allcinema ONLINE オールシネマ 映画&DVDデータベース
検索オプション

 
 
  コメント題 投稿者 投稿日
4ヶ月、3週と2日」に対してのコメント
  ショッキング 幸村和 2010-01-14
  【ネタバレ注意】
前半、ガビツァ(ルームメート)のためにここまでするかー!?と度肝を抜いて、主人公の行動に全く理解ができなかったのですが、観ていくにつれてその理由がわかって、理由がわかるとこれは大変な問題作だなと思いました。 主人公がガビツァの中絶のためになぜあそこまでしたのか、それはほかでもない「ガビツァが自分であっても何らおかしくなかった」この一言に尽きると私は思います。それは主人公がだらしない女だったということではなく、当時のルーマニアでは大変理不尽で厳しい状況に女性が置かれていたということではないかと思います。 産婦人科医師のべべのような卑劣漢はいつの時代もどこの社会にも必ず存在します。むしろ、それ以上に怖いなと思うのがBFの母親の誕生日祝いの席に集った普通の人たち。真綿で首を絞めるような抑圧をかけてくるのが、悪意がないだけにたちが悪い。しかもそういう多数の人々こそが社会を形成していることを考えるとうすら寒いものがあります。それは息をする気道を徐々に狭められていくような抑圧です。 そして、主人公がBFに「私が妊娠したらどうするの?」と問いつめた時のBFの答えも、これが普通の男性の意識かと思うと目の前真っ暗です。怒る主人公に対しとにかく謝るBFに「なぜ謝るのか」と主人公が聞いても「ケンカしたくないから」。これでは絶望的な気持ちになるのも無理はありません。きっとこの次元の違いは生まれつきの性差ではなく社会が生んだ産物なのがわかるからこそ、暗澹たる思いがします。 そして、主人公はBFよりガビツァに助けてもらう、と言ってガビツァのために引き続き献身的にさえ見える行動をとるのです。しかしガビツァはというと、はあー!?と言いたくなる自分のことしか考えていないような態度。でも、私はガビツァがどうしようもない女であればあるほど、そしてそれでもやっぱりガビツァを見捨てない主人公であればあるほど「それでもBFよりいざというときはガビツァのほうがマシなんだ」と思えて、どれだけ当時のルーマニアは女性にとって生きづらい社会だったのか、ということに愕然としました。 そして殺風景なホテルでの中絶の処置からその結末までのシーンは、生半可な見せ方では伝わらないと監督は思ったのでしょうか。女性が妊娠し堕胎するとはどういうことか、むき出しの現実を見せることで、その重みがのしかかります。見ながらどんどん目がすぼまってきて、正視するのが苦しい自分がいました。ショッキングでした。 また、街灯や店の明かりももほとんどなく、いかにも寒々しく、そして町を歩く人もごくわずかで明るい話声なんかはまったく聞こえないという経済的にも冷え切っていることがうかがえる夜の町を、具体的に誰かに追いかけられているわけでもないのに後ろを気にしながら駆ける主人公のシーンは、社会に追い詰められている女性を体現化したようでもあり、その不安は見ている私にも伝わってきてまさに第一級のサスペンスになっています。 見た後はドキドキしたね〜なんて能天気に言えない余韻が残ります。でも、これはズシンと心に残ります。 追記:こののしかかる抑圧の感じは何か思い出すと思ったら「マグダレンの祈り」でした。ある種の人間に対する人権感覚の欠如を形成する社会ってなんなんだろうなあと考えずにはおれない映画です。
  
 

 
 



【スポンサーリンク】



allcinema SELECTION

allcinema SELECTION