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松ヶ根乱射事件」に対してのコメント
  グロテスク 幸村和 2010-05-27
  【ネタバレ注意】
ほとんど予備知識を持たない状態で観たのですが、いやはやなんとも不快な映画でした。 視覚的に不快というのではないんです。それなら気持ち悪いシーンを入れれば人の気分を悪くさせることは比較的容易だと思うのですが、そういうことではない。 なのに、冒頭の仰向けになった女性に近づく小学生。このシーンからすでに凄く嫌な感じがして、そのあともジワジワ確実に不快度が上昇する。例えば金を溶かそうとして無残な状態になっているシーンはストレートな暴力シーンよりも私は暴力的なものを感じました。90年代という背景から、それはまるでバブルの残滓を踏みにじり唾棄するかのようにも見える荒んだ風景です。この表現力はたいしたもんです。 観ながらこの感じは阿部和重の「シンセミア」みたいだなと思っていたら、既に指摘がありますね。地縁血縁の強いうらぶれたとある地方の町。そこに現れた闖入者という異物が入ったことでその共同体のいびつだった秩序に綻びが生じ、そこに住まう人間の醜い部分が静かにドロリと濃い粘液のように表出してきます。 閉塞的な環境の中で人間関係は良くも悪くも濃密になり、その濃さの中でたとえ歪んでいてもその共同体の暗黙の秩序ができていくことは時代を問わずあって、その中で生きる人間の滑稽でグロテスクな部分をこの映画は余すところなく描いていると思います。その共同体の中で孕まれた狂気の暴発はいずれどこかへ向かうのか、そら恐ろしいです。このラストは。 俳優陣の演技もいいです。新井浩文の目が最初は温厚そうに見えていたのがだんだん死んだようになってきてほんま怖いですし、姉(西尾まり)の叫びも共感を呼びます。思考するのをやめたのか、もとからそうなのか、ああいう母親もいそうです。「嫁」という漢字を体現しているようなお母さんです。ほかにもお父さん(三浦友和)、チンピラ(木村祐一)、弟(山中崇)、みなさんそれぞれ印象的な演技ですが私が一番不快に思ったのは池内みゆき(川越美和)でした。被害者にすり変わることに長けた粘性の女性の怖さ、タチの悪さをじっとり感じ、気持ち悪かったです。 どこかにお粗末な部分が見えたりすれば、多分ここまで不快にはなれない。それだけこの映画はとてもよくできた、質の高い映画だと思います。ただ、あまりに不快でもう一回見る気は起きませんが。 追記:この監督の作品とあまり意識せずに「天然コケッコー」と「リアリズムの宿」を見ていたことに今回気がつきましたが、この監督は人間のダークサイドや情けない部分を描いた方がいい映画を作れるんじゃないかな。音楽のセンスもいいですね。
  
 

 
 



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