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Dr.パルナサスの鏡」に対してのコメント
  テリー・ギリアム 幸村和 2010-05-22
  【ネタバレ注意】
パルナサス博士の鏡の中は己が欲望がブクブクと肥え太った世界。砂糖菓子のようにフワフワ甘く恍惚を誘うカラフルワールドだったりするのだけどやがて肥大化しすぎた欲望はまるで自身の重さに耐えきれなくなったかのように次第に歪み、裂け目が生じ、その裂け目から悪魔が顔をのぞかせてニヤリと笑う…パルナサス博士の鏡の世界を堪能しながらそんな想像が膨らみました。 人それぞれ色々な感じ方ができると思いますが、この作品のテリー・ギリアムが構築するイマジネーションの世界はとにかく圧巻の一言に尽きます。テリー・ギリアムらしいチープさ漂う色遣いも含めた全体の雰囲気が、欲望でできた虚の世界の薄っぺらさをとことん効果的に表現しています。 そしてパルナサス博士一座の馬車やみすぼらしくもピカピカした一座の舞台、随所に散りばめられた強烈な毒、もう全部待ってました!と笑ったり、息をのんだり、ワクワクしたり。あらためてテリー・ギリアムはイメージを絵にしてそれを動かせることに卓越した才能を持っていると感じました。 テリー・ギリアムの魅力はそんなイメージの具現化だけではなく、障害を持っている人やホームレスといったマイノリティーを特異な存在として扱わず、しごく自然に登場させ、一人の物語の担い手として表現していることにもあると思います。テリー本人もそれと気付いていないんじゃないかと思うほどに。そこに、あれほどの毒を吐きながらも人間に対する垣根のない愛を感じます。 この先入観のない子どものような天真爛漫さと想像世界の構築、そして大人の皮肉の利いた知性、これがテリー・ギリアムの魅力だと思っていますが、本作でもそれはいかんなく発揮されていると感じました。吃音のアントンや、パーシー、そしてパルナサス博士もホームレスだったりしますがその設定に乗っかって物語が進行するというのではありません。 一方その子どものような自由さが徒になるのか、ストーリーについては論理性やまとまりが弱く感じられ、そのせいで冗長になったり散漫になったりする印象を感じることもあります。この作品にもそれを感じました。最初のパルナサス博士と悪魔の賭け、2回目の賭け、どちらもいまいちわかったようなわからないような印象で、そのせいでパルナサス博士が賭けに負けそうになってもハラハラする気持ちが伝わりにくかった。 また、ヴァルのお母さんを射止めるためにした取引は、娘が結婚年齢になって連れ去られるということから、これは邪な男が現れ娘を籠絡して連れ去ってしまうということの比喩なのだろうかと思ったり。その邪な男がトニーってことなんだろうか、とか。 それでも欠点(と私が勝手に思っている)を補って余りあるテリー・ギリアムの魅力がこの作品にはふんだんにあると思います。 あと、印象に残ったのはアントン(アンドリュー・ガーフィールド)の演技です。口先巧くおばさま方をくどき、集客し、愛するヴァルさえ虜にする魅力を振りまくトニーに対しアントンときたらすぐどもってしまうし営業も下手。そして子どもっぽく劣等感をむき出しにするところは、登場人物たちの中で一番共感できました。だからこそ、ラストはとてもハッピーな気持にもなれたし、そしてパルナサス博士の安堵と切なさとかすかな希望のようなものも感じられました。このラストの幸せな気持ちと切なさ、希望。これもテリー・ギリアム作品を観るとよく感じるなんとも言えない感覚です。好きだなぁ。
  
 

 
 



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