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バーニング 劇場版(2018)

BURNING

メディア映画
上映時間148分
製作国韓国
公開情報劇場公開(ツイン)
初公開年月2019/02/01
ジャンルミステリー/ドラマ
映倫PG12

バーニング 劇場版

(c)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved


 Photos

【クレジット】
監督:イ・チャンドン
原作:村上春樹
『納屋を焼く』
脚本:イ・チャンドン
オ・チョンミ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:モグ
出演:ユ・アインイ・ジョンス
スティーヴン・ユァンベン
チョン・ジョンソシン・ヘミ
【解説】
 村上春樹の短編『納屋を焼く』を「シークレット・サンシャイン」「ポエトリー アグネスの詩(うた)」の韓国の名匠イ・チャンドン監督が舞台を現代の韓国に移して映画化したミステリー・ドラマ。作家志望の田舎の青年が、偶然再会した幼なじみと彼女が連れてきた都会のイケメン男性と織りなす不思議な交流の行方を、美しく幻想的な映像とともにミステリアスな筆致で描き出す。主演は「ワンドゥギ」「ベテラン」のユ・アイン、共演に新人のチョン・ジョンソとTV「ウォーキング・デッド」のスティーヴン・ユァン。
 小説家を目指しながらアルバイト生活を送るイ・ジョンスは、街で幼なじみのシン・ヘミと偶然の再会を果たす。するとアフリカ旅行に行くというヘミに、留守の間、彼女が飼っている猫にエサをあげてほしいと頼まれる。ある問題で実家暮らしを余儀なくされたジョンスは、ヘミのアパートに通い、姿を見せない猫にエサをあげ続ける。半月後、ヘミがようやく帰国することになり、空港へ迎えに行くと、アフリカで出会ったという謎めいた男性ベンをいきなり紹介され、戸惑いを覚えるジョンスだったが…。
<allcinema>
【関連作品】
バーニング(2018)NHKドラマ版
バーニング 劇場版(2018)劇場版
【ユーザー評価】
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【ユーザーコメント】
投稿者:黒美君彦投稿日:2019-02-05 13:40:46
【ネタバレ注意】

村上春樹については詳しく知らないのだが、彼の初期作品はどこか無機的な人間関係やそのくせおめおめとした男性主人公が多い、といったところが特徴的といえるだろうか。
さて、そこで短編『納屋を焼く』の映画化である。イ・チャンドン監督は原作を大きく脚色し、村上春樹とはまた異なる謎を観る者に投げかけている。
映画では主人公イ・ジョンス(ユ・アイン)が街角で幼なじみのシン・ヘミ(チョン・ジョンソ)と再会する。小説家を目指しながらバイト生活を送るジョンスと整形してすっかり美しくなったヘミはあっという間にベッドイン。ある日ジョンスはヘミに、アフリカ旅行の間、彼女のネコの世話を頼まれる。そして半月後、ヘミは現地で知り合ったというベン(スティーブン・ユァン)とともに帰国してきた。そこから奇妙な三人の関係が始まる…というストーリー。ただ、イ・チャンドン監督は一筋縄ではいかない作品に仕上げている。

ヘミは冒頭いきなりジョンスに謎を投げかける。
原作にも出てくるパントマイム。…ミカンがあると思ったらダメ。ミカンが「ない」ことを「忘れる」の。「ある(存在する)」と「ない(存在しない)」の境界が、このひと言で用意周到に破壊される。
そして「リトルハンガー」(空腹の者)と「グレートハンガー」(人生に渇望する者)の話。ジョンスは幻惑されるばかりだ。
ヘミの部屋で彼女がジョンスに言う。「ジョンスは昔『お前本当にブスだな』と言った。たったひと言私にかけた言葉がそれ」。
しかしジョンスは覚えていない…。
このヘミを演じたチョン・ジョンソはこの作品のオーディションで選ばれた新人だというが、そのはすっぱな感じや大胆な演技が新人離れしている。

ジョンスとヘミの故郷であるパジュ(坡州)は、ソウルから車で1時間くらいの場所で、北朝鮮との軍事境界線に近い。ジョンスの実家からは、北朝鮮から韓国内に向けたスピーカーから流れるプロパガンダ放送が聞こえる。のどかな農村のごく目の前に休戦ラインがある「境界」に近い村。しかも過疎化が進み、ジョンスの実家も半ば崩れ落ちているかのようだ。
そして、ジョンスの前に現れた男ベン。ポルシェを乗り回している彼とともに帰国してから、ヘミはジョンスに興味を失ったかのように見える。彼の存在については様々な解釈があるようだけれど、それはおいといて。

突然ジョンスの実家にやってきて、縁側で大麻をやりながら過ごす三人のシーンがとにかくそこはかとなく美しい。
このシーンの存在だけでこの映画は私の中では高い評価につながる。テレンス・マリック監督作品でも多用される、薄明の光が黄昏の時を満たす“マジック・アワー”。そこでヘミは近所の井戸に落ち、助けてくれたのがジョンスだったと話す。
ベンは、ジョンスに向かって「僕はビニールハウスを焼くのが好きなんだ」と話す。「二か月おきぐらいに理由もなくビニールハウスを焼く」のだと。
唐突にマイルス・デイヴィスの『死刑台のエレベーター』が流れる。ヘミは立ち上がり、夕暮れの空に向けて踊り、上半身裸になってパントマイムを始める。手で作られた鳥が、夕焼けのなかを羽ばたく…。何と美しい一瞬か。
実はこのマイルス・デイヴィスは原作でも登場する。原作ではLPで彼の「エアジン」をかけることになっているが。

後半はヘミの「不在」がテーマになる。ジョンスは一切連絡が取れなくなったヘミを捜し続け、やがてベンが彼女の行方を知っているに違いないという妄想に近い思いを抱いて、彼のポルシェを追うようになる。
その思いは、彼女の飼っていた「不在」のネコと思しき“ボイル”がベンの部屋にいること、冒頭でヘミとジョンスが出逢うきっかけになった景品の安っぽいデジタル腕時計がベンの部屋にあったことから確信に変わる。
原作では男がいう「納屋を焼く」趣味が「女を殺す」ことを示すという解釈が広くあるが、ここでもそれらしき示唆がある。
そしてすべてはラストへとつながる…。
イ・チャンドン監督は「(現代の若者は)一見すると洗練されているように見えるのに、未来は見えず、不安である。どこかに問題はあるのに、それが何の問題かわからず、何と戦っていいのか分からない。だから若者は無気力になってしまい、怒りを感じているけれど、それを内面に秘めてしまう。そんな一面があるのではないでしょうか」(西森路代によるインタビュー「HUFFPOST」より)と語っている。ジョンスは何も持っていない自分と、資産家で恋人さえ奪っていくベンとのギャップに少しずつ壊れていく。ヘミは少なくとも自分の側にいるべき人間のはずなのにそれさえ奪っていく者への怒りと破壊的な暴力。
炎を上げて燃えるポルシェは、ジョンスにとっての「ビニールハウス」だ。
イ・チャンドン監督は、また大きな謎を観る者に投げかけている。凄まじい作品だ。

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