脚本。 意表をつく映画は、おおむね、面白いという印象を与えるものである。 そういう意味において、実に良く出来た脚本である。・・・
続きを読む
見る者の先入観を次々に裏切る、ある意味ずるい脚本。 意表をつく映画は、おおむね、面白いという印象を与えるものである。 そういう意味において、実に良く出来た脚本である。 サクセスストーリー的な要素、やり過ぎとも言えるコミカルな要素、インパクトもあり美しくもある映像、キュートな女性陣、深みのある人間描写、ゲスフーなどなど、全体的な完成度は高い。 それに加え、神道や仏教に通じる、あらゆる所に神は宿る、ならぬ、あらゆる所に美は宿る、というメッセージが日本人の我々の共感を呼ぶのは必定。いや、意外なところに美は宿る、かな。 あるいは、多様な価値観の必要性を求めているのかもしれない。 しかし、全体的に、メッセージ性よりもストーリーの意外性に重きが置かれている気がする。 要するに、メッセージを語るウェスベントリーを魅力的に見せるのが、このメッセージの主たる存在意義なのだ。・・・なんちゃって。 とにもかくにも、結局のところこの映画、「面白かった」の一語に尽きるのである。
隠す
  
 
[007]情無用の街
 製作・エドガーフーバー?karr2011-08-17
 【ネタバレ注意】
最初、FBIのプロパガンダ的な映画かと思いきや、内容も意外に濃かった。 なんと言っても、リチャードウィドマークが素晴らしい。が、いつもの事なので特筆するまでもないか・・・・・・
続きを読む
最初、FBIのプロパガンダ的な映画かと思いきや、内容も意外に濃かった。 なんと言っても、リチャードウィドマークが素晴らしい。が、いつもの事なので特筆するまでもないか・・・。 この映画での彼のキャラクターは、仕事柄、極めて神経質な男で、普通なら単なる嫌味な男に終わりそうなものだが、彼の計算ずくの表情や仕草が役に深みを与え、魅力的とさえ呼べるまでにこの悪役を昇華してしまっている。 印象として、彼のこの熱演が、ドキュメンタリータッチにクギを刺している感も無いではないのだが、魅力的であれば、それはそれでいいではないか。 事実を基にしたストーリー。それ故に、とも言えるが、実にリアルであり、しかも分かりやすい。 ギャングとFBI、その両陣営の駆け引きや、オトリ捜査官の危機の描き方などもなかなかのものである。 思わず、手に汗握らざるを得なかった。 「丁寧な作りの映画」という印象が強い。
隠す
  
 
[008]ハロー・ドーリー!
 名演と名曲karr2011-08-17
 
パフォーマーとしての天賦の才を、惜しげもなく披露するバーブラストライザンド。 おせっかいで、頭脳明晰で、思いやりに溢れ、しかしどこかひねくれた未亡人という複雑な役柄・・・
続きを読む
パフォーマーとしての天賦の才を、惜しげもなく披露するバーブラストライザンド。 おせっかいで、頭脳明晰で、思いやりに溢れ、しかしどこかひねくれた未亡人という複雑な役柄である。 彼女は、あえて、舞台演技風の大袈裟な表現に徹する。 シンガーとしての偉大さは言うまでも無い。 驚くべきは、その女優としての風格である。 決して美人ではないものの、その内面から発せられるパワーが、様々な価値観をあまねく凌駕してしまった。 摩訶不思議な魅力に、止めどなく惹きつけられてしまうのである。 振り付け担当は別人らしいが、監督であるジーンケリーのイメージが直接この映像に結びついている、と私は考えたい。 そして、思いは巡る。 ジーンケリーが目指してきたミュージカルの群舞というのはこれだったのか・・・。 まさに圧巻。 結局はアイデアなのだ。 長年に渡って、斬新で楽しいアイデアを生み出してきたジーンケリー。 そのイメージが尽きる事は無かった。 ハーモニアガーデンや、屋外でのスペクタクル。 これほどまでに心が沸き立つダンスシーンも珍しい。 しかも、あのサッチモが晩年の痩せた姿で画面に現れる。 目頭を押さえずにはいられない。 大好き、の一言に尽きる。
隠す
  
 
[009]終着駅 トルストイ最後の旅
 どちらが正しい、ではない!karr2011-04-16
 【ネタバレ注意】
とんでもない名演を見せるのは、魔女ヘレンミレン。 その鬼気迫る表情。 まさしく、ソフィア本人が憑依していた。 そして、彼女の周りから溢れ出る優しさは、なんとも、味わい・・・
続きを読む
とんでもない名演を見せるのは、魔女ヘレンミレン。 その鬼気迫る表情。 まさしく、ソフィア本人が憑依していた。 そして、彼女の周りから溢れ出る優しさは、なんとも、味わい深く、いじらしい。 この映画のテーマである愛を、ヘレンミレンが一人ですべて表現し尽くしている、と私は感じた。 理想を追い求める社会主義と、本能に根ざした資本主義。 トルストイ家の夫婦間における葛藤は、ある意味そんな、人類における永遠の対立構図が原因なのである。 そう考えると、対立を回避する為に家出したトルストイの行動は、それなりのヒントを我々に与えてくれているのかもしれない。 人間レフ・トルストイ。 彼の描く童話から、なんとなくだが感じ取れる子供っぽさというか、幼稚さの出どころを垣間見た気がするのは私だけだろうか。 否。彼はその一生を、ただただ悩み続け、その思想は全然完結しない。そんな弱々しい彼の姿こそが、人々を惹きつけて離さないのである。 彼の偉大さはそこにあるのだ。 歴史は語る。 下層からではなく上層から平等を目指していた珍しい存在のトルストイ。考えようによっては、ロシア革命を実現させた原動力の一端を担っていたはずである。だが、結果的には彼の子孫は他国へ追いやられてしまう。下克上こそが名目上の革命であったのだ。 だが、ソ連邦崩壊後もいまだに歴史を悩まし続ける社会主義と資本主義の対立と矛盾。 まさに、永遠のテーマを題材にこの夫婦は争っていたのである。 無私、人間愛、平等という理想を追い求める旦那と、防衛本能、子孫繁栄、弱肉強食という現実主義に徹する女房との終わりの無い壮大なる夫婦喧嘩なのだ。 そしてその喧嘩は、夫婦間だけでなく、今も世界中で続いている。 いや、ちょっと待てよ。現実主義、つまり弱肉強食の資本主義の中だけでの争いの方が激しいのかも・・・。 映画に話を戻そう。 もうひとつ特筆すべきは、ジェームズマカヴォイの名演。 トルストイとの初対面で見せるその表情。押さえ切れない感動がダイレクトに伝わってきて、同じようなすさまじい感動に引きずり込まれざるを得ない。 そして、クリストファープラマー、ポールジアマッティ、アンヌマリーダフ、ケリーコンドン、そんな、とんでもない名優達がうごめく名画である。 とにかく、感情が揺さぶられる映画である。 彼らの憎しみが迫り来る。 イライラが迫り来る。 怒りが突き抜ける。 そして、底抜けの優しさが、胸を刺す。 これほど、あらゆる形の愛を考えさせられる映画は少ない。 そして、これほど共感させられる映画も少ないだろう。 色んな意味で、ゴージャスな名画である。
隠す
  
 
[010]ノスタルジア
 画家・写真家タルコフスキーkarr2011-04-16
 
完璧な構図を保ちつつ、ゆっくりとカメラは移動する。 そして次の瞬間、突然現れた新たな構図もまた、当然のように完璧なのである。 また、驚くべき奥行き。 常に空間に余裕が・・・
続きを読む
完璧な構図を保ちつつ、ゆっくりとカメラは移動する。 そして次の瞬間、突然現れた新たな構図もまた、当然のように完璧なのである。 また、驚くべき奥行き。 常に空間に余裕があることにより、セリフの一つ一つの深みや、その人物の過去への興味は増してゆく。 タルコフスキーのパレットに乗せられているのは様々な色の光の粒子。 彼は使い慣れた絵筆を用い、光の粒子を丁寧に、至極丁寧に塗り重ねてゆくのである。 人物や景色を浮き上がらせるその光の粒子。 その粒が織り成す影のスペクタクル、まさに壮観である。 美しく、かぐわしい。 よだれを垂らしながら、ただ、見とれているしかないのである。
隠す
  
 
[011]サクリファイス
 ペレストロイカとの関連性は?karr2011-03-03
 
刻々と、次から次へと、新しい構図の絵が生まれてゆく。 人や物が動くにつれて。 もちろん、すべてはタルコフスキーの計画どおりに。 それも、驚くべき緻密さで。 なんという・・・
続きを読む
刻々と、次から次へと、新しい構図の絵が生まれてゆく。 人や物が動くにつれて。 もちろん、すべてはタルコフスキーの計画どおりに。 それも、驚くべき緻密さで。 なんという吸引力。 登場人物の語りは私の脳裏を練り歩き、立ち止まる。 現在、そして未来への警鐘が目白押し。 タルコフスキーの美意識や価値観は、小生の素通りを許さない。 聖なるイコンにさえ感動できない小生なのに。 彼のメッセージは、そんな小生の感性をもくすぐり、耳をそば立たせざるを得ないのである。 もちろん耳だけではない。目も当然、離せない。 目の前で繰り広げられるのは、動き、語る絵画の、二時間以上に及ぶ大展覧会である。 理想の構図を保ち続けるカメラの静かな動き。 そしてその動きがスッと止まった時のその構図の完璧さ。小生を茫然自失に追い込む。 人の位置と家具や物の位置とカメラの位置。 光と影と色、音と音楽。 あらゆる調和が悩ましい。 固唾を飲み、目を見張るしかない。 そして気がつけば、えも言えぬ心地良さが、小生の全身を襲っているのである。 だが、それと同時に、心がむき出しにされた不思議な感覚にも気付く。 場面転換と、おもむろに挿入される美しい映像、そのタイミングはまさに絶妙で、強烈な余韻を残す。 とにかく、映像だけでも、見るものの感情を掻き乱し、頭ではなく五臓六腑に訴えかけてくる、傑作。
隠す
  
 
[012]
 監査の存在意義を再認識karr2011-03-02
 【ネタバレ注意】
一つの勇気が、少しずつ少しずつ周りの言動を変えてゆく。 その変化は限りなく小さく遅い。ある時期までは・・・。 やがて、一つの限りなく小さな変化に連なる小さな勇気が小さ・・・
続きを読む
一つの勇気が、少しずつ少しずつ周りの言動を変えてゆく。 その変化は限りなく小さく遅い。ある時期までは・・・。 やがて、一つの限りなく小さな変化に連なる小さな勇気が小さな勇気の連鎖を呼び、状況は突然、なだれのごとく急変する。 シドニールメットは、やはり凄かった。 刻々と変化してゆく男たちの心の変化を、緻密に念入りに映像化した。 あらゆる位置からカメラがとらえたすべての表情、それは鬼気迫るほどに劇的である。 支配する側される側それぞれの、様々な性格を綿密に絡み合わせ、一つ一つの度重なる変化への反応にも必然性を持たせつつ、そして、その反応から更に自然な変化が生み出されるという手抜きの全く無い脚本は、驚異的なほど芸術的である。 そして、じれったさをこらえにこらえた先に待っていたものは、V字回復ならぬ、V字転落である。嵐のような、鋭角すぎるV字転落である。 感心せざるを得ない「そう来たか〜!」の結末。それは・・・ 正義を貫き通そうとする不屈の精神、その高尚なる精神によってようやくもたらされた大勝利・・・。 その喜びもつかの間・・・急転直下、野性的無計画な激情が、すべてを・・・一瞬にしてぶち壊してしまったのだ。 さすがだ。お見事。
隠す
  
 
[013]アルバレス・ケリー
 魔人ウィドマークkarr2011-03-02
 
いつものごとく、リチャードウィドマークの個性ある名演を期待して見たのだが、予想外な事に、ウイリアムホールデンのカッコ良さを初認識させられた一本となった。 普段から、・・・
続きを読む
いつものごとく、リチャードウィドマークの個性ある名演を期待して見たのだが、予想外な事に、ウイリアムホールデンのカッコ良さを初認識させられた一本となった。 普段から、ウィリアムホールデンのその引っ張りダコぶりが、何故だか不思議だったのだ。 しかし、この映画での彼は、ひたすらカッコ良く、渋い。 もしかしたら一番脂がのっていた時期だったのかもしれないが、これでようやく長年の謎が解けた。 なんと、リチャードウィドマークのお株を奪うほどの個性を見せてくれるのだ。我が目の節穴ぶりを反省せざるを得ない。 そしてもう一つ印象に強く残ったのは、パトリックオニールの名優ぶりである。 役へのアプローチの仕方がコミカルで、うまい。しかも味がある。 名優が共演しているという意味では、実に見ごたえのある映画である。
隠す
  
 
[014]アンタッチャブル
 聖なる馬鹿正直者たちkarr2011-03-02
 【ネタバレ注意】
飽きさせない作り。 確かに面白いが、後々心に残る名画、というほどではない。 私的には、場面が断片的に印象に残る映画、である。 また、ブライアンデパルマの音楽の使い方に・・・
続きを読む
飽きさせない作り。 確かに面白いが、後々心に残る名画、というほどではない。 私的には、場面が断片的に印象に残る映画、である。 また、ブライアンデパルマの音楽の使い方には、時々違和感を覚える。楽聖エンニオモリコーネに意見出来なかったのかな、・・・なんて事が思い過ごしに過ぎない事を願う。ただ、統一感がもっとあった方が良かった気がするのだが、ま、単に娯楽大作を作りたかったのだとしたら、これはこれでいいのかも。 制服姿で登場する最初の場面で、ショーンコネリーは深みのある最高の名演を見せる。 この場面だけでマローンのすべてが描けていると言ってもいい。 チャールズMスミスの個性がこの映画にもたらした効果は絶大。 彼がいなければ面白みが半減していた、と思えるほど。 従業員エレベーターで撃たれる一瞬の、その間(ま)と、彼の表情が残す印象はあまりにも強い。 この場面でのこの演出、ベタではあっても、無くてはならないのだ。彼の存在意義を示す意味でも。 イタリアン役には欠かせない、典型的なラテン顔のアンディガルシア。最高のバイプレイヤー顔でもある彼は、このおいしい役を難なく演じ切った。 さすがに、絵にはなっていたが特筆すべき程でもなかったか。 麗しのパトリシアクラークソン。 彼女の実力は後々とんでもない開花を見せるが、すでにこの映画でも役柄が彼女の魅力に追いついていない気さえしてしまう。 そして、やんちゃなアルカポネを、大袈裟なしゃべり方や仕草で見事に再現してみせたロバートデニーロ。 しかし、単にエピソードの羅列程度にしか登場しないため、イマイチ威厳や深みまでは迫ってこない。 もちろん、それが意図的だとしたら問題ないのだが、もし意図的でなかったとしてもデニーロを責めるのは的外れであろう。 ケビンコスナーは偉大な映画人ではあるが、名優というイメージは薄い(個人的印象)。だが、それこそが名優たる所以なのかもしれない。 結果的に堅実に映画を彼の色に染めてしまっている、そんな気がするからなのだが。 階段でのシーン。 自分は拳銃を下ろし、アンディガルシアに「Take him」と命じる時の表情と立ち姿には、小生、不覚にも痺れてしまった。 デニーロのアルカポネを久々に急に見たくなって、DVDを借りた。 もひとつ、デパルマ節を久々に堪能したいという気持ちもあったのだが・・・。 昔抱いた「素晴らしい映画」というイメージが、あまりにも強すぎたようだ。 作り過ぎ、とでもいうか、せわしない、とでもいうか、作為的であり過ぎる、とでもいうか・・・、いや、映画とは元々作為的なものなのだが、なんというか・・・。 とにかく、今回の鑑賞でちょっと残念な印象が残ってしまった、というのが正直なところ。 それにしても、1930年ごろのシカゴの再現。 驚くべき、職人技の結集である。
隠す
  
 
[015]Be Cool/ビー・クール
 個性乱舞、導く名脚本karr2011-02-25
 【ネタバレ注意】
分かりやすく派手なサクセスストーリーではあるが、登場人物の誰もが魅力的に描かれ、そしてそれぞれの思惑がモーレツに絡み合い我々の感情を刺激し続ける。 ゲットショーティ・・・
続きを読む
分かりやすく派手なサクセスストーリーではあるが、登場人物の誰もが魅力的に描かれ、そしてそれぞれの思惑がモーレツに絡み合い我々の感情を刺激し続ける。 ゲットショーティーで新たに生み出したヒーロー像を、さらにスタイリッシュさに磨きをかけ、いやみなほどにカッコいいジョントラボルタ。 正直、あまり大っぴらにそのカッコ良さを表明できないほどの照れ臭さもそこにはある。 その大袈裟さに、笑いを誘う意図があるのを感じつつも、でもやっぱりちょーがつくほどのカッコ良さなのだ。 これこそ、現実離れという映画の醍醐味でもある。 さて、再びジョントラボルタとの共演を果たしたユマサーマン。 最初は、パルプフィクションでのショッキングな名コンビぶりのイメージが邪魔をしていたものの、その比較的シンプルな人物像へのアプローチは徐々に好感を齎し、やがてその熟した魅力は、映画全体に高揚さえをも齎した。 ジョーペリーはかっちょええし、セルジオメンデスもサラッとではあるが名演を聞かせてくれるし、スイートエモーションに言及するところなんぞも含め、音楽の絡め方がナイスバランスで、心憎いばかりである。 一昔前、キングオブコメディーでセドリックを見た時、日本人にも受入れやすいそのコメディーセンスに親しみを抱かずにはいられなかった。その後、役者としてのキャリアも着実に積み上げて来たセドリック、この映画でのその親しみ溢れる存在感にはただただ納得させられるのみ。 そして、ヴィンスボーン。 そのインパクトにおいて比類の無い存在感を示す。 準主役の多い映画である。 だからこそそのまた脇を固める、ロバートパストレッリや、ロシアンマフィアなど、それぞれのグループの下っ端たちの働きは大きい。 いや、ロバートパストレッリも準主役と呼ぶべきか。それほど、彼の個性は光っていた。 それにしても、この乱立する個性。 よくここまでまとめ上げたものである。
隠す
  
 
[016]スティング
 思い出す、青春の一コマ。karr2011-02-23
 【ネタバレ注意】
拙者が映画に狂いだしたキッカケの作品。 久々の鑑賞ではあるが、古さは余り感じなかった。 はるか昔、ハードロックのLPと共にこの映画と、「明日に向かって撃て」のサントラを・・・
続きを読む
拙者が映画に狂いだしたキッカケの作品。 久々の鑑賞ではあるが、古さは余り感じなかった。 はるか昔、ハードロックのLPと共にこの映画と、「明日に向かって撃て」のサントラをある駅ビルのレコード店で購入したのを思い出す。 そして、このサントラのジ・エンターテイナーを耳コピして、ピアノ曲で唯一のレパートリーにした事、また友人と期末試験の勉強中(一夜漬けってやつです)、「雨にぬれても」の歌詞を一晩で暗記してちゃんと歌えるかどうかの賭けをし、賭けに勝った事もあわせて思い出す。試験結果は・・・、忘れた。 当時は若さゆえか気付かなかったであろう、この映画の時代背景、今回は無性に痛々しく感じた。 時代は、F・ルーズベルトがニューディール政策を推し進めるものの、大恐慌の荒波はまだまだ衰えず、特に弱者にとっては、辛い辛〜い時期である。 現在と似ている。だからこそ余計に、その後の世界大戦に突入していった過程を、粘着性の強い批評精神を持って見直す必要に迫られる。 不況を消し去る最終手段として選んだのが、戦争だったからである。 この教訓を現在の我々は恐怖と共に記憶に刻んでおかなければならない。他人事では無いのだ。 本筋に戻そう。 そんな、不景気な時代。 貧しい正直者たちも、食うためには手段を選んでいられなかった。 そんな人たちの中には、頭脳明晰な人や、演技の無茶苦茶上手い人など、才能豊かな人が大勢いた。 そんな、演技の無茶苦茶上手い「詐欺師たち」を、演技の無茶苦茶上手い「名優たち」が演じているのだ。 そんな特異な映画が面白くない訳が無い。 しかも、そんな時代の不景気な暗ささえ忘れさせるほどの、爽快なストーリー。 そんな爽快さをもってしても、隠し切れない悲哀。 その、悲哀を帯びた深みをもたらしている要素の一つに、音楽が、名曲たちがあげられる。 ラグタイムとはいっても、悪魔的なまでのテクニックと奇天烈な明るい和声を駆使した本来のイメージに近いものではなく、どの曲もどこかしら深い哀愁を帯びたアレンジが施されている。 そう。ファッツウォーラーやジェリーロールモートン、ユービーブレイクなどのハイスピード超絶技巧を選ばずに、スコットジョプリンのミドルテンポ、スローテンポを選んだあたりがミソなのである。メロディーに重点を置いたのだ。 また話がそれるが、ジャズへの過程の段階というか、ジャズの礎とでもいうか、そのラグタイムと呼ばれた音楽の魅力を追及し続けるテクニシャンたち。 そんなピアニストたちが私は大好きだ。 何故かと言うと、クラシックの基礎をその並外れた探究心で築き上げたバッハに似ていて、新たな試みと遊び心の満ち溢れた愉快さがほとばしり出ているからである。 新たなスタイルが湯水のごとく湧き出る、まさにその高揚感がたまらない。 再び話を戻そう。疑心暗鬼こそがキーワードの映画である。 フッカーとゴンドーフの本音を我々に悟られてはまずいのだ。 二人の間に裏切りが存在しているのでは?という疑惑がストーリーの核とも言える。 さて、その二人の会話。その裏切りの有無の判断材料になる言葉を極限まで削ぎ落とす。その注意が細心であればあるほど、どんでん返しの効果が大きくなるのだ。 最後、術中にハマッた我々は、一瞬途方にくれる。だが、良く考えると、すべてが演技だった事に気づき、なっぁ〜んだ、となる。 しかし、嘘に覆われた映画ではあるが、脚本が非常にすぐれ、演技が非常にすぐれていたからこその感動作だ、という事にも気付く。 ロネガンやスナイダーをだます為の、詐欺師たちによって繰り広げられる名演技が、鑑賞者をだます為の、名優たちの名演技でもあるのだ。 今になって思うと、非常に単純なストーリーではある。 嘘で我々の目をくらます、という、まだ映画に未熟だった私に対して、なんとも罪深いストーリーであった。 それなのに、三十年以上にも渡って私の心の一部を占めてしまっているのは、不思議としか言いようが無い。 青春、か・・・。
隠す
  
 
[017]クロムウェル
 渋すぎるリチャードハリスの声karr2011-02-18
 【ネタバレ注意】
人民のための政治を実現させようと暗中模索し、紆余曲折し、そして「重大な責任」を背負う立場を引き受けた男。「この映画」でのクロムウェル像である。 結局、政治とは権力闘・・・
続きを読む
人民のための政治を実現させようと暗中模索し、紆余曲折し、そして「重大な責任」を背負う立場を引き受けた男。「この映画」でのクロムウェル像である。 結局、政治とは権力闘争なのだ。 自民党の派閥闘争を見ていて、「もっと政治をしてくれ」と言いたくなったのを思い出す。 選挙の回数は、少ないよりも多い方が人民の意志は、より反映されるはず。 そして、一党独裁よりは与党と野党が凌ぎ合う政治の方がいい。 すると、立法が難しくなる。だがそれでいいのかも知れない。 権力者の利益だけを考えた悪法の立法がしにくくなるからだ。この映画でトマスフェアファックスが動議した「選挙を三年間しなしなくていい」というのもその悪法のよい例である。 しかし、そうなると人民のための法律も生まれにくくなる。 一方を立てれば一方が立たなくなるのが政治なのだ。 だが、無くてはならないのも政治である。 歴史は繰り返される。 多くの人がまず思い出すのがジュリアスシーザーではなかろうか。白いトーガをクロムウェルたち議員に着せれば、まさにローマ時代の元老院。 歴史が下れば、ルイ16世斬首からナポレオン台頭のフランスもしかりである。 王の存在を、象徴としているという意味では日本とイギリスは近いのかもしれない。 平治、保元の乱や南北朝の動乱、明治維新、明治・昭和の戦争などの経験がその類似性を後押ししている、と考えられなくもない。 王に権力を預けることの色んな意味での危うさを、日本も、悠久の時間をかけ、ようやく学び得たのである。 もちろん、天照大神など神道の神と、キリストの唱える神という後ろ盾の大きな違いはあれど。 そして、このキリスト教がまたやっかいなのである。 ヘンリー8世がローマカトリックと手を切った事により、ややこしいイギリス独特のかたちを生み出してしまった。 カトリックとプロテスタントと呼んではいるものの、他国のそれとは大いに異なる。 プロテスタントとは本来、神との間にカトリック教会は介在せず、直接につながっているという大前提があるはずなのだが、イギリスではイギリス国王がローマ法王のような立場にいて、プロテスタントのはずの国民が、神と直接つながる事が出来ないのである。あくまでイメージなのだが、イギリス国王を一度介さねばならないのだ。この点、ローマカトリックの影響下にいるのと形式は似てしまう。 いや、これはあくまで我輩が、1000日のアン、や、わが命つきるとも、や、ブーリン家の姉妹、や、エリザベス、や、エリザベス1世などの映画から得た個人的印象にすぎないのだが。 何はともあれ、当時のイギリス国教の本質を知ることは難しい。 はて、何を言おうとしたのか、忘れてしまった。 とにかく、理想の政治や、男の生き様、人間の果てしない権力欲などあまた考えさせられる、まさに「勉強になる映画」とはこの映画の呼び名である。
隠す
  
 
[018]至福のとき
 昇竜karr2011-02-18
 【ネタバレ注意】
失業の町。 だがその悲惨さを、決して暗くは描かない。 貧しさに、押し潰されるどころか楽しんでさえいるような生き様がそこにあった。 そして、話の運び方も実に巧み。「HERO・・・
続きを読む
失業の町。 だがその悲惨さを、決して暗くは描かない。 貧しさに、押し潰されるどころか楽しんでさえいるような生き様がそこにあった。 そして、話の運び方も実に巧み。「HERO」でのその巧みさにも驚かされたが、恐るべしチャンイーモウ、である。 素朴さと気品をあわせ持つドンジェと、持ち前の粗野さでは隠しきれない、はちきれんばかりの優しさがいじらしいチャオベンシャン。 まさに、近年稀に見る名コンビである。 涙腺のゆるい方にはお勧めできない。 なぜなら、泣きすぎて死んでしまうかもしれないからだ。 なんちゃって。
隠す
  
 
[019]孤独な嘘
 リンダバセット&エミリーワトソンkarr2011-01-22
 【ネタバレ注意】
味がある。 ピリッと辛口だが、後からジワジワ旨味がしみ出てくる、そんな映画である。 相手を心から思いやる、とは? 赦すことの裏側に潜むもの? サスペンスというより、文芸・・・
続きを読む
味がある。 ピリッと辛口だが、後からジワジワ旨味がしみ出てくる、そんな映画である。 相手を心から思いやる、とは? 赦すことの裏側に潜むもの? サスペンスというより、文芸作品の香りが全編に立ち込めていて、その吸引力に抗うことが出来なかった。 単に、嘘が暴かれてゆく様を描いた映画、ではないのである。また単に、その嘘に翻弄されてゆく人間たちを描いた映画、というのでもないのである。 お互い正直で、嘘が無い夫婦、それは一見理想的にも思えるが、果たしてそれが、最高の夫婦関係だと言えるだろうか。 隠し事をしない、というのは、すべてにおいて相手を思いやる、という事につながっているのだろうか。 もちろんここでは、人間とは不完全なるもの、という大前提を忘れてはならないのだが。 相手の事を本当に理解していたらば、相手がその後にどう行動するかは自然と分かるはずであり、隠す方が相手と自分にとっての最善の選択となる場合もある。 というより、自分を「悪役」にする事を嫌がらずに、隠し通す事の方が、真の「相手への理解」と、「深い愛情」を必要とする場合もあるのではないだろうか。 曰く、言わない事は「嘘」である。だが、嘘イコール悪ではない。 つまり、夫は「真の善人」ではなくて、「善人でいようと苦悩する」人なのである。というか、自分を善人だと思い込んでいるようだ。 いや、善人という言葉はちょっと違うのかもしれない。 妻への本質的な愛情が少し足りなかった、のかもしれないし、あるいは、溢れんばかりの愛情を向ける矛先がズレてしまった、と言った方がいいか。 先天的に被害者体質なのだ。加害者側になるよりも被害者側になりたがる性質を持って生まれて来たのだ。 もし、私のこの読みが当たっているのだとしたら、トムウィルキンソンはまさに名演であった。 そして、心根の正直な、しかし、ついつい良からぬ行動をとってしまう、が、馬鹿に見えて実は洞察力のある、という不思議な魅力に溢れた妻を演じ切ったエミリーワトソンも、まさにはまり役、適役、圧巻である。 ミステリアスな陰影を引きずらせるためか、その本質をうまく小出しにしている脚本も秀逸。 彼女は、もしかしたら、夫に、彼自身の殻を破ってほしかったのかもしれない。 本当は、ご亭主を一番愛していたのだから。…? そういう意味では、至上最も崇高だとされている「赦(ゆる)し」という意思に対しても鋭くメスを入れている。 過ちを犯してしまった妻。 その妻を赦すことが、果たして…。 その時、私の頭をかすめたのは「アンナカレーニナ」。…謎解きに歯止めがかからない。 そんな、ついつい深読みしたくなる、妙画である。 南国の真っ青な透き通った海もいいが、私は、山奥のごつごつした岩だらけの清流の方が好きだ。 などと書いているうちに私は、エミリーワトソンへの思い入れが、映画全体の評価を実際以上に引き上げてしまっていることに気付き始めた。 ま、いっか。
隠す
  
 
[020]龍馬伝
 期待が大き過ぎた?karr2011-01-03
 
誰からも愛される笑顔、誰からも愛される泣き顔、を演じるのは、誰にとっても非常に難しい、どころか、至難の技。 ましてや、福山雅治にそれを求める?到底無理な話ではないか・・・
続きを読む
誰からも愛される笑顔、誰からも愛される泣き顔、を演じるのは、誰にとっても非常に難しい、どころか、至難の技。 ましてや、福山雅治にそれを求める?到底無理な話ではないか。 なんせ、彼には真逆のイメージがつきまとっているのだから。ちょっとダークなイメージ?、とでもいうか。(個人的意見かな?) その彼が、頑張って笑顔を作れば、自然、無理が表れる。 頑張れば頑張るほど見ているものは、辛くなる。 一所懸命なのは分かるが、その真剣さが逆効果なのだ。 泣き顔も全く同じである。 極論かもしれないが、「無表情であればあるほど福山雅治の魅力は増す」、ということを現場の誰かが気付かせてやるべきだったのだ。 私が思うに、彼を使うのであれば、逆に龍馬像を変えるべきではなかったか。 もっと、龍馬の変な部分に焦点を当て、無表情で偏屈なんだけど、どこかしら愛らしい、とでもいうような感じ?かな。 明暗や音の使い方など、新鮮な映像に魅力を感じさせられていただけに(特に大友演出)、キャストの魅力に欠けた点、非常に残念。 そんな中でも、吉田東洋の田中泯、後藤象二郎の青木崇高、蒼井優、貫地谷しほり、香川照之らは、さすが!の光を放っていた。 ストーリーは、真偽をうまくブレンドし、結構綺麗にまとまっていた。 あとは、龍馬像さえしっかりしていれば・・・。 しかし、誰がいいか?と考えた時、なかなか思い当たらないのが龍馬、なのである。 金持ちの坊っちゃんが、それをコンプレックスとして背負いつつ、また大いに利用しつつ、というその出発点から、最終的には、明確な目標を持っていそうな行動力バツグンのプロデューサーに至るのであるが、それだけではない。そこに、身分制や侍魂や時代の気分が絡んで、複雑怪奇な人物像に仕立て上げられる。しかも死後の時間が新たなアレンジを加える。 要するに、坂本龍馬のキャスティングは、今を生きる日本人に突きつけられた永遠の課題、ということか。
隠す
  
 
[021]篤姫
 笑える大河karr2011-01-03
 
松坂慶子の魅力全開。まさにフルスロットルである。 続いて、稲森いずみの、落ち着きある名演技炸裂。 また、真(?)解釈井伊直弼・中村梅雀も印象深い。 そんなドラマ、である。
  
 
[022]幕末青春グラフィティ Ronin 坂本竜馬
 久々にもう一度見てみたい映画karr2011-01-03
 
うん十年前、初めて見た(?)武田鉄矢の大泣きシーンに、私は驚愕した。 カメラの存在を全く忘れ去って演じる、とはこういう事か。 今思えばその時の私は、そんな錯覚を起こさ・・・
続きを読む
うん十年前、初めて見た(?)武田鉄矢の大泣きシーンに、私は驚愕した。 カメラの存在を全く忘れ去って演じる、とはこういう事か。 今思えばその時の私は、そんな錯覚を起こさせられていたのだろう。 ただただ魅入られた。 その後も、そのショックに私は引きずられる事になる。 さて映画の方だが、当時それほど歴史にくわしくなかった私にとって、その内容の記憶は薄らいでしまった。 ガットリングガン、巨大な蒸気船、今は亡き名優たち。 吉田拓郎の高杉晋作は、異色ではあるものの、その存在感は不思議と印象深い。演技力とは別の次元で・・・。 武田鉄矢に話を戻したい。 他で、特に忘れられない彼の大泣きのシーンは、NHK大河ドラマ徳川家康での、死ぬ間際の秀吉である。 秀頼の保護を家康などに懇願する秀吉を演じているのだが、これまた、私の記憶にしがみ付いて離さない。 そうそう、大泣きほどじゃないけど、これまた大河ドラマでの彼の楠木正成も、印象深いものがある。 彼以上に、我を忘れた大泣き演技の出来る役者は、・・・、思い出せない。 ハリウッドにも・・・、思い出せない。 バラエティ番組などで見る武田鉄矢は、私の理想の武田鉄矢像とは掛け離れている。 私の中で武田鉄矢は、偉大なる、大泣き名優なのである。
隠す
  
 
[023]リミッツ・オブ・コントロール
 無邪気な遊び心満載karr2010-12-28
 
映像や音楽や会話から、何かを感じ取れ、それだけでいい。 裏の意味やメッセージも、深く考えなくていい。 そんな映画である。 惑わされてはならない。メッセージに気を取られ・・・
続きを読む
映像や音楽や会話から、何かを感じ取れ、それだけでいい。 裏の意味やメッセージも、深く考えなくていい。 そんな映画である。 惑わされてはならない。メッセージに気を取られていたら、ジムジャームッシュの魅力の牽引を自ら切り離してしまう事になる。 その構図や色のコーディネートから発せられるエネルギー。それは、五感以上のどこかをも強烈に刺激してくれる。 その不思議な刺激が妙に心地良いのである。 車窓の景色がまた美しいのだが、それでいて妙な不思議さを醸し出している点、興味深い。 スパニッシュミュージシャンやダンサーの選び方も絶妙。 小道具や建物の選び方にも強く惹きつけられる。 ストーリーは有って無いようなもの。 ジムジャームッシュは、人物や建物や自然や出来事を思いついたまま、約二時間のキャンパスに並べた。 映像と音と言葉が一連の構図を形成し、ピントの絞り方がまた意味ありげで、ますます引きずり込まれるのだが、時々、ジムジャームッシュは淡白に手を離す。 「意味ありげ」で遊ぶのが好きな人なのだ。 また、キーワードを散りばめ、関連性の有りそうな雑学を披露しながら、それを重要視するかどうかは鑑賞者に委ねきっているような気もする。 そこが不思議に心地良かったりもするのだが。 ほとんど揺れなかったカメラが、ビルマーレーの場面で突然揺れだす。 人生観レベルの大それたメッセージを語らせるように見せかけ、実は、それはあまり重要ではない。 様々なコントラストや構図や陰影が放つ「何か」こそが重要であって、その得体の知れない「何か」が私を強烈に刺激し、とんでもない快感をもたらした。 とにかく、単純にその場面場面が印象深くなる仕組みになっている。 意味不明なのに、なぜか、映画鑑賞の本来の意義、らしきものを強烈に感じさせられてしまった。 終わった瞬間、思わずほくそ笑んでしまったのである。 以上、ジムジャームッシュの真意を全く無視した、利己的見解の羅列でした。 それにしても、役者の個性の使い方が実に「べっぴん」です。絶品とも言います。 さすがジムジャームッシュ。 役者が映画の顔である点、よ〜く御承知であられる。
隠す
  
 
[024]紳士は金髪がお好き
 アニマル・マグネティズムkarr2010-12-07
 
あくまで個人的な見解ではあるが、マリリンモンローの最大の魅力は、そのセクシーさでは決して無い。子供じみた可愛らしさ、悪く言えばノータリン、良く言えば、脳の一部が少女・・・
続きを読む
あくまで個人的な見解ではあるが、マリリンモンローの最大の魅力は、そのセクシーさでは決して無い。子供じみた可愛らしさ、悪く言えばノータリン、良く言えば、脳の一部が少女のまま成長してしまった女の天真爛漫さを堂々と演じ通すところにある。 たとえダンスがプロっぽくなくても、そのぎこちなさが逆に愛らしく狂おしい。意図的でやり過ぎな流し目を飛ばしながら動き回るだけで充分なのである。それだけで彼女の魅惑的パフュームが、画面を越えて溢れ来る。 魔術的なまでのまぶた使いや、もったいぶった口の動かし方、瞳孔を開きっ放しにした表情作りも、匠的な技では決してないものの、彼女がするからこそその魅力は拡大拡張する。 そこまで見え見えの大袈裟な誘惑顔をしなくても、という演技でも、全く嫌味を感じさせない、そこにマリリンモンローの特異さがある。 彼女は女優ではない。マリリンモンロー優なのである。 だが、Diamonds are a girls best friend のオープニングで男達の頭を扇子で叩きまくる時の表情なんかを見ていると、ひょっとしてこの人は天才なんじゃないかという疑問さえ湧いてくる。 そう、ある意味天才なのである。その彼女の専門分野で、マリリンを超える女優が一人として出てきていないのだから。 彼女の唯一無二の魅力を、ハワードホークスは一瞬で感じ取り、また、ビリーワイルダーも全く同じ魅力に取り付かれた。「七年目の浮気」のマリリンは明らかにローレライリーの延長線上にある。 そして彼らによって最大に引き出された彼女の魅力を浴びせられ、私はその都度、狂喜乱舞せざるを得ないのだ。 映画は、一風変わった女同士の友情を描いている。価値観が正反対なのに、ただストレートにお互いを信じる姿は、まるで十字架を仰ぐほどに無垢である。その名コンビぶりはまるでブッチキャシディ&サンダンスキッド、ジョンとヨーコ、夏目漱石とその妻鏡子、マックスローチとクリフォードブラウンである。 法廷でマリリンを真似るジェーンラッセル。これまた笑えるのだが、しゃべり方は真似られても、表情や雰囲気は、その魅力の半分も真似られなかった。彼女ほどの女優でさえ、である。 音楽もいい。ビッグバンド同士の切磋琢磨によって研ぎ澄まされてきた和音のセオリー。その影響を少なからず受け継いだこの年代の楽曲に多く聴かれる和声、緻密でいて重々しくはない独特の美しいハーモニーには、いつも心を洗われる。 そして、この映画でも、ハワードホークスのセンスの良さはあらゆる場面において光沢を放つ。 さて、気になるのは、ハワードホークスがマリリンに、どの程度、どんな演技を強いたか?である。 彼女のクセを最大限に生かし、あまりいじっていないかのように見受けられるが、実のところどうなのだろう。 一流の映画人ハワードホークスが、マリリンモンロー像を造り上げるのにどの程度関わっていたのか、実に興味深い問題である。 マリリン・モンロー。 お人形さんでもなければアンドロイドでもない、生身の人間なのは分かっているが、時に忘れてしまう。 横顔のあごのラインがちょっと不自然に感じるが、そんなことはどうでもよい。 最初に、セクシーさが彼女の最大の魅力ではない、とは言ったものの、彼女の可愛らしさ、可憐さの裏に、隠しきれない程のセクシーさが充満している、とも言い換えられる。 しかし、少なからず演技というものには計算が介在するはずである。万が一、計算づくの演技だとしたらば、驚くべき女優と呼ぶ他ないが、その真意のほどは知る由も無い。 もし、彼女の死因が他殺だったとしたら、私はその暗殺者を決して許さない。 いや、すでに天罰は下っているはずだ。
隠す
  
 
[025]明日の私に着がえたら
 ダイアンイングリッシュkarr2010-11-30
 【ネタバレ注意】
とにかく、面白い。 笑って、泣けて、惚れ惚れ出来る、近年稀に見る快作。 練りに練られたキャスティング。 それに見事応えた、芸達者な女優陣。 まさしく、女神たちの饗宴で・・・
続きを読む
とにかく、面白い。 笑って、泣けて、惚れ惚れ出来る、近年稀に見る快作。 練りに練られたキャスティング。 それに見事応えた、芸達者な女優陣。 まさしく、女神たちの饗宴である。 クロリスリーチマンは老境に入り、逆にますます愛らしい。長年培われた演技力には磨きがかかり、今満開の菜の花畑。 メグライアンは、往年の少女っぽさを取り戻し、本性をさらけ出す。その独特のセリフ回しは、洗練されたリズムを映画全体に与えてやまない。 徹頭徹尾「凛」とした、アネットベニング。絶え間ない努力の跡さえ感じさせない彼女からは、演じる楽しささえも伝わってきて、観ているものまで楽しくさせる。 キャンディスバーゲンも健在。その充実した演技力を目の当たりにし、感動さえ覚えた。 また、エヴァメンデスの弾けたコミカルアクトも特筆モノ。デブラメッシングも上手い。好感度大幅アップ。ベットミドラーも元気ハツラツ。キャリーフィッシャーは…、歳に勝てないタイプかな。 とにかく、すべての女優魂がぶつかり合い、そして融合した、華麗なる力作なのである。 もちろん忘れてならないのは、脚本の素晴らしさ。ウィットに富んだセリフが映画全体を覆い尽くし、思いやりや、本音と建て前、感情の動きを丁寧に浮かび上がらせる。 なんと言っても、自然さ、これが観ていて気持ちいいのである。 音楽もいい。 そして、会話などのリズム感がスピーディで心地いいのは、センスのいい編集の成せる技か。センスがいい、という曖昧な褒め方しか出来ない自分が情けないのだが、とにかく、センス、という言葉がピンと来る。 「女」ばかりの映画である。 「私が男だから」こんなにもこの映画に惚れ込んでいる、のではない。 という確証も無い。
隠す
  
 
[026]月に囚われた男
 発想だけの映画ではないkarr2010-11-26
 【ネタバレ注意】
他の自分に苛立ち、他の自分に怒り、他の自分を殴る。 他の自分に殴られ、殴り返す。 他の自分を哀れに思い、そして、他の自分の幸せを願う。自分の犠牲を惜しまないほどに。 ・・・
続きを読む
他の自分に苛立ち、他の自分に怒り、他の自分を殴る。 他の自分に殴られ、殴り返す。 他の自分を哀れに思い、そして、他の自分の幸せを願う。自分の犠牲を惜しまないほどに。 もちろん、他の自分とは他人であるが、自分と同じなのだ。 難解に聞こえるかもしれないが、実はこの映画、至極分かりやすいのである。 しかも、静かな感動を与えてくれるのだ。 卓越した発想力。 そのダンカンジョーンズの才能に父親の影を感じてしまうのは、まあ、彼に一生つきまとう天災のようなものであって、あきらめてもらうしかない。 なにはともあれ、その着実で丁寧な仕事ぶりを見ても、今後を期待せざるを得ない才能の持ち主である事は確かである。 実は、サム・ベルが二人になった時、不安がよぎった。 また、謎が謎を呼ぶ、難解な話になるんじゃないか、と。 だが、違った。 話が進むにつれ、次第に、人間の本質をえぐる鋭いテーマが首をもたげてきたではないか。 その意外性は、私の興味を最高潮に持ち上げ、その落としどころも申し分ない。 人間の尊厳、生命の意味、また、思いやりとは、他人の痛みを自分の痛みのように感じることが根本であるが、それを分かりやすい角度から切り込もうとするおしゃれな試み、クローン技術の行き過ぎに対する警告や、大企業の利潤追求の弊害、などの様々なテーマが次々と見る者に迫り来る。 SF映画では久々の名画である、と、そんな大それた発言をあえてしてみたい衝動に、私は突き動かされた。 ある夕べ。 「2001年宇宙の旅」をデビッドボウイと一緒に、ああだこうだ言いながら観ていたダンカンジョーンズ。 ふと、思いついた。 HALにもっと人間性を与えたら? 心優しいコンピューターっちゅうのもオモロいんちゃうか? そして、ガーティの誕生、…なのかどうかは、知るよしも無い。
隠す
  
 
[027]正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
 予想外の感動karr2010-11-22
 【ネタバレ注意】
移民に対するアメリカ政府の姿勢には、納得のいかない点も多々有るだろう。 だが、どこかしらで線を引かざるを得ない、という立場も分かる。 さて、我が国ではどうであろう。 ・・・
続きを読む
移民に対するアメリカ政府の姿勢には、納得のいかない点も多々有るだろう。 だが、どこかしらで線を引かざるを得ない、という立場も分かる。 さて、我が国ではどうであろう。 寛容の精神を尊ぶ日本人。移民を受け入れる際にこそ、この精神を忘れてはならない。 いや、寛容は日本人の特権、ぐらいに考えるべきなのかもしれない。 アメリカンドリーム。 その多くの望みは富である。 貧しくても愛さえあれば…というような慎ましやかな人達は、わざわざアメリカにまで行かないでしょう。 このあたりに、矛盾や不条理を生む要素が潜んでいそうだ。 一足先に移住する幸運を得た者が、おのれの利益の為に、その法律を厳しくし、甘くし、捻じ曲げるのだ。 パン食い競争よりもむごい。そもそもスタート地点が違うのである。 だが、答えを得ようとする映画ではない。 明らかに、こちらに投げつけて来る映画である。 クリフカーティスは相変わらずの存在感。最大の見せ場は、強盗に襲われた酒屋のシーンでのパフォーマンス。映画史に残る名演、と言っても過言ではない。 サマービシルは典型的な哀しみを大胆に表現し、観る者の心を掻きむしる。 そして、個性的名優の代表格レイリオッタが見事に演じ切った人間味溢れる判定官を筆頭に、それぞれの登場人物の描写がすさまじく深く、しかもその「多様性」は特筆に価する。 また、そんな登場人物たちが闊歩するエピソードの数々は、どれもウィットに富んでおり、衝撃的であり感動的である。 そしてなんと言っても、それらを見事に絡み合わせ、しかも細部を念入りにつなぎ合わせて一筋の太いドラマに仕上げてしまったウェインクレイマー、恐るべし!と感嘆せざるを得ない。 とにかく、すべての名優達の表情や仕草や語り口が、それぞれ重たいパンチと化し、やがて私を打ちのめした。 「スナッチ」のボクシングシーンを思い出して頂きたい。ブラピが宙に浮いて背中からマットに沈んだあのシーン。 あれこそ、今の私の姿です。
隠す
  
 
[028]バティニョールおじさん
 天下御免の肉屋さんkarr2010-11-22
 
涙、涙の映画ではない。 胸を、際限の無いぬくもりで満たしてくれる映画である。 ところで、我々はつい忘れがちである。 我々は、この戦争の結末を知っている。だが、当時の人・・・
続きを読む
涙、涙の映画ではない。 胸を、際限の無いぬくもりで満たしてくれる映画である。 ところで、我々はつい忘れがちである。 我々は、この戦争の結末を知っている。だが、当時の人々は、戦争がいつ終わり、どちらが勝ち、どれほどの被害が世界に及ぶのか、全く知らなかったという事実を、である。 なんと、ヒトラーの帝国が栄え続けるかも知れない、という時代に生きていたのだ。 そもそも、ヒトラーの実体すら暴かれていない時代なのである。我々が当然のように知っている事実も、この時代の当事者にしてみれば、ただの噂にすぎなかった。そんな中で、正気を保ち、良心を持ち続けることが如何に困難な事か、火を見るより明らかである。 また、歴史モノを鑑賞する姿勢として、無知な人々(時代の当事者たち)のもがく姿を、高み(我々の立ち位置)から見物するだけ、というのは、あまりにも悪趣味ではなかろうか。 何かを学び取りたいものである。 話が益々それそうなので、本編に戻します。 不器用を絵に描いたようなエドモンを演じるのは、器用を超越した才人・ジェラールジュニョ。ところがその風貌、誰の知り合いにも一人はいそうな感じの普通のどんくさい人なのである。 しかし、そのカッコ悪さは悲しすぎるほど愛らしく、その愛嬌は、ずば抜けていて尋常ではない。 まさしく、三枚目としての栄誉を担うべくして生まれてきた、選ばれし天才、である。 しかもその背中からは、ぬくもりの光線が、後光のように四方八方へと伸び縮みする。 それを拝めるだけで、それだけを堪能するだけで、すでに充分満足してしまっている自分がそこにいた。 学びなど、もう、どうでもよくなってしまった。
隠す
  
 
[029]ハート・ロッカー
 熱さと力強さkarr2010-11-19
 
麻薬のような弊害が戦争にはある、という事を冒頭に記し、「それを頭に置いてこの映画を見てね」という半分強制気味な姿勢にはちょっとたじろいだが、観てゆくにつれ、「なるほ・・・
続きを読む
麻薬のような弊害が戦争にはある、という事を冒頭に記し、「それを頭に置いてこの映画を見てね」という半分強制気味な姿勢にはちょっとたじろいだが、観てゆくにつれ、「なるほど、これが無いと、いろんな受け取り方をされてしまうだろうな」と、その苦肉の策的なあがき様が物悲しくもあり、納得せざるを得なかった。 プロフェッショナルというか匠の部分に焦点を当てていて、その見ごたえは充分。 あらゆる点において満足の出来る作品と言っていい。 要になるのはジェームズ軍曹の性格描写。本来の心優しい普通の性格と、工場で働く優れた技師や研究者のような、とことん突き詰めないと気が済まない性格と、そして、スター性に通じる確固たる自信を秘めた魅力ある性格、などを念入りに描く事によって、その多面性のある性格がいったい戦争によってどう変容してゆくのか?という我々の興味をそそる。 その興味に対する回答にも、特に不満は無い。欲を言えば、もう一ひねりあってもいいかな…ぐらい。 ジェレミーレナーも素晴らしい。 唯一気になったのは、エピソードの選び方。なぜか、そのエピソードそれぞれをリサーチする原作者と情報提供者の姿が頭をよぎってしまったのだ。実は、普段あまり無い事なので、あえて記すことにしたのだが、ただそれだけの話。実際はどうでもいい事なのかもしれない。 また、現代において、論争の的最上位に位置づけされるイラク戦争を題材に持って来たからには、それなりの覚悟はあったはず。観終わった時、それが充分に伝わったかと言えば、疑問が残る。 以前から気になってた事ではあるが、映画におけるメッセージとは何なんだろう? そもそも、そのメッセージを読み取る必要はあるのだろうか? 真のメッセージを探すことに無意味さを感じていながらも、なぜか探したくなってしまうという不思議さに気付いてしまった今日この頃である。
隠す
  
 
[030]ROME [ローマ]
 驚くべき大作karr2010-11-01
 
我々の歴史知識を喚起させ、一つの感情の動きが、一つの記憶の追加が、のちのちの出来事にどう結びつくのか、それを「予感させ続ける」脚本が、まず、素晴らしい。 理性と野性・・・
続きを読む
我々の歴史知識を喚起させ、一つの感情の動きが、一つの記憶の追加が、のちのちの出来事にどう結びつくのか、それを「予感させ続ける」脚本が、まず、素晴らしい。 理性と野性の境界線でもがく姿、暴かれる本性、家族、貴族と奴隷、あらゆる形のリスペクト、多神教と一神教、性欲、貴族の下で唱えられる民主主義、反射的なほどに敏感すぎるむき出しの心、マフィアの成り立ち、死と直結する剣、権力と金、疑惑と愛憎、などなど、このドラマの中で触れられているテーマを数え上げたら、まだまだキリが無い。 中でも、人間と人間の絆に関するテーマは印象深い。切っても切れない絆があれば、くもの糸ほどのもろい絆もある。だが、たった一つのささいな出来事がそれを逆転させる事もある。このドラマはそれらを丁寧に積み重ねるように描き、必然性を持たせ、物語を深いものに仕上げている。 また、独善的ではあるが、心地のよい緩急のつけ方も印象深い。焦点の当て所と、ぼかす所の選び方が変幻自在で、独特のリズムをかもし出している。 そして、すべての人物が、象徴的、個性的、印象的に描かれていて、改めて、日本と英語国との演技力の差を見せ付けられた気がした。演じる、という事に対する考え方自体が違うのかもしれない。国民性や文化、言語の違いなどの話になると話が長くなるのでやめます。 レイスティーブンソンの魅力をそのまま生かしたプッロを、一番の好漢として描いているのは言うまでもないが、微妙な役どころを見事に演じ切ったケヴィンマクキッドは、この作品で永遠に名を残す事となった。・・・私の中に、である。「レジェンド・オブ・サンダー」の名演と共に。余談だが、彼が最も、万人の持つローマ男の印象に近いのでは・・・。 事実に出来るだけ忠実に、という評をどこかで見聞きしたが、実際、2000年以上前の事実が分かる訳がない。 だから見る側は、その方針が単なる製作側の意図にすぎない、という事を認識すべきである。 事実の断片を強引につなぎ合わすのが歴史ドラマを作る者の使命なのだ。 そうして出来上がったものは、事実で無い可能性のほうがはるかに高い。 たった今起こった出来事を文章にする場合でさえ、表面上の結果を記す事はできても、そこに完全な事実を記す事はほとんど不可能なのだ。思惑や偶然や無意識などの無限の要素が邪魔をする。 だが、逆に言えばこの物語が事実で無いとも言い切れないのである。不思議にも、私は今、ヴォレヌスとプッロの存在を信じ始めているのだ。 結局何が言いたいかというと、この、歴史的事実を基にしたドラマが、最高に面白かったという事実。 この事実に嘘は無い。 だが、歴史的事実を基にしているためか、ストーリーテラーや製作側の気力の衰えか、その原因は定かではないが、終盤に向かって逆にドラマが狭まっていった感は否めない。 中盤までのドラマの膨らみ方がハンパじゃなかった分、期待が膨らみすぎたとも考えられる。 なんにせよ、その点だけは残念だが、それにしても、すでに語られ尽くされた歴史物語を、これほど壮大で魅力溢れるドラマに仕上げた腕は見事としか言いようが無い。 思い切った解釈や、新たに付け加えたエピソードの数々も遊び心が溢れていて、決して飽きさせられる事はない。 ケチをつけようとはしたものの、やはりどうあがいてもこのドラマは、多くの点において、傑作なのである。
隠す
  
 
 1 2 3 4 5次へ
 
 



【スポンサーリンク】



allcinema SELECTION

allcinema SELECTION