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風立ちぬ」に対してのコメント
  夢で始まり夢で終わる 幸村和 2013-09-21
  【ネタバレ注意】
冒頭に始まり、作品中、何度も挿入される夢シーン、多すぎました。確かにカプローニさんのセリフ「飛行機は…夢」が言うように、「夢」というのはキーワードでしょう。夢とは、未来への原動力にもなれば、辛い現実をひととき忘れる癒しにもなります。が、現実なくしての夢はありえないんです。やっぱり大事なのは現実なんです。こんなに夢に時間を割いたら、現実はどこに行ってしまうのでしょう。目を覚ませ。 避暑地にて再会し、恋に落ちた二人。「風があなたを運んでくれたのよ」に代表される、尻の辺りがムズムズする歯の浮いたような言葉の数々。メロドラマパーツ、長すぎました。もし、これから観に行く人で、恋愛映画は苦手という人は、ここでトイレに立ちましょう(私、すごくお役立ち情報言ってる)。 映画を観に行く前、NHKで宮崎駿に密着する番組を見た。「風立ちぬ」の企画があがったとき、宮崎駿が鈴木俊夫プロデューサーに「恋愛ものと友情もの、二つできたけどどっちにする?」と聞いて、鈴木さんが「両方やりましょう」と言っていた。番組を見たときはスルーしたところだったけど、今思えば、鈴木さんのその真意はなんだったんだろう。みんなの嗜好に叶う、と思ったのだろうか。だとすると極めて商業的です。 「恋愛もの」は言葉通り、やっていただきました。ママゴトのような夫婦生活でございました。 生きるのに必要な、食べて掃除して洗濯してという人間の営み、生活感、そして何より違う人生を生きてきた二人がともに生きるときに必ず見舞われるであろう、人と人とのぶつかり合い、といった、現実に横たわる美しくないもの、ありませんでした。その美しくないものがあるからこそ、それを乗り越えたときに発現する思いやりやいたわり合いこそが真の美しさであると私個人は思うのですが、そういうものはありませんでした。この年でこんなママゴトな夫婦生活を描く宮崎さんって、どんな夫婦生活を送ってきたんだろうか。最後まで表面的な美しさを保って消えた菜穂子さん、お気の毒でした。 二郎=おそらく監督本人にとって、飛行機と妻は美しく愛するもの、同列なんですね…。逡巡がない潔さですか。オタクを最高級に肯定した表現です。 そしてもう一方の「友情もの」は二郎のライバル、本庄との物語かと思いましたが、彼はどうなったんだ。尻切れトンボだったぞ。気になるぞ。 そして激動の時代の描写。一瞬迫力のあった震災も、俯瞰したような描写しか印象がない。人間そのものを描写すれば凄惨な場面になるだろうけど、宮崎アニメにはそれはタブーなんだろうか。タブーなんだな。きっと。 そして元からどうやら富裕な家庭に生まれた二郎。「日本はどうしてこんなに貧しいんだろう」とは言うものの、エリートコースまっしぐら。菜穂子もまたどうやら富豪の令嬢のようで、避暑地で二人は出会うわけだが、当時の日本の人々の多くは失業と貧困に喘いでいる。東北地方では困窮を極め、娘を身売りに出す農家が続出。銀行も倒産、満州事変勃発、松岡洋右は国際連盟を脱退、戦争に向かって突き進む暗黒の時代だったはず。が、二人の世界はどこまでも牧歌的でピースフル。小鳥がさえずり、小川が流れ、木々がそよぎ、テニスに興じる人がいて、食事は飢餓とは無縁なホテルのレストラン。菜穂子はホテルで療養。キャンバスに油絵を描いて過ごしている。二郎はホテルのベランダを破壊してまで紙飛行機を飛ばし、二人ははしゃぎあう。美しすぎる。現実の世界は生々しく、美しくないのに。第一、何で二郎はサラリーマンなのに何日も避暑地でぶらぶらしてるんだあ!? 更に、女性の描写も相変わらず、ヒロイン、お母さん、子どもの3パターンのみ。トトロでいうところの、さつき、おかあさん、メイ。この3パターンしか宮崎さんは描けないみたいです。この人はあまり女性を知りませんね。大人になっても、おかっぱでメイキャラを割り振られた二郎の妹さん、そりゃないよ、髪型どうにかしてやれよと思ったのは私だけでしょうか。 そして最後はやっぱり夢の中。現実は酷すぎて夢でしか描けなかったのね。なんか向き合っていないようにも見えます。「生きねば」と夢の中で言われましても。 夢で始まり、夢で終わる。 パンダコパンダを見たときに宮崎さんも若かったからこんなの作っちゃったんだね、と思っていたけど、最後にパンダコパンダ=自分の夢をまんまアニメ、に還りましたね。これが還暦ってやつですね。私も宮崎さんを美しい夢で終わらせたかったのですけれども。宮崎さん、お疲れさまでした。 追記1:作品中「チントウビョウ」という言葉が出てきますが、これは漢字で「沈頭鋲」と書くそうですね。漢字だとはあはあ、なるほどねと。 追記2:高畑勲の「かぐや姫の物語」こっちのほうが面白そうだと思いました。
  
 

 
 



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