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歩いても 歩いても」に対してのコメント
  家族の物語 幸村和 2010-03-24
  【ネタバレ注意】
「東京タワー」のオカンもそうだったけど本作でも世話焼きで台所に立ちっぱなしのお母さんとして樹木樹林が登場。帰省した娘(YOU)と他愛のない話をしながら一緒に料理する風景はそのまま味噌やだしの素のCMにも使えそうなほどほほ笑ましくなごやかだ。町医者として地元で尊敬を集めてきたらしい父親(原田芳雄)は自尊心が高く、いかにも頑固一徹そうなのも封建的なれどそれで落ち着いているといった家族の平和さを感じる。そんな平凡な家族の二日間が穏やかにしかし退屈に描かれるのかと思いきや、映画が進むにつれ、この家族の持つ悲しい出来事がわかってきたあたりからジンワリ人間のエゴがにじみ出てきて、ちょっと面白くなってきました。この一人ひとりのにじみ出るエゴの加減が絶妙で、そういえば「誰も知らない」も大人のエゴの犠牲になって静かに崩壊する兄妹を描いていたんだけどそれもまったく凄惨さとは無縁にむしろともすれば一見平和にも思える空気を漂わせていたんだよね。是枝監督はなかなかに怖い人だなぁ。というか人間の怖さを分かっているのかもしれません。 例えば娘が実家を二世帯住宅にしようと母親に持ちかけたり、あるいは父親が自分の孫に医者をすすめるようなことを言ったりするのもそう。あるいは娘の夫が写真撮影の時の「おじいちゃん、もっと寄って」なんてセリフも癇に障るセリフだし(私が原田芳雄だったら「わしはお前の爺さんじゃない!」と一喝するな)、よしお君の立ち去った後の父親のセリフときたら人に対する敬意をひとかけらも持ち合わせていないセリフでとても教養のある人間の言葉とは思えない。 そんなお父さんも怖いけど私が一番怖い、と思ったのがやっぱり樹木樹林の帰ろうとするよしお君に言ったセリフです。 あれはかなり怖い。いかにも人の良さそうなお母さんが言うからこそ、その怖さが一段と引きたちます。 そして、お父さんもお母さんも本当は善良な人だけど自分が見舞われた悲劇の前に人間はかくも脆く、エゴをむき出してしまうんですね。 もうひとつ、この映画で時折耳に付いたセリフ「そんなの普通でしょ」。類型的な「普通の」日本の家族を描きながらしばしばこのセリフを言わせているので思わず聞き流してしまいそうですが、よく考えると自分をスタンダードとして一切の例外を土俵にも上げない、ほかの考えを排斥する恐ろしいセリフになりうるんですよね。これを常用するのは怖いです。思考停止とファッショの第一歩かもしれません。何が普通かなんて誰が言えるのかって思います。 交わしている端から忘れそうな他愛ない会話を交わす三世代。孫に囲まれた幸せそうなおじいちゃんおばあちゃんと娘一家息子一家をアットホームに描きながらその端々にエゴが顔を出す、そしてその家族も死別で失うこともあれば、他人同士が一緒になって新しい家族を形成したりまた新しい命が誕生したり。思えば是枝監督は人間の一つの集まりである「家族」を描きたかったのかなと個人的にはそう思いました。
  
 

 
 



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