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ブラザーフッド」に対してのコメント
  兄ちゃんが怖い 幸村和 2010-04-22
  【ネタバレ注意】
韓国で大ヒット、感動の超大作だそうである。感動か…。ちょっと違うな。いやだいぶ違うな。 私は最初から最後までとにかく兄ちゃん(チャン・ドンゴン)が怖かった。 最初の敵地へ侵入して北朝鮮兵士を倒していく様は、冒頭の弟へのいたわりと慈愛に満ちたお兄さんとは打って変わって別人のようで、その姿はさながら鬼神だ。何が怖いって、このお兄さんの激しさは「殺らなきゃ殺られる」という恐怖からくるものではなく(それならまだ寄り添えた)、「武勲をあげて弟を除隊させるため」なんである。怖い。 戦争の悲惨さは(直接手を下す歩兵戦ともなれば特に)本当は人を殺すなんてしたくないけどそうするしかない葛藤とか、そういうところにもあると思っているのだけど、このお兄さん、その辺の葛藤はあんまりないみたい。弟に対しては溢れんばかりの愛情があるのにな。ましてや、朝鮮戦争は同じ言葉も話す一つの国だった同じ民族同士。その葛藤は日米戦争のそれよりももっと激しく、それゆえに辛いだろうと思うのですが、その辺はどうだったんでしょうか。思想教育やプロパガンダでもう既に徹底的に断絶していたのかな。朝鮮戦争については不勉強なので滅多なことは言えませんが。 そのうちお兄ちゃんはますます狂気を帯び本当の鬼のようになってきた。それでも弟を除隊させて学校に通わせてやりたい、という一念は揺るがない。北朝鮮軍の兵士には血走った眼で情の欠片も見せず制裁を加えたりする一方で、弟におまえは家族の希望なんだ、死なせるわけにはいかないというようなことを言う。怖い。 そして後半、愛する婚約者も反共組織に殺され、更には弟まで共産主義を疑われ殺されたと思った兄は、弟を殺した上官を石で滅多打ちで撲殺し、北朝鮮に寝返るのである…! そして北朝鮮軍で旗頭として今度は韓国軍をバッタバッタと殺す兄。かつてともに戦っていたはずの韓国軍兵士は無残にも兄に殺されていく。兄を捜しにそんな戦闘のさなかを飛びこんだ弟の目に映ったのは、白目をむいて完全に狂鬼と化した兄の姿だった。 白目のお兄さん、ビジュアル的にも一層怖いが、お兄さんの怖さが最高潮に達したのは、死んだと思った弟と再会し、正気にかえってからである。弟に「先に逃げろ」と送った直後、体の向きを変え、北朝鮮軍に銃を乱射するのだ。お兄さん、再びの寝返り。今度はさっきまで一緒に戦っていた北朝鮮軍兵士が次々血を噴き、死んでいく…。お兄ちゃんにはともに戦った仲間に対する情はないのか? 全ては愛する弟を守るため、である。でもね、でもね、死屍累々とお兄さんが築いた死体の山、その一人ひとりにお兄ちゃんにとっての弟と同じ、かけがえのない大切な家族がいるんだよ。しかし、そういう想像力や情は戦場に送られた最初から最後まで、お兄さんからはほとんど感じられなかった。ただ、弟への愛だけを除いて。 それが戦争といえばそうかもしれない。人を狂わせ、想像力を奪うのが戦争だと。でも、この映画はそれをメッセージとしているのか?そうは思えないな。 国家に翻弄され幸せを希望を打ち砕かれた兄弟の悲話をテーマにし、「感動の超大作」と銘打っているのではないか? 弟に向けてただひたすらに貫き通した兄の愛、周りが完全に見えなくなるような愛。ひたむきではあるけれど美しいか?これは愛というのか?思わず愛について考える自分がいた。 ところで、お兄さんの怖さに目が行ってしまったのは確かだが、本編の大半はむごたらしい戦闘シーンだ。ちぎれる手足、吹き飛ぶ体、退路を断たれ飢えに襲われ、狂って銃を乱射して味方を無差別に殺し、自身も自殺する兵士…。そんな延々と続く凄惨なシーンにこちらも疲労感さえ覚えるほど。あるいはいつまでも続く殺戮に、飽きにも似た虚無感を感じると言ってもいい。そしてそれが戦争というものなんだろうなあと。そういう意味でこの映画は戦争のおぞましさを十二分に伝えていたとは思う。 でもやっぱり兄ちゃんが私は怖い。
  
 

 
 



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