allcinema ONLINE オールシネマ 映画&DVDデータベース
検索オプション

投稿されたユーザーコメント
 
 「verkhovensky」さんのコメント一覧 登録数(120件)rss
 コメント題投稿者投稿日
[001]シン・ゴジラ
 特撮の出来は最高verkhovensky2016-08-06
 
特撮は文句なしです。3回見せ場がありますがいづれもよく撮れてをり、特に自衛隊のヘリ・戦車・ロケット砲・戦闘機による多摩川の攻撃場面は、無類の迫力です。最高の出来とい・・・
続きを読む
特撮は文句なしです。3回見せ場がありますがいづれもよく撮れてをり、特に自衛隊のヘリ・戦車・ロケット砲・戦闘機による多摩川の攻撃場面は、無類の迫力です。最高の出来といつていいでせう。新しい怪獣映画を見た、といふ感じがあります。 道路から砲撃してゐたこれまでの作品と違ひ、広い河川敷に戦車を並べて一斉射撃してゐたのがなるほどと思ひました。そりやさうですよね。 ヘリや戦闘機の交信の締めくくりに「オクレ(送れ?)」と言つてゐるのも、私には意味がわかりませんでしたが、臨場感があつて大変結構でした。自衛隊の全面的協力のたまものでせう。これだけ自衛隊のイメージアップを目指した映画を見ると、時の流れを感じますな。共産党どのは苦虫を噛み潰してゐらつしやることでせう。 ドラマの方は…いろいろ工夫し、スピーディーなたたみかけるやうな展開を狙つて編集したのは結構ですが、努力賞、といつたところでせう。どうしてかう判で捺したやうにわかりきつた新味のない風刺や当てつけを入れたがるんでせうねえ。お金の問題でこれ以上特撮は増やせないからなんでせうな。 よその国でも上映するさうですが、ヒロインさんの英語の発音は、子供のころ日本で暮らしてゐたことにしておいた方がよかつたですなあ。
隠す
  
 
[002]007 スペクター
 James Bond will returnverkhovensky2015-12-10
 
クリストフ・ヴァルツのブロフェルドは歴代で一番いいと思ふ。 ラストの描写からみて、製作側は、今後「悲劇と復讐」を視野に入れてゐるのではないか。ならば今回の主役3人は・・・
続きを読む
クリストフ・ヴァルツのブロフェルドは歴代で一番いいと思ふ。 ラストの描写からみて、製作側は、今後「悲劇と復讐」を視野に入れてゐるのではないか。ならば今回の主役3人は適役だから続投してほしいもの。特に、旧ボンドがいい加減に片づけてしまつた「復讐」を、しつかりやつてくれるとうれしい。それが原作回帰で再度の日本ロケにつながつたらいふことなし。
隠す
  
 
[003]FARGO/ファーゴ
 余韻が冷めたらまた見ませうverkhovensky2014-12-27
 【ネタバレ注意】
観終はるのが大変勿体なく感じた十話。血も凍るといふ形容がぴつたりの傑作です。 主人公の殺し屋の造形がしつかりしてをり、凄味を感じます。映画版の「ファーゴ」にも、「ノ・・・
続きを読む
観終はるのが大変勿体なく感じた十話。血も凍るといふ形容がぴつたりの傑作です。 主人公の殺し屋の造形がしつかりしてをり、凄味を感じます。映画版の「ファーゴ」にも、「ノー・カントリー」にも、とんでもない怪物が出てきますが、あの二人はたいして意味のある台詞を喋らないので、私には、いつてしまへば冷酷無慚な殺人を重ねるだけの木偶人形にしか見えませんでした。が、このテレビシリーズのローン・マルヴォは、豊富な台詞を振られて悪魔のやうな心がよく浮き出てをり、また無関係な人間に底意地の悪いいたづらを仕掛けたり、あざとい嫌味をいつたりする描写の積み重ねが利いてゐます。 そしてもう一方のアンチ・ヒーローである保険屋も、映画版の自動車販売セールスマンと同様の風采・性格から出発しながら、やがて悪徳の齎した成功に味をしめてゆく有様が小気味いい。彼もまた一種の怪物へと変貌してゆく過程が、この物語の芯となつてゐるのです。 このバケモノ同士が一戦交える最終話のクライマックスは見ものです。巧みな小道具の使ひ方に感嘆しました。 いくらなんでも一人の男が長年にわたつてあんなに殺せるわけはないでせうが、そこは大目に見るといたしませう。 映画同様妊婦となる警官と、彼女を支へ、最後に大役を務める郵便配達人も、両俳優がよくやつてゐます。コリン・ハンクスがトムさんの息子であることは迂闊にも知りませんでしたが、ひよつとして親よりうまいのではとすら思ひました。
隠す
  
 
[004]モンスター・ホテル
 ハマーフィルムで育つた者としてはverkhovensky2014-02-09
 
CATVでたまたまかかつてゐたのを、あ、これはドラキュラだなと気が付き変へずに観てゐたら、かはいらしいドラキュラの娘やフランケンシュタインや狼男や透明人間やその他大勢の・・・
続きを読む
CATVでたまたまかかつてゐたのを、あ、これはドラキュラだなと気が付き変へずに観てゐたら、かはいらしいドラキュラの娘やフランケンシュタインや狼男や透明人間やその他大勢の怪物が現れドタバタ喜劇を展開し…西洋お化けがかつて大好きだつた私には、実に愉快で綺麗なアニメでした。よく出来てゐると思ひます。日本では受けなかつたんですか。残念ですね。私は真面目くさつた宮崎アニメなんか見るよりよほど楽しいと思ひますがね。
隠す
  
 
[005]キャプテン・フィリップス
 実録ものを作らせたら右に出る監督なしverkhovensky2013-12-29
 【ネタバレ注意】
アフリカ沖に海賊が出るといふのは新聞では知つてゐたが、へえ、こんな具合に貨物船を乗つ取るんですな。それだけでも面白い映画。 もちろんそれだけぢやない。「ユナイテッド・・・
続きを読む
アフリカ沖に海賊が出るといふのは新聞では知つてゐたが、へえ、こんな具合に貨物船を乗つ取るんですな。それだけでも面白い映画。 もちろんそれだけぢやない。「ユナイテッド93」同様の迫真の画面。2時間半目が離せませんでした。 それにしても遙かアフリカ沖で、木の葉のごとき救命艇一艘を、空母を含む軍艦3隻で追ひかけて、周到な作戦と鮮やかな手際で、ワンチャンスをとらへて海賊3人を射殺し人質を救ひ、4年後にこんな映画を作つて儲けるアメリカの国力には恐れ入る。 ラストも大変よい。きちんと取材し演出したのだらう。いかにもプロフェッショナルの問診。かういふディテールこそ、グリーングラス監督作品の魅力。 トム・ハンクスでなく無名の俳優を使つたら、いよいよ作り物であることを忘れたらうにと思つたくらゐ。
隠す
  
 
[006]ゼロ・ダーク・サーティ
 オバマ大統領が作戦に見入る写真を思ひ出すverkhovensky2013-02-28
 
私は21世紀の映画中、その新しさと出来の良さで一番感服したのは、今のところ「ハート・ロッカー」です。そしてこの「ゼロ・ダーク・サーティ」は勝るとも劣らぬ傑作です。  ・・・
続きを読む
私は21世紀の映画中、その新しさと出来の良さで一番感服したのは、今のところ「ハート・ロッカー」です。そしてこの「ゼロ・ダーク・サーティ」は勝るとも劣らぬ傑作です。  アカデミー賞を取つた「アルゴ」は、悪くはないが、ラストの空港の追ひつ追はれつが、いかにも無理やりこじつけたクライマックスに見えるので、私はあんまり評価しません。それにひきかへ、「ゼロ・ダーク・サーティ」の奇襲の場面は何とよく撮れてゐることでせう。もつと派手な、飛んだり跳ねたり吹つ飛ばしたりのアクション映画より断然迫力があります。通信員特定からビンラーディンの邸発見のシークエンスも大変優れてゐます。 拷問も含め追跡の全貌がわかるやうになつてをり、とつてつけた批評がなく、感傷も最小限。あれだけの困難な仕事だつたのだから、ヒロインが最後に涙を見せるのは人間として自然です。政治的な意味などありません。 復讐に燃えたアメリカ側だけを描いてゐるのですから、さういふ視点しか現れないのは当たり前で、むしろビグロー監督は、なるべく一方的にならないやう抑制してゐるのです。 「ユナイテッド93」と併せ必見の名作であります。
隠す
  
 
[007]レ・ミゼラブル
 こんなに赤い旗が閃く米映画は初めてverkhovensky2013-01-28
 
私はミュージカルが大嫌ひです。普通に台詞を喋つてゐるところで突然歌ひ出されると、気は確かかねと言ひたくなつてしまふ無粋者です。 ところがこの映画によつて生まれて初め・・・
続きを読む
私はミュージカルが大嫌ひです。普通に台詞を喋つてゐるところで突然歌ひ出されると、気は確かかねと言ひたくなつてしまふ無粋者です。 ところがこの映画によつて生まれて初めて、ミュージカルに感動しました。映画ならではの撮影と編集の技巧を駆使し、素晴らしい効果を上げてゐます。クライマックスのバリケードの攻防戦が迫力たつぷりに撮れてゐます。何より台詞が全部歌であるのがよい。オペラを見てゐるやうなものです。 歌唱そのものは物足りません。特に出番の多いラッセル・クロウは、ちと痛々しくなつてしまひました。 話はいかにも19世紀の波瀾万丈小説です。しかしご都合主義の筋立ての中に、感情の機微や倫理の相剋がよく描かれてゐると思ひます。ポランスキーによる「オリバー・ツイスト」を見たとき、誇張された諷刺の蔭にディケンズの苦い人間観察が見えて感心したものですが、あの域には達してゐないものの、「ジャン・ヴァルジャン物語」を改めて読んでみたくなる出来です。
隠す
  
 
[008]隠し砦の三悪人
 会社が気の毒verkhovensky2012-12-29
 
陥落した城で捕虜に金を探させる場面の凄いセットと、石段を駆け下りる大勢のエキストラ。隠し砦の岩場の撮影もさぞかし危険だつたことだらう。火祭りも随分な手間のかかりやう・・・
続きを読む
陥落した城で捕虜に金を探させる場面の凄いセットと、石段を駆け下りる大勢のエキストラ。隠し砦の岩場の撮影もさぞかし危険だつたことだらう。火祭りも随分な手間のかかりやうである....。 アナログ時代にこんな映画を作らされては、音を上げるのも無理はない。いくらなんでも度が過ぎてゐる。とくに冒頭の捕虜の叛乱は、もつと簡単に描いたつて劇的には問題ないはずである。私は当時の東宝に同情する。この頃から黒澤は病膏肓に入つてきたのである。その行き着いた先が、調度品や衣装といつたディテールばかり凝つて中身は無意味な「影武者」と「乱」である。
隠す
  
 
[009]おとし穴
 かういふ野心的・冒険的映画をもつと観たいverkhovensky2012-07-01
 
撮影も音楽もよく、アイディアも抜群。大変魅力のある作品。 瑕を挙げれば、,擦弔くの幽霊(全く、この映画の一番面白いところなのだが)が、劇的には怨みつらみを述べるほ・・・
続きを読む
撮影も音楽もよく、アイディアも抜群。大変魅力のある作品。 瑕を挙げれば、,擦弔くの幽霊(全く、この映画の一番面白いところなのだが)が、劇的には怨みつらみを述べるほか、たいした意味を持つてゐないこと∋匐,梁減澆、これも劇的には何の役割も果たしてゐないこと巡査が逃げ出す必然性が感じられないこと(どうして犯人を捕まへない)。 でも前衛の時代・60年代の郷愁をいやが上にも高める貴重な映画。
隠す
  
 
[010]おとなのけんか
 もつと金のかかる作品を撮らせてあげたいverkhovensky2012-02-28
 
スーダン・ダルフールの凄惨な殺し合ひに比べ、欧米人は自分たちの文化の優越性を信じてゐるかもしれないが、あんたたちだつて知性と教養とハイテクの衣を剥ぎとれば、敵意と憎・・・
続きを読む
スーダン・ダルフールの凄惨な殺し合ひに比べ、欧米人は自分たちの文化の優越性を信じてゐるかもしれないが、あんたたちだつて知性と教養とハイテクの衣を剥ぎとれば、敵意と憎悪と破壊の衝動を暴露するのさ、といふ皮肉である。まあその意図だけで成り立つたコント。 人間の性善などこれつぽちも信じてゐないポランスキーの毒々しい世界観は、70を過ぎた今も健在。それはそれで結構であり、作品もきちんと出来上がつてゐるが、所詮小品。 ヨーロッパは経済危機により、映画製作がままならぬことだらう。ああ、早く自由自在に撮れる環境になればよいが。残された時間はどのくらゐか。
隠す
  
 
[011]霧の旗
 これほどの女優を…verkhovensky2012-01-18
 
倍賞千恵子は御覧の通り、発声もセリフ回しも表現も、抜群の才能を持つ女優でした。それが結句、代表作といへば「さくら」を始めとする、山田洋次のセンチメンタル映画の数本だ・・・
続きを読む
倍賞千恵子は御覧の通り、発声もセリフ回しも表現も、抜群の才能を持つ女優でした。それが結句、代表作といへば「さくら」を始めとする、山田洋次のセンチメンタル映画の数本だけに終はるとは....。単純素朴なありきたりの善人役なんかほどほどにして、もつともつと、かういふ悪女はもちろん、陰影のある役に挑戦するべきだつたのです。残念でなりません。
隠す
  
 
[012]猿の惑星:創世記(ジェネシス)
 シリーズを知らない方は、次は旧第一作をverkhovensky2011-10-12
 【ネタバレ注意】
旧五部作および第一作のリメイクを見てゐる者には、何の驚きもないので、まあがつかりしなかつただけよし、といふところです。クライマックスの戦ひでは、確かに猿がヒトなみの・・・
続きを読む
旧五部作および第一作のリメイクを見てゐる者には、何の驚きもないので、まあがつかりしなかつただけよし、といふところです。クライマックスの戦ひでは、確かに猿がヒトなみの知能を持つたら、人間に勝ち目はないだらうなあと思ひました。旧作を見てゐない若い人には、いい入門編でせう。 下の方たちもいろいろ見つけていらつしやいますが、飼育係が第一作をテレビで見てゐたり、bright eyesがシーザーの母の綽名だつたり、AFI選定・名台詞の66位に入つたget your stinking paws off me, you dirty ape!が使はれてゐたり、と旧作ファンへのサービスがふんだんにあります。 意見。 1、このラストは、ウイルスによつて人間が淘汰されることを示してゐると思ひます。 2、タイムマシンがなくなつたのですから、「3」+「4」のリメイクといへるのでは。
隠す
  
 
[013]TAXI NY
 これがかの名高き映画(のリメイク)かverkhovensky2011-09-05
 
ひまつぶしにテレビのチャンネルをつけ放しにしてゐたら、なかなかいい筋立てで面白く、特に強盗のトリックを明かす展開のうまさが気に入り、最後まで見てしまひました。見終は・・・
続きを読む
ひまつぶしにテレビのチャンネルをつけ放しにしてゐたら、なかなかいい筋立てで面白く、特に強盗のトリックを明かす展開のうまさが気に入り、最後まで見てしまひました。見終はつてから、あの有名なフランス映画のリメイクなのか、と今更ながら知り、オリジナルに興味を持つた次第です。 一般的に、両方見るなら、リメイクを見てからオリジナルを見るのが楽しむコツです。原作と映画の場合も、両方鑑賞するなら、映画を見てから原作を読むことをお奨めします。
隠す
  
 
[014]深夜の告白
 期待にたがはずverkhovensky2011-09-05
 
ウディ・アレンやブライアン・デ・パルマが自作に引用するなど、評判が高いこの作品を、やつと見ました。さすがに古臭いんぢやないかと、おつかなびつくりだつたのですが、抜群・・・
続きを読む
ウディ・アレンやブライアン・デ・パルマが自作に引用するなど、評判が高いこの作品を、やつと見ました。さすがに古臭いんぢやないかと、おつかなびつくりだつたのですが、抜群の脚本で、満足しました。保険屋が、わかつてゐながら悪事に引きずりこまれる展開がきちんと出来てゐますし、登場人物全員が、ニノといふ端役に至るまで、劇的な意味を担つてゐます。私にとつては「情婦」「翼よ!あれが巴里の灯だ」「フロント・ページ」と並び、ワイルダー作品のお気に入りになるでせう。(「お熱いのがお好き」と「アパートの鍵貸します」はそんなに好きぢやないのです。「サンセット大通り」は中身を忘れました)
隠す
  
 
[015]サマータイムマシン・ブルース
 辻褄あはせが楽しいverkhovensky2011-09-05
 
舞台中継を先に見て、内容を知つてゐましたが、「12人の優しい日本人」同様、きれいにまとめて映像にしたな、と思ひました。 舞台にはタイムマシンを作る(のかもしれない)・・・
続きを読む
舞台中継を先に見て、内容を知つてゐましたが、「12人の優しい日本人」同様、きれいにまとめて映像にしたな、と思ひました。 舞台にはタイムマシンを作る(のかもしれない)「助手」は出てこず、その点で因果律がより強固になりました。また、やはりタイムマシンの実際の映像があつた方が面白いし、「コンビニもない」田舎町の風景もいいです。冒頭のいくつかの思はせぶりなショットや、上下の画面分割も効果的です。 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のたはいないパロディとはいへ、舞台脚本らしい辻褄あはせ(私はかういふ形式感が好ましいですね)と、学生時代の気楽さを懐かしく楽しめる佳作です。 私は数々の一流俳優の演技を見てきましたが、この内容ならこの演技で十分だと思ひます。特にけなすほどのことはありません。
隠す
  
 
[016]ブラック・スワン
 幕切れまで踊れないとは思つたがverkhovensky2011-05-16
 
アイディアはポランスキーの「反撥」「テナント」と同じです。ポランスキー・ファンの私にとつては、その分展開に驚きがありませんでした。妄想描写も本家とよく似てゐます。帰・・・
続きを読む
アイディアはポランスキーの「反撥」「テナント」と同じです。ポランスキー・ファンの私にとつては、その分展開に驚きがありませんでした。妄想描写も本家とよく似てゐます。帰つてウィキペディアを観たら、監督自身、この2作に大きな影響を受けた、と公にしてゐるとのことでした。まあ同工異曲はよくあることですので、それなりにホラータッチを楽しみました。 が、ポランスキーの2作は日本ではさほど有名でないでせうから(「テナント」は日本盤DVDが出てをりません)、たいていの日本人にとつては、「ブラック・スワン」はオリジナル同然でせう。 それにポランスキーのは救ひやうのない陰気な話ですが、「ブラック・スワン」は「白鳥の湖」をドラマに取り入れた分、より見せ場の多い娯楽映画に仕上がつてをります。この監督は前作「レスラー」といひ、優秀なテクニックを持つてゐます。今後も期待したいところです。ナタリー・ポートマンも文句なしです。
隠す
  
 
[017]罪と罰
 これで済ませてもよい映像化verkhovensky2011-05-15
 
リーマン・ショックで景気が落ち込む直前、ロシアのテレビは、ドストエフスキーの長篇を次々とドラマ化し、「白痴」「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」が実現してをります。 あ・・・
続きを読む
リーマン・ショックで景気が落ち込む直前、ロシアのテレビは、ドストエフスキーの長篇を次々とドラマ化し、「白痴」「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」が実現してをります。 あの長大な原作を今更読めやしないが、どんなものだか知つておきたい、といふ方に、このドラマはお奨めです。省略はありますが、忠実に原作を再現してをります。これぞドストエフスキーです。制作費も相当なものでせう。19世紀ロシアの社会・風俗の詳細な描写に、私は感激しました。 「非凡人は凡人を排除する権利がある」といふ思想に取り憑かれ、自分が非凡人であることを証明せんがために殺人を実行するが、「やつてしまつてからおまへは資格なしといはれた」、さういふ袋小路に陥つたキチガヒの、悪夢の彷徨を描いたのがこの小説です。 世界文学の頂点に位する名作ですが、「カラマーゾフ」ほどには完璧ではありません。余計な場面や、効果の挙がつてゐない描写が随分あります。マルメラードフ一家の受難とルージンの小細工などは、ダレ場といつていいでせう。しかしここに詰め込まれた素材の意義は、現代でも全く普遍的です。詰まらない場面でも、少々我慢し、ぜひ最後まで見届けてください。 見せ場は予審判事ポルフィーリーとの三度の対決。ポルフィーリーは刑事コロンボのモデルださうです。 ラスコーリニコフの焦燥が募る後半、ドストエフスキーは、怪物スヴィドリガイロフの描写に熱中します。「あの世とは、人が想像するやうな広大なところではなく、狭い部屋のやうなものかも知れません。そしてその中は、蜘蛛の巣でいつぱいなのかもしれませんよ」。演じる俳優が雰囲気たつぷりです。売春婦ソーニャとスヴィドリガイロフは、自白か、それとも心に地獄を抱いたまま進み続けるか、二つに引き裂かれたラスコーリニコフの葛藤の象徴となつてをります。ラスコーリニコフとの最後の問答がやや省略されてしまつたのが残念です。 スヴィドリガイロフの自殺を知り、まだ踏ん張れると思つて警察を出るが、待ち構へてゐたソーニャを見つけ、「笑みを浮かべて」舞ひ戻り、一気呵成にぶちまける名場面の感銘は、原作そのままです。 ただしラスコーリニコフは、ソーニャの心の美しさに打たれて悔い改めた、のではありません。彼は最後まで、反省などしてゐません。自分の思想の正しさを疑つてゐないのです。自首したのは単なる偶然、綱の上でバランスを崩し、たまたま一方に落ちたに過ぎない。さういふドストエフスキーの残酷な慧眼を、製作者はきちんと汲んで描いてをります。これほどのレベルの映像化に感謝あるのみです。
隠す
  
 
[018]どん底
 黒澤の本質verkhovensky2011-03-21
 
「どん底」を読む人はあまりゐないだらうと思ひますが、ジャン・ルノワールの映画は原作と全然違ひます。黒澤はほぼ忠実です。香川京子の行動はゴーリキーの書いた通りです。黒・・・
続きを読む
「どん底」を読む人はあまりゐないだらうと思ひますが、ジャン・ルノワールの映画は原作と全然違ひます。黒澤はほぼ忠実です。香川京子の行動はゴーリキーの書いた通りです。黒澤がひねつたのではありません。 ただし黒澤はディテールは全部原作に従ひながら、たつたひとつ、重大な変更を行つてをります。巡礼ルカ(左卜全)の嘘の慰めは、結局泥棒(三船敏郎)も恋人(香川)も役者(藤原釜足)も救へない。そして第四幕でサーチン(三井弘次)は、真実こそが大切なんだと高らかに宣言する。それがこの劇の眼目なのですが、御覧の通り、黒澤はサーチンの演説をまるごと省略してしまひました。つまり彼は外見と構造をそのままにしながら、主題を、哲学を抜いてしまつたのであります。 全く、この映画は黒澤の特徴を如実に示してをります。彼は抜群の画面を作る名監督であり、徹頭徹尾、視覚の人です。そして思想はゼロに等しい。「どん底」を江戸時代の長屋に移して、自由と真実の主題はうつちやらかし(喜三郎がそんな台詞を言ひ出したら滑稽もいいところです)、たいして面白くもない筋を元に、見てくれだけは重厚な映画を作るなんて芸当をやつてのけるのは、実に天真爛漫で、無邪気極まり、天晴れとしか言ひやうがありませぬ。
隠す
  
 
[019]浪花の恋の物語
 必ず光の当たる日が来るverkhovensky2011-02-20
 
2、30年ぶりに再見し、こんなに素晴らしい作品だつたのかと驚いてしまひました。埋もれた日本映画の至宝であります。将来外国人に発見され、それから日本人が崇め奉ることに・・・
続きを読む
2、30年ぶりに再見し、こんなに素晴らしい作品だつたのかと驚いてしまひました。埋もれた日本映画の至宝であります。将来外国人に発見され、それから日本人が崇め奉ることになつたら恥づかしい話であります。 今更近松の封印切〜心中物語が劇的に面白いのではありません。それが証拠に、本筋の事件と、それを浄瑠璃に仕組む作者との二重構造にしてゐるのは、恐らくさうしなければ上映時間が持たなかつたからであります。そして義理がどうの封建制がどうのといふ教科書的講釈も、本当のところは誰も真面目にとつてはゐないでせう。「内容」を重視する方に物足りないのは当然です。 では何がよいのか。「外見」です。御覧ください、この美しさ!単なる構図ばかりではありません。絢爛たる衣裳や豪華な調度品だけでもありません。ここには遊郭と大阪商人の生活様式・立ち居振る舞ひ・行儀作法・心遣ひ・数寄・風流・銭のやりとりなど、日本文化のある断面・形態・姿が徹底的に描きこまれてをります。 梅川が懐紙を裂いて手当してやる少女の皸、女主人に呼ばれた忠兵衛が、いつたん遥か彼方にかしこまり、直ちに座敷を突つきりはせず、外の廊下を伝つてやつてくるまはりくどさ、大勢の旅人が肩に担がれて川を行き交ふ風景、奉公の子供たちが掃除をする朝の遊郭、義太夫をうなる大尽、身請けを巡る争ひ、人形浄瑠璃の上演......内田監督はあらゆる場面で、「和」の描写に熱中してをります。 近松のころの人形は三人遣ひでなく一人だつたさうですし、台詞にいたつてはもちろん現代語で、時代考証が正確であるかどうかは知りません。しかし架空かもしれないが、ここまである種の美の典型を作り出した映画があるでせうか。 しかも錦之助と有馬稲子の素晴らしいこと。錦之助は、これより後の「宮本武蔵」やTV時代劇の、やや大げさな演技しか私は知らず、段違ひの繊細な口舌と表情に感嘆しました。 近松といへば篠田正浩の「心中天網島」がありますが、この充実した画面を見たあとでは、あれは所詮「思ひつき」の映画であることを免れません。吉右衛門と岩下志麻も、到底錦之助たちに及びません。 内田吐夢は黒澤・溝口・小津の後塵を拝してゐる観がありますが、我々がもつと伝統文化を深く理解してゐるならば、あるいは評価は逆転するのではないでせうか。
隠す
  
 
[020]二十四の瞳
 今更ながらの鑑賞verkhovensky2011-02-11
 
お涙頂戴の先入観が邪魔して今の今まで逃げてゐた「二十四の瞳」をつひに見た。先入観通りの映画だつた。そして存分に泣いた。 周知の通り、昭和29年度のキネ旬ベストテンは・・・
続きを読む
お涙頂戴の先入観が邪魔して今の今まで逃げてゐた「二十四の瞳」をつひに見た。先入観通りの映画だつた。そして存分に泣いた。 周知の通り、昭和29年度のキネ旬ベストテンは1位が本作品であり、3位が「七人の侍」である。今や知名度は後者の方が遥かに高い。が、私は当時のランキングの理由がわかつた。この作品はとりわけ終盤において、敗戦前後の日本人のみじめさ、悔しさ、やるせなさをよく写し取つてをり、初公開のころは、誰もがその気持ちを忘れてゐなかつたのだらう。やがて、「七人の侍」の後塵を拝するやうになつたのは、世の中が悲しみを忘れ去つていつたためであらう。 若い人も見てみるといい。日本の風景が風俗が文化が教育が人間関係が、この六十数年でどれだけ変はつたか、如実に知らしめる作品である。 数々の唱歌も貴重。何より無伴奏であるのがよい。今どきの録音は安つぽいストリングスつきで聴くに堪へない。 ラストは写真を見せないのが技巧である。
隠す
  
 
[021]ザ・パシフィック
 太平洋戦争を描いた最高のドラマverkhovensky2010-07-25
 【ネタバレ注意】
ヤンキーとジャップの憎悪のぶつかりあひの果てが、原爆投下だつた。太平洋戦争をここまで精細に描いた作品は過去になからうと思ふ。日本側からもいつか、誰か作れないものだら・・・
続きを読む
ヤンキーとジャップの憎悪のぶつかりあひの果てが、原爆投下だつた。太平洋戦争をここまで精細に描いた作品は過去になからうと思ふ。日本側からもいつか、誰か作れないものだらうか。 第1話。ガダルカナル前篇。第1海兵師団の上陸。アリゲータービーチに於ける日本軍の夜襲。手榴弾で道連れ自決する負傷兵。生き残つた日本兵をなぶる米兵。 第2話。ガダルカナル後篇。ヘンダーソン飛行場を巡る激闘。突撃しつづける日本兵を殺しまくるジョン・バジロンの機関銃。 第3話。オーストラリア・メルボルンでの休息。ちよつとロバート・レッキーの記録は、眉唾なところがありさうだが。 第4話。前線に戻る兵隊。精神の変調や自殺。レッキーの夜尿症。 第5話。ペリリュー島に上陸するユージーン・スレッジとレッキー。頑強に抵抗する日本軍。 第6話。ペリリュー島中篇。日本軍の砲火の中、飛行場を突つ切る米軍。プライベート・ライアンを凌ぐ凄まじい場面。野営中悲鳴が止まらなくなり、仲間にスコップで殴り殺される兵士。負傷したレッキーの帰国。 第7話。ペリリュー島後篇。岩山に潜み、どこから飛び出して来るか知れぬ日本軍との死闘。死んでゆく仲間。前線離脱。 ユージーン・スレッジの原作をもとにした5〜7話は大変優れた出来栄え。戦闘の撮影もさることながら、ユージーンと行動を共にするスナフ一等兵の描写が傑出。日本兵の死骸から金歯をかきとつたり、下半分がお椀のやうに残つた頭を目掛けて小石をはふつたりするかと思へば、緊張する仲間にタバコを分けてやるなど、野獣と人間があつけらかんと共存する奇怪な男で、アメリカ映画ではお目にかかつたことのないタイプ。 さつきまで口を利いてゐた仲間が、突然弾丸に射ち抜かれ、何も言ひ残さずに動かなくなる。偵察に出た隊長が、銃声が数発聞こえた後、担架に載せられた骸となつて戻り、呆然とする部下の前を通り過ぎる。 ユージーンの方が、レッキーより観察が鋭いのだらう。 第8話。硫黄島。ジョン・バジロンはガダルカナルの戦ひで武勲を立て勲章をもらつた英雄である。彼の人間像は、関係者の証言から構成したもので、綺麗事の感を免れない。また硫黄島はイーストウッドが先ごろ映画化したばかりなので、戦闘場面は最後だけ。 第9話。そしてユージーンが沖縄に。蛆の湧く死体が散乱する、泥の墓場を這ひ回る海兵隊員の目的はただひとつ、ジャップを皆殺しにすること。ここまで行つた戦争映画はない。 第10話。帰還したロバート・レッキーとユージーン・スレッジ。レッキーはすいすい生活に溶け込み、向かひの家の女性とデートにこぎつけるが、ユージーンは魘され、パーティーを楽しめず、父と鳩撃ちに出かけ銃を持つと泣き崩れる。寝転んで花を日に翳し、斜面を登つてゆくラストが素晴らしい。 ユージーンの寝てゐる間にスナフは列車を降り立つた。以後35年、彼は海兵隊の誰とも連絡をとらなかつた。あんな滅茶苦茶な人間とつきあはうと思ふ者はなかつただらうが、葬式にはユージーンが参列した由。(追記:テレビでは残虐行為がみなスナフの仕業になつてゐるが、原作は行為者を曖昧にぼかしてゐる) 7ヶ月の新婚生活。バジロン未亡人のバジロン家訪問。  追記:ユージーンの原作に、ダイナマイトを腹に巻いた女性の自爆攻撃はない。しかし私は、この創作はよしと考へる。一億国民は竹槍脇挟んで本土決戦ー玉砕の決意を固めつつあつたのだ。これくらゐやりかねなかつたのではないか?今の目で見れば卑怯とも非人間的とも感じ、日本人を侮辱してゐると思ふだらうが、もしこれが実際に行はれたとして、当時の国民は我々のやうに感じたであらうか?卑怯どころか、よくやつた、彼女に続けと思ひはしないであらうか?少なくとも兵隊は、神風特攻隊などといふすさまじい戦法を実地に移し、あるいは敵の救護兵に助けられながら、手榴弾で道連れにし、それをみな当然視してゐた。女性が赤子を囮にテロを敢行して、果たしてどれほど気が咎めるであらうか?どうせ玉砕するならかまはぬではないか?アル・カーイダを見よ。彼らは、どんな手を使はうと決して恥ぢぬ。みんなアメリカが悪いのだといふであらう。  また、残虐行為は日本もアメリカもお互ひさまだ。このドラマはその扱ひは公平で、スナフの石投げなど鬼畜の所業をちやんと描いてゐる(原作は実行者を伏せてある)。私は、日米両方の反応にいろいろ配慮した製作者の苦心を感じる。よくここまで描いてくれたと思ふ。
隠す
  
 
[022]告白
 妄想過剰verkhovensky2010-06-20
 
私はこの監督は初めてです。冒頭、なかなか気取つた撮り方で期待しました。筋もいろいろ考へられてをりました。最後はいいアイディアのどんでん返しです。しかし、あれこれ事件・・・
続きを読む
私はこの監督は初めてです。冒頭、なかなか気取つた撮り方で期待しました。筋もいろいろ考へられてをりました。最後はいいアイディアのどんでん返しです。しかし、あれこれ事件を盛り込みすぎで、進行につれ絵空事の感が強くなり、冷めてしまひました。女生徒のエピソードは省いてもいいのではないでせうか。 少年少女といふのは妄想を現実化する存在ですが、この映画は彼らの体質に付き合ひすぎといふところです。 最後の場面は教師が追ひかけるショットを入れた以上、円の中に誰も入つてこないのでは、不自然になつてしまひます。 松たか子は「隠し剣」「有頂天ホテル」舞台の「二人の夫と私の事情」と見てきましたが、この3本に比べ甚だ悪い出来です。ほとんど棒読み状態です。所詮頭の中でこしらへたに過ぎないリアリティのない役なので、消化できなかつたものと思はれます。
隠す
  
 
[023]サンダーボルト
 西部の空が美しいverkhovensky2010-06-13
 
初公開以来36年ぶりに再見しました。銀行強盗の主筋と20ミリ機関砲、俳優として脂ののつたころのクリント・イーストウッドが表向きの売りでせうが、アメリカの労働者階級の下品・・・
続きを読む
初公開以来36年ぶりに再見しました。銀行強盗の主筋と20ミリ機関砲、俳優として脂ののつたころのクリント・イーストウッドが表向きの売りでせうが、アメリカの労働者階級の下品な会話・生態、それにディア・ハンターに通じる風景描写の詩情が隠れた見所で、同工異曲の凡百の映画と一線を画してをり、評価の高いのがうなづけます。 中でも、ヒッチハイクした車の主が変人で、乱暴な運転の挙句に車をひつくり返し、トランクを開けるとウサギの群が詰め込んであつて、それをショットガンで威かす一連の件りは、突拍子がなく全くの脱線でありながら、作品の雰囲気に調和して秀逸であり、脚本・監督の意図を感じさせます。
隠す
  
 
[024]遠すぎた橋
 もう一時間長く描いてもいい大作戦verkhovensky2010-06-04
 
5箇所の橋に同時に降下した作戦を描いてをりますから、予備知識のなかつた初公開時はどこがどこだかわからなくなり、消化できなかつた覚えがあります。いつたん把握してしまへ・・・
続きを読む
5箇所の橋に同時に降下した作戦を描いてをりますから、予備知識のなかつた初公開時はどこがどこだかわからなくなり、消化できなかつた覚えがあります。いつたん把握してしまへば、その悲壮感を「楽しめ」ます。 とはいへやはり「プライベート・ライアン」「バンド・オブ・ブラザース」を見た今は、一時代前の描写、の観をまぬかれず、特に将校が自ら先頭に立つて戦ふ設定はいかがなものかと思ひます。スピルバーグ以前の第二次大戦ものは、この作や「史上最大の作戦」「バルジ大作戦」など、題材はことごとく面白いのですから、片端からリメイクしていいのではないでせうか。
隠す
  
 
[025]中村梅之助
 前進座の歌舞伎verkhovensky2010-05-22
 
2010年5月22日、三宅坂・国立劇場にて前進座「切られお富」公演最終日を観て。 梅之助は盛りを過ぎてゐる、あるいは体がすぐれないなどの理由からでせう、他の役者に比べ声が・・・
続きを読む
2010年5月22日、三宅坂・国立劇場にて前進座「切られお富」公演最終日を観て。 梅之助は盛りを過ぎてゐる、あるいは体がすぐれないなどの理由からでせう、他の役者に比べ声が聞えなかつたのですが、この劇団は、全員がよく訓練されてゐることが明らかでした。端役に至るまで台詞が滑らかであり音楽的であり、黙阿弥の七五調が美しく響いてをりました。 これは本家の松竹歌舞伎座の舞台では、残念ながら決して味はへぬことであります。あちらは毎月演目をとつかへひつかへ、出し物が多すぎるせゐで一本一本の稽古が足りないのか、台詞まはしがいい加減であります。したがつて黙阿弥ものは、たいていぶちこはしであります。歌舞伎の真の面目を知りたい方は、前進座の舞台をご覧になるべきでせう。 そして前進座で私が思ひ出すのは、太宰治の「正義と微笑」です。これは前進座の団員の日記をもとにした小説で、ちつともデカダンなところのない分、太宰としては傍系かもしれませんが、私は30年前、高校生の時に読んで以来、人間失格や斜陽より遥かに好きです。久しぶりに拾ひ読みして、やはり感銘を受けました。若い人にお奨めです。
隠す
  
 
[026]山田洋次
 プロではあるがverkhovensky2010-05-01
 
山田洋次の映画は、丁寧に作つてはありますが、,れいごとが多く、しかも単純素朴で図式的でいやらしい庶民礼賛△錣兇箸蕕靴ぞ个劼鯀世姚J語に起伏が乏しい、といふ点で、決・・・
続きを読む
山田洋次の映画は、丁寧に作つてはありますが、,れいごとが多く、しかも単純素朴で図式的でいやらしい庶民礼賛△錣兇箸蕕靴ぞ个劼鯀世姚J語に起伏が乏しい、といふ点で、決して手放しの評価はしません。 しかしながら、出演する俳優がみないい演技をするのは、演出の賜物なのかな、とも思ってをります。近年の武士三部作はすべて見ましたが、坂東三津五郎がうまいのは当たり前として、真田広之、永瀬正敏、木村拓哉、宮沢りえ、松たか子、高島礼子、壇れい、笹野高史が、それぞれのキャリアに残る名演を見せました。特にSMAPなど全く興味がなく、何をしてゐるのかすらほとんど知らない(そして当然偏見もある)私にとつて、木村といふ人があれだけできるとは思ひも寄らず、山田の眼力に敬服いたしました。 ※追記 その後文化勲章を受けた。これはとてもぢやないが信じられない。彼には黒澤のやうな後世に残る傑作は一本たりともない。せいぜい「故郷」「隠し剣」がほどほどの佳作、といつたところ。「寅」は山田の力といふより、渥美清(と浅丘ルリ子)なしではどうにもならなかつた。何が受賞理由なのか私にはさつぱりわからぬ。
隠す
  
 
[027]松たか子
 コメディエンヌの逸材verkhovensky2010-04-29
 
このごろは宮沢りえ、寺島しのぶなど、女優に優れた人が出てゐますが、とりわけ松たか子は、つひに現れた大物であります。私は山田洋次の「隠し剣」でまづ感心し、次に三谷幸喜・・・
続きを読む
このごろは宮沢りえ、寺島しのぶなど、女優に優れた人が出てゐますが、とりわけ松たか子は、つひに現れた大物であります。私は山田洋次の「隠し剣」でまづ感心し、次に三谷幸喜のグランドホテルもので、あれは映画はひどい出来でしたが、松だけは断然よかつた。台詞がしつかりしてゐるし、表情もいい。そして声の質と顔立ちからいつて、彼女はコメディにうつてつけと思ひました。 そしてこのたび舞台で「二人の夫と私の事情」を観劇し、確信を持ちました。ドタバタでも実に自然で滑らかに体が動く。どんなオーバーな演技でもわざとらしさやしつこさがない。もつと朗々と声が響けば、過去も含めて日本を代表する大女優となるでせう。 1970〜80年代にかけ、萩原健一、水谷豊、桃井かおりに代表される、あまりにも役者のクセによりかかつたひどい演技がまかり通り、もはや日本にはまともな俳優が出てこないのではないかと危惧されましたが、松のやうな本格女優の登場はうれしい限りです。あとは優れた脚本に出会ひ、一層天分の磨かれんことを。 なほ「二人の夫」は、ミス・デニスと松の演じるヴィクトリアとの会話から始まるのですが、デニスを演じた西尾まりの台詞回しが私は耳にとまりました。松よりも歯切れがいいなと。如何せん、登場場面がそこだけだつたので、確信が持てないのですが。
隠す
  
 
[028]ウディ・アレンの 夢と犯罪
 とても楽しい悲劇verkhovensky2010-03-29
 
新聞で毎日報道される刑事事件のディテールを、詳しく語つたやうなものです。そして犯罪者の失敗談に、この程度の裏話はありふれてゐるといふべく、現代的問題の提起らしきもの・・・
続きを読む
新聞で毎日報道される刑事事件のディテールを、詳しく語つたやうなものです。そして犯罪者の失敗談に、この程度の裏話はありふれてゐるといふべく、現代的問題の提起らしきものも皆無です。悲劇といはれれば一応さうでせうが、まさか作り手は感動してもらはうとも泣いてもらはうとも思つてゐないでせう。最後に兄がテーマらしきことを弟に言ひ、そこにロシア文学だの何だのの影響を見出さうとする傾きもあるやうですが、それは上辺だけのことで、実のところアレンには、ドストやらの深刻な憂鬱・暗さはないのであります。きいた風な皮肉や理屈はさておいて、私は、次はどうなるのかな、最後はどうするつもりかな、とそんなことばかり考へ見終はりました。それがとても面白い。作り手は中身より、いかに展開しいかにうまく語るかといふ点に腐心してゐるやうに思はれ、私はそれに乗せられました。 昨今のウディ・アレンの映画は、一生懸命面白い筋を考へ、あとは設計図どほりにベルトコンベヤー上で組みあげたやうなものになつてをります。かつての「アニー・ホール」のやうな、斬新な画期的な作品が現れたインパクトは、全くなくなりました。アメリカでは過去の人といふ評価をされてゐると、新聞に出てをりました。 それでも私は新作を必ず見ます。「マッチポイント」にせよ、この「カサンドラの夢」(何で「夢と犯罪」にしたのでせう?)にせよ、かういふストーリーテリングの技を持つてゐるのは、彼だけであるからです。近ごろは役者としての芸は衰へてしまひましたが、もう少し長生きして、入念な筋書きで客を釣つてほしいものです。 兄弟、両親、伯父、女性たちも皆結構です。出演者の演技も、彼の映画の魅力です。女優の父親役はジョーン・ヒクソンの「ミス・マープル」で刑事をやつてゐた人ですな。
隠す
  
 
[029]
 仏作つて魂入れずverkhovensky2010-03-23
 
この衣裳、この美術、この撮影......さすが黒澤。そして武満徹の音楽(喧嘩して、二度と黒澤とは一緒にやらないと決めたさうですが)。しかしこの役者......。 1985年の映画で・・・
続きを読む
この衣裳、この美術、この撮影......さすが黒澤。そして武満徹の音楽(喧嘩して、二度と黒澤とは一緒にやらないと決めたさうですが)。しかしこの役者......。 1985年の映画です。それにしてはたいへん大時代な台詞と演出です。それはいい。様式を重んじるなら、ましてやリア王の翻案となれば、それも手です。ならばさういふ(古臭い)台詞を堂々と喋れる、技巧のある俳優を揃へなければなりません。 うまいと思はせるのが、黒鉄を演じる井川比佐志です。彼は発声も抑揚もしつかりしてをり、只一人精彩を放つてゐる。ところが所詮、脇役に過ぎません。仲代達矢は相変はらず大袈裟ですが、まあよしとして、中心人物である一郎、二郎、三郎の三兄弟、楓の方、平山、そして肝心かなめの道化、これらがいづれも力不足です。寺尾、根津、隆、油井は全然だめ。原田美枝子は表情はいいが、大声で叫ぶと声量の不足を露呈する。道化は......この役作りは狂言師を想定してゐるのださうですが、それにしては真面目すぎ、感傷的に過ぎる。もつと皮肉を利かすべきなのです。耄碌し、まつたうな判断力を失つたリア王の愚かさを、観客の代はりに批評し嘲笑するのが道化の役目であつて、さうでなければ存在意義はありません。大殿には平山(ケント伯)がをり、深刻がり同情する忠臣なら彼一人でたくさんだからです。どうして本職の狂言師に頼まなかつたのでせう。 いくら調度品が豪華であらうと、戦闘場面がよく撮れてゐようと、台詞回しが二流では虚しく、陶酔することはできません。天から人間界を俯瞰するやうな映画を目指すならば、台詞こそがドラマの核心でなければならず、あとは枝葉末節であるからです。これは黒澤の責任なのでせうか。それとも俳優の限界なのでせうか。 とはいへリア王の名台詞「神は天上の退屈凌ぎに夏の虫よろしく人を殺してみるだけのことだ」が、「神や仏を罵るな。神や仏も泣いてをるのだ」と続くとは......。エリザベス朝のシェイクスピアより、20世紀の黒澤の方がずつと迷信深いやうで、この程度の世界観を以てすれば、すべての努力は水の泡・徒労に帰するのもむべなるかな、といふところでせう。
隠す
  
 
[030]カポーティ
 しかもこの撮影がいいverkhovensky2010-03-17
 
「冷血」は読んだといふかオーディオブックで聞きました。よくインタビューしたものだと思ひましたが、詳しい執筆過程はおろか、カポーティの人となりについても何も知らずにゐ・・・
続きを読む
「冷血」は読んだといふかオーディオブックで聞きました。よくインタビューしたものだと思ひましたが、詳しい執筆過程はおろか、カポーティの人となりについても何も知らずにゐたところ、この映画によつて、十分わかつた気になつてしまひました。「ティファニーで朝食を」は未見ですが、今更見るのは勿論、読まずに死んでも後悔はしないだらうといふ結論を得ました。カポーティを貶めるのではなく、「冷血」に到底及ばないであらうからです。 要約してしまへば、優れた芸術は、悪魔との取引から生まれるといふ常識を再確認するものに過ぎませんが、この人物描写は立派です。己の創作のために何でも利用し嘘もつく偽善者であり、しかもその結果に耐へられず廃人となつたカポーティの姿が客観的に描かれてをります。劇中でカポーティがつぶやく通り、「アラバマ物語」はたいしたものではありませんが、それに引き換へ、現代アメリカ映画が、技術のみならず人間の把握において遥かに進んだことを示す名編です。
隠す
  
 
 1 2 3 4 5次へ
 
 



【スポンサーリンク】



allcinema SELECTION

allcinema SELECTION